赤の書 彼女の選ぶ道

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第一章 奪われた日常

第13話 苦難の救世主

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「またいるな。今度はお前らかな。
ちゃんと逃げ切れるかな。 」


こちらに向かってくる
どうしようお父様。


お母様のは私の前に立った。後ろから追いかけてきた兵隊は私の手をつかんだ。


「いやぁぁぁあぁ」
私は手を振り払おうと渾身の力を込めたがびくともしなかった。

お母様を殺さないで。

私はそう思いながらお母様の方へ反対の手を伸ばす。
決して届かない手。

お母様の目はとてもまっすぐした目で話す

「私はどうなっても構いません。
ただし、この子だけは。この子だけは見逃してください」

そうお願いしていた。
お母様?お母様まで。
諦めないで、お願いだからこの状況を何とかして。

兵士はお母様を見回して笑みをこぼす。

後ろから猛スピードで矢が飛んできた。

一本は一人の兵隊さんの顔面に、もう2本はもう一人の兵隊さんの胸と腕に刺さって二人は倒れた。

そして私の手を掴んでいた手は解放される。
私の手には強く握りしめられている兵隊さんの腕だけがくっついていた。

「きゃあああああ」

私は急いでそれを払いのけた。

「無事ですか。
今お助けします!」


それは青い服に甲冑を付けた兵隊さん達

剣や槍、弓を持った人が目の前にいた兵士達を一掃した。

「お母様―! 」

助かった。私はこの危機を脱したうれしさと恐怖でお母様に抱き着いた。
お母様も私を強く抱きかかえてくれた。

「お怪我はありませんか?
この辺りの兵隊を一掃します。
あなた達は早く下へ。」

「こちらからどうぞ」

この方はこのお城に到着した時に、お父様に話しかけていた兵隊のおじさん。
知り合いの人に会えると少しは心が落ち着くものなのね。

そうだ!お父様!

「兵隊のおじさん。助けて! 
お父様が、お父様があっちで」

兵隊のおじさんはお父様と聞いて強張らせた顔を緩ませた。

「大丈夫でございます。

アルスレット卿ならば今我々に仲間がお救いいたしました。
もうじき我々の仲間とこちらに来ますよ。
だから安心して」

お父様を助けてくれた?



「兵長―――――! 」

「ほーら、言ってるそばから」


見上げると、5人ぐらいの兵士さんと共に負傷したお父様の姿が見えた。

あぁ、お父様。
私の目から涙が零れ落ちて止まらない。



「あっ、お父様! 後ろっ」

敵の兵隊さんがお父様を切りつけようとしている

危ない。

「アルスレット様―――――! 」

おじさんが声を荒げる。

また矢が今度はお父様を切ろうとする兵隊を射抜いた。
矢を放ったのはとても若いお兄さんだ。
とても清楚そうな顔立ちをしている。鼻は高く女の人にモテそうな、美男子といったとこかしら。


おじさん達が加勢に行く。


お父様を護衛していた兵隊さん達が迎え撃った。

「貴様ら観念しろ!」

生々しい肉の立たれる音と痛そうな声。
血が沢山飛び散って、敵の兵隊さん達が倒れていく。

「大丈夫ですか アルスレット様!」


「おらぁ―!」

「ぐあっ」

「な、止めろ
ぐはっ」

敵の兵隊さんはおじさんとお父様達の手ですべて横たわる結果となった。

その犠牲としてアングリアの三人の兵隊さんが殺された。

「すまない。助かった。」

「お父様!」

私たちはお父様に駆け寄る。

「お前たち」

お父様が生きていた。
アングリアの兵隊さんが私たちを助けてくれた。

私たちはまた再開することができた。
彼らのおかげで。
おじさん達にとても感謝をした。

「再会を喜んでいるところ申し訳ないのですが、ここはもうだめです。ついてきて下さい。

安全なところまで護衛いたします。

「ありがとう。頼む」

少しほっとはしたけれど、曇った顔まではぬぐい切れなかった。
味方の兵隊さんたちと合流できたことはとても頼もしい。
だけど、見渡す限り悲惨な光景が目に焼き付く。

建物は燃え、さっきのメイドさん。そして沢山のメイドさんや兵隊さんが血を流して死んでいる。
辛うじて息がある人もいるけれど、もう自分では体すら動かせない人ばかり。
彼らを助けてあげられることはできないの?何かしてあげられないの?
少しでも、生きている人がいるなら何とかしてあげたい。

だけど、私に何ができるの?
今私は彼らに何をしてあげられると言うの。
兵隊のおじさん達と彼らを引っ張て安全な場所まで移動させる?
そんなの何日かかるの?
私は彼らに何もしてあげれることがない。
手を差し伸べてあげる事さえ。
ただの一つも手助けする事すらできない。
私に出来るのは逃げる事だけ。



「さぁ、また追手が来る前に、早く! 」


「兵長、行ってください」

「うむ。お前たちはここで、まだ残っている者たちを頼む」

「わかりました。それではまた後で」

「行きましょう。アルスレット様。 こちらです。」
私たち家族はレビンおじさんの後を追った。


「いったい何があったというの?」

「わかりません。どこの連合軍なのか。 ただ、ノーサンブリアが攻めてきたとしか。
しかし、それにしては兵士の規模も大きすぎるのです。
これはどこかと結託しているとしか思えません。」


「やはり。遅かったか」
お父様は何かをつぶやいた。

「そうですね。現状は絶望的です」


「ぐあっ」

「兵長!?」

レビンおじさんが矢を受ける。
甲冑が幸をなしておじさんの身を守ったみたい

また大量の兵隊が押し寄せてきたものだな。

「兵長達は行ってください」

ここは我々が食い止めます。

「すまない。絶対に死ぬなよ」

「こっちです」

とにかく私たちは下へ続く階段を目指した

「王様は無事なのですか? 」

「それが……

わからないのです」

どういう事?
アーネちゃんたちは?無事なの?


「どういうことですか? 」

「我々も心配して王を探しに来たのですが。
どこにいらっしょるのか、姿が見えないのです。
まさか敵に……」

「それは無いと思います。
もしそうであるなあらば、このような被害はとっくに終わっているかと
だとすると、まだ、何処かに隠れられているも」


「ええ、そうであってほしいのですが」

扉を抜けた先に上と下に階段が続く塔のようなものに入る。

「ここから下に降りてください」

「レビン、君は?
一緒に行か無いのか?」

「わたしは王を探しに行かねばなりません
さぁ、早く。敵の手が回る前に
護衛に彼らを同行させます」

「兵長! 」

「頼む。彼らを守ってくれ」

「こっちには後二人付いてきてくれれば十分だ」

そんな待って。アーネちゃんたちはまだこの中であんな惨劇に脅えているというの?
だったら直さら早く見つけてあげないと。

「おじさん。アーネちゃんたちはまだこのお城の中なんでしょ?」


「あぁ、そうだろう。まだ、誰も姿を見ていないらしいが、仲間からも保護したという連絡もないんだ。 
きっとこの中で助けを待っているに違いない。
心配しないで、ティターナ嬢。
我々が必ず、命に変えても助け出して見せますから
さぁ、早くいってください」



そんなアーネちゃん……
逃げたい、すぐさまこの城から離れたい。
この階段を下っていけば安全な所に出られるのでしょう?

だったら早く降りたい。




でも、アーネちゃんたちをほおって置けないわ。

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