愛玩洞窟〜汝洞窟を愛せよ、奥に深く深淵に

黒船雷光

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ジパング編

瀬戸内の難題

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 アカツキを「御仕置き」してからお銀の知っていると言う近くの城主の町に向かう。
 アカツキは人狼の月影の一族の末裔で、今は一人気ままに生きている。
 月光の元で力を発揮するが、日中でもある程度自由に変化できる。ただし、能力はかなり下がるらしい。
 食事は山賊の男たちで、とっかえひっかえならず者を集めてはこっそり食い減らしていた。
 …思ってたよりホラーだった。

「ねぇ…旦那ぁ~この首輪…」
「飼い犬は紐で繋がれるのがこの世の常だ」
 この辺りは庭というアカツキに案内させる。
 首輪はスレイ棒を加工して即席で作り、都合よく鎖鎌を持っていたサユリから鎖だけ仮受けて繋いでいる。

「酷くない?」
「黙れ駄犬が」
「わうぅ…」

 街道を外れたわき道を進むと、海に面した城下町が見えてきた。
「あのぉ…あっしはもうこの辺で…」
「何言ってんの…お前を捕まえた褒美で城主に合わせてもらうんだ逃がすわけ無いだろう?」
「鬼!悪魔!!」
「まあ、その指摘そこ迄外れてねぇよ…オレの親族にはそのオールスターが居るからな…」
「え?」

「シェル様って、百鬼夜行の仲間とか親戚がおるんや? まじで? ああ、そういや、護衛の長身の女人は化け猫やったね…スゴイちゃね~」
 お銀は冗談で言っているのかもしれんが…茂みの中からオレでも分かる殺気が出て来ているのでハラハラする。

 城の前に着くと門番に告げる「お尋ね者を捕まえた…殿様に謁見したい。書状もある」
 書状を見せると門番は取り次いでくれて、しばらくすると中に案内され、城主と会えた。

 城主は恰幅の良い髭と髪の毛が繋がっている獅子みたいな豪快な老人だった。
 まったく…この街でも働き盛りの男性はほとんど見ない…女子供、そして老人の国だ。
「城主の毛利雁之助じゃぁ……書状は見せてもろたけぇ、土産のアカツキもようやく捕まえられたんはありがたいのう。わしの部下から協力者を選んでみようじゃねぇか…」

「ありがたきお言葉です。では、福田家に続いてご協力いただけると……」
「そうじゃのう…ここもだいぶ男手持ってかれてもうたわい。えらいこっちゃのう…中央のエルフ共にはそりゃあ面白おう思ってるやつなど居らんじゃろ…じゃけん、協力は惜しまぬわい」
 思っていた以上に、協力的ということは、エルフは相当嫌われているという事か…

「ところで捉えたアカツキはどうなりますか?」
 人食い人狼なので、どうにもならないと思っていたが…一応聞いてみる。

「良くて打ち首、もしくは磔じゃろうの」
 城主は答える。
「え…あっしは死罪確定ですかい…」縄について動けなくされているアカツキは泣きそうだ…というか、泣いている。

 ええい…!もう!「城主毛利様…タダでさえ人手不足な中部下を割いていただくのも恐縮です故、このアカツキをもらい受けることは可能でしょうか?」
「なんじゃ、情でも移ったんか?…さては…まあ、ええけぇ…国外追放じゃけん、戻ってきてもうたら斬首じゃゆえ、好きにせぇよ」
「ありがとうございます…お願いついででございます。エルフに会うにはどうすればいいのかご教示ねがえますか?」

「ワシはこの地預かってから、一度も都へ上洛したことないけぇのう、ようわからんが…世界樹の下で地上の政務しとる堺の城主に、紹介状書いてあげようじゃのう…だが、その前に、アカツキを捕えれたヌシらに依頼したい」
「何でしょうか…?」

 城主は少し困ったような顔をして言う
「瀬戸内の海、荒らす海賊どもが多うてのう…どうにかならんかじゃのう。えらいこっちゃわい」

 海賊と聞いて、お銀の顔を見る。
 お銀は「何でアタイの顔を見るのか?」というすっとぼけた顔をしている…

「その海賊というのは…」
「そうじゃのう…村上の奴らがのう…」
 お銀の目が泳ぎ始める…ちょっと面白い。

「すいませんが…最近もですか?」
「ん?…なんじゃそりゃ?」
「ここに、控えさせてます…お銀という女ですが」
「なんじゃ?」
「村上は解散しました。彼女が首領のお銀…村上銀二ですね…」
「な…ほんまか? マジかよ…」
 毛利の顔はマジマジとお銀を眺める…
 オレの左右には、山賊と海賊のボスが控え従っている構図である…

 毛利は破顔して爆笑する。
「うはは! 『しえる』じゃったけぇの? …お前、どっちも落としよったんか? やるじゃけぇのう! ええ度胸しとるわい!」

「二人ともオレが連れて行きますので、問題は今後起きないと思います」
 どっちか置いてけとか言われると面倒だ…屋敷の外に控えさせていたラカスタ達とサユリにいざという時は合図を送るつもりだ。

「お前…えらいことやりよるのう…。けどよ、世間を大騒ぎさせよるワシの悩みのタネの元締めが、今ここに勢揃いしとるとは…。まあ、約束じゃったけぇ、堺の紹介状は書いてやるわい。わしも命は惜しいんじゃけぇ、しゃあないのう…」

 こうしてわらしべ長者の様に伝手を使って世界樹を目指す。
 人間側ではその封建社会的な仕組みはさて置き、エルフたちに対しては意外と服従どころか反旗を翻す機会を狙っている者たちが多いのは意外である。

「雫…大丈夫か?」
 雫はこっちに来てからほとんどしゃべらず、夜の行為もしていない。
 時々ふわりとそのままいなくなってしまうのではないかと不安になる。

「汝が我を必要とする限り、我はそこにいる。心配するでない…前回の失敗を踏まえて無駄なマナを使わないようにしている。その上でこの土地はマナに溢れているから大丈夫だ」

 オレは…オレは自戒を込めて体の支配を極力使うべきではないという結論に達していた。
 いや、いざという時に貯めておくという雫と同じ考えもあるが、共感と共存が必要なことなのだと先の大戦での俺が得た答えだった。

 アルヴァは、絶対的な力と正義の存在だった。オレは共存共栄を選んだ。
 奴はノイズは赦さなかった。だからリュミエラの心の解放を、力の暴走を断罪した。
 奴は自分だけが正しかったから、単一の限界を超えたオレ達に敗れた。

 奴の国に来れば、分かりやすく敗北を認めた国が捕虜を受け入れ、結末を受け入れ、ホーリースライムの結合を受け入れるだろう…とぼんやり思っていたが、全然違った。
 オレ達の国と変わらず人々は生活し、支配のことなどどこ吹く風で庶民は日々の生活を謳歌し、支配層に対してどうやって討伐しようか画策し、異国人のオレを受け入れる。

 世界樹という巨木がこの世界で一体どういった役目を持っているのか分からないし、ふもとで済む住人ですらそれを見上げても関心を持たない。
 まあ、オレも雫にほだされて世界征服なぞ考えなければ同様にエルダリアの地で、ギルドに属して日々の生活に愚痴を言いながら只過ごしていたかもしれない。

「ところで、ホーリースライムが全て統一された際には何が起きるんだ?」
「改革の確定と選抜が起きる」「それは雫が望むことか?」
「前にも言ったが、我は汝が望むままに汝を支える」

 その自分が望む世界に確定することが恐ろしい。オレは自分が滅ぶ道を避ける為に進むことを選んだ。
 オレが選ぶこの世界を行く末なぞ今でもどうあるべきか分からない。

 世界樹の中にその答えは有るのだろうか?
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