赤の書 彼女の選ぶ道

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第二章 捕虜からの脱獄

第22話 脱出作戦

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朝か。





目が覚めると体の節々が痛くて体を伸ばす。



あっ、そうだ。ミゲルは?



ミゲルは起きていて、壁に腕を組んで寄りかかっていた。



昨日の事が相当効いているみたいだった。





「ミゲル?」





「なんだよ、どうせ、俺なんて無力で何もできないよ。

お前みたいに、賢くもないし、なんも思いつくこともない。



どうせ、このまま、俺は売り飛ばされるんだ。



いいように、使われて、死ぬんだ」





ミゲルが泣き出した。



ミゲル……、





「わかったわ、ミゲル

私も協力するから、逃げだす方法を考えましょう。 」





「えっ、本当か?!」



駄目ね。同情してしまう。

私だって、そう思う事があった。

だから、今のミゲルの気持ちが痛いほどわかる。



私だって、もっと自分に力があれば、あの時何もできない人間じゃなければ、お母様達やお父様、アーネも……。



ううん。

絶対に変えて見せる。



「じゃあ、どうするよ? 

どうしたらいい?? 」



「そうね、今はまだ、逃げ出すことはできないと思うけど、いろいろやってみないといけない事があるの」





「それって?」



それは、もっと周りを調べる事。



「とにかく、昨日の夜もそうだったけど、私たちが食事を運ばされるのは好都合よ。

なんせ、外を調べる時間ができる。

そして、会議の場所も確認したうえで城内を動けるわ」





「あぁ、確かに。 」



「あなたの話だと、もうじき朝食ぐらいよね? 」



「うん。

もうじき看守が怒鳴ってくると思う」



「だったらその時にまた、私のこれを外してもらうわ」



「やってほしいのは、今回少し道をずれること」



「道をずれる?」



「そう、私たちは食事を運ぶ為、ここに通ずる道しか通っていない。

だけど、それだと、周りの兵隊の動きが探れない

だから、その道からそれて調べる必要があるの」



「そんなの無理だよ。

看守が見てるんだよ」



「大丈夫。 私たちは一人じゃない」



「どういうことだよ? 」



「生憎にも私達は今怪我をしている」



「そりゃ、君は見たらわかるけど」



「貴方も、昨日棒で殴られたわ。」



「そりゃ、そうだけど……」



「貴方が蹲って起きてこなっかったことは看守もしている。

だから、あなたも私も、今度はわざと遅く運ぶの。

怪我のせいにしてね」



ミゲルはそのまま話を聞いた。



「だた、私たちがあまりにも戻るのが遅いとすぐにばれるわ。

だから、交互に入れ替わって周りを見てくるの。

どこに、何人いて、どの時間にいつもどうなのかを

それを調べたうえで、中庭までの脱出経路を割り出すわ」



「なるほど」





「そうすれば、脱出経路は完成。このお城の道なら、だいたい熟知しているからそこは大丈夫だと思う。

そして、この枷の鍵の場所も把握したわ。

そこもクリア。」





「おぉーすごい。どんどん、出来上がっていくな」



ミゲルは嬉しそうだった。



「でも問題は、ここからどう逃げ出すかだよ」



「そうね、そこは考え処だけど、もし、今日の見回りがうまくいって、これを明日も続けられるなら、ごはんを運ぶこの時に決行するのがベストかもしれない」



「でも、そんなことしたら追手が来るし、逃げるのがばれる」



「どうせ、すぐにばれるわ。

だったら確実に逃げれるタイミングを狙った方がいい」



「おまえ、」



「ん?」



ミゲルが言葉を詰まらせた



「おまえ、本当にすげぇな。

お前だけが城を逃げ回っていた訳が分かるぜ。

すごい、すごすぎるよ」



ミゲルが興奮している



「なんか、俺、お前となら、絶対できるような気がしてきた。

いや、逃げれる。これなら、俺はまたお母さんに会える

お前、最高だよ」



その歓喜の声に気になった、アルヤとマルクが近寄ってくる



「何々?どうしたのぉ? 」



「いや、何でもねぇ。

俺たちには生きれる希望があるんだ。

アルヤ、マルク、俺たちはここから逃げる作戦を立ててたんだ。

 」



「えー?すごーい。」



「私たち助かるの? 」



アルヤとマルクはすがるようにミゲルを見つめていた。



「あぁ、そうだ。俺たちが絶対助けてやる。

 だから、このことは絶対に秘密にしておくんだぞ、わかったな」



こうして、私たちの牢ではその話をこっそしと話し合った。



だけど、ディアンカとレベッカだけは、絶対に無理と、話には乗ってこなかった。





後で、いつも一緒にいる内の一人、レベッカはこっそりと、私に話しかけてきた。





「悪いことは言わないわ。

止めておいた方がいい。

そんなの無理だから。



後であなたが、酷い目を見ることになるわ」







どうしてこの子はこんなに否定的な事を。

やってみないと無理かどうかなんてわからないわ。

と言いたいところだけど、言葉を呑んだ。



一応心配してくれているのだものね。



だけど、どうしても私はミゲルを出してあげたいと思った。

そしてここのみんなを助けたい。

だから私はここを出るわ。











そんな会話が終わって、看守が房の檻を叩く。



来た。



「おい、てめぇら朝飯の時間だ。

さっさと食っちまえよ」



私とミゲルは目を合わせてうなずいた。

待っていた、この時だ。



「ティターナ……」



「大丈夫。さっき言った通り動けば、行けるはず」

「あぁ、



 わかった」



確証なんてない。私もミゲルもきっと冷や汗でいっぱいだ。少なくとも私は震えで立っているのも正直やっとだ。

失敗したらどうしようという恐怖と戦いながら平常心をなんとか保ってる。

心臓は激しく鼓動を鳴らし、今にも口から出そうなくらい心音が鳴り響く。
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