180 / 222
第179話 ある三人の傭兵 ③
しおりを挟む四種族連合軍 仮設基地――――
朝、結局答えが出ぬまま、三人の傭兵は要塞奪還作戦が開始される時まで休んでいた。
「マトック、何か考えがありますか?」
「いや、ねえ。イズナは?」
「ありません、何が正解か浮かびませんでした。ケイトの方はどうですか?」
「うーん、何も思いつかなかったわ。そもそも、この突撃作戦が無謀なのよ。」
「今に始まった事じゃないだろう。ザーリアスに言えよ。」
三人の傭兵は、味方を盾にする作戦を良しとせず、他に何か案があればと顔を突き合わせて色々案を出していたが、結局朝になってしまっていた。
「こうなったら仕方ねえ、俺達だけで要塞内部へ侵入し、宝物庫まで一気に駆け抜けよう。」
「それが出来ないから悩んでいたんでしょう。まったく、あの突撃馬鹿と変わらないじゃない。」
「しかし、力押しで勝負する事は決して間違いではありませんよ。モンスターが数で押してくるならば、こちらは質で勝負すればいいのでは?」
「イズナの言う通りだぜ、こっちが全力全開でアタックすりゃあ、意外と何とかなるかもしれないぜ。」
「そんな都合よく行く訳ないじゃない。もう。」
長年に渡り、要塞奪還が成っていない事を、三人は失念していた。
まだ若い三人にとって、このバルビロン要塞はそこまで脅威には感じていなかった。
前回の作戦で失敗したのは、確かに指揮官のザーリアスの不味い指揮でもあるが、モンスターが際限なく湧き出て来るという事態が、ここまで事態を悪化させていた。
四種族連合軍は総勢400名ほど、皆続々と集結しだし、朝の出撃に備えて装備の点検などを行っていた。
そこへ、指揮官のザーリアスが出て来て、士気高揚の演説を行った。
だが、誰も聞いてはいなかった。やれ「突撃あるのみ」だの、やれ「死に物狂いで戦え」など、聞き飽きていた。
欠伸をしつつ、マトックが周囲を見渡すと、見知らぬ新顔が何人か目についた。
「おや? あれは昨日の新顔だな。ちょっと行って挨拶でもしてくるか。」
「私も行きましょう、戦場で背中を預ける訳ですから。」
「あ、私も。」
そうして、三人の傭兵は見慣れない人物たちの下へ近づいて行った。
それに気が付き、騎士風の男が若者の剣士を庇うような位置取りで立ち塞いだ。
「やあ、いい天気だな。」
「そうですな。」
「まあ、そう警戒するなよ。俺はマトックだ。戦士で中級職のウォーリアだ。よろしく。」
「私はイズナと申します。御覧の通り異国の者です。剣士で中級職のソーズマンです。よろしく。」
「はいはい、次私。ケイトよ、盗賊でシーフ。よろしくね。」
三人は自己紹介し、相手の出方を窺った。
そして、挨拶をした三人に対して、一歩前に出てきたのは、貴族風の若者だった。
「おはよう、私はリース。異国の騎士を率いている者だ。宜しく頼む。」
「儂はゴート、騎士だ。オールドナイトというやつだ、宜しく頼む。」
「私はクリス、弓騎士のアローナイトです。よろしく頼みます。」
こうして、リース達も戦いに参加するのであった。
そして。
「アンタ等も見かけないな、新顔か? どっから来たんだい?」
マトックが話しかけると、リース達以外にも他に新顔が居る事に気が付き、声を掛けていた。
声を掛けた相手も、三人の男女だった。
一人はイズナと同じ匂いがする、異国風の恰好をした男。
一人は騎士風の女剣士、ぱっと見冒険者かと思う様な風体だった。
そして、一人はどこからどう見ても、娼婦だった。一応二振りのスティレットで武装していたが、エロい恰好をしていたので、娼婦と勘違いしそうな盗賊風の女性だった。
「中々、ユニークな面子が揃っているじゃないか。俺はマトック、よろしくな。」
「よろしく、俺はジャズだ。すまんが、俺達三人は四種族連合軍に参加してないんだ。」
「え? そうなのか?」
「ああ、俺達は、ある目的の為に要塞内部へと突入し、宝物庫へと辿り着いてから、目的の物を取り戻す為にここまで来たんだ。」
宝物庫と訊いて、マトックはチャンスかと思った。同じ目的を持つ奴ならば、共に戦おうと思ったからだ。
「へー、宝物庫ねえ。じゃあさ、俺達と行動を共にしないか? 俺達三人の傭兵組も、ここの要塞内部にある宝物庫まで行く事が目的なんだよ。どうだ?」
ジャズと言う男は、一瞬考えていたのち、こう答えた。
「解った、いいぜ。その話乗った。まあ、「ガーゴイルゲート」までは一緒に戦う事になりそうだがな。」
「よっしゃ、決まりだな。よろしくなジャズ。互いに生きてここを出ようぜ。」
「ああ、お互いに生きて出よう。」
「そっちのお嬢さん方も紹介してくれよ。」
言われて、姐御は答える。
「私は姐御と呼ばれています。剣士です。よろしく頼みます。」
次いで、ジュリアナが答える。
「うっふ~ん、ジュリアナよ、宜しくね。坊や。」
「おいおい、坊やはやめてくれよ、こう見えて成人してんだぜ。まあ、よろしくな。」
こうして、ジャズ達もバルビロン要塞奪還作戦に一時参加する運びとなった。
ガーゴイルゲート。
要塞入り口を強固に守っている鉄扉である。
造りはドワーフ製。鋼鉄の板に樫の木の板を何枚も張り重ねた、非常に強固な扉である。
この扉を突破しなければ、要塞内部への進入は叶わない。
当然、モンスターもこのゲートを利用している為、その守りは鉄壁を誇る。
だが、隙が無い訳ではなかった。
ガーゴイルゲートが開かなければ、そこからモンスターの増援が送れないからである。
よって、要塞入り口前での戦いに勝利して、敵増援を待てば、ゲートは開くのが道理であった。
そこを突いて突撃し、要塞内へ侵入し、中庭での戦いにもつれ込む作戦が基本となっていた。
だが、モンスターの増援が際限なく沸いてくるので、戦いは膠着状態から、徐々に負け戦へと流れが変わるのであった。
そこを何とかしたいのが、四種族連合軍全員が思っていた事であった。
モンスターの増援さえ無ければ、何とかなりそうな戦いである。
果たして、この作戦は、上手く事が運ぶのか。
400の味方に対して、敵の数、おおよそ3000。
それぞれの奮起に期待する戦い、バルビロン要塞奪還作戦の前哨戦。
ガーゴイルゲートの戦いが、火蓋を切ろうとしていた。
29
あなたにおすすめの小説
おじさんが異世界転移してしまった。
お茶飲み人の愛自好吾(あいじこうご)
ファンタジー
ひょんな事からゲーム異世界に転移してしまったおじさん、はたして、無事に帰還できるのだろうか?
モンスターが蔓延る異世界で、様々な出会いと別れを経験し、おじさんはまた一つ、歳を重ねる。
最強賢者の最強メイド~主人もメイドもこの世界に敵がいないようです~
津ヶ谷
ファンタジー
綾瀬樹、都内の私立高校に通う高校二年生だった。
ある日、樹は交通事故で命を落としてしまう。
目覚めた樹の前に現れたのは神を名乗る人物だった。
その神により、チートな力を与えられた樹は異世界へと転生することになる。
その世界での樹の功績は認められ、ほんの数ヶ月で最強賢者として名前が広がりつつあった。
そこで、褒美として、王都に拠点となる屋敷をもらい、執事とメイドを派遣してもらうことになるのだが、このメイドも実は元世界最強だったのだ。
これは、世界最強賢者の樹と世界最強メイドのアリアの異世界英雄譚。
無能扱いされ会社を辞めさせられ、モフモフがさみしさで命の危機に陥るが懸命なナデナデ配信によりバズる~色々あって心と音速の壁を突破するまで~
ぐうのすけ
ファンタジー
大岩翔(オオイワ カケル・20才)は部長の悪知恵により会社を辞めて家に帰った。
玄関を開けるとモフモフ用座布団の上にペットが座って待っているのだが様子がおかしい。
「きゅう、痩せたか?それに元気もない」
ペットをさみしくさせていたと反省したカケルはペットを頭に乗せて大穴(ダンジョン)へと走った。
だが、大穴に向かう途中で小麦粉の大袋を担いだJKとぶつかりそうになる。
「パンを咥えて遅刻遅刻~ではなく原材料を担ぐJKだと!」
この奇妙な出会いによりカケルはヒロイン達と心を通わせ、心に抱えた闇を超え、心と音速の壁を突破する。
独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活
髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。
しかし神は彼を見捨てていなかった。
そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。
これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。
異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。
久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。
事故は、予想外に起こる。
そして、異世界転移? 転生も。
気がつけば、見たことのない森。
「おーい」
と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。
その時どう行動するのか。
また、その先は……。
初期は、サバイバル。
その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。
有名になって、王都へ。
日本人の常識で突き進む。
そんな感じで、進みます。
ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。
異世界側では、少し非常識かもしれない。
面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。
オレの異世界に対する常識は、異世界の非常識らしい
広原琉璃
ファンタジー
「あの……ここって、異世界ですか?」
「え?」
「は?」
「いせかい……?」
異世界に行ったら、帰るまでが異世界転移です。
ある日、突然異世界へ転移させられてしまった、嵯峨崎 博人(さがさき ひろと)。
そこで出会ったのは、神でも王様でも魔王でもなく、一般通過な冒険者ご一行!?
異世界ファンタジーの "あるある" が通じない冒険譚。
時に笑って、時に喧嘩して、時に強敵(魔族)と戦いながら、仲間たちとの友情と成長の物語。
目的地は、すべての情報が集う場所『聖王都 エルフェル・ブルグ』
半年後までに主人公・ヒロトは、元の世界に戻る事が出来るのか。
そして、『顔の無い魔族』に狙われた彼らの運命は。
伝えたいのは、まだ出会わぬ誰かで、未来の自分。
信頼とは何か、言葉を交わすとは何か、これはそんなお話。
少しづつ積み重ねながら成長していく彼らの物語を、どうぞ最後までお楽しみください。
====
※お気に入り、感想がありましたら励みになります
※近況ボードに「ヒロトとミニドラゴン」編を連載中です。
※ラスボスは最終的にざまぁ状態になります
※恋愛(馴れ初めレベル)は、外伝5となります
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
レベルアップは異世界がおすすめ!
まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。
そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる