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―― 第一章 ――
【八】テレビ
しおりを挟むその後、縁の手配した車で帰宅した時野は、家に入ると何気なくリビングでテレビをつけた。最近では動画サイトやWeb配信を見る機会が圧倒的に増えてはいるが、それでも無意識にテレビをつける事は多い。
すると、『衝撃映像特番』として、視聴者から寄せられた映像が放送されていた。
「どうせ合成だよな」
ポツリと呟きつつ、何やら犬とも猫ともつかない野生の大きな動物に襲われたという映像を、漠然と時野は見ていた。現代において、都内に凶悪な野生動物が出たとなれば、一大ニュースだが、そんな報道はなされていない。視聴者の撮影したという映像もぼやけていて、その全体像は映っていなかった。
それから冷蔵庫へと向かい、取り出した野菜ジュースをコップに注ぐ。
それを飲んでいると、番宣のCMが流れてきた。
『この、天才発掘プロジェクトの最初の難関、2KHの立体パズルを、君は解くことが出来るか? 第一の試練の合格者には、五十万円を贈呈しよう。正解者は、訳知り顔で教壇に立つ先生を、たった一年早く生まれただけで勉強が出来る気になっている先輩を、あるいは生意気な生徒や後輩の鼻をあかすことも可能かも知れない』
いつか挑発的だと感じた、研究者がにやりと笑っているそれだった。
何とはなしに眺めていた時野は、その五十万円で今しがた寿司を食べてきた事を思い出す。まだ当該の番組である『インテリジェンス・デザイン』は放送されていない。放送日は、明日だ。
「もうすぐテスト期間だな」
ポツリと呟き、コップを流しに置いてから、時野はリビングのソファに座りなおした。時野の両親は長く海外に赴任しているので、現在は一人暮らしだ。心配した両親がハウスキーパーを手配してくれているので、週に一度作り置きや掃除をお願いしているが、時野自身もある程度の家事はこなしている。
その後テスト勉強を真面目に始めた時野は、ノートにペンを走らせつつ呟いた。
「寿司、楽しかったな」
気づけばその頬が持ち上がっていた。友達と出かけるなんて、初めての事だった。
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