後天性オメガになった俺の顛末

猫宮乾

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―― 本編 ――

008

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 上機嫌の春木の声に、まだ自体が信じられないままの俺は、腹部に手を当てつつ頬が熱くなってきて困ったのだった。



 ――そんな、懐かしい記憶がある。今、俺はボディーガードの職に戻るのは春木に止められてしまったことと、物理的に子育てが多忙で専業主夫をしている。春木はかなり育児を手伝ってくれるが……正直春木の子供と言うだけあって、俺と春木の子供は幼少時から誘拐犯などに付け狙われすぎたので、俺自身が子供の専属ボディーガード状態で日々を過ごしている。

 まず朝、俺は早く仕事へ行く春木と玄関で向かい合う。子供達との時間を持ちたいからと、春木は早朝に仕事へ行って早く帰ってくるようになった。

「いってきます」
「ん。いってらっしゃい」

 玄関で。

 俺はいってらっしゃいのキスをして、春木を送り出す。そしてその後子供達――今、俺には三人の子供がいるのだが、幼稚園へ行く長男と双子の次男・三男に食事を与える準備とお弁当作りをする。俺は料理なんて全然出来なかったのだが、週に三度来てくれるハウスキーパーさんに教わってからは、なるべく自分で作るようになった。俺が作ると、春木の機嫌がよくなるというのも理由の一つだ。

 そして夜が来る。

 玄関で、朝と同じように春木を出迎えて、俺は春木におかえりのキスをする。春木は俺を抱きしめる。絵に描いたような幸せな新婚生活――だとは思うが、結婚してもう五年になるのに春木は年々甘さを増していくのが驚きだ。

「ねぇ、今日。君が欲しいな」
「っ、その……子供達のことは早く寝かしつける……」
「手伝うよ」

 そんなこんなで。
 何かと悩むことも多かった俺ではあったが、今は溺愛を甘受している。

「ああ、本当に。俺は幸せ者だね」

 春木はそう言うと、ギュッと俺を抱きしめ直した。そして指先で俺の耳の後ろをなぞってから囁いた。

「愛してる。君は?」

 そう言って、チュッと耳の下に口づけられた俺は真っ赤になってから、春木の体に両腕を回した。

「言わなくても分かってくれ……」
「分かるけどね? 聞きたいんだ」
「あ、あ……あい……愛してる」
「よく出来ました」

 今度は俺の額に口づけて、それから春木が俺を腕から解放する。いちいち赤面してしまう俺の頬は、やはり熱い。だが、現状が幸せすぎて怖いほどだから、夢ではないかと時に怖くなる。けれど、この夢が覚める気配はない。

 この夢は、覚めない。

 仮に全てが夢だったならば、俺はもう嘆いてばかりいるのではなく、今度は自分からビッチングさせてもらえるのを頼み込むくらい、積極性を発揮しようと思う。もう俺は、春木からの愛を疑わないし、俺もまた、春木を、愛しているのだから。無論、子供達も。

 これが、後天性オメガになった俺の顛末である。オメガ転換は怖いという話も聞くが、一つここに幸せな例があることは、述べておきたい。

 今、俺は幸せだ。




 ―― 終 ――




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