8 / 13
【七】夜と朝
しおりを挟む――夜が来た。
ルファは寝台の上で、両腕で体を抱いていた。ガクガクと全身が震えているのだが、体感としては酷く熱い。そして何より、体の芯がズクンと疼くのだ。
昨日経験した、初めての行為の事を思い出す。兎に角熱かった。全身が蕩けそうだった。そしてその熱が、欲しい。そのあさましい思いに、ギュッと目を閉じながら、ルファは堪える。
「ルファ様?」
震えているルファに気づいて、ヴェルディスが声をかけた。ヴェルディスは、毛布の上から、そっとルファの肩に触れた。その瞬間、ルファの全身に稲妻のような快感が走った。
「あ、あ、触らないで」
「どうされたのですか?」
「……熱いんだよ。今日も、体が……熱くて……」
その言葉にヴェルディスが息を呑んだ。それからじっとルファの顔を覗き込む。
「私では、閨のお役目、不足ですか?」
「そんな、ヴェルは仕事だって分かってるけど――」
「言い換える。俺に抱かれるのは嫌か?」
「!」
「俺はお前が欲しい」
その声を聞いた瞬間、ルファの意識が曖昧になった。求めているのは、同じだからだ。例えば、男ならば誰でも良いと言うのであれば、それこそメルクだって良いのであろうが、ルファはヴェルディスの事以外考えられない。
「して、ぁ……ヴェル……」
半身を起こし、ルファはヴェルディスに手を伸ばした。するとその腕の間に手を通し、片腕でヴェルディスがルファを抱き寄せた。そして唇を近づける。触れ合うギリギリの距離でヴェルディスが聞く。
「キスをしても良いですか?」
「……」
「言い換える。キスを、するぞ」
「ん」
ヴェルディスが直後、荒々しく、ルファの唇を貪った。唇を舐め、僅かに開いたその合間から、舌を挿入し、歯列をなぞっては、ルファの舌を追い詰める。そうされていると、ルファの体はフワフワとしてきた。濃厚なキスに、酸素不足になって、ルファはヴェルディスの胸元に倒れこむ。そんなルファの耳の後ろを指先でなぞりながら、ヴェルディスが微苦笑した。
「このままだと、俺が、俺こそが、ルファ様をどこにも帰してしまいたくなくなるな。ずっと俺の元に置いておきたくなる。不敬である事も叶わぬ望みである事も知ってはいるが」
そう言うとヴェルディスが、引きずり出したルファの舌を甘く噛んだ。ピクンとルファの肩が跳ねる。
「俺だけのものにしてしまいたくなる」
「ヴェル……」
「俺の卵だけを孕み続けて欲しいと願ってしまう。実際に孕むのが召喚獣だとしてもな。体を介する事実は変わらない」
「僕も……ヴェルだけが良い……ヴェルの事が好き」
「! ――本音か?」
「うん。なんでなのか分からないけど、ヴェルが好き」
それは、あるいは幼き頃から、ヴェルディスだけがヒーローだったからなのかもしれない。また、あるいは、初めて体を重ねたからなのかも知れない。いいや、ここへとヴェルディスが訪れてから、ずっと感じていた人柄が一番の理由だろうか。ヴェルディスは優しい。
だが、理由など問題では無かった。今この時、ルファはただ一人、ヴェルディスだけを欲していた。ヴェルの事しか考えられない。ヴェルの事が大好きだ。それが、ルファの正直な気持ちだった。
「俺もお前が好きだ」
「ヴェル……」
「ルファが好きだ」
敬語を口にする余裕が消失したヴェルディスは、性急にルファの服をはだけた。そして右足を持ち上げると、その肌を舐めた。ルファの白く華奢な太ももを舌先でなぞっては、その舌を陰茎の根元まで這わせた。
「っ」
ルファが息を詰める。それを見て喉で笑ってから、ヴェルディスは、ルファの雁首までを端正な唇で含んだ。そして片手で擦りながら、鈴口をチロチロと舌先で刺激する。
「ぁ、ぁア! ああ!」
ねっとりとしゃぶり、筋を舐め上げ、唇に力を込めて雁首を扱く。ヴェルディスにそうされると、ルファの腰から力が抜けていった。しかし熱いのは、中だ。内部にルファは、ヴェルディスの剛直を求めていた。
「ヴェル、あ、挿れて!」
「――ああ」
口を離すと、ヴェルディスが二本の指をしゃぶってから、ルファの菊門に突き立てた。一気に押し広げられる感触に、ルファがギュッと目を閉じる。根元まで挿ってきた指の存在感にルファは震えた。それから、ヴェルディスが指先をバラバラに動かした。
「あ、あ、あ」
感じる場所を指が掠める。全身が熱い。必死で呼吸をしながら、ルファは喘いだ。
「挿れるぞ」
指を引き抜き、ヴェルディスが陰茎をルファの菊門にあてがう。それからめりこむように、巨大な先端が挿ってきた。その圧倒的な質量と熱、硬度に、ルファは背をしならせる。
「あああああ!」
「きついな」
「ダメ、あ、熱い!!」
「繋がっている証だ。俺の熱を、覚えておけ」
「あ、あ、ぁ……ぁぁ……ひゃ!」
根元まで入ってきた怒張に、ギュっと目を閉じてルファが堪える。その眦からは涙が溢れている。ルファの右の太ももを持ち上げて、斜めにヴェルディスが貫いた。激しい抽挿に、ルファは息が出来無くなりそうになる。
「あ、あ、あ」
「ココが好きだろう?」
「気持ち良すぎておかしくなる、やぁ、ああああ!」
重点的に感じる場所を穿たれて、ボロボロとルファは涙を零した。
「出すぞ」
「ンああああ!」
一際強く打ち付け、ヴェルディスが放った時、ルファもまた射精した。肩で息をしていると、ヴェルディスがズルリと陰茎を引き抜く。そしてルファの隣に横たわった。荒い吐息を落ち着けながら、涙で滲んだ瞳でルファがヴェルディスを見る。
「あ、ハ」
「大丈夫か?」
「う、うん」
「無理をさせたか?」
「平気だよ、ね、ねぇ」
「何だ?」
「――ヴェルも気持ち良かった?」
「俺は気持ち良かったが、俺、『も』? それはルファも良かったという意味か?」
穏やかに笑ったヴェルディスを見て、羞恥に駆られ、ルファは何も言えなくなり、毛布に潜ったのだった。
――紛れもなく、絶対的に。
どんどんヴェルディスの事が大切になっていく。
ルファはそう自覚していた。
そんなヴェルディスを、もしかしたら勘違いかも知れないままで、いつまでもこのような田舎においておくわけにはいかないだろう……。
そう考えながら、ルファは微睡んだ。すると、金色の紋章が広がっていき、『夢』を視た。
「よくやったな、ルファ」
「え、鳥?」
「鳥ではない。不死鳥のベリアルだ」
「……ベリアル。よくやったって、何?」
「もう我は、卵を二つも宿し、産んだ。ルファのおかげである」
「え!?」
「卵は相思相愛でなければ産まれぬからな。ルファが、愛しい相手を見つけてくれた事、誇らしく思うぞ」
「……!! そ、それって、僕とヴェルの子供という事?」
「大局的には、そう言っても構わないであろうが、我の子だ。召喚獣である。人は男同士では子は成せぬであろうが」
「だ、だけど。え? 僕とヴェルは、相思相愛なの?」
「いかにも。卵は、愛がなければ生じない。その点、人間の子は、行為があれば生じる」
その言葉を聞いた直後、ルファは目を覚ました。
心臓がドクンドクンと煩かった。隣でヴェルは、ルファを抱きしめるようにして眠っている。その横顔を見て、ルファは微苦笑した。本当に相思相愛ならば、嬉しいと思ってしまった。だから寝ているヴェルに、隣から腕を回し、抱きついてみる。すると無意識だろうが、ヴェルディスの手がルファにも回った。抱き合う形となり、ヴェルディスの胸板に額を押し付けて、ルファは幸せに浸る。
「ん……ルファ、起きたのか」
「ごめん、起こした?」
「いいや。すぐに気配に気づけなかったのだから、俺が護衛失格だ」
「そんな事無いよ。僕、ヴェル以外が護衛なんて嫌だ」
ギュッとルファが腕に力を込めると、ヴェルディスがルファの頭を撫でた。
「護衛の任を誰にも譲り渡すつもりはないが……そう言われて悪い気はしない」
ヴェルディスはそう言うと、ルファの額にキスをした。ルファは瞬時に赤面する。
「ただな――この家では、守るの種類にも限りがある。ルファ様、どうか私目と共に王都へ」
「……ヴェル」
「逆に聞きたい。この村では辛い仕打ちを受けていたようだし、お世辞にも豊かな暮らしをしていたとは言えないだろう。なのに何故ここに、残ろうとするんだ?」
「僕は……自分が王族だとは信じられないし、母さんのお墓のそばにいたいから……それに、もし間違いだったら、戻ってきた時にはもうこの家はないかもしれないし」
村の人達は、己がいなくなったら喜ぶだろうと、ルファは考えながら俯いた。都会には出ていけないが、村にも実際の所、明確な居場所は無いのだ。それでも暮らしていれば、村人達も追い出すまではしない。しかし家を一度離れたら、もう戻る事を村の者達は許してはくれないかもしれないと、ルファは思った。
「この家に警備をつけ、家を守らせる事は易い。お母様のお墓に関してもな。それらは約束しよう。王家の血筋に関しては、その真偽を明確にするために、王都へ行けば良い」
「――……僕はずるい人間だから、僕が王族じゃないと分かって、ヴェルがいなくなっちゃうのも嫌なんだ」
それを聞くとヴェルディスが驚いた顔をした。それから破顔した。
「それは無い。ルファが王族であろうが無かろうが、俺はもう、お前の事しか考えられない。だから、今後の生涯を捧げる」
「え?」
「もしも王族だったのならば忠誠を。違ったのならば――この、愛を」
優しく笑ってそう言うと、ヴェルディスが再びルファの額にキスをした。その温度と言葉に、ルファは泣きそうになった。純粋に嬉しかった。
「僕、王宮に行くよ」
50
あなたにおすすめの小説
あなたと過ごせた日々は幸せでした
蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。
転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした
リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。
仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!
原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!
だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。
「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」
死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?
原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に!
見どころ
・転生
・主従
・推しである原作悪役に溺愛される
・前世の経験と知識を活かす
・政治的な駆け引きとバトル要素(少し)
・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程)
・黒猫もふもふ
番外編では。
・もふもふ獣人化
・切ない裏側
・少年時代
などなど
最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。
借金のカタで二十歳上の実業家に嫁いだΩ。鳥かごで一年過ごすだけの契約だったのに、氷の帝王と呼ばれた彼に激しく愛され、唯一無二の番になる
水凪しおん
BL
名家の次男として生まれたΩ(オメガ)の青年、藍沢伊織。彼はある日突然、家の負債の肩代わりとして、二十歳も年上のα(アルファ)である実業家、久遠征四郎の屋敷へと送られる。事実上の政略結婚。しかし伊織を待ち受けていたのは、愛のない契約だった。
「一年間、俺の『鳥』としてこの屋敷で静かに暮らせ。そうすれば君の家族は救おう」
過去に愛する番を亡くし心を凍てつかせた「氷の帝王」こと征四郎。伊織はただ美しい置物として鳥かごの中で生きることを強いられる。しかしその瞳の奥に宿る深い孤独に触れるうち、伊織の心には反発とは違う感情が芽生え始める。
ひたむきな優しさは、氷の心を溶かす陽だまりとなるか。
孤独なαと健気なΩが、偽りの契約から真実の愛を見出すまでの、切なくも美しいシンデレラストーリー。
悪役令息物語~呪われた悪役令息は、追放先でスパダリたちに愛欲を注がれる~
トモモト ヨシユキ
BL
魔法を使い魔力が少なくなると発情しちゃう呪いをかけられた僕は、聖者を誘惑した罪で婚約破棄されたうえ辺境へ追放される。
しかし、もと婚約者である王女の企みによって山賊に襲われる。
貞操の危機を救ってくれたのは、若き辺境伯だった。
虚弱体質の呪われた深窓の令息をめぐり対立する聖者と辺境伯。
そこに呪いをかけた邪神も加わり恋の鞘当てが繰り広げられる?
エブリスタにも掲載しています。
【完結】抱っこからはじまる恋
* ゆるゆ
BL
満員電車で、立ったまま寄りかかるように寝てしまった高校生の愛希を抱っこしてくれたのは、かっこいい社会人の真紀でした。接点なんて、まるでないふたりの、抱っこからはじまる、しあわせな恋のお話です。
ふたりの動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵もあがります。
YouTube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。
プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら!
完結しました!
おまけのお話を時々更新しています。
BLoveさまのコンテストに応募しているお話を倍以上の字数増量でお送りする、アルファポリスさま限定版です!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
愛を知らない少年たちの番物語。
あゆみん
BL
親から愛されることなく育った不憫な三兄弟が異世界で番に待ち焦がれた獣たちから愛を注がれ、一途な愛に戸惑いながらも幸せになる物語。
*触れ合いシーンは★マークをつけます。
美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる