55 / 67
―― 第七章 ――
【第五十五話】知性と感情の有無
しおりを挟む寝室のベッドに仰向けになり、昼斗は久しぶりに見る天井を眺めた。瞬きをすると、対峙した敵の人型戦略機の姿が脳裏を過ぎる。円盤は、どうなったのだろうかと漠然と思案し、それから響いて聞こえた声を思い出した。
『地球を滅ぼす』
そんな声だった。
「ラムダの秘宝を返還すれば、滅ぼさないという意味に聞こえたけどな」
ポツリと零した昼斗は、じっくりと考えようと瞼を伏せた。Hoopは脅威だが、人型戦略機が仮に攻めてきたならば、数にもよるが地球はすぐに陥落すると考えられる。
「十二体目だとは言っていたけどな……地球にだって、第二世代・第三世代機がある。ラムダという惑星に、新型機が無いとは限らない」
昴は明言しなかったが、敵方にも、人型かは兎も角知的生命体がいるのは明らかだろうと昼斗は判断している。そう、エノシガイオスの声も話していたからだ。
嘗ての国境線が描かれた地球儀を、漠然と昼斗は想起した。線を少し通り抜けただけで、地球上には様々な文化や概念が広がっていた。それが星を跨ぐとなれば、同一の価値観がそちらにも形成されているかは疑問ではある、が、昼斗は目を開けながら呟く。
「知性」
思考能力、知能――倫理観。仮に著しくかけ離れていたとしても、先方に、〝感情〟や〝罪悪感〟は存在しないのだろうかと思考する。昼斗は、そうは思わない。一つの文明体系が広がる惑星があるのだから、ラムダという名だと機体から聞いたその星にも、独特の文化や価値観があるのだろうと思うし、ならば、〝気持ち〟だってあるのではないかと感じる。
「……話し合いで、解決は出来ないんだろうか」
敵、そう呼称するのが正確なのかも昼斗には分からないが、ラムダ系人類が存在すると仮定した際、あちらの要求は、明確に一つだった。
「ラムダの秘宝を返却すればいい」
そうしたら、もう地球を襲う事はないという、脅迫。
昼斗にはそう感じられた。
「秘宝を返して和解出来ないんだろうか」
呟いてみる。だが、〝ラムダの秘宝〟がなんなのかを、昼斗は知らない。それさえ分かったならば、話が劇的に転換するのではないかという予感がした。
「昼斗。届いたよ。クラムチャウダーも出来たよ」
そこへ、昴が顔を出した。体を起こし、笑顔で昼斗は頷いた。
2
あなたにおすすめの小説
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
虚ろな檻と翡翠の魔石
篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」
不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。
待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。
しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。
「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」
記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。
氷の婚約者様に破談を申し出たら号泣された
楽矢
BL
目が覚めると、レースの牢獄のような天蓋付きベッドの上だった。
何も覚えていない出来損ない下級貴族ミラ。無能だクズだと冷酷な罵詈雑言を浴びせてくる氷の騎士セティアス。
記憶喪失から始まる、2人のファンタジー貴族ラブコメディ。
----------
※注)
かっこいい攻はいません。
タイトル通りそのうち号泣しますのでご注意!
貴族描写は緩い目で雰囲気だけお読みいただけると幸いです。
ハッピーエンドです。
激重感情をこじらせた攻→受な関係がお好きな同志の方、どうぞよろしくお願いします!
全16話 完結済み/現在毎日更新予定
他サイトにも同作品を投稿しています。
様子を見ながらそのうち統合するかもしれません。
初めての一次創作でまだよく分かっておらず、何かおかしなことをしでかしていたら申し訳ないです!
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
この世界は僕に甘すぎる 〜ちんまい僕(もふもふぬいぐるみ付き)が溺愛される物語〜
COCO
BL
「ミミルがいないの……?」
涙目でそうつぶやいた僕を見て、
騎士団も、魔法団も、王宮も──全員が本気を出した。
前世は政治家の家に生まれたけど、
愛されるどころか、身体目当ての大人ばかり。
最後はストーカーの担任に殺された。
でも今世では……
「ルカは、僕らの宝物だよ」
目を覚ました僕は、
最強の父と美しい母に全力で愛されていた。
全員190cm超えの“男しかいない世界”で、
小柄で可愛い僕(とウサギのぬいぐるみ)は、今日も溺愛されてます。
魔法全属性持ち? 知識チート? でも一番すごいのは──
「ルカ様、可愛すぎて息ができません……!!」
これは、世界一ちんまい天使が、世界一愛されるお話。
妖精です、囲われてます
うあゆ
BL
僕は妖精
森で気ままに暮らしていました。
ふと気づいたら人間に囲まれてました。
でもこの人間のそばはとても心地いいし、森に帰るタイミング見つからないなぁ、なんて思いながらダラダラ暮らしてます。
__________
妖精の前だけはドロ甘の冷徹公爵×引きこもり妖精
なんやかんやお互い幸せに暮らします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる