愛玩洞窟〜汝洞窟を愛せよ、奥に深く深淵に

黒船雷光

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ジパング編

洋上の島国

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 ジパングには、併合するとか賠償請求するとかいう意識はなく、二度とアルヴァの様な輩を出してこっち来るな…と言えばいいと軽く考えていた。

 ハーフエルフの忍び、サユリがガイドとなり、アルヴァの在位跡からホーリースライムの統一をして速攻帰るつもりでいたが、エラリアからは「せめて捕虜の返還と道中の護衛ぐらいせんか?」と言われて、捕虜護送にバラクーダ号に乗艦し、他ジパングの船を従えて航海の途に就いた。

 カイラ、ザルク、タイガの猫耳メイドと、雫、艦隊運営にブリギッタと艦隊クルーを付けて万全というよりとにかく精鋭でホーリースライムを勝ち取ることを念頭に向かう。

 「エラリア…この国の頂点は君だから、オレから何か言える立場ではないが、出来るだけ早く帰ってくるようにするよ…」
「ふん…ワシが何を言っても止まらんじゃろうが…だが…」

 おもむろに後ろに控える乳母から、乳飲み子を差し出す。
「メイのために早う帰ってこい」
 彼女の腕の中ですやすや眠る娘は、人間の娘で、オレの血を分けたメイで間違いなかった…そう十分に感じるだけで良かった。
「分かっている…」

「男の分かっている…は何も分かっておらんことが多いからの…せいぜい頑張るのじゃな…ワシは心が広いが、泣かしてはならぬ人間がいることを片時も忘れる出ないぞ」
「分かって…いや、肝に銘じるよ」

 そういえば、最近宰相のセレストを見ないな…
「何じゃ?もしや、セレストが気になっておるのか?…」
「う…まぁ…彼女との距離感はな…」
「ふん…お前さん、セレストと何回交わったんじゃ?」
「え?…そんな回数とか……って…え?」
「そうじゃ…彼女は妊娠した」

「…………えっと…」
「誰の子とか聞いたら、その舌引っこ抜いて奥歯ガタガタ言わすぞ」
「俺の子か…」セレストは優しく従順で芯が強く、エラリアに献身的でオレにも尽くしてくれた女性だ。
「今は暇を出して居る…」
「そう…か……」
 抱える責務が増えたものだ…と思う。どんどんそれが積み重なってきている…
 転生前は何もなかったのに、笑える。

 自分が子持ちになる…しかも、コレ良くあるハーレムモノじゃん…あと腐れなく美女を抱きまくる…ってそんなイメージあったけど…まあ、そうなんだけど、自分の子供を抱くと意外と…そこに愛とかわからない…そんな単純な話じゃない一つの感情が浮かぶ。やっぱり【愛】か…

「会っていくか?」
「……そうだな」

 翌日王都城下町の少し外れの長閑な町境の庭の広い屋敷に行く。
 屋敷の使用人たちが慌てて門を開け受け入れる。
 屋敷の扉が開くと、妊婦服を着たセレストが居た。
「む、無理をして出迎えてくれなくても…」
 慌てるオレに、少し目を見開いてからにっこりと優しい笑顔になるセレスト。
「こうしてお会いできるとは思っておりませんでした…」
「ごめん、オレ…何も知らなくて…」
「いいえ、私が望みましたし…こうしてシェル様が気遣ってきてくださることが嬉しいです」
「そ、そうか…」

「お子様は順調ですよ」
 アラベル・サンクラウンが来た。宗主教直々で診てもらえるのは…大丈夫なのか?
「人の営み、子は宝…継承こそが私たちの望む未来への橋渡しです」
「そ、そうか…では頼む」

「シェル様……」セレストの瞳は潤んでいる。
 そっと頭をなで、頬をなぞり、顎に手をやると目をつむるので、優しくキスをする。
「私はシェル様を待っています…などと縛り付けるつもりはございません…どうぞ、為すべきことを成してください」
 その言葉は結構心に響いた。

「分かった…ちゃんとすべきことを成して戻るよ」
 外の風にあまり充てるのもどうかと思い、早々に立ち去ることにする。
 アラベルがスススと近寄ってきて言う「もうあと三月もすれば生まれましょうぞ…」
「そ、そうか…」

 余りジパングには長居するつもりはないので早いところ帰ると告げて後にする。
 既に、エラリアに産ませた前世の姪っ子の生まれ変わりのメイを産ませているし、黒曜にも同様にドラゴンの娘を産ませた。だが、逆にこれまで交わった人間との子供は授かっていない。
 以前雫がそれを意図せぬ限り…と言うようなことを話していたが…

 いや、先ず…そう、ジパングだ。

 この時のオレは、心ここにあらずの状態で、安易に渡航し後悔することになる。

 ともかく、船は出向した。向かうはジパング。…エルフの国。

 渡航するのに約十日の船旅になると言われたが、そこは蒸気機関の船がある。曳航して少しでも時間を稼ごうとするが…その途中にイカの化け物…『クラーケン』に襲われる羽目になってしまった。
 全く迂闊であった…アクアライトの守護はない。オレの考えではアルヴァによってリュミエル服従時にサンライト側に吸収されてしまっている。クラーケンは前回はアルヴァ達を守るために戦ったのがその証拠であると考えられる。

 だが、今回はアルヴァもリュミエルも居ない…マズイ…制御は効かないのだ。
「まいったな…黒曜!」オレは再び黒曜を逆鱗の破片にマナを込めて召喚する。

  びっくりするくらいの速度で黒曜が飛来する……ただ、天空を支配し、いくら強大な爆炎を放てても、敵が水中だとどうにも手出しがしづらい。
 奴が現れるところをあとからモグラたたきの様に即時対応するしかないのだが…後手に回る分無駄にマナと体力を使ってしまう…洛陽と手分けをしたが、結局何隻か沈められてしまい、救助と介護で時間を取られてしまった。
 数時間の格闘の末、一見撃退したかに見えるが……余談は禁物である。

 そんな苦労をしながら、ようやく水平線の向こうに陸が見えて来て、ホッとする。
 ところが、そんな気を抜こうとする矢先にサユリが警告する…
「シェル様…危険なのはこれからでございます」
 マジか…「えっとどういうこと?」
「それは…」サユリが言い淀むと…

「シェル様…前方に船影が見えます」カイラがその目の良さを生かして発見するが…
「ここからは日本の海賊『倭寇』のテイトリーになります」サユリは忍び装束に戻り、すでに剣を構えている。

 あーやっぱりいるんだ…参ったね…おい、黒曜!?
「シェル様…私はしばらく動けません」

「し、雫さん?」
「汝は鋼鉄帝国で学んだと思っていたが…我は本体から離れている以上、この躰に宿すマナ異常を使えば我さえも行動不可になる」
 いきなりピンチ来た…たどり着いたらすぐ終わると思っていた。だが実際にはそもそもたどり着けるのか…という残酷な現実が待ち受けていた。
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