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ブラックベリーの霊能学
【六十二】新学期④(SIDE:火朽)
しおりを挟むさて……紬の予想に反し、美味しい血液の持ち主である藍円寺享夜のマッサージ通いが再開したため、本日もローラの機嫌が最高に良い。
機嫌が良いのは火朽も同じだ。
毎日が、楽しくて仕方がない――というのは、こういう感覚かと、やっと理解した気持ちだった。珈琲を飲みながらキッチンの椅子に座っていると、砂鳥がそこから見えるダイニングのテーブルに、上半身を投げ出した。そして、火朽を見る。
「大学、順調そうですね」
「ええ。非常に充実していますよ」
「良いなぁ。僕は、毎日店番だし……」
「――砂鳥くんも、お友達を作ってみてはどうですか?」
そう言って火朽が微笑すると、少年の姿をした妖怪は、少しだけ考え込むような瞳をした。
「僕、あんまり人間って好きじゃないから、それはちょっと……」
火朽は、嘗て砂鳥が、迫害された事のある妖怪だったと思い出した。
中には――人間よりもある側面や、全体的に弱い妖魔も存在する。
「かと言って、ローラや火朽さんは別として、妖が好きっていうわけでもないんですけど……それに、僕は、人の心が視えるし、一緒にいても退屈になりそうだと思って」
覚という妖怪である彼を見て、火朽は静かにカップを傾ける。
「では、何か趣味を作ってはいかがですか? 砂鳥くんは、特に何かに熱中したりといった様子が見受けられませんが」
「趣味、ですか? 火朽さんの趣味は?」
「今は、人間の観察です。見ていて実に面白いですよ」
火朽の声に、砂鳥は、紬の姿を思い出しながら、何度か瞬きをする。
「それは分かります。僕も、心を読んでるのは、楽しいから」
「難しいですね、もっと何か具体的な……料理でもしてみますか?」
「ううん。僕は、火朽さんのお料理が好きです」
砂鳥の声に、火朽が喉で笑う。
「では、何かやってみたい事は? 僕であれば、人間の学問を学びたいという動機から――現在のように、人間という生き物、特に人間と築く友情に関心をもちました。世の中、何がきっかけになるか、分かりませんよ?」
そう言って珈琲を飲む火朽を眺めながら、砂鳥が瞳を揺らす。
「――まずは、やりたい事を探す事、見つける事から始めたいと思います」
答えた砂鳥を優しい瞳で一瞥し、火朽は頷いた。こうして、彼らには新しい秋が到来したのである。幸いなことに、お化け屋敷(民家)については解消していて、お化け屋敷(テーマパーク)にはのちに行く機会があるのだが……それはまた別のお話だ。彼らは自分たちがすごす、お化け屋敷(本物)にて、各々の生を楽しんでいる。
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