人型戦略機パイロットの俺は、復讐されるようです。

猫宮乾

文字の大きさ
64 / 67
―― 第八章 ――

【第六十四話】心臓の強度

しおりを挟む



 多分、人型戦略機に脱出ポットは、抱きしめられた。ただ中にいた昼斗は、その光景を目にした直後に意識を失ったから、本人の自覚はない。

 自覚があるのは、次に瞼を開けた――今。
 何度も見ている基地の病院の天井に関してだった。
 バサリと、そんな音がしたから、上半身を起こすと、そこには白い花束を取り落とした昴の姿があった。何度か瞬きをしながら、そちらを見ていると、泣きそうな顔をした昴が走り寄ってきた。そしてベッドサイドに立つと、嘆息した。

「俺の心臓の強度テスト、どのくらいしたら満足なの?」

 昼斗は理解しかねて、首を傾げる。

「何かあったのか?」
「あのさ、昼斗。自分が何をしようとしてたか分かってる?」
「クラムチャウダーをお前に所望した」
「その後」
「……お前が、俺を探しに来てくれたんだったな」

 そう言って昼斗が笑って見せると、歪めた唇を噛んでから、昴が昼斗に抱き着いた。

「ちゃんとコールを押すようにって、前も言ったよね?」
「昴が押してくれ」
「横着しない!」

 昴が額で、昼斗の額を叩く。それに吹き出してから、昼斗は両頬を持ち上げた。

「まだ俺は生きてるんだな」
「ああ、そうだね、朗報だ。地球上に、既に〝ラムダの秘宝〟は存在しないから、Hoopと呼ばれていたラムダの生体兵器も全て飛び去り、消えてしまったよ」
「本当か?」
「うん。今、人類は、船を自由に繰る権利も取り戻しているよ。義兄さんのおかげだよ。地球には、平和が戻った」
「そ、そうか……」
「でもね、この今という瞬間まで、俺の胸中は不穏だったよ。分かる?」
「え?」
「昼斗がいない世界なんて、俺には無価値だ。その自己犠牲精神、もう止めて」
「昴……?」

 昼斗が顔を上げると、唇の端だけを持ち上げていた昴が、不意に顔を背けた。その眦には、光る涙が見える。

「よかった。意識が戻って、というより、無事に帰ってきてくれて。まぁ、帰ってこないなんて許さないけど。だから迎えに行ったんだしね」
「昴……」
「義兄さんはさ、多分自分で思ってるより、自分勝手だよ。もっと周囲の気持ち、考えて」
「俺が自分勝手……?」
「そうだよ。俺をどれだけ心配させれば気が済むの?」

 昴はそう述べると、両腕に力を込めて、昼斗の肩に顎を載せた。

「勝手にいなくなるなんて、それこそ許さないからね」
「昴……」
「何?」
「……俺はここにいる」
「それは俺が迎えに行ったからだろ?」
「……今はそうだけど、そうかもしれないけどな……俺は――」

 ――昴が好きだから、そばにいたいのだ、と。
 昼斗がそう告げようとした時、医療スタッフが病室へと入ってきた。だから会話はそこで打ち切りになった。



しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」 不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。 待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。 しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。 「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」 記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

氷の婚約者様に破談を申し出たら号泣された

楽矢
BL
目が覚めると、レースの牢獄のような天蓋付きベッドの上だった。 何も覚えていない出来損ない下級貴族ミラ。無能だクズだと冷酷な罵詈雑言を浴びせてくる氷の騎士セティアス。 記憶喪失から始まる、2人のファンタジー貴族ラブコメディ。 ---------- ※注) かっこいい攻はいません。 タイトル通りそのうち号泣しますのでご注意! 貴族描写は緩い目で雰囲気だけお読みいただけると幸いです。 ハッピーエンドです。 激重感情をこじらせた攻→受な関係がお好きな同志の方、どうぞよろしくお願いします! 全16話 完結済み/現在毎日更新予定 他サイトにも同作品を投稿しています。 様子を見ながらそのうち統合するかもしれません。 初めての一次創作でまだよく分かっておらず、何かおかしなことをしでかしていたら申し訳ないです!

この世界は僕に甘すぎる 〜ちんまい僕(もふもふぬいぐるみ付き)が溺愛される物語〜

COCO
BL
「ミミルがいないの……?」 涙目でそうつぶやいた僕を見て、 騎士団も、魔法団も、王宮も──全員が本気を出した。 前世は政治家の家に生まれたけど、 愛されるどころか、身体目当ての大人ばかり。 最後はストーカーの担任に殺された。 でも今世では…… 「ルカは、僕らの宝物だよ」 目を覚ました僕は、 最強の父と美しい母に全力で愛されていた。 全員190cm超えの“男しかいない世界”で、 小柄で可愛い僕(とウサギのぬいぐるみ)は、今日も溺愛されてます。 魔法全属性持ち? 知識チート? でも一番すごいのは── 「ルカ様、可愛すぎて息ができません……!!」 これは、世界一ちんまい天使が、世界一愛されるお話。

貧乏Ωが御曹司αの将来のために逃げた話。

ミカン
BL
オメガバース

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

妖精です、囲われてます

うあゆ
BL
僕は妖精 森で気ままに暮らしていました。 ふと気づいたら人間に囲まれてました。 でもこの人間のそばはとても心地いいし、森に帰るタイミング見つからないなぁ、なんて思いながらダラダラ暮らしてます。 __________ 妖精の前だけはドロ甘の冷徹公爵×引きこもり妖精 なんやかんやお互い幸せに暮らします。

処理中です...