愛玩洞窟〜汝洞窟を愛せよ、奥に深く深淵に

黒船雷光

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ジパング編

恒久なる深度耽溺

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 エルフの二人を悠久の時の堕落から、今を生きる刹那の快楽に堕とし従えることに成功する。

「我等とて永遠という言葉がその意味のままだとは考えていない。この土地もこの樹木も世界を支える根幹として成立しておるが、始めがあったのを知っている…そしてそれを私は見ていない。つまり、我とて悠久を生きていても、永遠という言葉には外れている…」

 薄く碧色が透ける美しい髪をたなびかせるエルシオンティアは着流しを今は前で閉じて大切な部分を隠して優雅に歩いている。だが、特段下着をつけているわけではないので、布越しに揺れる豊かな胸部の先の形まで何もかもが伝わるままだ…

「ワラワ達は寒暖も刺激も少なく満たされた子の世界樹の中心で、変化のない日々を目的もなく享受して生きていた…」
 その瞳は眼前に広がる巨大な空間、世界樹のうろの奥から広がるマナの奔流とそのエネルギーが発する美しいが人間にとっては過ぎた力にて、猛毒になりうる流れを映している。
「だから布一枚で無防備にしているって話は、まあ…分からなくはないけどね…いやぁオレにとっては眼福だから全然いいんだけど…なんで着流し一枚残しているんだろって逆に思うね」

「そんなもの久しく考えておらなんだから分からんが……文明人であった名残を捨てきれぬからではないかの」
「まあ、堕落してブクブクしたりしてない処を見ると、言うても他人からどう見られるかは捨てて無さそうだ」
「お主の様な人間の雄に性的な目で見られること自体、感覚的に忘れておったわ」

「アルヴァの話が少し出ていたと思うが、他にエルフ族にどんな人物がいるんだ?…まさか、お前とイリュミナリアしか居ないとか無いよな?」

「悠久を生きるとな…どうなるか、お主らには分らぬであろうな…」
「分からないよそりゃ…どうなるんだよ?」
「変化を止める」
「……変化?進化じゃなくて?」
「進化は変化の先にあるであろう……そこに至る道すら歩まなくなる…堕落でさえ変化だからな、それさえも無くなるのだ」

「生きていること自体に意味を感じない?」
「かもしれぬ…ふふ、お前との交合は生を感じる…最も根源的な行為じゃからな…久しく忘れていた感覚だ……困ったことに今残ったエルフは雌しかおらんのだ…」
「え?」
「別に困らんだろう?我らは死なぬ…存在を脅かす敵もおらん」
「繁殖しなくてもよいということか?…つまり…」
「そう考えたのはアルヴァじゃな…奴は、この国のエルフの雄を駆逐した…勇者たる彼の考えに反して生きていくことは出来なかった」

 おいおい…思ってた以上にやらかしているな…その上で、アクアライト・ホーリースライムのリュミエラに浮気してたんかい…ドン引きですがな…奴は力をつけてからホーリースライムの統廃合に一回や二回では済まない生き残りを経験してきたのかもしれない疑惑が沸く…よくオレ達勝てたな…

 アルヴァがサンライト・ホーリースライムの力を得て成したのは、その力を一つの樹木に宿らせて世界の中心に据えることであった。彼と彼の種族であるエルフ族は栄華と繁栄を極めた。
 だが、世界の中心にいた男は、永遠を生きる中で永遠に溺れてしまったのだ。

「ここが世界樹の核だ」エルシオンティアが指し示すのは超巨大な世界樹の幹の中央、複雑に絡み合う木の根の様な繊維質に包まれて輝く日の光に似た輝ける塊であった。

「何者ですか?」
 その前に立ちふさがる新たなエルフ。
 幾重にか派手な羽織を重ね着して、優雅に歩くその足は素足のままの蒼い髪の毛の美しさはこれまた人ならざる容姿をもった女性である。

「連れ立っているのは…エルシオンティアとイリュミナリアではないですか…こんなところまで出向くのも珍しい…」
「ユグレシア…」エルシオンティアがその名をつぶやく。
「知り合いか?」
「そうですね…彼女はココの番人です」

 番人と言うからには、守護する立場と考えられる。だが、サンライト・ホーリースライムの加護を得ていたアルヴァは存在を失くしている…果たして守護者がいたとして意味があるのだろうか?

「ここにアルヴァ以外の部外者が立ち入るのは実に1200年ぶりになりますか…」
 うん?アルヴァが部外者扱い?

「1200年?…ということは、前々回のホーリースライムの統廃合からずっとココは維持されてきているってことか?」
「誰が口を利いていいなどと許可しましたか?」
 ユグレシア(蒼)がひと睨みしただけで、オレは後方へ吹っ飛ばされていた。
 とんでもない密度のマナをぶつけられたが、その気配すら感じなかった…
 だが、それでも…今度は理解できたので対応できた。

「コイツぶっ倒せば目的達成やろか!? ほな、さっさと決めちゃろか!!」
 お銀が抜刀する。
「おい!ヤメ…」オレが叫ぶより早くアカツキがいわゆる野生の感を働かせて横からお銀に体当たりする。

「ぎゃっ!!」アカツキは両足を潰されてその場に倒れる。

 とどめを刺さんと手を掲げるユグレシアにクナイが降り注ぐ。
 一本二本と腕と肩に刺さる。サユリの隠遁からの攻撃だ。視界に入らなければ攻撃を食らわない。
「ぬっ?!」動きが一瞬止まる。
 オレもその隙に動く。

 アカツキに駆け寄り、すばやく彼女の潰れた脚にマナを流し込む「雫!」
 彼女の助力で再生する「直ぐには動けないかもしれないが変身してでも離れろ!」
「わ、わん!」狼に変化し四つ脚で駆る。

 お銀は庇ったアカツキが潰されかけたことを悔いるが、それはほんの一瞬で船上戦果の中での経験が彼女の動きを加速させる。
「舐めるなや!」横一文字一閃、彼女の大太刀がユグレシアに届く。
 だが、見えないマナの壁が彼女の太刀を留めようとする。
 構わず振り抜くと、ユグレシアは衝撃を受けきれずに弾き飛ばされて下がる。
 そこにかまわず一気に間合いを詰める。

 だが、その動きは流石にユグレシアに把握されている。その瞳が視界に入る瞬間……!!その視界が真っ白に塞がれる。小夜の巫術、式神の札が彼女の顔面に張り付く。
 お銀の返す刀で喉元を突く!だが、視界を奪われてもユグレシアは手をパンと叩いてじしんの内側にマナを弾けさせ札も攻撃もすべて弾き出す。腕と肩に刺さっていたクナイも抜け落ちる。

「流石に…アルヴァが下賤な人間族を鍛える…と言いだした時は戯言にしても無謀…と思ったものですが少しはやるようですね…正直」
「驚いた感じかな?」「なに?!」チュゥ!
 背後を俺に取られたユグレシア(蒼)の顔が後ろを見た時にはその唇を奪っていた。
「き、貴様ぁ…あふぅ…」

「ねぇ…アルヴァも部外者みたいな言い方していたけど…つまり、ココはどういうところなんだ?」
「世界樹とその核を成す『日輪の霖』は……な、なあ…続きを」
「これまでも他に吸収せず、されずにここに鎮座していた?」
「そうだ…」
「600年前は?」
「アルヴァが全てのホーリースライムを従え、文明のリセットを行った…だが、サンライト・ホーリースライムは一切を変えずに残した…それが奴に力を与える条件だったのだ」
「ソレを守護してきたのがお前なのか?」
「そうだ…この私の前に立って無事に居られたものは居ない…この様なことになること自体信じられん…」

「そうか…その口はしゃべってモノを食うだけにしか使わず数世紀ってことか」
 その返事を待たず更にディープキスをする。
 彼女のすべてを舌で絡め取り、支配する。
 彼女の中のこれまでの歴史と立ち振る舞いの想いが共有される。

 エルフの生い立ちと種族の意図と栄枯盛衰…
 森の精霊…エルフは生物で言えば、樹木そのものであった。この世界の創成期から存在を現した植物の歴史と繁栄と共にある不死ではなく成長と繁栄と継続の伝承こそがその役目であった。
 悠久の時を世界を作り替える存在。世界システムそのものであった。

 オレ達とはそもそも根源的な作りが異なる存在であった。
 植物は後から発生した動物たちとの共生を試みた。
 与えて繁殖させる代わりに自分たちの支配も広げてもらう。
 オレが子供の頃に学校で教わった食物サイクルそのものだった。

 だが、悠久の時の中で、共存では無く支配を望む心が生まれた。
 ほんの気まぐれだったのかもしれない。
 動物の死体や動物を直接捕獲して解析しながら模した木の精霊を生成してみた。

 エルフの始祖であった。
 世界の根源種であるホーリースライムとの邂逅は、そんな中で起きた。
 エルフはホーリースライムとの関りで、世界を支配し書き換えた。
 人類の誕生である。

 人類を使役し、自分たちも植物の分身からより独立していくことを選んだ。
 長い歴史の末、アルヴァが生まれた。アルヴァは人類とエルフのハーフであった。
 彼はそのことをより自身が世界を支配するにふさわしい種族の新しい形と考えた…

 うーん…なんか、壮大すぎて良く分からん…が、サユリがハーフとして存在するのも奴の仕業であることは良く分かった。

「雫…」「汝の獲たモノは我にも伝わる」
 雫は幹の中央の格子状の中央に光り輝く核に手を伸ばし、そこから流れ出ているマナを集約してその手に受け止める。

「んはぁ……は?…わ、我が体内に巡るマナが…」ユグレシアは困惑の表情を浮かべる。

「雫?」
「汝の望む形に相成った…我、サンライトとの統合を果たした。だが、アクアライトは統合されておらず、すべてのホーリースライムの統合による世界の改編は成されない」

 つまり…?アルヴァはリュミエラを従えていたのは、統合ではなくあくまでも伴侶としての可能性を探っていたという事なのか?

 ともかく、雫はホーリースライムの端末として復活し、オレ達は三種のホーリースライムの統合に成功することとなった。
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