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―― 第二章 ――

【第十三話】PTSD

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 基地から帰宅し、二日目の夜が訪れた。
 まだこの家に寝具は巨大なベッドが一つきりであるから、壁の方を向いて昼斗は寝転がっている。隣には、昴が眠るスペースを確保してあるが、まだ仕事が終わっていないようで、彼はリビングでタブレット端末の操作をしている。

 夕食は宅配注文のピザで、昼斗は久しぶりに口にするチーズの味を美味だと感じてから、入浴し、今に至る。一人きりで暮らしていると、すぐに眠気が訪れるというのに、こうして二人になると、何故なのか寝付けない。それでも無理に瞼を閉じた。

 翌朝は、昴に揺り起こされて、朝食を振る舞われた。
 このようにして、監視の意図があるとはいえ、二人の生活は始まった。

「もっと聞かせてよ」

 昴は食事をしながら、昼斗に様々な話をするように求める。食事時にはあまり相応しいとは考えられないHoopの話題もあれば、戦闘の話題もあるが、求められれば昼斗は応じている。ただ、光莉の話をお互いが持ち出す事は、今のところ、無かった。

「……俺は本当に、偶発的にパイロットになっただけだからな。それよりは、きちんと育成を受けている専任のパイロットの話を聞く方が有益なんじゃないか?」

 戸惑いと苦笑、そこに本音を交えて、昼斗が答える。それから箸で、ワカメのサラダを口に運ぶ。

「昼斗の話が聞きたいんだよ」

 対する昴の表情は、穏やかで、いつも笑みを湛えている。
 このようにして、食事をし、会話をし、同じベッドで眠る日々が三日も経つ頃には、昼斗も、同じ寝台であってもいつもと同じように睡魔に飲まれるように変わった。元々、場所がどこであっても、昼斗は眠れるたちである。

 だが、もう何年も夢見は最悪だ。本来それを、〝夢〟と名付けるべきなのかも、見解が分かれるかもしれない。夢あるいはフラッシュバック、尤も昼斗にとっては名称がどちらであっても変わらないが、過去の出来事を再体験するこの症状に、昼斗は苦しめられている。毎夜、Hoopのせいで喪った大切な存在や、自分が犯した過失の記憶を再体験しては、飛び起きて、周囲を見渡している。そしてそれが、〝今〟ではないと理解し、絶望しつつも胸を撫でおろしている。

 今も飛び起きた。呼吸が上がっている。瞬きをすれば、昼斗の眦には涙が滲んだ。
 シーツをぎゅっと掴んでから、昼斗は隣で眠る昴を見る。

「……」

 穏やかな寝顔を一瞥していたら、少しずつ、呼吸が落ち着いてきた。昨日も、一昨日もそうだった。隣に人がいると、現実感がすぐに戻ってくる気がして、一人きりの時よりも胸の動悸が収まるのが早い。

 そのまま昴を起こさないように注意しながら、昼斗は改めて横になった。


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