愛に誓う王国

猫宮乾

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【七】夜と朝

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 ――夜が来た。

 ルファは寝台の上で、両腕で体を抱いていた。ガクガクと全身が震えているのだが、体感としては酷く熱い。そして何より、体の芯がズクンと疼くのだ。

 昨日経験した、初めての行為の事を思い出す。兎に角熱かった。全身が蕩けそうだった。そしてその熱が、欲しい。そのあさましい思いに、ギュッと目を閉じながら、ルファは堪える。

「ルファ様?」

 震えているルファに気づいて、ヴェルディスが声をかけた。ヴェルディスは、毛布の上から、そっとルファの肩に触れた。その瞬間、ルファの全身に稲妻のような快感が走った。

「あ、あ、触らないで」
「どうされたのですか?」
「……熱いんだよ。今日も、体が……熱くて……」

 その言葉にヴェルディスが息を呑んだ。それからじっとルファの顔を覗き込む。

「私では、閨のお役目、不足ですか?」
「そんな、ヴェルは仕事だって分かってるけど――」
「言い換える。俺に抱かれるのは嫌か?」
「!」
「俺はお前が欲しい」

 その声を聞いた瞬間、ルファの意識が曖昧になった。求めているのは、同じだからだ。例えば、男ならば誰でも良いと言うのであれば、それこそメルクだって良いのであろうが、ルファはヴェルディスの事以外考えられない。

「して、ぁ……ヴェル……」

 半身を起こし、ルファはヴェルディスに手を伸ばした。するとその腕の間に手を通し、片腕でヴェルディスがルファを抱き寄せた。そして唇を近づける。触れ合うギリギリの距離でヴェルディスが聞く。

「キスをしても良いですか?」
「……」
「言い換える。キスを、するぞ」
「ん」

 ヴェルディスが直後、荒々しく、ルファの唇を貪った。唇を舐め、僅かに開いたその合間から、舌を挿入し、歯列をなぞっては、ルファの舌を追い詰める。そうされていると、ルファの体はフワフワとしてきた。濃厚なキスに、酸素不足になって、ルファはヴェルディスの胸元に倒れこむ。そんなルファの耳の後ろを指先でなぞりながら、ヴェルディスが微苦笑した。

「このままだと、俺が、俺こそが、ルファ様をどこにも帰してしまいたくなくなるな。ずっと俺の元に置いておきたくなる。不敬である事も叶わぬ望みである事も知ってはいるが」

 そう言うとヴェルディスが、引きずり出したルファの舌を甘く噛んだ。ピクンとルファの肩が跳ねる。

「俺だけのものにしてしまいたくなる」
「ヴェル……」
「俺の卵だけを孕み続けて欲しいと願ってしまう。実際に孕むのが召喚獣だとしてもな。体を介する事実は変わらない」
「僕も……ヴェルだけが良い……ヴェルの事が好き」
「! ――本音か?」
「うん。なんでなのか分からないけど、ヴェルが好き」

 それは、あるいは幼き頃から、ヴェルディスだけがヒーローだったからなのかもしれない。また、あるいは、初めて体を重ねたからなのかも知れない。いいや、ここへとヴェルディスが訪れてから、ずっと感じていた人柄が一番の理由だろうか。ヴェルディスは優しい。

 だが、理由など問題では無かった。今この時、ルファはただ一人、ヴェルディスだけを欲していた。ヴェルの事しか考えられない。ヴェルの事が大好きだ。それが、ルファの正直な気持ちだった。

「俺もお前が好きだ」
「ヴェル……」
「ルファが好きだ」

 敬語を口にする余裕が消失したヴェルディスは、性急にルファの服をはだけた。そして右足を持ち上げると、その肌を舐めた。ルファの白く華奢な太ももを舌先でなぞっては、その舌を陰茎の根元まで這わせた。

「っ」

 ルファが息を詰める。それを見て喉で笑ってから、ヴェルディスは、ルファの雁首までを端正な唇で含んだ。そして片手で擦りながら、鈴口をチロチロと舌先で刺激する。

「ぁ、ぁア! ああ!」

 ねっとりとしゃぶり、筋を舐め上げ、唇に力を込めて雁首を扱く。ヴェルディスにそうされると、ルファの腰から力が抜けていった。しかし熱いのは、中だ。内部にルファは、ヴェルディスの剛直を求めていた。

「ヴェル、あ、挿れて!」
「――ああ」

 口を離すと、ヴェルディスが二本の指をしゃぶってから、ルファの菊門に突き立てた。一気に押し広げられる感触に、ルファがギュッと目を閉じる。根元まで挿ってきた指の存在感にルファは震えた。それから、ヴェルディスが指先をバラバラに動かした。

「あ、あ、あ」

 感じる場所を指が掠める。全身が熱い。必死で呼吸をしながら、ルファは喘いだ。

「挿れるぞ」

 指を引き抜き、ヴェルディスが陰茎をルファの菊門にあてがう。それからめりこむように、巨大な先端が挿ってきた。その圧倒的な質量と熱、硬度に、ルファは背をしならせる。

「あああああ!」
「きついな」
「ダメ、あ、熱い!!」
「繋がっている証だ。俺の熱を、覚えておけ」
「あ、あ、ぁ……ぁぁ……ひゃ!」

 根元まで入ってきた怒張に、ギュっと目を閉じてルファが堪える。その眦からは涙が溢れている。ルファの右の太ももを持ち上げて、斜めにヴェルディスが貫いた。激しい抽挿に、ルファは息が出来無くなりそうになる。

「あ、あ、あ」
「ココが好きだろう?」
「気持ち良すぎておかしくなる、やぁ、ああああ!」

 重点的に感じる場所を穿たれて、ボロボロとルファは涙を零した。

「出すぞ」
「ンああああ!」

 一際強く打ち付け、ヴェルディスが放った時、ルファもまた射精した。肩で息をしていると、ヴェルディスがズルリと陰茎を引き抜く。そしてルファの隣に横たわった。荒い吐息を落ち着けながら、涙で滲んだ瞳でルファがヴェルディスを見る。

「あ、ハ」
「大丈夫か?」
「う、うん」
「無理をさせたか?」
「平気だよ、ね、ねぇ」
「何だ?」
「――ヴェルも気持ち良かった?」
「俺は気持ち良かったが、俺、『も』? それはルファも良かったという意味か?」

 穏やかに笑ったヴェルディスを見て、羞恥に駆られ、ルファは何も言えなくなり、毛布に潜ったのだった。

 ――紛れもなく、絶対的に。

 どんどんヴェルディスの事が大切になっていく。
 ルファはそう自覚していた。

 そんなヴェルディスを、もしかしたら勘違いかも知れないままで、いつまでもこのような田舎においておくわけにはいかないだろう……。

 そう考えながら、ルファは微睡んだ。すると、金色の紋章が広がっていき、『夢』を視た。

「よくやったな、ルファ」
「え、鳥?」
「鳥ではない。不死鳥のベリアルだ」
「……ベリアル。よくやったって、何?」
「もう我は、卵を二つも宿し、産んだ。ルファのおかげである」
「え!?」
「卵は相思相愛でなければ産まれぬからな。ルファが、愛しい相手を見つけてくれた事、誇らしく思うぞ」
「……!! そ、それって、僕とヴェルの子供という事?」
「大局的には、そう言っても構わないであろうが、我の子だ。召喚獣である。人は男同士では子は成せぬであろうが」
「だ、だけど。え? 僕とヴェルは、相思相愛なの?」
「いかにも。卵は、愛がなければ生じない。その点、人間の子は、行為があれば生じる」

 その言葉を聞いた直後、ルファは目を覚ました。

 心臓がドクンドクンと煩かった。隣でヴェルは、ルファを抱きしめるようにして眠っている。その横顔を見て、ルファは微苦笑した。本当に相思相愛ならば、嬉しいと思ってしまった。だから寝ているヴェルに、隣から腕を回し、抱きついてみる。すると無意識だろうが、ヴェルディスの手がルファにも回った。抱き合う形となり、ヴェルディスの胸板に額を押し付けて、ルファは幸せに浸る。

「ん……ルファ、起きたのか」
「ごめん、起こした?」
「いいや。すぐに気配に気づけなかったのだから、俺が護衛失格だ」
「そんな事無いよ。僕、ヴェル以外が護衛なんて嫌だ」

 ギュッとルファが腕に力を込めると、ヴェルディスがルファの頭を撫でた。

「護衛の任を誰にも譲り渡すつもりはないが……そう言われて悪い気はしない」

 ヴェルディスはそう言うと、ルファの額にキスをした。ルファは瞬時に赤面する。

「ただな――この家では、守るの種類にも限りがある。ルファ様、どうか私目と共に王都へ」
「……ヴェル」
「逆に聞きたい。この村では辛い仕打ちを受けていたようだし、お世辞にも豊かな暮らしをしていたとは言えないだろう。なのに何故ここに、残ろうとするんだ?」
「僕は……自分が王族だとは信じられないし、母さんのお墓のそばにいたいから……それに、もし間違いだったら、戻ってきた時にはもうこの家はないかもしれないし」

 村の人達は、己がいなくなったら喜ぶだろうと、ルファは考えながら俯いた。都会には出ていけないが、村にも実際の所、明確な居場所は無いのだ。それでも暮らしていれば、村人達も追い出すまではしない。しかし家を一度離れたら、もう戻る事を村の者達は許してはくれないかもしれないと、ルファは思った。

「この家に警備をつけ、家を守らせる事は易い。お母様のお墓に関してもな。それらは約束しよう。王家の血筋に関しては、その真偽を明確にするために、王都へ行けば良い」
「――……僕はずるい人間だから、僕が王族じゃないと分かって、ヴェルがいなくなっちゃうのも嫌なんだ」

 それを聞くとヴェルディスが驚いた顔をした。それから破顔した。

「それは無い。ルファが王族であろうが無かろうが、俺はもう、お前の事しか考えられない。だから、今後の生涯を捧げる」
「え?」
「もしも王族だったのならば忠誠を。違ったのならば――この、愛を」

 優しく笑ってそう言うと、ヴェルディスが再びルファの額にキスをした。その温度と言葉に、ルファは泣きそうになった。純粋に嬉しかった。

「僕、王宮に行くよ」

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