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第169話 モヒカン&逆モヒ ②
しおりを挟む街道をゆく途中、人が倒れているのが遠目で見えた。
「何でしょうね? あれ。」
「行ってみましょう、人が倒れているわ。」
姉御と意見が一致し、俺達は馬車を進ませる。
山賊かとも思ったが、どうやら違うようだ。見た所五人程の人影が見える。
山賊ならば待ち伏せなどの戦術を執って来る筈であるから、たぶん違う。
人が倒れているのは一人だけのようだ、他に二人ほど座り込んでいる。鎧を着こんでいるから、おそらく騎士か何かだろう。
立っている二人は、どうやら冒険者風の男みたいだ。しかし、中々奇抜な髪型をしているなあ。
横になっているのは、見た所貴族風だ。中々お高そうな衣裳を着ている。男か女かよく解らん。中性的な顔立ちに、イケメンっぽい髪型。金髪、整った顔のパーツ。
く、イケメンだ、なにやっても様になるイケメンだ。畜生。
おっと、そんな事言ってる場合じゃないな。早速姐御が声を掛けた。
「どうしましたか?」
その声に反応したのが、モヒカンの髪型の男だった。
「いや、何でもねえ、あんたらには関係ねえ。すっこんでろ。」
おやおや? 随分と毛嫌いされたな。何やら問題かな?
「姐御、何か問題ですか?」
俺が尋ねると、他の男も似た様な対応をしてきた。
「いや、おたくらには関係ないから。ただ、俺たちゃこの人たちに用があってな。」
姉御が横になっている人を見て、怪訝な様子で尋ねた。
「この方は? モンスターにでもやられたのですか?」
それを聞いた老齢の男は、即座に応じる。
「いえ、この方は毒にやられたのです。」
「毒!? でしたら私が解毒薬を持っています。お渡ししましょうか?」
「いえ、それには及びません。この方たちが解毒薬を譲ってくださったので。」
そう言って、老齢の男は、立っている冒険者風の二人の男を見やった。
「そうでしたか、それは何より。」
「はい、………ですが………。」
ここで、老齢の男はどこか歯切れが悪く言い淀んでいた。
「まさか! 毒が抜けきらなかったのですか?」
姉御が尋ねると、座っている女性が会話に入って来た。
「それが、解毒薬を譲って頂いた代金として、銀貨20枚を要求されました。」
それを聞いた立っている男二人は、どこかバツが悪そうに顔を横に向けた。
「ちょっと! どういう事よ!」
と、ここでしゃしゃり出てきたのがガーネットだった。ガーネットは勢い良く馬車を飛び降り、こちらに参戦してきた。
「銀貨20枚って何よ! 只の解毒薬でしょ! 普通相場は銀貨2枚の筈よ! 幾ら何でもぼったくり過ぎよ!!」
ガーネットは憤慨していた、俺達はこの一件に関しては部外者なのだが、そうは問屋が卸さない様に捲し立てている。
「おっと、お嬢さん。俺たちゃ何もふんだくるつもりは無いんだよ。ただね、命の恩人に対して幾らかの誠意を見せて欲しいだけなんだよ。なあ逆モヒ。」
「おい、モヒカン。やめとけって言ったのに。何吹っ掛けてんだよお前。」
ふーむ、どうやらこのモヒカンって男が駄々を捏ねているみたいだな。
「だからって銀貨20枚は無いわよ! アリシアの冒険者として見過ごせないわ!!」
ガーネットは更に怒っている様子だが、相手のモヒカンは一歩も引かず、更に言葉を続けた。
「へっへっへ、いいのかい? そんな事言って。俺たちゃあの「アリシアの英雄」の知り合いなんだぜ。」
へ?
モヒカンのこのセリフを聞き、座っていた騎士風の二人が急に立ち上がり、モヒカンに詰め寄った。
「それは誠であるか!? それならば是非! アリシアの英雄殿に会わせて下さらんか?」
勢いのある言葉で言い出す老齢の男は、モヒカンが引くほどの勢いがあった。
「い、いやあー、あの人は色々と忙しい人だからなあー。中々会えないと思うぜ。」
「そこを何とか!!」
更に食い下がる老齢の騎士風の男。それに対し、モヒカンと逆モヒはどこか困った様な顔をして二人で相談している。
「ねえジャズ、この二人の知り合い?」
ガーネットが訊いて来る、勿論俺は知らない。なので首をブンブンと横に振る。
これを見ていた姐御とガーネットは、顔を二ヤリとさせて、なにやら黒い笑みを浮かべた。
「あらぁ~~、それは奇遇ねぇ~~、実は私達も「アリシアの英雄」と知り合いなのよねぇ~~。」
「そうねぇ~~、知り合いどころか、一緒に戦った仲だものねぇ~~。」
うーむ、何やら二人共顔がニヤニヤしながら相手の様子を確かめている。
そして、モヒカンと逆モヒは顔を引き攣らせながら、更に言葉を選んだ。
「いやいやいやいや、俺たちゃ何も「アリシアの英雄」を盾にしようって訳じゃねえんだ。ただなぁ~、こっちだって大切な薬を渡した訳だし、幾らか包んで貰いてえだけなんだ。何もアリシアの英雄を引き合いに出そうって訳じゃねえんだよ。解るよね。」
ふむ、いい加減な言葉を吐き、この場を逃れようって腹か。
「だったら、銀貨3,4枚にしときなさよ! 何よ20枚って!!」
「そーよそーよ。」
「そーだそーだ。」
いつの間にかラット君も参戦していた。それにしても、女の子ってのは口喧嘩になると活き活きしてくるな、俺が勝てるとは思えん。
「まあまあ、そこまでにしときませんか?」
「ジャズは引っ込んでて!」
「はい。」
怒られた。何で?
「いやー、俺達だって事を荒立てたくないんだよ。たださー、こっちにも色々事情ってのがあってさー。解るだろう?」
「知らないわよ!」
姉御もガーネットも言い負けてない、一方、モヒカンたちは防戦一方だ。旗色が悪くなってきている。
「なあ、これまだ続くのかい?」
俺は流石に付き合いきれん。そろそろネタ晴らししようかなと思うのだが。
「ジャズ、ここはまだ踏ん張りどころよ。」
今度は姐御が俺をいさめた。まったく、みんなよくやるよ。
ここぞとばかりに、畳みかける二人。
「あんた等、解毒薬を渡しただけでしょ? なら、相場のちょっと高めで取引しなさいよ!」
「そうよ、銀貨20枚は流石にぼったくり過ぎよ。この事をそちらのギルマスに報告してもいいのよ。」
「そーだそーだ。」
ふむ、さっきからラット君も一言言っている。どうなってんの? みんなよくやるよ。
と、ここでモヒカン頭の男が地団駄を踏み、ガーネット達を指差して威勢の良い啖呵を切った。
「もう頭来た! いいかお前等、これ以上ごたごたぬかすのなら、「アリシアの英雄」を呼ぶぞ。いいのか?」
売り言葉に買い言葉。ガーネットはすぐさま相手をする。
「呼べばいいじゃない! 呼びなさいよ!」
「呼べるものならね。」
「そーだそーだ。」
おいおい、ちょっと話がデカくなってやしないかい? 俺はあまり目立ちたくないんだが。
「お願いです、アリシアの英雄に会わせて下さらんか。こちらは火急の用件があるのです。早ければ早い方が良いのです。お願いします。モヒカン殿。」
うーむ、騎士風の二人の話はそればかりだし、そもそも、この騎士風の人達は誰なんだ?
「あのう、貴方方は一体何処の誰でしょうか?」
俺が騎士風の人達に声を掛けると、女性騎士と老齢の騎士がこちらを振り向き、返事をした。
「おお、これは気付きませなんだな。我等はミニッツ大陸からやって参りました。儂はゴートと申します。で、隣に居るのが儂の娘のクリス。そして、今横になっておられる方が、リース様です。」
「あ、これは申し送れました。自分はジャズと申します。アリシア軍の兵士で、今は冒険者をやっています。よろしく。」
お互いに挨拶をし合い、名前を聞いて自己紹介も済んだ。
さて、そのリースって人が毒にやられてしまったという事か。で、それを治した解毒薬の持ち主がモヒカン達で、それを譲ってもらったから代金を支払うという話か。で、銀貨20枚っと。
ふーむ、確かにちょっと吹っ掛けすぎだな。相場は銀貨2枚だ。その十倍は流石に無い。
「あのう、ちょっといいですか?」
「「「 ジャズはすっこんでて!!? 」」」
「は、はい。」
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