黒薔薇の刻印

猫宮乾

文字の大きさ
42 / 61

【四十二】再会Ⅰ

しおりを挟む


 以後、入れ替わり立ち替わり、俺の婿を名乗る人間が訪れては、俺に卵を産ませていった。俺が吐血したのは、そんなある日の事だった。全身が冷え切り、視界は歪み、珍しく一人で快楽にも侵されていなかった寝台の上で、俺は血を吐いた。

「陛下?」

 気づくと目の前にガイルがいた。ぼんやりとしたまま、俺は彼を見上げる。

「――何だ。随分と壊れるのが早いな。これだから陸の人間は脆弱でならない。いいや、天空人か。陸よりも弱いと言うが……」

 もう長らく意味ある言葉を発していなかった俺は、この時も何も言えなかった。ただポタポタと血を吐いていた。

「まぁ、二百人も王族が増えたんだし、そろそろ解放しても良いだろうに……宰相閣下も何をお考えなんだろうな」
「……」
「退屈だろうになぁ、婿殿達も。こんな物言わぬ人形みたいに壊れてる奴を相手にしても。ま、すぐに陛下の最初のご子息が即位するから、それまでは国王がいるって素振りを頑張って貰わないとなぁ」
「……」
「ほら、今日は謁見の日ですよ。行きますよ」

 強引にガイルが俺を寝台から引きずり下ろし、おぼつかない足取りの俺を玉座の間に連れて行った。俺は何度も咳き込み血を吐きながら、正面に並んでいる、俺の夫だという集団を見た。誰も俺の吐血に気を止める事は無い。

 息が苦しい。胸が痛い。辛い。涙が滲んでくる。

「汚いなぁ」

 ガイルがぼやくと、宰相が咳払いをした。

「人間の体には、我々水の国の魔力は過ぎたるものだからな。しかし目的は果たした。本日午後、後継者が立つ。それまで生きていれば問題は無い」
「その後はどうするんです?」
「地上に捨てれば良い。このようなもの、早く放棄したいというのが本音だ」

 朦朧とした意識で、俺はそれを聞いていた。直後、瞬きをした瞬間、意識が暗転した。そして気がつくと――俺は砂漠にいた。俺の手には手紙があって、『地上に帰す』という言葉が、丁寧な語で綴られていた。

 そのまま俺は、砂の上に倒れ込んだ。体が熱いのに、酷く寒い。ああ、このまま死ぬのか。そう思った時、遠目に駱駝が見えた。商人らしいと漠然と思った時、その駱駝が止まった。霞む目を向けながら血を吐いていると、駱駝から人が降りてきた。

「こりゃあまた懐かしい顔だ」
「……」
「覚えてるか? 俺だよ、俺。ラッセルだ」

 その声に、必死で目を開くと、ラッセルがはっとしたような顔をした。

「なんだ、その血は」
「……」
「どっか悪いのか? とりあえず、痛み止めの魔法薬がある。ある程度なんにでも効く奴」

 ラッセルは駱駝から荷物を下ろすと、俺の前に瓶を突きつけた。だが受け取る力も気力も無い。ラッセルは舌打ちすると、無理に俺の口に瓶を押し込み、薬液を飲ませた。すると体が少し楽になった。息が出来る。そう理解した直後、再び俺は意識を落とした。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

被虐趣味のオメガはドSなアルファ様にいじめられたい。

かとらり。
BL
 セシリオ・ド・ジューンはこの国で一番尊いとされる公爵家の末っ子だ。  オメガなのもあり、蝶よ花よと育てられ、何不自由なく育ったセシリオには悩みがあった。  それは……重度の被虐趣味だ。  虐げられたい、手ひどく抱かれたい…そう思うのに、自分の身分が高いのといつのまにかついてしまった高潔なイメージのせいで、被虐心を満たすことができない。  だれか、だれか僕を虐げてくれるドSはいないの…?  そう悩んでいたある日、セシリオは学舎の隅で見つけてしまった。  ご主人様と呼ぶべき、最高のドSを…

強制悪役劣等生、レベル99の超人達の激重愛に逃げられない

砂糖犬
BL
悪名高い乙女ゲームの悪役令息に生まれ変わった主人公。 自分の未来は自分で変えると強制力に抗う事に。 ただ平穏に暮らしたい、それだけだった。 とあるきっかけフラグのせいで、友情ルートは崩れ去っていく。 恋愛ルートを認めない弱々キャラにわからせ愛を仕掛ける攻略キャラクター達。 ヒロインは?悪役令嬢は?それどころではない。 落第が掛かっている大事な時に、主人公は及第点を取れるのか!? 最強の力を内に憑依する時、その力は目覚める。 12人の攻略キャラクター×強制力に苦しむ悪役劣等生

完成した犬は新たな地獄が待つ飼育部屋へと連れ戻される

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

オメガな王子は孕みたい。

紫藤なゆ
BL
産む性オメガであるクリス王子は王家の一員として期待されず、離宮で明るく愉快に暮らしている。 ほとんど同居の獣人ヴィーは護衛と言いつついい仲で、今日も寝起きから一緒である。 王子らしからぬ彼の仕事は町の案内。今回も満足して帰ってもらえるよう全力を尽くすクリス王子だが、急なヒートを妻帯者のアルファに気づかれてしまった。まあそれはそれでしょうがないので抑制剤を飲み、ヴィーには気づかれないよう仕事を続けるクリス王子である。

敗戦国の王子を犯して拐う

月歌(ツキウタ)
BL
祖国の王に家族を殺された男は一人隣国に逃れた。時が満ち、男は隣国の兵となり祖国に攻め込む。そして男は陥落した城に辿り着く。

神父様に捧げるセレナーデ

石月煤子
BL
「ところで、そろそろ厳重に閉じられたその足を開いてくれるか」 「足を開くのですか?」 「股開かないと始められないだろうが」 「そ、そうですね、その通りです」 「魔物狩りの報酬はお前自身、そうだろう?」 「…………」 ■俺様最強旅人×健気美人♂神父■

Bランク冒険者の転落

しそみょうが
BL
幼馴染の才能に嫉妬したBランク冒険者の主人公が、出奔した先で騙されて名有りモブ冒険者に隷属させられて性的に可哀想な日々を過ごしていたところに、激重友情で探しに来た粘着幼馴染がモブ✕主人公のあれこれを見て脳が破壊されてメリバ風になるお話です。 ◯前半は名有りモブ✕主人公で後半は幼馴染✕主人公  ◯お下品ワードがちょいちょい出てきて主人公はずっと性的に可哀想な感じです(・_・;) ◯今のところほとんどのページにちょっとずつ性描写があります

【Amazonベストセラー入りしました】僕の処刑はいつですか?欲しがり義弟に王位を追われ身代わりの花嫁になったら溺愛王が待っていました。

美咲アリス
BL
「国王陛下!僕は偽者の花嫁です!どうぞ、どうぞ僕を、処刑してください!!」「とりあえず、落ち着こうか?(笑)」意地悪な義母の策略で義弟の代わりに辺境国へ嫁いだオメガ王子のフウル。正直な性格のせいで嘘をつくことができずに命を捨てる覚悟で夫となる国王に真実を告げる。だが美貌の国王リオ・ナバはなぜかにっこりと微笑んだ。そしてフウルを甘々にもてなしてくれる。「きっとこれは処刑前の罠?」不幸生活が身についたフウルはビクビクしながら城で暮らすが、実は国王にはある考えがあって⋯⋯?(Amazonベストセラー入りしました。1位。1/24,2024)

処理中です...