おっさんが雑魚キャラに転生するも、いっぱしを目指す。

お茶飲み人の愛自好吾(あいじこうご)

文字の大きさ
146 / 222

第145話 サキとナナ

しおりを挟む


 三週間の休暇を貰ったので、これからどうしようと思いつつ廊下を出た時だった。

丁度そこへ、サキ隊長とナナ少尉が、廊下ですれ違うところに出くわした。

サキ隊長は前を向き、づかづかと大股で歩いていた。

一方、ナナ少尉は俯き加減で歩き、サキ隊長と目を合わせない様にしている様子だった。

 二人は無言ですれ違い、一言も無く静かに通り過ぎていく。

(何か、ぎくしゃくしているな。)

流石にこのままじゃなぁ、お二人は仲が良かったのだが、先の一件での事が尾を引いている様だ。

「サキ隊長、ナナ少尉、今お時間よろしいでしょうか?」

堪らず声を掛けていた。

サスライガー伯爵との話し合いの時、俺はナナ少尉にサキ隊長との事を取り持つと約束した。

なので、今回はそのつもりで二人の間を取り持つつもりで、何とかならんもんかと気を揉んだ。

「何だ? ジャズ曹長、何か用事か?」

「何ですの? ジャズ曹長。」

二人が同時にこちらを向き、俺の呼び止めに返事をした。

(よし、ここで二人の仲を仲裁しよう。)

そう思い、二人の元へ歩み寄り、コホンと一つ咳払いをし、話始める。

「サキ隊長、ナナ少尉の事ですが。」

俺が言うと、サキ隊長は一瞬、ナナ少尉の方を向き、そして直ぐに向き直る。

ナナ少尉は一瞬ひるみ、しかし、また俺に向き直る。

「ナナがどうした?」

「はい、サキ隊長。ズバリ言いますが、ナナ少尉の事、許して差し上げては如何でしょうか。」

俺の言葉に、サキ隊長は怪訝な表情をし、言葉を返す。

「許す? 何をだ? 許すも許さないも無いだろう。ナナは命令に背いた。だから謹慎処分を言い渡された。私にどうしろと言うのだ?」

「いえ、確かにナナ少尉は命令違反を犯しました。その事ではなく、サキ隊長がナナ少尉の、あの時の行動を許してみては如何かと思いまして。」

この言葉を聞き、ナナ少尉は割って入って来た。

「わたくし、今でも間違った事をしたとは思っておりませんわ。」

「…………ほら、ナナはこう言っている。私が出る幕では無いのだ。もういいな?」

ふーむ、いかん。このままじゃいかんよ。二人共見れば解る位には距離を置いている。

本当は怒っているのが、解ってしまう。俺にでもだ。

サキ隊長は腕を組み、ナナ少尉を見据えている。

ナナ少尉は俯き、所載無さげに指をいじくっている。

「サキ隊長、ナナ少尉は人の命が掛かっていたから、あのような行動を執ったのです。」

「どういう事? 命が掛かっていたとはどういう事だ?」

ここで、ナナ少尉が説明しだす。

「詳しくは話せませんが、あのままでしたら間違いなく領主様の身が危険でしたわ。」

「だから、何でかって聞いているんだよ。」

サキ隊長は苛立ち、ナナ少尉からの情報を聞きに来たが、ナナ少尉は話すつもりが無いらしい。

「ですから、詳しくは話せないと言っているではありませんの。」

「だーかーらー、それは何でかって聞いてるんだよ。」

うーむ、このまま平行線を辿っていては、話が前に進まないな。

「サキ隊長、ナナ少尉は、決してサキ隊長の事を裏切りたくてやった訳ではありませんでした。確かに、その理由については詳しく話せませんが、ナナ少尉だって親友に秘密にしておきたい事の一つや二つぐらいあるでしょう?」

「そりゃ、私だって、ナナに秘密にしてる事の一つや二つくらいはあるけど、それとこれとはまったく別問題だと思うけどな。」

ナナ少尉は俯きながらも、言い出せない事情を告げる。

「親友だからこそ、明かせぬ事もあるのですわ。」

それを聞いたサキ隊長は、落ち着きつつも、ナナ少尉を見つめ、一言。

「………………親友だったら、打ち明けてくれても良かったのに。何で黙って行動した?」

ふーむ、やはりサキ隊長は、ナナ少尉が裏切り行為をしたと思っている様だ。

そして、それを親友に話せなかった事として、怒っているらしい。

「私はさ、ナナとの付き合い方が今一ピンと来ないんだよ。ナナとの距離感が掴めないのさ。」

「わたくしだって、好きでサキを裏切った訳ではありませんわ。ちゃんとした理由がありましてよ。」

「その理由は明かせないんだろう? だったら話す事は無い。」

うーん、どうにも上手くいかんな。サキ隊長は頑固な所があるからな。

「サキ隊長、ナナ少尉は反省している筈です。したくも無い事をやって、人の命を守っての行動でしたから、ナナ少尉も間違ってはいないのです。」

俺が言うと、サキ隊長は腕を下ろし、半分諦めかける様に目を閉じた。

「解った解った、許すよ。許しゃいいんだろ。まったく、ナナといいジャズ曹長といい、何だっていうのさ。私はね、ただ、親友なら打ち明けて欲しかっただけだよ。それを二人して情報を共有してさ、何なのよ。」

「サキ………………。」

なーんだ、サキ隊長は元々、許していたって事か。ただ、親友に秘密にしていたから怒っていたって訳だったのか。

「私はさ、ナナとの距離感が掴めなかっただけだよ。秘密にしてる事を根掘り葉掘り聞くつもりもないしね。」

「サキ、………わたくし、貴女に謝らなければならない様ですわね、ごめんなさい、サキ。」

「ああ~~、もう~、だからいいって。許すってば。もう! ナナ、今夜あんたのとこに行くから上等なお酒を用意しててよね。」

「は、はい。解りましたわ。サキ。」

「はいはい、これでもういいだろう? 私は忙しいんだ。始末書を書かなきゃならんのだよ。」

「そうですわね、わたくしは謹慎処分中でしたし。」

ほっ、良かった、二人共上手く仲直り出来たみたいだな。

やはり隊長達は、仲がいい方がいいな。うむうむ。

サキ隊長は手をヒラヒラとさせながら、廊下を去って行った。

ナナ少尉はどこか、ホッとした様な感じで、それを見送っていた。

「ジャズ曹長、ありがとう。貴方のお陰でサキと仲直りできましたわ。お礼を言わせて頂戴。」

「俺はただ、この方がお二人にしっくりくると思い、そうしたまでですよ。」

「兎も角、ありがとう。わたくしは男嫌いですが、貴方の事は嫌いではありませんわ。」

「それはどうも。では、自分はこれより休暇を満喫したく思います故、これにて失礼致します。」

ナナ少尉に見送られながら、俺は建物の外へと出て行く。

やれやれ、何とか上手くいったか。よかったよかった。

さーて、これから休暇だ。何しようかな?

「おっと、まずは着替えないと、軍服のままじゃお休み気分が無くなってしまう。」

俺は兵舎へと向かい、ロッカーで着替えて表へ出る。

いつもの冒険者装備だ、これはこれでしっくりくる。普段着も必要かもしれないが、今はまだいらない。

よっしゃ、一丁休暇を満喫しようか。まずは冒険者ギルドへ行こう。そして簡単な依頼をこなして、休暇を満喫しよう。

 そうと決まれば、行ってみよう。俺の足取りも軽く、ギルドへ向けて歩くのだった。




しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

おじさんが異世界転移してしまった。

お茶飲み人の愛自好吾(あいじこうご)
ファンタジー
ひょんな事からゲーム異世界に転移してしまったおじさん、はたして、無事に帰還できるのだろうか? モンスターが蔓延る異世界で、様々な出会いと別れを経験し、おじさんはまた一つ、歳を重ねる。

最強賢者の最強メイド~主人もメイドもこの世界に敵がいないようです~

津ヶ谷
ファンタジー
 綾瀬樹、都内の私立高校に通う高校二年生だった。 ある日、樹は交通事故で命を落としてしまう。  目覚めた樹の前に現れたのは神を名乗る人物だった。 その神により、チートな力を与えられた樹は異世界へと転生することになる。  その世界での樹の功績は認められ、ほんの数ヶ月で最強賢者として名前が広がりつつあった。  そこで、褒美として、王都に拠点となる屋敷をもらい、執事とメイドを派遣してもらうことになるのだが、このメイドも実は元世界最強だったのだ。  これは、世界最強賢者の樹と世界最強メイドのアリアの異世界英雄譚。

無能扱いされ会社を辞めさせられ、モフモフがさみしさで命の危機に陥るが懸命なナデナデ配信によりバズる~色々あって心と音速の壁を突破するまで~

ぐうのすけ
ファンタジー
大岩翔(オオイワ カケル・20才)は部長の悪知恵により会社を辞めて家に帰った。 玄関を開けるとモフモフ用座布団の上にペットが座って待っているのだが様子がおかしい。 「きゅう、痩せたか?それに元気もない」 ペットをさみしくさせていたと反省したカケルはペットを頭に乗せて大穴(ダンジョン)へと走った。 だが、大穴に向かう途中で小麦粉の大袋を担いだJKとぶつかりそうになる。 「パンを咥えて遅刻遅刻~ではなく原材料を担ぐJKだと!」 この奇妙な出会いによりカケルはヒロイン達と心を通わせ、心に抱えた闇を超え、心と音速の壁を突破する。

独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活

髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。 しかし神は彼を見捨てていなかった。 そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。 これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。

異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。 事故は、予想外に起こる。 そして、異世界転移? 転生も。 気がつけば、見たことのない森。 「おーい」 と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。 その時どう行動するのか。 また、その先は……。 初期は、サバイバル。 その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。 有名になって、王都へ。 日本人の常識で突き進む。 そんな感じで、進みます。 ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。 異世界側では、少し非常識かもしれない。 面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。

オレの異世界に対する常識は、異世界の非常識らしい

広原琉璃
ファンタジー
「あの……ここって、異世界ですか?」 「え?」 「は?」 「いせかい……?」 異世界に行ったら、帰るまでが異世界転移です。 ある日、突然異世界へ転移させられてしまった、嵯峨崎 博人(さがさき ひろと)。 そこで出会ったのは、神でも王様でも魔王でもなく、一般通過な冒険者ご一行!? 異世界ファンタジーの "あるある" が通じない冒険譚。 時に笑って、時に喧嘩して、時に強敵(魔族)と戦いながら、仲間たちとの友情と成長の物語。 目的地は、すべての情報が集う場所『聖王都 エルフェル・ブルグ』 半年後までに主人公・ヒロトは、元の世界に戻る事が出来るのか。 そして、『顔の無い魔族』に狙われた彼らの運命は。 伝えたいのは、まだ出会わぬ誰かで、未来の自分。 信頼とは何か、言葉を交わすとは何か、これはそんなお話。 少しづつ積み重ねながら成長していく彼らの物語を、どうぞ最後までお楽しみください。 ==== ※お気に入り、感想がありましたら励みになります ※近況ボードに「ヒロトとミニドラゴン」編を連載中です。 ※ラスボスは最終的にざまぁ状態になります ※恋愛(馴れ初めレベル)は、外伝5となります

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

レベルアップは異世界がおすすめ!

まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。 そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。

処理中です...