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番外編
【彼方誕生日編(一)】遊佐彼方にとっての誕生日。(一)(彼方視点)
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誕生日なんて、歳を取るためだけの日だと思っていた。
でも大切な人の誕生を祝い、自らの誕生日をその人に祝われた時、「誕生日は大切な日なんだ」と認識を改めることが出来た。
「彼方、お待たせ!」
清らかな声が耳を打つ。振り返れば、青い長髪に高身長の美人男性が彼方の元に駆けてきた。白くて長めのカーディガンを左右に揺らしながら。
「ううん、僕も今来たとこだよ」
嘘だ。咄嗟についた真っ赤な嘘。この後の予定が楽しみすぎて、子供達や母親に止められるくらい早めに着いた。ざっと二時間前。
「ごめ……っ、ん。前の現場が長引いて……。きょ、交通も……ちょっと、待って……」
走ってきたのか息が上がっており、膝に手をついて呼吸を整えている。彼方はしゃがみこみ、目線を合わせた。
「大丈夫だよ。それより仕事お疲れ様、水樹」
遊佐水樹。彼方の番である大切な夫。
人気声優、守谷水樹としても数々の作品で活躍する彼は、多忙を極めている。昨日も二つのイベントに登壇し、夜は生放送番組にゲスト出演だ。
頭を下げていた水樹が顔を上げ、疲れながらも笑う。
「ありがと……、彼方。あの子達の面倒も見てくれて、ありがとう……」
労りの言葉をかけたはずが、逆に労わって貰った。
(全然気にしていないのにな。ちょっとわんぱくになってきたけど、我が子の成長を近くで感じられるのは幸せなことだ)
だが、ここは素直にお礼を言った方がいい。
「いえいえ。帰ったら『パパー!』って飛び込んで来ると思うよ?」
「ははは。それは楽しみだなあ」
水樹のふにゃりとした笑顔を見たら安心し、手を差し出す。エスコートの意味を理解したらしき水樹は、恥ずかしそうに頬を朱色に染めた。
「今日のデートで、水樹の可愛いところたくさん見られるなー。楽しみだなー」
「も、もう! 彼方ってば……」
そう言いつつも、大きな手が置かれる。滑らかですべすべして……。ずっと触っていたい。
横目で確認してみればさっきよりも赤い。結婚してもう何年も経つけれど、自分が水樹を赤面させられる存在だという事実に頬を緩ませた。
でも大切な人の誕生を祝い、自らの誕生日をその人に祝われた時、「誕生日は大切な日なんだ」と認識を改めることが出来た。
「彼方、お待たせ!」
清らかな声が耳を打つ。振り返れば、青い長髪に高身長の美人男性が彼方の元に駆けてきた。白くて長めのカーディガンを左右に揺らしながら。
「ううん、僕も今来たとこだよ」
嘘だ。咄嗟についた真っ赤な嘘。この後の予定が楽しみすぎて、子供達や母親に止められるくらい早めに着いた。ざっと二時間前。
「ごめ……っ、ん。前の現場が長引いて……。きょ、交通も……ちょっと、待って……」
走ってきたのか息が上がっており、膝に手をついて呼吸を整えている。彼方はしゃがみこみ、目線を合わせた。
「大丈夫だよ。それより仕事お疲れ様、水樹」
遊佐水樹。彼方の番である大切な夫。
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頭を下げていた水樹が顔を上げ、疲れながらも笑う。
「ありがと……、彼方。あの子達の面倒も見てくれて、ありがとう……」
労りの言葉をかけたはずが、逆に労わって貰った。
(全然気にしていないのにな。ちょっとわんぱくになってきたけど、我が子の成長を近くで感じられるのは幸せなことだ)
だが、ここは素直にお礼を言った方がいい。
「いえいえ。帰ったら『パパー!』って飛び込んで来ると思うよ?」
「ははは。それは楽しみだなあ」
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「今日のデートで、水樹の可愛いところたくさん見られるなー。楽しみだなー」
「も、もう! 彼方ってば……」
そう言いつつも、大きな手が置かれる。滑らかですべすべして……。ずっと触っていたい。
横目で確認してみればさっきよりも赤い。結婚してもう何年も経つけれど、自分が水樹を赤面させられる存在だという事実に頬を緩ませた。
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