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番外編
【彼方誕生日編(二)】遊佐彼方にとっての誕生日。(二)(彼方視点)
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彼方達がやって来たのはゲームセンターだ。昔、水樹の誕生日に訪れた場所。内装はあの頃と少々異なっているが、賑わい度は全く変わっていない。
「久々だなあ!! ね、何から遊ぶ?」
「彼方の好きなのでいいよ」
水樹も相変わらずパートナーの気持ちを優先してくれる。今でもときどき「我慢してるんじゃないだろうか」と心配にはなる。
だが、ポジティブに捉えれば『腕の見せ所』でもあった。さりげなく視線や態度など感情が浮き彫りとなる仕草を読み取り、相手の願いや想いを叶える。
(毎回成功するとは限らないのが悔しいけど……)
彼方は水樹の手を引っ張り、中へ入っていった。
ぐるりと一周して感じたこと。クレーンゲームがあの時よりも充実している。大きい箱に詰められたスナック類や、ぬいぐるみをはじめとしたキャラクター系グッズも種類が豊富だ。
(あ。あの苺味のクッキー、歩美の好きなお菓子だ。あっちのチーズスナックは、愛翔が大ハマりしてた時期があったな)
「歩美が好きな苺クッキーも、愛翔がよく食べてたチーズスナックもあるね」
ゲームセンターを回っていた足を止め、水樹を見上げる。本人は頭に疑問符を浮かべていた。
「同じこと考えてたなんて、僕達、似た者夫夫だよね」
「嬉しいな」と素直な気持ちを述べると、水樹は目を細めて幸せそうに微笑んだ。
番の笑顔は健康に良い。それに毎日見ていても、可愛らしさと愛しさで胸がきゅんきゅんするのだ。
(やばい。キスしたくなる。落ち着け、僕の理性)
水樹が変装しない理由の一つに「意外と気づかれない」がある。伊達メガネや帽子を被らなくても「守谷水樹さんですか?」と、声を掛けられることは滅多にない。イチャイチャしても許されると思うが……、モヤッとはする。
(ひたむきに努力する水樹の存在、もっと知られてもいいのに)
また考えてしまった。頭を振って気持ちを切り替え、どれをやりたいのかと水樹の方を見る。
水樹は彼方の反対側を眺めていた。瞳をキラキラとさせ、無意識なのか握る手を強められる。
ゲームセンターの奥にはとあるコーナーがあり、若い女性達や制服を着たカップルが列を作っている。
(ああ、なるほど)
昔を思い出す。アクセサリーショップでカラーコーナーにいた水樹の大きな背中を。あの時は近くまで寄れなかったが、きっとこんな風に「羨ましい」と心の底で思っていたんだろう。
今、水樹の首元にはプレゼントした青いカラーが着けられている。もう誰にも噛まれる心配はなくても、番の証が長髪で隠れようとも、アクセサリー……もしくはお守りのように普段使いしてくれる。
列に並ぶカップルらしき中にも、カラーを着けた人が何人かいた。きっと、世の中の流れや水樹達が動いたから、外でも安心して身に着けるオメガが増えたに違いない。
「……よしっ、先にお菓子制覇しよ!」
彼方達は息子達の好きな菓子台に挑戦していく。菓子をあまり好まない陽翔には、ペンギンのマスコットを取って贈ることにした。
「そろそろお昼にする?」
腕時計に視線を落とした水樹が、声を掛けてくれる。彼方も確認すると正午ピッタリ。二人の両手には景品が入った袋が提げてあり、 クレーンゲームを遊び尽くした。
「そうだね。でも、最後に寄っていい?」
首を傾げた水樹と一緒に向かった先は。
「か、彼方……! 俺達がプリクラしてもいい……の?」
半ば強制的に連れてきた場所は、水樹が羨ましそうに見つめていたプリクラ機の一つ。
「ゲームに『この歳より上の方はやっちゃいけません』なんてないと思うよ。反対はあるけど」
昼の時間帯まで待って正解だった。誰も並んでおらず、まだ抵抗感のある水樹とこうしてプリクラ機の中にいる。あと一押しだ。
「僕の誕生日でもあるから、記念に水樹と撮りたいな」
「久々だなあ!! ね、何から遊ぶ?」
「彼方の好きなのでいいよ」
水樹も相変わらずパートナーの気持ちを優先してくれる。今でもときどき「我慢してるんじゃないだろうか」と心配にはなる。
だが、ポジティブに捉えれば『腕の見せ所』でもあった。さりげなく視線や態度など感情が浮き彫りとなる仕草を読み取り、相手の願いや想いを叶える。
(毎回成功するとは限らないのが悔しいけど……)
彼方は水樹の手を引っ張り、中へ入っていった。
ぐるりと一周して感じたこと。クレーンゲームがあの時よりも充実している。大きい箱に詰められたスナック類や、ぬいぐるみをはじめとしたキャラクター系グッズも種類が豊富だ。
(あ。あの苺味のクッキー、歩美の好きなお菓子だ。あっちのチーズスナックは、愛翔が大ハマりしてた時期があったな)
「歩美が好きな苺クッキーも、愛翔がよく食べてたチーズスナックもあるね」
ゲームセンターを回っていた足を止め、水樹を見上げる。本人は頭に疑問符を浮かべていた。
「同じこと考えてたなんて、僕達、似た者夫夫だよね」
「嬉しいな」と素直な気持ちを述べると、水樹は目を細めて幸せそうに微笑んだ。
番の笑顔は健康に良い。それに毎日見ていても、可愛らしさと愛しさで胸がきゅんきゅんするのだ。
(やばい。キスしたくなる。落ち着け、僕の理性)
水樹が変装しない理由の一つに「意外と気づかれない」がある。伊達メガネや帽子を被らなくても「守谷水樹さんですか?」と、声を掛けられることは滅多にない。イチャイチャしても許されると思うが……、モヤッとはする。
(ひたむきに努力する水樹の存在、もっと知られてもいいのに)
また考えてしまった。頭を振って気持ちを切り替え、どれをやりたいのかと水樹の方を見る。
水樹は彼方の反対側を眺めていた。瞳をキラキラとさせ、無意識なのか握る手を強められる。
ゲームセンターの奥にはとあるコーナーがあり、若い女性達や制服を着たカップルが列を作っている。
(ああ、なるほど)
昔を思い出す。アクセサリーショップでカラーコーナーにいた水樹の大きな背中を。あの時は近くまで寄れなかったが、きっとこんな風に「羨ましい」と心の底で思っていたんだろう。
今、水樹の首元にはプレゼントした青いカラーが着けられている。もう誰にも噛まれる心配はなくても、番の証が長髪で隠れようとも、アクセサリー……もしくはお守りのように普段使いしてくれる。
列に並ぶカップルらしき中にも、カラーを着けた人が何人かいた。きっと、世の中の流れや水樹達が動いたから、外でも安心して身に着けるオメガが増えたに違いない。
「……よしっ、先にお菓子制覇しよ!」
彼方達は息子達の好きな菓子台に挑戦していく。菓子をあまり好まない陽翔には、ペンギンのマスコットを取って贈ることにした。
「そろそろお昼にする?」
腕時計に視線を落とした水樹が、声を掛けてくれる。彼方も確認すると正午ピッタリ。二人の両手には景品が入った袋が提げてあり、 クレーンゲームを遊び尽くした。
「そうだね。でも、最後に寄っていい?」
首を傾げた水樹と一緒に向かった先は。
「か、彼方……! 俺達がプリクラしてもいい……の?」
半ば強制的に連れてきた場所は、水樹が羨ましそうに見つめていたプリクラ機の一つ。
「ゲームに『この歳より上の方はやっちゃいけません』なんてないと思うよ。反対はあるけど」
昼の時間帯まで待って正解だった。誰も並んでおらず、まだ抵抗感のある水樹とこうしてプリクラ機の中にいる。あと一押しだ。
「僕の誕生日でもあるから、記念に水樹と撮りたいな」
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