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第2話 ザコキャラ転生 ①
しおりを挟む目の前に居る男は、どこからどう見ても山賊だった。
ゲーム「ラングサーガ」にも登場した雑魚キャラの一つだ、その男がこちらの事を親しげに「ジャズ」と呼んでいた。
「あのう、ジャズとは俺の事ですか?」
「おめー以外に誰が居るんだよ」
ふーむ、やはり自分の名前はジャズと言うらしい、そんな名前のキャラクターが、ラングサーガに登場する勇者率いる義勇軍の仲間になる奴に居たっけ?
………いや、居なかったな、ゲーム知識でも心当たりが無い。
それに、この目の前に居る山賊風の男はこちらに対して親しげに話し掛けていた。
まるで自分も山賊の一味みたいな接し方だ。
まさかとは思うが、一応尋ねてみるか。
「あのう、つかぬ事をお尋ねしますが、俺達って、そのう、山賊、だったりします?」
この質問に、目の前の男は呆れ顔をして嘆息した。
「………はあ~、ジャズよお、おめーさっきから何言ってんだ? 俺たちゃ泣く子も黙るポエム山賊団だろうが、幾ら新入りだからってテメーの入っている山賊団の名前ぐらい覚えとけ」
マジか~~!? まさかの山賊転生いい~~!
しかもポエム山賊団って、ゲーム序盤で勇者にやられる雑魚キャラじゃねえか!!
そして自分はその山賊団の下っ端! つまり山賊の子分、ザ・小者、勇者に倒される役所じゃねえか!!!
冗談じゃない! このままじゃ勇者に殺されちまう! 何とかせねば!
まず真っ先に思いつく事といったら、逃げる。
………いや、駄目だ、山賊なんてアウトサイダーな連中は仲間の裏切り行為に対して容赦しない。
もし逃げたらきっと落ち着き先までやって来て、始末されるに違いない。
ここはやはり、誠意を持って対応するべきだろうな。
山賊の頭目に会って、山賊団を抜けて足を洗うと言えば一応筋は通せる。
まあ、制裁はされるだろうが、折角ゲーム「ラングサーガ」の世界に転生したんだ。
勝手知ったるゲーム世界、ゲーム知識でこれからやっていく為にも、今ここで山賊になり続ける必要は無い。
よし! 足を洗おう。そして第二の人生を謳歌しよう。
そうと決まれば早速行動だ、まずは山賊の頭目に会わなければ。
目の前の男に尋ねてみよう。
「あのう、すいません、ちょっと聞きたい事があるのですが、山賊・・・ポエムの旦那は今どこに?」
「何だあ? 頭に何か用か? 頭ならポエム砦に居るだろうが、きっと今頃、この前襲撃した奴隷商の荷馬車の中に居た女とよろしくやってる事だろうよ、へへへっ、羨ましいねえ」
ふむ、ポエムはここには居ないか、ポエム砦って事はここからそう離れていない場所だよな。
取り敢えずそこまで行ってみるか。
「あのう、俺ちょっと野暮用がありまして、ポエム砦に行きたいのですが、どこら辺にありますか?」
この質問に対し、目の前の男は眉根を吊り上げて怒りの表情になり、腰にある曲刀のシミターの柄に手を掛けた。
「おいジャズ、まさかとは思うがおめー、怖気づいた訳じゃねえよな?」
男の目に危険な光が宿る、やばい! 何かやばい。
今までの親しげな接し方とは打って変わって、何やら殺気の様なものが感じられた。
素人の自分でもわかるぐらいに。
急ぎ、取り繕う。
「い、いえ、大した用では無いのですが、お頭は何処かな~と思っただけですから」
この答えに、男は手に掛けたシミターから手を離し、殺気を消し、普通の表情へと顔を戻した。
「ジャズよお、今朝説明されただろうが、モー商会の荷馬車を襲うまでは戻ってくるなって、てっきり怖気づいて逃げ出すかと思ったぜ、もし逃げたら俺はおめーを殺らなきゃならねえ、めんどくせーだろ?」
「は、はい、そうでしたね」
いかん、これじゃあいかん。今は大人しくしておいた方が無難だ。
自分は戦いとは無縁の世界からやって来たんだ、ここでこの男とやり合っても恐らく勝てっこない。
それに刃のある武器を見ると怖くなってくる。
自分がいつ斬られるかと思うと足が竦む。
ジャズがどれ位戦えるのかも分からん、ここは大人しく様子見をしよう。
それにしても、今はその、モー商会とかいう奴の荷馬車をこれから襲う事になっているのか。
罪を犯したくは無いんだが、今は下手に逆らわん方が身の為だな。
とんだホットスタートだよ。
森の中で、自分と男の二人はお互い少し距離を取り、森から覗える街道沿いを眺めながら身を潜めている。
こうしていると本当にこれから犯罪を犯すんだなと思い、後悔の念しか無い。
(このままじゃ駄目だよな、こんな山賊に居たんじゃ何時勇者と出くわして退治されるかわかったもんじゃない、早いとここの山賊団を抜けないと。)
これから先、この世界での目的は、まず山賊を辞めて足を洗う。
それからゲーム知識を使ってこの世界で上手く立ち回ってやっていく事。
この二つだ。その為にも何としても生き延びないと。
決意も新たに、まずは目の前の問題をこなそうと考えていた、その時だった。
『山田さん、山田太郎さん、聞こえますか?』
不意に、頭の中から声が聞こえた。この声は確か、女神様だ!
「女神様、女神様ですか?」
『しーーっ、静かに、今山田さんの頭に直接語りかけています、貴方も頭で考えて下さい、それで会話、いえ、念話できます』
(こ、こうですか、聞こえますか?)
『はい、聞こえます』
(女神様、酷いじゃないですか、俺、山賊に転生しちゃったじゃないですか、どうするんですか)
『本当に申し訳ありません、実は少々こちらの方で手違いがありまして、本当にすいません、そして、一度転生に成功したらもう後戻りは出来ません、山田さんはその身体でそちらの世界で生きていかねばなりません』
(そ、そんなあ、俺はどうすれば・・・)
『ですが、救済処置として、山田さんの要望を一つ聞く事になります、まず、ユニークスキルの一つですが、「メニューコマンド」というものがあります、これは変える事が出来ません、基本スキルになります』
(メニューコマンドですか、ゲームをやり込んできたので多少理解できます、それで、もう一つのユニークスキルというのは?)
『はい、そのもう一つというのが、山田さんの望むものならどのようなスキルでも一つだけ与えます、山田さん、何でも一つ、スキルを仰って下さい』
なに!? マジか、どんなスキルでもいいのか、いや、そうなってくると色々悩むな。
どんなスキルがいいのかな。いや、待てよ、自分は戦闘が得意じゃない、と思う。
ジャズの事だからはっきりとは解らないが、少なくとも自分は戦闘をした事が無い。
だったら、戦闘で何か切り札になるようなスキルにしよう。
ふーむ、戦闘の切り札か………あ! そうだ、あれがあるじゃないか! あれにしよう。
(女神様、もう一つのユニークスキルなのですが、スパロボの「精神コマンド」というのがありまして、その精神コマンドが使える様にして欲しいのですが)
『精神コマンドですね、はい、理解しています、………………はい、これで山田さんのユニークスキルが二つ使える様になりましたよ』
(ありがとうございます)
『それと、これは餞別なのですが、スキルポイントを10ポイントと、ショップポイントを999ポイントをサービスしておきます、お役立て下さい』
(え? よろしいのですか、有り難く頂きます)
『それでは山田太郎さん、これからの貴方の人生に幸あらんことを』
そう言って、女神様の声が頭から聞こえなくなった。
やったぞ、これで自分にもユニークスキルが使える様になったぞ。
おまけにスキルポイントとショップポイントが手に入ったし。
いよいよ人生の転機が訪れたって感じだ。
しかし、喜んでいる場合でもない、これから荷馬車を襲撃する片棒を担ぐ事になりそうだ。
はっきり言ってそんな事してられない。何とか状況を打破しなければ。
色々と考えていたその時、少し離れたところに居る男がこちらに対して急かすように言った。
「おいジャズ! 来たぞ! お客さんだ!」
遂に荷馬車が来てしまったか、さて、どうする ジャズ。
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