愛玩洞窟〜汝洞窟を愛せよ、奥に深く深淵に

黒船雷光

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終章完結編

神の黄昏

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「貴方はこの世の中の叡智を統べる神にも等しい…いえ、神と呼ばれる存在になりました」

 目の前には雫が立っている。
 たった今彼女の中で果てた…その直後だ。
 その記憶を証明するつもりなのか本当にそうなのかも怪しいが、彼女の股間からは今まさに抜いた直後の如くその秘境の谷間の奥の蜜壺がゆっくりと閉じて行きながら、逆流して来る大量の愛液濁液体液が混ざり合った愛欲の成れの果てを吐き出している。

 だが、口から発せられた言葉、喋り方は雫とは違う。

「……貴女は?」

 雫の形をした美しい女性は何の動揺も無くニッコリと笑う。

 屈託のない『天使の笑顔』とはこう言うことを言うのだろう。

「私はサマエル。四つの光を束ね、世界の行く末を見守る者……」

「つまり、統合されたホーリースライムの精霊みたいな感じかな?」

「その解釈で合っています。シェル・ヴォス・甲斐隼人」
「全知全能って言いたい感じか…何の用だ?」

「私に心理戦は無意味だ。お前は私がココに立っている意味を既に理解している」

 そりゃそうだ…
「それでも言葉で確認を取らないとな。どんなに信頼関係があっても、いや、だからこそ互いの意思は確認しないとな」

「殊勝な心掛けですね。前世でのやさぐれだ貴方とは心構えも変わったと言うことですね」

「そんな事わざわざ指摘したいのか?」
「ふふ…そうですね。雫と共に過ごした貴方の変化は完璧では無いにしても、理想的だったと言えましょう」

「雫はそこに居るのか?」
 彼女を指差す。
 無意識にその指先は彼女の整った柔らかそうな胸…では無く、その奥。

「私は雫でもあります」
 股間から流れ出ている液を指ですくうと、糸を引くその指を舌を出して受け止めそのまま舐める。

「この身体は貴方が散々欲望と慈愛と救済を求めて何度も抱いたモノで間違いありません」

 人間つくづく外見だけで無く中身も大事って思うモノなのだと彼女を見て思う。

「ソレがオレの望んでいるモノでは無い事はわかっているんだよな?」

「人はそれが叶うこと無くとも、神のごとき力を欲する生き物であろう?」

 質問に質問を被せて来やがった…コレは良くない傾向だ…
 雫は従うだけでオレに命令や強要をして来なかった…それはとても心地よく、オレはそれに甘えてきた。
 だが、彼女に尽くしてもらう中で、オレは彼女に寄り添いたいと思っていた。

「それをその姿で言って欲しくなかったかな…」
「汝がそう思うなら、話し方を変えよう」
「ソレもムカツクよ…いいよややこしいから」

「雫は端末に過ぎない…それはシェルよ、貴方も分かっているであろう…そこに独立した人格は無い。貴方とて、この世界に転生してきてから大いに変化したではないか…雫は全てのスライムの精霊としての役割を担ってお前の前に居る。背負うものが変わったのだ……変化もします」

「……」オレは言葉に詰まる。そうじゃない!と心では分かっている。
 そう、キスの直後に同じように俺の前に現れた雫は未だ『雫』だったと思う。
 だが、その時リュミエラ、アルヴァ、ルディアナが統合された後だ。

「シェル・ヴォス。私を受け入れて、私の中に全てを吐き出したであろう…お前はホーリースライムの全てを手に入れた…神にも等しい力だ」


「神ね……くっくっく…この湧き上がる力!全てを理解した無尽蔵の世界の知識とそれを統べる全能!…って全くならないんだけど」

 ちょっとおどけるオレを見て、サマエルは雫の顔で笑う。
「では…その使命を受け止めるということで良いのだな?」

「……その力を使って、オレは」

「何だと?…それを本気で臨んでいるのか?」
「全知全能なんだろ?」

「いいか、よく考えるのだ。世界を書き換える力だぞ…これまで以上に好きに女を抱ける。無限の敬愛を享受し好きに変革し、自由に移動しあらゆる甘美を受け取り、どんなモノでも傅くぞ」

「その結果で思い上がったアルヴァがどうなったかを見たよ…奴は最後は自分を愛してくれる相手を探して、それさえも自分の正義のために斬り捨てたぞ…エルフは長い時を薄く引き伸ばして堕落していたしね…」

 俺は一歩踏み出す。

「オレはオレらしく生きるために色々模索はしてきたつもりだよ。この世界はそりゃ酷い面も卓さあるしね…オレの薄い正義感なんかじゃどうにもならないことも知っている…でもだからこそ、自分の手で届く範囲だけでもってあがくことが必要なんじゃないかって思うんだ」

「……後悔をしますよ」

「そうかも。でもサマエル…貴女は先ほど挙げた利点で言及避けた個所あるよね?」

「なんだと?」

「肉体の繋がりによる快楽の先は何だよ?…子をなし、次世代への継承だよ…不死なら愛も子も必要ない」
 ピクリとサマエルが反応する。

「オレはね…自分が偉く成りたい人じゃなかったってことかな。誰かのために頑張っている自分が好きだったんだ」

 さらに前に歩み出す。
 サマエルは信じられないという顔をして一歩下がる。

「……これまで何度も誓約者を生み出してきたが、それを望むものは居なかった。だが、お前にはそれを選択する資格がある……分かった。それを叶よう…」

 気づくと、オレは雫と重なったまま、ベッドに倒れていた。
 体が重い…ゆっくりと雫の身体から離れる。
「雫?」
 雫はゆっくりと目を開く。その眼には涙が浮かんでいる。
「大丈夫か?」
「汝は我に何も聞かぬのか?」

「愛している」

 雫は目を見開いて驚き、浮かんでいた涙が溢れ出す。美しい顔が歪むが、それを醜いとは一切思わない。
「あ…愛している…あい…愛している!……ああ、その言葉を我が口から語れる日が来るとは…」

「雫…君は人間になれたんだ…おそらく、多分」
「そうだ。シェル…我が主にて愛すべき人…この気持ちを……縛るものは何もない」
 グズグズ泣いている雫を起こす。
 その涙をすくってあげる。
「ねぇ…もう一度言って」
 はにかむ雫は可愛い。
「愛している」
「私も…愛しています」

 フフッと笑う雫は超可愛い。
 そのまま目を瞑る雫。オレは優しくその唇に、何度も何度も重ねてきたが、始めてみたいな気持ちで唇を重ねる。

「おーい!シェル様!!もうそろそろいいか?!」
 船長室の扉をドカンと開いてブリギッタが入ってくる。

「……?!」入ってきてブリギッタは驚いた顔をする。
「どうした?」
「い、いえ…しずくさんはそんな顔で笑うのを初めて見ましたので…」

「そうかしら?」
 軽やかに笑う雫はそれまで背負っていた全ての呪縛が消えている。

 ブリギッタは、詳細など知らないだろう…それでも、雫が解放されたことを察したようだ。
 そもそも、オレ以外の他人にほぼ口を利かない雫が返答したことに十分驚いている。
「その……シェル様…どうなったと理解すればよいのですか?」

「まあ…」
 と言いつつ、改めて自分の身体を確認する。
 特に違和感はない。

 違和感がない?…マナも感じる。オレはサマエルとの交渉で臨んだことは【雫を人としての解放】だった。
 それだけを望んだのだ。

 当然これまで絵たちからは失うことも覚悟のうえであった。だが、あの全知全能の女神らしきスライムの統合思念体は粋な計らいをしてくれたようだ。

「我はなんだか不思議です…この世界がこんなに広く感じるなんて」
 雫はコロコロと笑う。知覚が狭まり逆に孤立感が深まって世界を広く感じるのかもしれない。

「ブリギッタ…雫は宿命から解放されてオレの嫁になった…いや、元々嫁だったけど今度こそだ」
「そう…なんですね。いつもそばに居ながら魂があるのかしらと…余計なお世話ながら思っていましたが、今はシェル様のいい人であることは理解できます」

「ところで…何か用事があったんだよな?」
「あ、そうなんですよシェル様。なんかもうこのままエルダリアに帰るって話になってきまして…」
「あ?…お銀たちは?」
「当然随行することになると思います」

「……まあ、いいんじゃね?」
「良いですか?」ブリギッタはちょっと嬉しそうだ。

「では、すぐにでも出発しますね!……あ、すいません続きなさってください!」
 豪快に出て行ってしまった。

 蒸気機関の起動音が全体に響く。力強く船は動き始める。
 エルダリアに向けて最後の航海になるだろう。

 オレは今一度雫と向き合う。
 ゆっくりと優しく互いを求めあう。

 「シェル…汝を強く感じます…」
「オレも君の心を感じるよ」
「やだもう…」…可愛い。

 船は進み、エルダリアの地へ向かう。
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