おっさんが雑魚キャラに転生するも、いっぱしを目指す。

お茶飲み人の愛自好吾(あいじこうご)

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第155話 ギルドランク昇格試験 ①

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  セコンド大陸中央部 エストール大神殿――――


 「あ………。」

三柱の女神像のある祈りの間で、巫女の少女は肩を震わせ声を漏らした。

いつだったかのように、心がまた軽く感じたのだった。

それを見逃さなかった巫女の世話係は、声を掛ける。

「如何されましたか? 巫女様。」

世話係の方を向き、巫女は微笑みをたたえつつ、今感じた心が軽くなった事を告げる。

「先程、心が軽くなったのです。重く圧し掛かっていた暗い影が、少し和らいだようなのです。」

「まあ、それはようございました。きっと世界中に散らばったシャイニングナイツの誰かが、混沌の勢力の一端を討滅したのでございましょう。」

確かに、混沌の勢力の一部が消え去ったのを、巫女は感じていた。しかも今回はより明確な場所を感じたのである。

「ここより遥か遠い地で、混沌の気配が断たれたみたいです。しかも、はっきりと解るぐらいに一人の殿方の姿が見えました。」

巫女は少し興奮気味に説明し、世話係に話す。今までとは違う、何かの光輝の輝きのようなオーラが見えたのだ。

「場所はアワー大陸の何処かだと思います。ハッキリと感じましたから間違いありません。」

「まあ、真ですか? それが事実ならば、本当に良き事ですわね。」

世話係は巫女の額の汗を布で拭いながら、にこやかに相槌を打ち、予想を述べる。

「流石はシャイニングナイツですわね、我が女神教の誇りですわ。」

「そう………ですね………。」

巫女も最初はそう思ったのだが、何かが引っかかるのだった。巫女の知っているシャイニングナイツよりも、遥かに強いオーラを感じたからだ。しかも殿方で。

もしかしてと思い、巫女はある人物を呼んだ。

「サーシャ様、おられますか?」

名を呼ばれた人物は、転移魔法のテレポートを使ったのか、直ぐに巫女の前に姿を現した。

「私を呼んだかしら? 巫女殿。」

姿を現した女性は透き通るような青髪で、長い耳をしている事を見る限り、エルフ、もしくはハイエルフという種族である事は解っていた。

「サーシャ様、貴女様に調べて頂きたい事があります。」

「ん? 何かしら?」

「勇者である可能性を感じた殿方がいるのです。」

勇者という言葉が出た事に、世話係とサーシャは驚きを隠せなかった。

勇者出現は、女神教会の目的であるカオス復活の阻止、又は討伐である事に必ず必要な存在であるからだ。

その勇者という言葉が、巫女から発せられた事に、サーシャは喜びと同時に、また「自称勇者」ではないかと疑うのであった。

「巫女殿、あまり事を急いてはなりませんよ、確かめねばなりません。その殿方というのを。」

「はい、そこでサーシャ様にお願いです。アワー大陸へと飛び、最近混沌の眷属を討伐した殿方を捜して頂きたいのです。そして、その方の本質を見極めて下さい。」

巫女は両手を胸の前で組み、祈りのポーズで懇願した。

「わかったわかった、巫女殿が言うんだから、行ってみましょう。だから拝むな。」

「ありがとうございます、サーシャ様。」

巫女にお願いをされ、サーシャは早速転移魔法を使う。

「それじゃあ、行って来るわね。」

その言葉を言い切ると同時に、サーシャの姿は忽然と消えた。

静まり返った祈りの間では、巫女と世話係の二人が顔をみ合わせ、クスリと笑みを零す。

「遂に、見つけたかもしれません。」

「しかし巫女様、間違いという可能性もあります。以前のように。」

「解っています、ですから今回は、サーシャ様にお願いしたのです。」

少し興奮気味の巫女とは対照的に、世話係はどこか肩の力を抜いた表情をして、巫女を見つめた。

「また「自称勇者」でなければ良いのですが。大司教の横槍もあるかもしれませんからね。」

「………私は、あの方が好きではありません。どこか、信用が置けないのです。」

大司教、女神教会の重鎮であり、何かと巫女側にちょっかいを出しては巫女側を困らせている存在である。

その為、大司教側と巫女側は仲が悪かった。巫女は大司教から、どこか心が重く圧し掛かる重圧の様なものを感じていた。

「何事も無ければ良いのですが。」

「サーシャ様に任せましょう。きっと大丈夫ですわ。巫女様。」

祈りの間に、清らかな空気が流れ、二人の周りを包んでいた。


  クラッチの町――――


 俺が冒険者ギルドへと到着して、扉を開けて中へと入ると同時、賑わいが聞こえてきた。

「何だ?」

酒場が併設されている方を見やると、そこには姐御が居た。その周りを他の冒険者が囲んでいる。

姐御、戻っていたのか。ダークガードの情報は集まったのかな?

俺も姐御の下へ近づき、声を掛ける。

「姐御、いつこちらへ?」

俺が声を掛けると、姐御もこちらを向き、片手を上げ笑顔で返事をしてくれた。

「ジャズ、元気でしたか? 忍者の恰好をしているのを見るに、今日は冒険者としてここに来たのですか?」

姐御の隣にはガーネットとラット君が居たので、何か予定でもあるのかなと思い、二人にも声を掛ける。

「ええまあ、休暇を貰いましてね。ガーネットと組んで冒険者稼業ですよ。ラット君はどうしてたんだい?」

「へへへ、俺だって実績を積んでいたよ。依頼をこなして報酬を貰って、そろそろ昇格試験を受けようかと思ってたところっすよ。」

ほーう、ラット君が昇格試験か。ギルドランクは今いくつなのかな?

ラット君のギルドランクの話が出た途端、ガーネットもこちらを向き、俺に何かを期待する表情をした。

「どうした? ガーネット。」

「ねえジャズ、私達、今ギルドランク幾つだと思う。」

「へ? 俺はFランクだけど、ガーネットは?」

「私もよ!! 私もFランクよ!! ジャズ! 試験受けましょう。ランクアップよ!」

おいおい、随分急ぎだな、そんなにギルドランクを上げたいのかな。まあ、気持ちは解らんでも無いが。

ギルドランクが上がると、一目置かれるようになる。

それに一つ上のランクの依頼も受けられるようになるので、報酬もいい依頼が受けられる。

「そうだな、俺もそろそろギルドランクを上げたいと思ってたところだ。ちなみに、試験ってどういうのがあるの?」

俺が尋ねると、姐御が答えてくれた。

「色々あるわよ、採取クエストから討伐クエスト、両方って事もあるわね。」

ふーむ、いつも通りの依頼をこなす、みたいな感じかな? それならやってみるのもいいかもな。

「ガーネット、俺と一緒にギルドランクの昇格試験を受けてみないか?」

「もう、やっとその気になったのジャズ。私はいつでもいいわよ。」

と、ここでラット君も参加を申し出てきた。

「あ、俺もいいっすか? 一緒に試験を受けようぜ。」

「俺はいいよ、どうするガーネット?」

「別に構わないわよ、でも、ラットって確か、既にEランクじゃなかったっけ? 私達はFランクだから、一つ上のEランク昇格試験を受けるつもりだけど。」

そこでラット君は、なにやら思案気に指を顎に当てていた。

「その事だけどさ、俺はEランク、つまりまだまだ半人前。もう一つ上のランクであるDランク、つまり一人前になりたいんだよ。早くなりたいんだよ。Dランクに。」

なるほど、Fランクで駆け出し、Eランクで半人前、Dランクで一人前呼ばわりという事か。

「姐御のランクは幾つですか?」

「私? 私はBランクよ。」

マジか、すげえな。姐御。

まあ、姐御はシャイニングナイツの予備隊だって言っていたし、相応の実力を兼ね備えているという事か。

「なあガーネット、試験ってどうやって受けるんだ?」

「簡単よ、受付の人に言って昇格試験を受けたいって言えばいいのよ。」

「え? そんな簡単に出来るの? もっとこう、色々な依頼をこなして、実績を積まないとならないみたいな感じじゃないの?」

「ジャズったら、今更何言ってんのよ。実績なんて私達、とっくにあるじゃない。直ぐにでも試験を受けられるわよ。早速受付に行きましょう。」

お、ガーネットはやる気みたいだ、ラット君も俺達と試験を受けるらしいし。

俺も一丁、やってみますか。



 




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