インテリジェンス・デザイン

猫宮乾

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―― 第二章 ――

【三十二】世界の危機

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 危機……とは、なんだろう。戦争でも起こるのだろうか?

「詳細は、日本チーム――救世主チームのメンバーに話すことにする。とりあえず、会場の皆は、これを見て欲しい」

 廉がそう言うと、モニターに映像が映し出された。

「あ」

 思わず時野は声を上げた。そこには、先日みかけた化け物のような動物が映し出されていたのだ。だが、それだけではなかった。

「うわぁ……」

 相が嫌そうな声を上げた。眉間に皺を寄せている。

 モニターの向こうで、その動物は、人間を襲っていたのだ。何匹もの動物が、人間に食らいついている。時野はそれを見て吐き気を覚えた。

「現在、この生物、俺達は『キメラ』と呼んでいるが、これらが溢れかえっている。この島でさえ、数頭確認されている。強い生命力を持っている。その上、人を食べる。獰猛な肉食獣だ。銃弾を撃ち込んでも、息絶えることはない」

 その言葉に、画面の下を確認すると、その映像は日本のニュース番組の映像だと分かった。まさか、日本にもこのような動物がいるのだろうか。時野は固唾をのんで見守る。

「今、この会場に集められているのは、単純にクイズ大会に関わった者だけではない。メディア陣は別だが、基本的には、大なり小なり、なにがしかの才能を持っている、天才が集められている。何故だと思う? それは、勿論保護するためだ」

 廉が険しい表情になった。

「このまま行けば、計算上、そう遠くない未来、人類は滅びる。要因は、このキメラだけではないけどな。そこで最高の知性を持つ人類を隔離し、保護することが決まったから、ここへ召集したんだ。無論、保護だけが目的ではない。対抗手段を模索するためでもある」

 そんなことを急に言われても実感がわかない。時野は困惑して周囲を見た。まっすぐに要は映像を見ている。縁も眉間に皺を刻み、目を細めてそれを見ていた。相に視線を向けると、目が合う。相は静かに笑った。

「ちょっと信じられねぇよな……」
「おぅ……嘘だよな……普通に考えて。これも演出の一環か……?」
「でも俺達……あれ、見たよな。この前、この島で」

 相の言葉に、時野は反論できなかった。

「一度解散とする。それぞれには、後ほど詳細を届ける。皆、部屋に戻れ」

 廉がそう宣言すると、静まりかえっていた会場に、囁き声が満ちた。
 構わず廉はその場を後にする。

「本当に、世界を救うことになるのですか」

 縁がポツリと言った。要は、思案するような瞳で、廉の消えた方を見ている。
 その後一同は、とりあえず部屋へと戻ることにした。

 これが、ある種の契機ともなった。
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