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第85話 女戦士フィラ ③
しおりを挟む冒険者ギルドへ着いた、フィラを冒険者登録する為だ。
早速受付嬢の元へ向かう事にした、のだが、ここでガーネットと遭遇した。
ガーネットは何やら依頼票を見て、うんうんと唸っていた。
今日の仕事の依頼でも探しているのかな? ちょっと声を掛けてみよう。
「やあ、ガーネット、仕事を探しているのかい?」
ガーネットはこちらに気付いて振り向き、俺を見てちょっとだけ驚いている様子だった。
「あら、ジャズ久しぶりね、………………ねえ、ジャズ、貴方じゃないわよね?」
「はい? 何が?」
ガーネットは何か、こちらの事を上から下まで見て、値踏みしながら聞いて来た。
別に俺、何か悪い事をしていないのだが。
しどろもどろしていると、ガーネットは更に聞いて来た。
「ジャズー王子って、ジャズの事じゃないわよね?」
「ジャズー王子? 誰それ? 俺の名前はジャズだよ、ジャ・ズ・、ジャズーなんて伸ばさないよ。」
「………そうよね、ジャズじゃないわよね、ジャズは王子って感じじゃないものね。」
ふーむ、ジャズー王子? 何の事だろうか? さっぱりだ。
「ガーネット、話が見えないんだが、ジャズー王子ってのは何だい?」
「え? ジャズ知らないの? こういうのは寧ろ軍人さんが情報を握っているものなんじゃないの?」
ふーむ、そう言われても、今一ピンと来ないんだが、詳しく聞いてみるか。
「何だいガーネット、ジャズー王子ってのは?」
「女王よ、女王レイチェル様にお兄さんが居るらしいのよ。」
「女王レイチェル様? ああ、即位したばかりの女王様だったよな、へえ~、お兄さんが居るんだ、知らなかったな。フィラは知っていたかい?」
フィラに話を振ると、フィラは簡潔に答えた。
「いえ、存じません、ご主人様。」
「そうか、俺もだ、なあガーネット、ジャズー王子がどうしたって?」
「………………その前に、その娘誰? 私まだ自己紹介されていないんですけど。」
おっと、そうだった、フィラを紹介しなければ。先にしておくんだったな。
「ガーネット、紹介するよ、フィラだ。アマゾネスで、クラスはウォーリアだよ。」
フィラは一歩前に出て、自分の胸に手を添えながら自己紹介した。
「初めまして、フィラと申します、ジャズ様の戦闘奴隷として買われました。先程の紹介通りアマゾネスです、クラスはウォーリアです、よろしくお願いします。」
「へえ~、ウォーリアかあ、中級職よね、強そうね。私はガーネット、弓使いでクラスはアーチャーよ、まだまだ駆け出し冒険者ってとこだけど、これからの伸びしろ次第ってところかしら、宜しくね、フィラ。」
うむうむ、お互いの自己紹介も済んだ事だし、早速先程の続きを聞こう。
「それでガーネット、ジャズー王子が何だって?」
「そうそう、それよ、今その話題で持ち切りよ。ジャズー王子を捜して、王都に連れて行けば金貨5枚貰えるらしいわよ、金貨よ金貨。流石王族よね、普通人探しの依頼の報酬って、銀貨2、3枚が相場なのに、えらく奮発するわよね。」
「へえ~~、金貨5枚か、随分と気前がいいじゃないか。そんなに大金を出して、女王様はお兄さんをどうしたいんだろうな?」
「さあ? 詳しくは知らないけど、兎に角、女王レイチェル様が、ジャズー王子を捜して王城に連れてきた人に金貨5枚くれるってさ。それで今何処の町や村、王都なんかの冒険者達が躍起になって捜しているってところなのよ。」
「なるほどね、それで皆ジャズー王子を捜しに出かけているって訳なのか、ガーネットは捜しに行かないのかい?」
「私はパス、何だか出遅れたって気がして、姐御も居ないし、普通の依頼を受けて日銭を稼ごうと思っていたところよ。」
「そうなんだ、俺達はこれからフィラの冒険者登録をしに来たんだ。クラッチの基地にフィラを置いておけないらしくてね、自分の寝床と飯代を稼いでもらおうと思ってね、まあご主人様としてはどうかと思うんだけどね。」
「そうなの、今は受付は空いている筈だから行ってくれば?」
「ああ、そうしよう、フィラ、行こうか。」
「はい、ご主人様。」
ガーネットと一旦別れ、俺達は受付へと足を運ぶ。確かに受付は空いていた。
直ぐにでも対応して貰えるだろう。
受付カウンターの前まで来た。早速受付嬢に声を掛ける。
「すいません、冒険者の登録をしたいのですが。」
「はい、冒険者登録ですね、……あれ? ジャズさんは確か既に登録をされていると思うのですが。」
「あ、違います、俺じゃなくて、この娘です。戦闘奴隷を買ったので、登録をしようと思いまして。」
「ああ、そうだったんですね、解りました、ですが、その娘も既に登録をされている筈と思うのですが。」
え? フィラが?
ここでフィラが説明しだした。
「ご主人様、私は確かに既に登録をしていますが、それは前の主人の時の話です。今はジャズ様にお仕えしていますので、今までのギルドカードを抹消して、新しくカードを作りたいと思います。前の登録では名前は「ネモ」だったので、それは嫌なのです。」
ふーむ、そう言う事か、つまり、フィラとして登録したいと考えているって事なんだな。
中々慕われているな、俺は。
「ご主人様に付けて頂いた名前じゃなければ嫌なのです。どうかご主人様、お願いします。」
「解った、フィラがそこまで言うなら、前の登録を抹消して、新しく登録をし直そう。それでいいかい、フィラ。」
「はい! ありがとうございます! ご主人様。」
と、ここで受付嬢が話に入って来た。
「え? 本当によろしいのですか? ネモさんはギルドランクCまで出世しましたが、本当によろしいのですか? 今までの登録記録を抹消してしまっても。」
なに? ギルドランクC、それはそれで凄い事だと思うのだが、何だか勿体ない気がするな。フィラに聞いてみよう。
「フィラ、ギルドランクCまでいったのかい? だったらそのままの方がいい様な気がするのだが、登録を抹消するという事は、またランクがFからって事になるんだよ。いいのかい?」
するとフィラは迷う事無くはっきりと口に出した。
「はい、私は今のご主人様にお仕えしていますので、ジャズ様と共にやっていきたいと考えております。ジャズ様に付けて頂いた名前で登録をしたいのです、ランクなど、何時でもいいのです。ご主人様、お願いします。フィラという名前で登録させて下さい。お願いします。」
うーむ、フィラがそこまで言うのならば、フィラのしたい様にさせよう。
「受付嬢さん、そう言う訳なんで、ここは一つ、前の登録を抹消して、新しく登録をし直すという事で、進めていきたいと考えています。頼みます。」
「解りました、そう言う事であれば、以前のカードを抹消させて頂きます、そして、改めて新しいギルドカードをお作り致します。それでよろしいですか?」
フィラが答える。
「はい、お願いします。」
「では、少々お待ちください、今、以前の登録を抹消していますから、その後で新たなギルドカードをお作り致します。」
受付嬢の人は、何やら魔道具に向かって何かの作業をしていた。
まあ、他でもないフィラがそうしたいと考えているならば、それを尊重しよう。
折角Cランクまで上がったのに、少々勿体ないと思うが。
まあ俺に仕えるという事で、気持ちも新たに、カードの抹消を希望しているという事か。
ご主人様冥利に尽きるってもんだな。
しばらくして、チーンという電子レンジが鳴る様な音がして、フィラの新たなギルドカードが出てきた。
「お待たせ致しました、こちらがフィラさんの新たなギルドカードになります。どうか大切に扱って下さい。」
「ありがとうございます、大切にします。」
と、ここで登録料の銀貨3枚を払い、フィラがカードを受け取る。
フィラはカードを見て、嬉しそうにしながら名前の部分を何度も見て、笑みをこぼしていた。
俺の付けた名前が、そんなに嬉しいものなのかと、ちょっと解らないが、まあフィラが喜んでいるので、いいかなと思う。
よーし、フィラも俺と同じFランクの冒険者になった事だし、これでフィラも自分で依頼を受けて金を稼げる様になったな。
まあ最初は銀貨を何枚か渡しておくか。
そう思った時だった、後ろから突然、大声で呼ばれた。
「ネモ! ネモじゃないか! 俺の奴隷のネモだろう! どうしてここに? それにその身体、足と腕が治ったのか?」
何だ? フィラの事をネモと呼ぶという事は、もしかしてこいつは以前のご主人様の貴族の男爵ってやつか?
随分と丸々と肥え太っているな。背も低いし。
「………今の私はフィラと言います。ネモではありません。失礼。」
フィラがそう言いながら、こちらへと寄って来たが、フィラの事をネモと呼ぶ男爵はフィラの腕を掴み、自分の方へと引き寄せようと力を加えた。だが。
「………放して下さい、貴方にはもう従いません。今の私はフィラです。」
「嫌! 放さんぞ! お前はネモだ! 俺の奴隷だ!」
おいおい、何だか面倒な事になってきましたよ。
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