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終章完結編
仄暗い深海の底から
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オレの中を満たす、ホーリースライムの機能が深い日の光が届かない地上のどの高さの山頂よりも深い海の底でも、不自由なく苦しくもなく潰される心配もなく佇む。
足元はきめ細かい砂…正確にはサンゴの死骸が細かく粒子状になって降り積もった美しい静かな場所だ。
「こんなに何もない処にアクアライト・ホーリースライムは居るのか…」
「いいえ……」
え?
「いいえ、ここにはアクアライト・ホーリースライムは存在していませんよシェル様」
オレ達を案内してくれたクラーケンのウズシオは軟体の透ける身体を発光させながらオレ達を開放する。
しかし、伝えられた内容は当初の約束の場所では無いようだ。
「シェル様……あなたは我が主リュミエル様と最後に愛を分かち合い、互いの想いを交換し理想に共感し袂を分けても共にあるべきだと語り合ったのではなかったのですか……?なのに、あなたは生き残り、我が主はアルヴァの手に掛かりすべての想いを否定されてこの世を去りました……一瞬でリュミエル様に最も近しい立場に寄り添えたのに、助けることが出来なかった…」
ウズシオの躰が怒りの赤に光る。深海の地底の周囲に何も見えない闇の中で彼女の烈情だけが光を灯していた。
「私には、主君の仇を取る資格があるのではないでしょうか……?!」
ココは普通の人なら水圧で圧死する尋常ならざる世界。オレも雫も非武装だ。
ここへ来て、正直こうした試練が待ち受けている…とは、考えてはいなかった。
だが、予想していなかったわけではない。
「ウズシオ…君の気持ちには同情するが、黙って応じるつもりは無いよ…」
ウズシオの躰が怒りの炎を帯びた赤から、動揺のムラサキに変わり、それから橙に変わる。
動揺を隠し、更なる怒りがオレと雫を照らす。
「ここは私のフィールドですよ?あの忌々しい火力のドラゴンもココには居ません。鋭い剣術を使う水軍の将も居ません…正直付いてくると聞いて、無事にココまで辿り着けられるかも疑いましたが、流石にホーリースライムの契約者ですね……それでも、私の方が優位だという事を理解されていますか?」
漆黒の闇に輝くネオンの様な光彩。全身をどんよりと締め付ける深海の圧力。
だが、クラーケンはその中を自在に回遊する。オレ達の身体を締め付ける深海の圧力の上を動き回る水流が翻弄する。嵐の中に身動きが取れず視界もほぼ無く翻弄される。最早深海そのモノが敵意を持って襲ってくるがごとくである。
触手が流れで翻弄されるオレと雫に向けられて襲い掛かる。耳が感じる音ではない、骨が軋む骨伝導でその音が、うねりが身体に感じられる。雫とも離れてしまう。
ココで慌ててもどうにもならない…オレは……
抵抗をやめた
身体を翻弄するクラーケンの動きで起きる水流に逆らわず、彼女の触手による攻撃に逆らわず巻き付くに任せてその中心へ引き寄せられる。
「このまま取り込んで食べてしまえば私の勝ちですね」
オレの身体はウズシオの躰の中心へ運ばれる。
オレは、彼女がオレからリュミエルの匂いがすると抱きついて来た時に、彼女の雌としての機能がどこにあるのか把握していた。
「んはぅ!!」巨大に膨れ上がったクラーケンの中心で、その弱点を巻き込まれながらも正確にたどり着くためには、外側からの雫の誘導も必要であった。オレ達は物理的には分断されていたが、マナでの繋がりを断たれたわけではなかった。
「そのままタダで食べられてやる訳にはいかないんだ…」
「こんなこと…」
オレは彼女の巨大な体の中で、女として大切な部分に接触して意識の共有を図る。
外からは雫がマナを通じて共感する。
「……!………?!」
オレがリュミエラの深層意識で共有された思い出を彼女の意識にリンクして流し込む。
「ひ、姫様!……あぁ」
しばらくするとオレの前に穏やかなライトブルーの発光をするクラーケンのウズシオが人型になって漂っていた。
「シェル様が共有いただいたリュミエラ様の人生の悲哀と覚悟と最期を確かに受け取りました」
ウズシオは人型になった状態で泣いているような顔をするが、涙は深海の底で流れているのかどうかは分からなかったが、表情が雄弁に語っていた。
「シェル様は肉体の咬合で、快楽の先に相手を洗脳支配して従わせるのではなく、受け入れて理解して共感して共に歩む覚悟を見せて従わせるのではなく共に道を歩まれることを示されていたのですね…」
「オレの願いなんて小さなものさ…」
「いいえ、私が一番欲しかったものをお持ちです…私の負けでございます。今度こそご案内いたします…」
彼女自身が光り輝く中で全身が重い海底の中をしばらく進む。
海溝の底の競り立つ長大な崖の割れ目の奥に光が見えてくる。水の底の深い青の美しく柔らかく照らす光が漏れる洞窟。
その中にその本体は漂っていた。
「これが…アクアライト・ホーリースライム……雫?」
「ついに悲願のホーリースライムの統合がこれで成される……汝、シェル…我が主よ…」
雫はゆっくりとそこに至り、手をかざす。
彼女とアクアライトとの接触が行われ、深海の奥底の暗闇を僅かに照らす周囲を強大な光が包み込む。
「これで、すべてのホーリースライムがシェルの盟約の元、統合されることとなった」
「何か変わったという印象無いけど?」
「物理的なホーリースライムの統合は少し時間がかかるだろう……そこでの汝シェル、お主の選択を我は効かねばラナイ」
「まあ、そういう事はせめて空気を普通に吸えるところにに帰ってからにしようか」
「シェル様なら、皆が望む世界を再定義してくださりましょう…このウズシオ感銘を受けました」
「こそばゆいから、誉め言葉はいらないよ…それより水面までの案内を頼むよ」
オレ達はその場を後にして水面に上がっていった。
戻ったら、オレは…
足元はきめ細かい砂…正確にはサンゴの死骸が細かく粒子状になって降り積もった美しい静かな場所だ。
「こんなに何もない処にアクアライト・ホーリースライムは居るのか…」
「いいえ……」
え?
「いいえ、ここにはアクアライト・ホーリースライムは存在していませんよシェル様」
オレ達を案内してくれたクラーケンのウズシオは軟体の透ける身体を発光させながらオレ達を開放する。
しかし、伝えられた内容は当初の約束の場所では無いようだ。
「シェル様……あなたは我が主リュミエル様と最後に愛を分かち合い、互いの想いを交換し理想に共感し袂を分けても共にあるべきだと語り合ったのではなかったのですか……?なのに、あなたは生き残り、我が主はアルヴァの手に掛かりすべての想いを否定されてこの世を去りました……一瞬でリュミエル様に最も近しい立場に寄り添えたのに、助けることが出来なかった…」
ウズシオの躰が怒りの赤に光る。深海の地底の周囲に何も見えない闇の中で彼女の烈情だけが光を灯していた。
「私には、主君の仇を取る資格があるのではないでしょうか……?!」
ココは普通の人なら水圧で圧死する尋常ならざる世界。オレも雫も非武装だ。
ここへ来て、正直こうした試練が待ち受けている…とは、考えてはいなかった。
だが、予想していなかったわけではない。
「ウズシオ…君の気持ちには同情するが、黙って応じるつもりは無いよ…」
ウズシオの躰が怒りの炎を帯びた赤から、動揺のムラサキに変わり、それから橙に変わる。
動揺を隠し、更なる怒りがオレと雫を照らす。
「ここは私のフィールドですよ?あの忌々しい火力のドラゴンもココには居ません。鋭い剣術を使う水軍の将も居ません…正直付いてくると聞いて、無事にココまで辿り着けられるかも疑いましたが、流石にホーリースライムの契約者ですね……それでも、私の方が優位だという事を理解されていますか?」
漆黒の闇に輝くネオンの様な光彩。全身をどんよりと締め付ける深海の圧力。
だが、クラーケンはその中を自在に回遊する。オレ達の身体を締め付ける深海の圧力の上を動き回る水流が翻弄する。嵐の中に身動きが取れず視界もほぼ無く翻弄される。最早深海そのモノが敵意を持って襲ってくるがごとくである。
触手が流れで翻弄されるオレと雫に向けられて襲い掛かる。耳が感じる音ではない、骨が軋む骨伝導でその音が、うねりが身体に感じられる。雫とも離れてしまう。
ココで慌ててもどうにもならない…オレは……
抵抗をやめた
身体を翻弄するクラーケンの動きで起きる水流に逆らわず、彼女の触手による攻撃に逆らわず巻き付くに任せてその中心へ引き寄せられる。
「このまま取り込んで食べてしまえば私の勝ちですね」
オレの身体はウズシオの躰の中心へ運ばれる。
オレは、彼女がオレからリュミエルの匂いがすると抱きついて来た時に、彼女の雌としての機能がどこにあるのか把握していた。
「んはぅ!!」巨大に膨れ上がったクラーケンの中心で、その弱点を巻き込まれながらも正確にたどり着くためには、外側からの雫の誘導も必要であった。オレ達は物理的には分断されていたが、マナでの繋がりを断たれたわけではなかった。
「そのままタダで食べられてやる訳にはいかないんだ…」
「こんなこと…」
オレは彼女の巨大な体の中で、女として大切な部分に接触して意識の共有を図る。
外からは雫がマナを通じて共感する。
「……!………?!」
オレがリュミエラの深層意識で共有された思い出を彼女の意識にリンクして流し込む。
「ひ、姫様!……あぁ」
しばらくするとオレの前に穏やかなライトブルーの発光をするクラーケンのウズシオが人型になって漂っていた。
「シェル様が共有いただいたリュミエラ様の人生の悲哀と覚悟と最期を確かに受け取りました」
ウズシオは人型になった状態で泣いているような顔をするが、涙は深海の底で流れているのかどうかは分からなかったが、表情が雄弁に語っていた。
「シェル様は肉体の咬合で、快楽の先に相手を洗脳支配して従わせるのではなく、受け入れて理解して共感して共に歩む覚悟を見せて従わせるのではなく共に道を歩まれることを示されていたのですね…」
「オレの願いなんて小さなものさ…」
「いいえ、私が一番欲しかったものをお持ちです…私の負けでございます。今度こそご案内いたします…」
彼女自身が光り輝く中で全身が重い海底の中をしばらく進む。
海溝の底の競り立つ長大な崖の割れ目の奥に光が見えてくる。水の底の深い青の美しく柔らかく照らす光が漏れる洞窟。
その中にその本体は漂っていた。
「これが…アクアライト・ホーリースライム……雫?」
「ついに悲願のホーリースライムの統合がこれで成される……汝、シェル…我が主よ…」
雫はゆっくりとそこに至り、手をかざす。
彼女とアクアライトとの接触が行われ、深海の奥底の暗闇を僅かに照らす周囲を強大な光が包み込む。
「これで、すべてのホーリースライムがシェルの盟約の元、統合されることとなった」
「何か変わったという印象無いけど?」
「物理的なホーリースライムの統合は少し時間がかかるだろう……そこでの汝シェル、お主の選択を我は効かねばラナイ」
「まあ、そういう事はせめて空気を普通に吸えるところにに帰ってからにしようか」
「シェル様なら、皆が望む世界を再定義してくださりましょう…このウズシオ感銘を受けました」
「こそばゆいから、誉め言葉はいらないよ…それより水面までの案内を頼むよ」
オレ達はその場を後にして水面に上がっていった。
戻ったら、オレは…
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