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【SeasonⅠ】―― 第二章:トンカラトン ――
【019】占い結果
しおりを挟むそろって歩きながら、ぼくは何度もとなりを見た。
哀名はすらりと背が高い。ぼくは負けそうだ。本当に長い髪をしていて、まっすぐでサラサラのつやつやだ。となりを歩いていると、シャンプーのいいにおいがする。
いつもワンピースを着ていて、哀名はやせている。
美人だ。
それに、今は無表情だけど、ぼくに消しゴムを貸してくれたころは、優しく笑っていた。ぼくは笑っているほうが可愛いと思う。それに哀名は、とっても心も優しい気がする。
「どうかした?」
ぼくが見ているのに気づいたようで、哀名がこちらを見た。
あわててぼくは前を向く。
「なんでもないよ。行こう!」
こうしてぼく達は、石段をのぼり、鳥居をくぐった。
神社には、ブランコと砂場、そしてベンチとテーブルがある。
ぼく達はやねの下に入って、それぞれ座った。
「はじめます」
哀名はテーブルの上に布をしくと、その上にカードを並べた。
トランプみたいなマークを見ながら、ぼくは結果を待つ。
しばらくすると、哀名がむずかしい顔をした。
「視えない」
「え?」
「図書室ピエロのことが、なにも視えないの。こんなのは、はじめて」
「そっかぁ……」
ぼくは顔を下げて下を見た。手がかりは見つからなかった。
「もしかすると、トンカラトンのように外にいるのではなく、〝むこうがわ〟にいるのかもしれない」
「むこうがわ?」
「ええ。人間の世界とは違う場所」
「そんな世界があるの?」
「――パパはそう言っていたわ。都市伝説のお化けは、そこから人間の世界に顔を出しているんだって。時々、あちらとこちらが交差したとき、人はお化けに遭遇するんだって」
「そうなんだ」
ぼくは知らなかったことを、また一つ知った。
「哀名のお父さんは、そういうのに詳しいの?」
「魔術書……幻想文学の翻訳家をしているの」
「そうなんだ。なんだかすごいね」
ぼくが言うと、哀名が目を丸くしてから、顔を背けた。少しだけ、その耳があかい。照れているみたいだ。
「ねぇ、楠谷くん」
「うん?」
「私も、トンカラトンを調べるの、手伝ってもいい?」
「それは水間さんに聞いてみないと……」
「だったら私が直接お願いするから、合わせてもらえないかしら?」
「会わせるくらいはいいと思う。ええとね、そうしたら次の日曜日の朝十時に、端東第二公園に来られる?」
「ええ、わかった」
「だけど、他の人にはヒミツだよ?」
「約束する」
哀名が真面目な顔で、大きく頷いた。睫毛が長い。
ぼくも頷き返して、この日はそれぞれ家に帰った。
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