25 / 101
【SeasonⅠ】―― 第三章:トイレの花子さんとババサレ ――
【025】ババサレの話
しおりを挟む
なんだか今も信じられない気分で、何度もポケットの上をさわりながら歩いていくと、神社の石段が見えた。
「瑛、おはよ」
声をかけられたので顔をあげると、透くんが座っていた。
今日も笑顔だ。透くんは金色に髪を染めていて、きつねみたいな顔をしている。ちょっとつり目だからそう感じるんだと思う。
「こんばんは!」
「今帰り? 今日はちょっと遅いんだね」
「うん。ちょっとね」
「ちょっと?」
旧校舎は立ち入り禁止だから、秘密にしなければならないと思って、ぼくは顔をそむけた。するとひょいと石段から立ち上がった透くんが歩いてきたみたいで、ぼくの前に立った。
「おにいさんに話してみなさい」
「ん? ぼくのお兄ちゃんは亮にいちゃんだけだよ」
「兄弟仲がいいんだな。いや、そういう意味で言ったわけじゃないんだけどね。あれかな? もしかして……ついに瑛も、大人になったのかと思って」
「え?」
「デートでもしてたのかなってさ」
「ち、ちがうよ! ぼくと哀名は花子さんを調べに行っただけだもん!」
「花子さん? トイレの花子さん?」
思わず口走ったぼくを見て、透くんがきょとんとした。しまったと思って、ぼくは両手で口をおおう。
「七不思議? まだ残ってるんだ」
「……」
「怖い話好きなの?」
「別にそういうわけじゃないけど、ちょっと都市伝説を調べてて……」
「へぇ? ああ、それじゃあ、【ババサレ】って知ってる?」
「ババサレ?」
「そ。ババサレ」
ぼくは知らなかったので、大きく首を横に振った。すると楽しそうな顔をして、透くんが言った。
「ババサレは、カマを持ってるばぁさんの化け物なんだ。ババサレの話を聞いた人間の家に、夜必ずやってくる。それでドアや窓を叩くんだ。とりつくんだよ」
「えっ!? い、今、透くん、ぼくに話した!」
「そういうこと。これで今夜は、瑛の家にババサレが来る。間違いなくね」
「ど、どうすればいいの!?」
「さぁ? 忘れちゃったなぁ」
クスクスと笑うと、透くんがポンポンとぼくの肩を叩いた。
「亮ならどうにかできるかもねえ? 知らないけど」
「亮にいちゃん?」
「聞いてみたら? じゃあね」
そう言うと、ひらひらと手を振り、透くんは歩いていった。困ったぼくは、ポケットの魔除けが、ババサレにも効果があることをいのる。ギュッと目を閉じ、怖くなりながら、それから帰った。
「瑛、おはよ」
声をかけられたので顔をあげると、透くんが座っていた。
今日も笑顔だ。透くんは金色に髪を染めていて、きつねみたいな顔をしている。ちょっとつり目だからそう感じるんだと思う。
「こんばんは!」
「今帰り? 今日はちょっと遅いんだね」
「うん。ちょっとね」
「ちょっと?」
旧校舎は立ち入り禁止だから、秘密にしなければならないと思って、ぼくは顔をそむけた。するとひょいと石段から立ち上がった透くんが歩いてきたみたいで、ぼくの前に立った。
「おにいさんに話してみなさい」
「ん? ぼくのお兄ちゃんは亮にいちゃんだけだよ」
「兄弟仲がいいんだな。いや、そういう意味で言ったわけじゃないんだけどね。あれかな? もしかして……ついに瑛も、大人になったのかと思って」
「え?」
「デートでもしてたのかなってさ」
「ち、ちがうよ! ぼくと哀名は花子さんを調べに行っただけだもん!」
「花子さん? トイレの花子さん?」
思わず口走ったぼくを見て、透くんがきょとんとした。しまったと思って、ぼくは両手で口をおおう。
「七不思議? まだ残ってるんだ」
「……」
「怖い話好きなの?」
「別にそういうわけじゃないけど、ちょっと都市伝説を調べてて……」
「へぇ? ああ、それじゃあ、【ババサレ】って知ってる?」
「ババサレ?」
「そ。ババサレ」
ぼくは知らなかったので、大きく首を横に振った。すると楽しそうな顔をして、透くんが言った。
「ババサレは、カマを持ってるばぁさんの化け物なんだ。ババサレの話を聞いた人間の家に、夜必ずやってくる。それでドアや窓を叩くんだ。とりつくんだよ」
「えっ!? い、今、透くん、ぼくに話した!」
「そういうこと。これで今夜は、瑛の家にババサレが来る。間違いなくね」
「ど、どうすればいいの!?」
「さぁ? 忘れちゃったなぁ」
クスクスと笑うと、透くんがポンポンとぼくの肩を叩いた。
「亮ならどうにかできるかもねえ? 知らないけど」
「亮にいちゃん?」
「聞いてみたら? じゃあね」
そう言うと、ひらひらと手を振り、透くんは歩いていった。困ったぼくは、ポケットの魔除けが、ババサレにも効果があることをいのる。ギュッと目を閉じ、怖くなりながら、それから帰った。
0
あなたにおすすめの小説
ノースキャンプの見張り台
こいちろう
児童書・童話
時代劇で見かけるような、古めかしい木づくりの橋。それを渡ると、向こう岸にノースキャンプがある。アーミーグリーンの北門と、その傍の監視塔。まるで映画村のセットだ。
進駐軍のキャンプ跡。周りを鉄さびた有刺鉄線に囲まれた、まるで要塞みたいな町だった。進駐軍が去ってからは住宅地になって、たくさんの子どもが暮らしていた。
赤茶色にさび付いた監視塔。その下に広がる広っぱは、子どもたちの最高の遊び場だ。見張っているのか、見守っているのか、鉄塔の、あのてっぺんから、いつも誰かに見られているんじゃないか?ユーイチはいつもそんな風に感じていた。
ぽんちゃん、しっぽ!
こいちろう
児童書・童話
タケルは一人、じいちゃんとばあちゃんの島に引っ越してきた。島の小学校は三年生のタケルと六年生の女子が二人だけ。昼休みなんか広い校庭にひとりぼっちだ。ひとりぼっちはやっぱりつまらない。サッカーをしたって、いつだってゴールだもん。こんなにゴールした小学生ってタケルだけだ。と思っていたら、みかん畑から飛び出してきた。たぬきだ!タケルのけったボールに向かっていちもくさん、あっという間にゴールだ!やった、相手ができたんだ。よし、これで面白くなるぞ・・・
14歳で定年ってマジ!? 世界を変えた少年漫画家、再起のノート
谷川 雅
児童書・童話
この世界、子どもがエリート。
“スーパーチャイルド制度”によって、能力のピークは12歳。
そして14歳で、まさかの《定年》。
6歳の星野幸弘は、将来の夢「世界を笑顔にする漫画家」を目指して全力疾走する。
だけど、定年まで残された時間はわずか8年……!
――そして14歳。夢は叶わぬまま、制度に押し流されるように“退場”を迎える。
だが、そんな幸弘の前に現れたのは、
「まちがえた人間」のノートが集まる、不思議な図書室だった。
これは、間違えたままじゃ終われなかった少年たちの“再スタート”の物語。
描けなかった物語の“つづき”は、きっと君の手の中にある。
四尾がつむぐえにし、そこかしこ
月芝
児童書・童話
その日、小学校に激震が走った。
憧れのキラキラ王子さまが転校する。
女子たちの嘆きはひとしお。
彼に淡い想いを抱いていたユイもまた動揺を隠せない。
だからとてどうこうする勇気もない。
うつむき複雑な気持ちを抱えたままの帰り道。
家の近所に見覚えのない小路を見つけたユイは、少し寄り道してみることにする。
まさかそんな小さな冒険が、あんなに大ごとになるなんて……。
ひょんなことから石の祠に祀られた三尾の稲荷にコンコン見込まれて、
三つのお仕事を手伝うことになったユイ。
達成すれば、なんと一つだけ何でも願い事を叶えてくれるという。
もしかしたら、もしかしちゃうかも?
そこかしこにて泡沫のごとくあらわれては消えてゆく、えにしたち。
結んで、切って、ほどいて、繋いで、笑って、泣いて。
いろんな不思議を知り、数多のえにしを目にし、触れた先にて、
はたしてユイは何を求め願うのか。
少女のちょっと不思議な冒険譚。
ここに開幕。
あだ名が242個ある男(実はこれ実話なんですよ25)
tomoharu
児童書・童話
え?こんな話絶対ありえない!作り話でしょと思うような話からあるある話まで幅広い範囲で物語を考えました!ぜひ読んでみてください!数年後には大ヒット間違いなし!!
作品情報【伝説の物語(都道府県問題)】【伝説の話題(あだ名とコミュニケーションアプリ)】【マーライオン】【愛学両道】【やりすぎヒーロー伝説&ドリームストーリー】【トモレオ突破椿】など
・【やりすぎヒーロー伝説&ドリームストーリー】とは、その話はさすがに言いすぎでしょと言われているほぼ実話ストーリーです。
小さい頃から今まで主人公である【紘】はどのような体験をしたのかがわかります。ぜひよんでくださいね!
・【トモレオ突破椿】は、公務員試験合格なおかつ様々な問題を解決させる話です。
頭の悪かった人でも公務員になれることを証明させる話でもあるので、ぜひ読んでみてください!
特別記念として実話を元に作った【呪われし◯◯シリーズ】も公開します!
トランプ男と呼ばれている切札勝が、トランプゲームに例えて次々と問題を解決していく【トランプ男】シリーズも大人気!
人気者になるために、ウソばかりついて周りの人を誘導し、すべて自分のものにしようとするウソヒコをガチヒコが止める【嘘つきは、嘘治の始まり】というホラーサスペンスミステリー小説
クールな幼なじみの許嫁になったら、甘い溺愛がはじまりました
藤永ゆいか
児童書・童話
中学2年生になったある日、澄野星奈に許嫁がいることが判明する。
相手は、頭が良くて運動神経抜群のイケメン御曹司で、訳あって現在絶交中の幼なじみ・一之瀬陽向。
さらに、週末限定で星奈は陽向とふたり暮らしをすることになって!?
「俺と許嫁だってこと、絶対誰にも言うなよ」
星奈には、いつも冷たくてそっけない陽向だったが……。
「星奈ちゃんって、ほんと可愛いよね」
「僕、せーちゃんの彼氏に立候補しても良い?」
ある時から星奈は、バスケ部エースの水上虹輝や
帰国子女の秋川想良に甘く迫られるようになり、徐々に陽向にも変化が……?
「星奈は可愛いんだから、もっと自覚しろよ」
「お前のこと、誰にも渡したくない」
クールな幼なじみとの、逆ハーラブストーリー。
運よく生まれ変われたので、今度は思いっきり身体を動かします!
克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞」重度の心臓病のため、生まれてからずっと病院のベッドから動けなかった少年が12歳で亡くなりました。両親と両祖父母は毎日のように妾(氏神)に奇跡を願いましたが、叶えてあげられませんでした。神々の定めで、現世では奇跡を起こせなかったのです。ですが、記憶を残したまま転生させる事はできました。ほんの少しだけですが、運動が苦にならない健康な身体と神与スキルをおまけに付けてあげました。(氏神談)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる