おっさんが雑魚キャラに転生するも、いっぱしを目指す。

お茶飲み人の愛自好吾(あいじこうご)

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第157話 ギルドランク昇格試験 ③

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  アリシア王国 王都 女神神殿――――


 昼下がりの神殿内にて、シャイニングナイツのマーテルは日課である見回りをしていた。

「今日も異常なしですね、穏やかな日々が続いているようです。」

マーテルは、この女神神殿に務めている王族の一人、シスターサナリーの護衛を任されていた。

そんな折、ふと気配を感じたマーテルは一瞬警戒し、その場で立ち止まる。

「………どなたですか?」

気配を察知したマーテルは、その相手へ向け、警戒心を露わにした。

しかし、柱の物陰から姿を現したのはエルフの女性だった。その姿を確認したマーテルは、ほっと一息つき、警戒心を緩めた。

「まあ、サーシャ様ではありませんか、いつこちらに?」

物陰から出てきたのは、女神教会の聖騎士隊の生き字引。サーシャであった。

「やあ、ちょっとそこまで来たんで、マーテルの様子を見に来たよ。」

「突然の御来訪、心に良くはありませんわ。一体どうしたのですか?」

マーテルが尋ねると、サーシャはにこやかに返事をした。

「うーん、エストールの巫女殿が何かを感じたらしくてね、それで調査しに来たという次第なのだよ。」

「巫女様が? 何かとは? 何ですか?」

「うん、どうも、勇者がこの国に居るらしくてね、それで私が調べに来た訳さ。」

「まあっ!? 勇者ですか!!」

「しーー、声が大きい。まだ確証の無い事柄だからね、あまり騒ぎ立てない様にしてほしい。」

勇者と聞いたマーテルは、心が躍った。遂に勇者の存在が巫女の感知に引っ掛かったのだと。

「それが事実ならば、急いで確かめねば。どこですか? その勇者が居るというのは?」

「マーテルは知らないの? それらしい活躍をした殿方が居るらしいんだけど。」

マーテルはその場で思考を巡らせ、思い当たる人物を思い浮かべる。

しかし、勇者と呼べるような男は、すぐには思い当たらなかった。

「うーん、ちょっと解りません。本当に勇者かどうかも解らないのでしたら、「自称勇者」の可能性もありますからね。」

サーシャは肩を落とした、自称勇者だったら今まで何人も見てきたからだ。

今回も、自称勇者の可能性が考えられるので、あまり期待はしていなかったが。

「そっかあ、マーテルでも知らないかあ。じゃあ今回は駄目かもね。心当たり無いんでしょう?」

「………。」

「マーテル?」

マーテルが沈黙し、サーシャが尋ねると、マーテルは少し思考を巡らせて、思い当たる人物を一人思い浮かべた。

「………一人、可能性があるかも、という人物が居ます。」

「え? 誰?」

「アリシア軍の兵士をしている、ジャズさんという方です。その方は義勇軍ですよ、もっとも、勇者の可能性は低いのですが。」

マーテルの言葉を聞き、サーシャは一瞬、勇者を想定した。だが、直ぐに平静になった。

「可能性が低いのでしょう、あ~あ、また自称勇者かあ~。それに義勇軍って、700年前は凄かったけど、今の義勇軍は飲んだくればかりなのよね。あーあ、期待外れかなあ~。」

サーシャはつまらなさそうに両腕を後ろへと組み、天井を仰ぎ見た。

「でも、ジャズさんは自分の事を勇者とは名乗ってはいませんから、自称勇者とは違いますけどね。義勇軍ではありますが。」

「ふーん、義勇軍ねえー。」

「サーシャ様、もしよろしければ、クラッチの町へ行って、サスライガー伯爵に会われては如何ですか?」

「クインクレインのメンバーに? うーん、じゃあちょっと行ってみようかな。」

「それが良いと思います、伯爵でしたら、何かジャズさんの最近の情報を得ていると思いますので。」

マーテルが促すと、サーシャは直ぐにテレポートの魔法を発動させた。

「マーテルの元気な顔を見れたし、私はもう行くわね。」

「相変わらずせわしない人ですね、とても二千歳を越えているとは思えない落ち着きの無さです。」

「誉め言葉として、受け取っておくわ。じゃあね。」

そして、あっという間にサーシャは忽然と姿を消した。転移魔法を使ったのだろう。

「はあ、巫女様が感じられたという殿方、もしかしてジャズさんの事でしょうか?」

マーテルは一人呟き、ジャズの事を思い出していた。

「そうですねえ、不思議な方とは思いますが、勇者とは違いますし、解りませんね。」

そうして、マーテルはいつものように神殿内の廊下を歩き、見回りを再開したのだった。


  クラッチの町近辺 北東の森――――


 森の手前で俺達は相談している、隊列をどうするか。

「ラット君は戦士だったよね?」

「そうっすよ。」

ふむ、戦士は前衛で決まりだな。後は。

「それじゃあ隊列を組みます、俺とラット君が前衛、姐御が中衛、ガーネットが後衛、で、いいかな?」

「オッケーすよ。」

「問題無いわ。」

「ジャズ、私は後ろからパーティー全体を見る役ね?」

「そう言う事、宜しくね。」

「任せて。」

後は、戦闘になったら、どう対処するかだな。姐御は居ない者として考えないと。試験なんだから。

「モンスターとエンカウントしたら、まず俺とガーネットが遠距離から仕掛ける。で、ラット君が前衛壁役になってモンスターの足止め、いいかい?」

「いいっすよ。」

「よおーし! やってみる。」

気合十分のところへ、姐御が吟味する。

「ふーん、いいじゃない、ジャズ。ちゃんとリーダーしてるわよ。」

「どうもです。姐御は基本、待機で。」

「解ったわ。」

よっしゃ、いよいよ森へ入るぞ。緊張するなあ、俺がリーダーなんて務まるかな? まあ、やってみるしかないか。

「ガーネット、薬草はどの辺りに群生しているんだい?」

「任せて、薬草は森の浅い所に自生しているわ。まずはそこまで行ってみましょう。」

「解った、じゃあ出発。気を付けて行こう。」

こうして俺達は、森の中へと入っていった。

 森の中はうっすらとした暗さがあり、空気が澄んでいた。木々が乱立しているので、見通しは悪い。

どこからモンスターが現れるか解らん、慎重に行動しよう。気配を感じ取り、周りを見回す。

森には小動物なども生息していて、鳥の鳴き声なども聞こえる。

草の葉が揺れるのを見逃さず、一旦立ち止まり、様子を窺う。

一党に緊張が走る、だが杞憂だった。草を揺らしたのはウサギだった。

「ふう~、驚かせやがって、ウサギかよ。」

ラット君が額の汗を拭い、また前進が始まる。ゆっくり慎重に。

しばらく進んでいくと、ガーネットが教えてきた。

「この先よ、薬草の群生地は。」

お、どうやら最初の目的地に到着するらしい。まずは薬草の採取だ、Eランクの試験内容の一つだな。

しかし、先客が居た。

ヒューマン、ではない。冒険者、でもない。

俺は片手を上げ、パーティー全体の前進を止めた。

「止まって、この先に何か居る。どう見てもモンスターのゴブリンだ。」

「動いた! こっちに気付いているみたいっすね!」

ラット君も気配に気づいたみたいだ。やるなあ、斥候《スカウト》の経験があるのかな?

ガーネットに指示を出す。

「ガーネット、ここから狙撃できるかい?」

「ええ、出来るわ。ロングボウの射程と威力は凄いんだから。」

「よし、ゴブリンは二匹、右の一匹は頼む。俺は左の奴をナイフ投擲する。」

「オッケー、タイミングは?」

「俺がガーネットに合わせる。先に仕掛けてくれ。」

「解った。」

薬草の群生地は開けた場所だ、狙いを付けるには丁度いい。

ガーネットが弓に矢を番える、俺もナイフを抜き、構える。狙いは左の奴。

「狙いはバッチリ!」

ガーネットが仕掛けた。そのタイミングで俺もナイフを投擲、二人の息はピッタリだ。

ガーネットの矢が右のゴブリンの喉に突き刺さり、倒す。

俺のナイフが左のゴブリンの頭蓋を貫通し、倒す。

よし、音も無く始末した。静かなものだ、ゴブリンの増援も無い。どうやらこの二匹だけだったらしい。

「よし、一撃で倒した。やるじゃないかガーネット。」

「ジャズこそ。」

しばらく様子を見て、モンスターの気配が無い事に安堵し、再び進み薬草の群生地に到着した。

「ふう~、まずは一段落、さあ、ここで薬草を採取していこう。」

「確か、二束必要なのよね。」

「ああ、試験ではそうだったから、二束でいいよ。ラット君と姐御は辺りの警戒を頼む。」

「了解っす。」

「………へえ~、ジャズってば、案外やるじゃない。ガーネットもだけど、二人共よくゴブリンを一撃で倒せたわね。」

おや、姐御から褒められたぞ。嬉しいな。まあゴブリンが相手では実力を推し量るのは難しいと思うが。

ゴブリンぐらいなら、何とか倒せる力はあるのだよ。俺もガーネットも。

「お、俺だってゴブリンぐらい討伐できるぜ。」

おや、ラット君が対抗心を燃やしている。いいな、若者はそうでなくてはな。

次の機会があれば、ラット君にもモンスターを討伐してもらおうかな。

そして、薬草の採取を終えた俺達は、そのまま森で休息を取るのだった。




















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