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第104話 旅 ①
しおりを挟む「にわかには信じられませんが。」
「しかし、事実です、コジマ司令。」
ここはクラッチの基地、その司令室だ。
俺とジャズー王子は、早速ここへと出向き、今、コジマ司令に俺達の置かれた状況を話した。
「その、一つの器に二つの魂が入って、と言うくだりは、まあ、本人たちがここに居るので、信じるしかなさそうですが、本当に君はジャズ君なのかね?」
「はい、自分がジャズです。」
「ふーむ、ややこしいねえ、慣れるまで少し時間が必要だよ、私はこういうのに慣れていなくてね。」
まあ、無理も無いよな。しかし、これでコジマ司令には俺達の事は伝わった筈である。
後は、これからの事を、相談しなければ。
「司令、早速で心苦しいのですが、暫くの間、自分の自由な行動を許可して頂きたいのですが。」
この願いに、コジマ司令は「うーーん」と難色を示した。
「ジャズ君、君の言う、フィラと言う女性を探しに行きたいという事だが、その間、この基地の仕事はどうするのかね?」
「そ、それは。まだ、何とも………。」
そうだよな、都合がいい話だよな。今の自分はこの軍に所属している兵士だ。
そんな一介の兵士が、自由な行動をしたいと願い出ても、許可はされないだろう。
こうしている間にも、フィラがどうにかなっていたらと思うと、気が気じゃない。
早くフィラを探しに行きたいが、さて、コジマ司令から許可は下りるだろうか?
「ふう、解った、ジャズ君、君の自由な行動を許可する。」
「え!? 本当でありますか? 司令。」
「ああ、君、この軍を辞めるつもりだったろう? 君が軍を辞めたら、それこそ軍にとって大きな損失だよ。それならいっそ、君の自由を許した方がいい。私はそう判断した。」
「司令………、ありがとうございます。貴重な時間、無駄にはしません。」
「そうしてくれたまえ。ジャズ君、君の自由を許可したという事は、君はアリシア軍人として、各地を方々する事になるだろう。くれぐれも、アリシア軍人として恥じない様、心掛けてくれたまえ。いいね。」
「は! 勿論であります。」
よかった。コジマ司令から、俺の自由な行動の許可が下りた。これで捜しに行ける。
「それと、ジャズー王兄殿下、貴方はこれから如何するおつもりでしょうか?」
「はい、ジャズと話し合った結果、やはりこのまま王都へ行こうかと思っています。」
「そうですか、解りました。くれぐれもお気をつけ下さい。」
「はい。」
よっしゃ! 話が纏まった。これで何時でも行ける。後は。
「それでは司令、自分たちはこれで失礼致します。」
「うむ、気を付けたまえよ。ジャズー王兄殿下の事、くれぐれも頼むよ、ジャズ君。」
「はい! では、行って参ります。」
こうして、司令室を後にして、基地の外へと出る。
サキ少尉やニールたちには、一応秘密にしてという事にした。
説明するのが面倒なのと、あと、照れくさいからだ。
それに、俺の姿が変わった事に、少なからず混乱が生じる事も考慮して、このまま黙って行くつもりだ。
冒険者ギルドに着いて、早速ガーネットに頼み事をする。
「ガーネット、ちょっといいか?」
「何? ジャズ。」
「頼みがあるんだ、ガーネットにはこのまま、ジャズー王子を王都まで護衛して欲しいんだが、頼めるかい?」
「ええ!? 私が? いいの? だって、女王の前に王子を連れて行ったら、金貨5枚よ。いいの?」
「ああ、問題ない、直ぐに出立して欲しいんだ。大丈夫かい?」
「ええ、それはもう、準備は出来ているわ。」
よし、これで、ジャズーを王都に送り届ける手筈は整った。
後は、当の本人の問題か。こればっかりはな。
「なあ、ジャズー王子、いいんだよな? このまま王都へ向かっても。」
「ええ、いいですよ。私はもう、逃げる訳にはいきませんからね。」
そうなのだ、ジャズー王子は一つ、不安を抱えていた。
妹のレイチェル様が女王に即位してから。
兄のジャズーのせいで、本来の隣国での豊かな暮らしを追い出されたきっかけになってやしないかと、ジャズー王子は思っている。
その事で、妹の怒りを買っているのではないかと、不安になっているらしい。
俺は考え過ぎだと思うのだが、こればっかりはどうにも。
相手のある問題だし、ここは俺は下手に動かない方がいいかもしれない。
だが、ジャズー王子は、もう逃げずに、正面から話すと言った。
それを、応援したいとも思う。
早朝、乗合馬車の運賃を払い、壁門から町を出て、馬車に乗り込む。
ここから王都まで、馬車で二日の距離だ。
早朝から出発し、乗合馬車に揺られながら、俺達は王都まで、のんびり座りながらの旅をする。
メンバーは俺、ジャズー、ガーネット、そして姐御だ。この四人で行く。
姐御が居るので、ジャズー王子の護衛は問題ないと思う。
まあ、危険とされていたモンスターが、全くと言っていいほど居ないので、楽ではある。
姐御は、王都でシルビアの情報を探すと言っていた。あのダークガードの女だな。
俺は、王城には行かず、そのまま盗賊ギルドの義賊、ドニを探して、情報を得ようと思う。
盗賊ギルドならば、何か情報を掴んでいると思ったからだ。
ドニは知らない間柄でもないし、ここはドニを頼ろうと思う。
こうして、俺達は王都へと向かった。二日間の道程、何事も無く、無事に王都へ辿り着いた。
オーダイン王国 王都までの街道――――
「するってえと何か? あんたはその、転移装置か何かによってここまで飛ばされて来た。って訳なのかい?」
「ええ、そうです。そして、ここがオーダイン王国である事を教えて下さったので、私は一先ず、王都を目指そうと思います。」
フィラとヘイワードは、焼けた町を後にして、一路、王都までの街道を歩いていた。
「先程、モンスターと遭遇したばかりだというのに、一時間も歩かないうちにもうモンスターと遭遇ですか。この国の街道は危険なのですね。」
「いや、そうじゃねえ。何かがおかしいんだよ。今のオーダインは。普通街道はもっと安全な筈だ。なのにこのモンスターとの遭遇率は只事じゃねえ。」
「兎に角、戦います。」
「ああ、頼む、あんたの強さは解った。頼らせて貰うぜ。」
フィラはモンスターへ向け、突進。薙ぎ払い、直ぐに決着が着く。
「大したもんだ、その強さ、半端じゃないぜ。」
「………………。」
「どうした?」
「いえ、只、今までの自分は、こうまで強い筈はなかったと思います。きっと、ご主人様が何かして下さったに違いありません。」
「ふーん、ご主人様ねえ。」
フィラは己の力を実感していた。勿論、その力に戸惑ってはいたが。
「きっと、そうなのでしょう。ご主人様。」
気持ちも改め、更に街道を進む二人。ヘイワードは心底安心した。
「あんたがいれば、王都までの護衛をして貰うのは、安心だな。」
「私は只、王都まで行けば、アリシアまでの馬車があると、貴方に言われたからです。貴方の護衛はします、けど、王都までです。よろしいですか?」
「ああ、問題ない。王都まで歩きで三日ってところだ。それまでの間、宜しく頼むぜ、フィラさん。」
「はい、解っています。そういう約束ですからね。」
フィラとヘイワードは、お互いに情報交換をして、互いに欲しい情報を取引し合った。
そうして、現在二人は行動を共にしている。
オーダイン王国の王都までの間だが、それまでの間は、フィラがヘイワードを護衛する事になった。
こうして、それぞれが動き出していた。
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