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終章完結編
アクアライト・ホーリースライム
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「この船、自立航行できる機関積んどるとか…えらいこっちゃダナ!! マジでヤバかよ! アタシらみたいなのにゃ勿体なかっちゃけど、すげぇわ! なぁ…触らせてくれんね?」
改めてバラクーダ号に乗船したお銀は、前回襲撃してきたときには、甲板で暴れまわってオレを殺そうとしていたんだけど…改めて船の性能に大はしゃぎである。現金な奴…
ウズシオはクラーケンとしての本体に戻っており、船の先頭に立って海域を案内してくれている。
巨大なイカの化け物が蒸気機関の戦艦を引き連れている絵面は中々複雑な気分だ。
やがて船を先導していたクラーケンのウズシオが洋上の何もない地点で留まる。
器用にバラクーダ号の甲板によじ登り人型に変わる。
「コノ場所の海底奥深くにアクアライト・ホーリースライムの本体にアクセスできる場所がアリマス」
っても、こんな何もない場所で海底に潜れと言われも…
「オレ達はその言われる『海底奥底』には素では到達できないのだが…」
困り果てた俺を見ていた雫がスレイ棒を取り出しながらオレのところに来る。
「汝、これを使う時だ」
「え?ちょ…どういう意味だ」
差し出されたオレのアレの形をした半透明なゼリーの固まったようなソレを渡されても戸惑うばかりだ。
「これは我の本体の一部なのだ…つまり、こう使う」
徐に雫が首にそれを巻き付けると、輪が綴じ、その後何かをつぶやくと彼女の頭部を丸く囲うように薄く広がりドーム状になって上で塞がる。まさに金魚鉢被ったような水中用の密閉ヘルメットになった。
えええ…それだと酸素ボンベとか無いとあっという間に苦しくなりそうだし、深海の水圧で潰されないか?
…と疑問に思っていると、そのヘルメット状のスレイ棒だったものが雫の顔に密着し、彼女と一体化する。
「えっと…雫さん?どうなってます?」
「……」雫は何も語らず、ゲロっと口からスライムを吐き出し、ソレは再びスレイ棒に戻る。
「一定の水圧になると空気と共に体内に入り、肺を満たして水圧に対抗しつつスライムが呼吸をサポートする空気が入っているとマズいが、液体になって体内を守るのだ」
「あーソレ知ってるオレ…新世紀…」雫の冷たい視線「すまん、理屈は理解した」
「水中デハ、私がお二人をご案内シマス」
「分かった。ここから飛び込むわけにはいかんので、お銀、小舟を出してサポートしてくれ」
「おう、わかった! 出番がなかかったら何しに来たんやろって思っとったとこやったばい!」
脱出用の小舟を下ろし、お銀が操船しオレと雫が乗り込む。
ウズシオはクラーケンに戻り更なる詳細地点へ案内する。
「デハココから、私が直接ご案内イタシマスお掴まりクダサイ」
クラーケンの触手に掴まれてオレと雫はスレイ棒のヘルメットを被り、そして水中に案内される。
直ぐにヘルメット状になっていたスレイ棒がオレの顔に張り付き、鼻と口から体内に侵入してくる。
思った以上に気持ち悪いし、ゲロ吐きそうなくらい苦しい…が、肺がスライムに満たされると、何も苦しくなくなり、身体も楽になった。
海の中は静寂が支配すると思っていたが、スライムが満たした耳には様々な音が流れてくる。
海の潮の流れの力強い奔流の音、魚たちの声サンゴや海草の靡く音…海の上の波の音や風が周りに纏わりつくような感覚よりもずっと力強く体を包む感触……初めて感じるその刺激に心がざわつく。何だろう?期待感、不安感…
周囲は深く沈むにつれて更に締め付けるような感触を感じるが、潰されるような恐怖感はない。
日の光は徐々にその効果を失い、闇が包み込む。だが、オレ達を掴んで導くクラーケンの躰が何と美しくネオンサインの様な連続した七色の光を発して明かりを発し、周囲を照らす。美しい…
『すごいな…ウズシオ』
「普通にしゃべってもらって構いません」あ、水中だとウズシオの声が聞き取りやすい…不思議…ではないのか。
「どのくらい未だ潜るんだ?」
「あと半日もすれば着くと思います」
は、半日?!どんだけ深いのだ…
「ウズシオ…お前はどの程度リュミエラのことを知り、どのくらいの間仕えていたんだ?」
「期間から先にお伝えすると、私はずっとお仕えしておりました…我ら海洋の民は、記憶を世代で受け継ぐことが可能なのです」
「え?それは凄い話だね…じゃあ、何が起きていたのかも…」
「はい、すべて…もちろん、お仕えしているだけでリュミエラ様の考えなどは私のような者ではそれを推して計ることも叶いません…あくまで私が見聞きしたことでしか分かりません」
「そうか…彼女は全てを救たかったのだがな…その気持ちと決意と過去を封印せずには居られなかった」
ウズシオの躰の光方が変わる…彼女の感情が言葉よりも分かりやすくそこには表れている気がする。
「姫様はそれはお優しい方でしたから…」
「彼女は母を失いその肉をエルフに喰われたと言っていた」強烈なビジュアルでオレの心に鋭い傷跡を残していた。
「はい…エルフ達はより自分たちが生命体としての究極を目指していた節があります…」
「だが、実際会ったエルフはむしろ植物生命体としての機能に傾倒していたが…?」
「長い年月でありましたから…リュミエラ姫様は、アクアライト・ホーリースライムに出会わなければ、もっと早くに壊れて亡くなってしまっていたことでしょう…」
「お前自身はどういう心境で仕えていたんだ?」
「私ですか?……私は…私も心を殺してお仕えしていたと言えるでしょう…リュミエラ様が心を封印してあの男に屈服し従うと決められた時から…」
光が寒色に染まる。青と緑…そして暗い紫色に彼女の躰が瞬く。
「実際、サンライト・ホーリースライムのアルヴァ達との戦いで、基本的には海上の戦いでは我らが圧倒的優位でした。ですが、アルヴァだけは別格でした。アレは水上、水中においても最悪でした……結果我らを救うために姫様は頭を垂れて奴に屈服したのです…あれだけの地獄と悪夢の中で苦しんだ姫様が…」
オレは黙って聞いていた。返す言葉が思いつかなかった……そうやって漆黒の闇に体を這う水圧の感触だけがオレ達を更なる深淵に導いているという事以外の認識が無いまま奥底の海底に着く。
改めてバラクーダ号に乗船したお銀は、前回襲撃してきたときには、甲板で暴れまわってオレを殺そうとしていたんだけど…改めて船の性能に大はしゃぎである。現金な奴…
ウズシオはクラーケンとしての本体に戻っており、船の先頭に立って海域を案内してくれている。
巨大なイカの化け物が蒸気機関の戦艦を引き連れている絵面は中々複雑な気分だ。
やがて船を先導していたクラーケンのウズシオが洋上の何もない地点で留まる。
器用にバラクーダ号の甲板によじ登り人型に変わる。
「コノ場所の海底奥深くにアクアライト・ホーリースライムの本体にアクセスできる場所がアリマス」
っても、こんな何もない場所で海底に潜れと言われも…
「オレ達はその言われる『海底奥底』には素では到達できないのだが…」
困り果てた俺を見ていた雫がスレイ棒を取り出しながらオレのところに来る。
「汝、これを使う時だ」
「え?ちょ…どういう意味だ」
差し出されたオレのアレの形をした半透明なゼリーの固まったようなソレを渡されても戸惑うばかりだ。
「これは我の本体の一部なのだ…つまり、こう使う」
徐に雫が首にそれを巻き付けると、輪が綴じ、その後何かをつぶやくと彼女の頭部を丸く囲うように薄く広がりドーム状になって上で塞がる。まさに金魚鉢被ったような水中用の密閉ヘルメットになった。
えええ…それだと酸素ボンベとか無いとあっという間に苦しくなりそうだし、深海の水圧で潰されないか?
…と疑問に思っていると、そのヘルメット状のスレイ棒だったものが雫の顔に密着し、彼女と一体化する。
「えっと…雫さん?どうなってます?」
「……」雫は何も語らず、ゲロっと口からスライムを吐き出し、ソレは再びスレイ棒に戻る。
「一定の水圧になると空気と共に体内に入り、肺を満たして水圧に対抗しつつスライムが呼吸をサポートする空気が入っているとマズいが、液体になって体内を守るのだ」
「あーソレ知ってるオレ…新世紀…」雫の冷たい視線「すまん、理屈は理解した」
「水中デハ、私がお二人をご案内シマス」
「分かった。ここから飛び込むわけにはいかんので、お銀、小舟を出してサポートしてくれ」
「おう、わかった! 出番がなかかったら何しに来たんやろって思っとったとこやったばい!」
脱出用の小舟を下ろし、お銀が操船しオレと雫が乗り込む。
ウズシオはクラーケンに戻り更なる詳細地点へ案内する。
「デハココから、私が直接ご案内イタシマスお掴まりクダサイ」
クラーケンの触手に掴まれてオレと雫はスレイ棒のヘルメットを被り、そして水中に案内される。
直ぐにヘルメット状になっていたスレイ棒がオレの顔に張り付き、鼻と口から体内に侵入してくる。
思った以上に気持ち悪いし、ゲロ吐きそうなくらい苦しい…が、肺がスライムに満たされると、何も苦しくなくなり、身体も楽になった。
海の中は静寂が支配すると思っていたが、スライムが満たした耳には様々な音が流れてくる。
海の潮の流れの力強い奔流の音、魚たちの声サンゴや海草の靡く音…海の上の波の音や風が周りに纏わりつくような感覚よりもずっと力強く体を包む感触……初めて感じるその刺激に心がざわつく。何だろう?期待感、不安感…
周囲は深く沈むにつれて更に締め付けるような感触を感じるが、潰されるような恐怖感はない。
日の光は徐々にその効果を失い、闇が包み込む。だが、オレ達を掴んで導くクラーケンの躰が何と美しくネオンサインの様な連続した七色の光を発して明かりを発し、周囲を照らす。美しい…
『すごいな…ウズシオ』
「普通にしゃべってもらって構いません」あ、水中だとウズシオの声が聞き取りやすい…不思議…ではないのか。
「どのくらい未だ潜るんだ?」
「あと半日もすれば着くと思います」
は、半日?!どんだけ深いのだ…
「ウズシオ…お前はどの程度リュミエラのことを知り、どのくらいの間仕えていたんだ?」
「期間から先にお伝えすると、私はずっとお仕えしておりました…我ら海洋の民は、記憶を世代で受け継ぐことが可能なのです」
「え?それは凄い話だね…じゃあ、何が起きていたのかも…」
「はい、すべて…もちろん、お仕えしているだけでリュミエラ様の考えなどは私のような者ではそれを推して計ることも叶いません…あくまで私が見聞きしたことでしか分かりません」
「そうか…彼女は全てを救たかったのだがな…その気持ちと決意と過去を封印せずには居られなかった」
ウズシオの躰の光方が変わる…彼女の感情が言葉よりも分かりやすくそこには表れている気がする。
「姫様はそれはお優しい方でしたから…」
「彼女は母を失いその肉をエルフに喰われたと言っていた」強烈なビジュアルでオレの心に鋭い傷跡を残していた。
「はい…エルフ達はより自分たちが生命体としての究極を目指していた節があります…」
「だが、実際会ったエルフはむしろ植物生命体としての機能に傾倒していたが…?」
「長い年月でありましたから…リュミエラ姫様は、アクアライト・ホーリースライムに出会わなければ、もっと早くに壊れて亡くなってしまっていたことでしょう…」
「お前自身はどういう心境で仕えていたんだ?」
「私ですか?……私は…私も心を殺してお仕えしていたと言えるでしょう…リュミエラ様が心を封印してあの男に屈服し従うと決められた時から…」
光が寒色に染まる。青と緑…そして暗い紫色に彼女の躰が瞬く。
「実際、サンライト・ホーリースライムのアルヴァ達との戦いで、基本的には海上の戦いでは我らが圧倒的優位でした。ですが、アルヴァだけは別格でした。アレは水上、水中においても最悪でした……結果我らを救うために姫様は頭を垂れて奴に屈服したのです…あれだけの地獄と悪夢の中で苦しんだ姫様が…」
オレは黙って聞いていた。返す言葉が思いつかなかった……そうやって漆黒の闇に体を這う水圧の感触だけがオレ達を更なる深淵に導いているという事以外の認識が無いまま奥底の海底に着く。
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