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【四十二】再会Ⅰ
しおりを挟む以後、入れ替わり立ち替わり、俺の婿を名乗る人間が訪れては、俺に卵を産ませていった。俺が吐血したのは、そんなある日の事だった。全身が冷え切り、視界は歪み、珍しく一人で快楽にも侵されていなかった寝台の上で、俺は血を吐いた。
「陛下?」
気づくと目の前にガイルがいた。ぼんやりとしたまま、俺は彼を見上げる。
「――何だ。随分と壊れるのが早いな。これだから陸の人間は脆弱でならない。いいや、天空人か。陸よりも弱いと言うが……」
もう長らく意味ある言葉を発していなかった俺は、この時も何も言えなかった。ただポタポタと血を吐いていた。
「まぁ、二百人も王族が増えたんだし、そろそろ解放しても良いだろうに……宰相閣下も何をお考えなんだろうな」
「……」
「退屈だろうになぁ、婿殿達も。こんな物言わぬ人形みたいに壊れてる奴を相手にしても。ま、すぐに陛下の最初のご子息が即位するから、それまでは国王がいるって素振りを頑張って貰わないとなぁ」
「……」
「ほら、今日は謁見の日ですよ。行きますよ」
強引にガイルが俺を寝台から引きずり下ろし、おぼつかない足取りの俺を玉座の間に連れて行った。俺は何度も咳き込み血を吐きながら、正面に並んでいる、俺の夫だという集団を見た。誰も俺の吐血に気を止める事は無い。
息が苦しい。胸が痛い。辛い。涙が滲んでくる。
「汚いなぁ」
ガイルがぼやくと、宰相が咳払いをした。
「人間の体には、我々水の国の魔力は過ぎたるものだからな。しかし目的は果たした。本日午後、後継者が立つ。それまで生きていれば問題は無い」
「その後はどうするんです?」
「地上に捨てれば良い。このようなもの、早く放棄したいというのが本音だ」
朦朧とした意識で、俺はそれを聞いていた。直後、瞬きをした瞬間、意識が暗転した。そして気がつくと――俺は砂漠にいた。俺の手には手紙があって、『地上に帰す』という言葉が、丁寧な語で綴られていた。
そのまま俺は、砂の上に倒れ込んだ。体が熱いのに、酷く寒い。ああ、このまま死ぬのか。そう思った時、遠目に駱駝が見えた。商人らしいと漠然と思った時、その駱駝が止まった。霞む目を向けながら血を吐いていると、駱駝から人が降りてきた。
「こりゃあまた懐かしい顔だ」
「……」
「覚えてるか? 俺だよ、俺。ラッセルだ」
その声に、必死で目を開くと、ラッセルがはっとしたような顔をした。
「なんだ、その血は」
「……」
「どっか悪いのか? とりあえず、痛み止めの魔法薬がある。ある程度なんにでも効く奴」
ラッセルは駱駝から荷物を下ろすと、俺の前に瓶を突きつけた。だが受け取る力も気力も無い。ラッセルは舌打ちすると、無理に俺の口に瓶を押し込み、薬液を飲ませた。すると体が少し楽になった。息が出来る。そう理解した直後、再び俺は意識を落とした。
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