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―― 第三章 ――
【四十三】再生
しおりを挟むそして再生した瞬間、それまで光り輝いていたモニターの電源が落ちた。どころか、室内が停電した。
「壊れてんのか?」
相の言葉に、要が焦るように首を振った。
「違う、スペックが足りないんだと思う。ああ……クイーンズ教室の俺のパソコンがあれば……」
悲痛な声が響いた時だった。
「あるぞ」
四人の後ろから声がかかった。見ればニヤリと笑った廉が、白衣のポケットに両手を入れて立っていた。
「エリア10に運んである。すぐに行け」
その言葉に、要が走り出した。いつも冷静沈着な要のこういう姿は珍しい。
そのまま階段を走り、四人は地下10階に降りた。
そこにあったのは、一見すると、普通の日本用のパソコンだった。要はタワー型のパソコンに、壁に設置されたスクリーンへ接続する端子をさす。それから、USBを挿入した。
今度は、パソコンの電源が落ちることはなかった。
「行くよ」
そう言って、要がENTERキーを押した。
すると、走馬燈のように、いっきにめまぐるしく代わる画像が流れた。同時に無理に圧縮されたような音楽も流れた。それは、一瞬で終わった。
「録画できた……」
要がマウスを操作しながら呟く。そして、先ほどの映像を、一枚一枚の画像として再表示させた。そこには膨大な量の画像がある。全てが動画ファイルの形式で、要が試すように一番最初のものをクリックすると、今度はゆっくりと音楽を伴って流れた。字幕のように、神代文字も表示されている。映し出されているのは、紛れもない人間と、そして現代とはどこか異なる科学技術だった。
古いものは石器時代のものらしい。要が別のウィンドウを開き操作すると、楽譜が表示され、その下にひらがなが現れた。
「音からあいうえお表を作ったのですか?」
「うん」
頷いた要が、動画ファイルの音声を解析させる。今度開いたファイルには、「素戔嗚尊」と表示された。音楽と日本語と神代文字が対応するように動く。
「文字の解読も出来る。これでキメラを退治することができるようになる。後は、三種の神器を探すだけだよ」
要が信じられないといった表情で画面を見ながら呟いた。
その時再び後ろから声がかかった。
「三種の神器なら、既に確保してある」
やはり廉の声だった。要が驚いたように振り返る。
「使い方は分からないけどな」
歩み寄ってきた廉が、無造作にポケットから黒い物体を三つ取り出して、パソコンの乗るデスクの上に置いた。
「オカリナ……?」
眉を下げて、時野が自信なく呟いた。オカリナに見える。
「分からん。次はこれを調べて、使い方を発見してくれ」
「どこでこれを?」
要が呟くように言うと、廉が楽しそうに笑った。
「日本は不思議がいっぱいだ」
「廉……ごまかさないで。冗談は良いから」
「現時点でお前に知らせる情報はない」
「発見地点にヒントがあるかもしれない」
要が不機嫌そうに声をあげる。苛立っている姿など、時野は初めて見た。
「無いな。断言する。お前は余計なことを考えずに調べればいい」
そう言うと廉は踵を返した。すると要は疲れたように肩を落としたのだった。
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