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OCS(original character story)
リーの過去 前編
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ある施設があった。 それは暗殺者を育てるための場所。
年端もいかない少女はそこで暮らしていた。
特段何もできなかったわけではない。 暇な時間があれば親と買い物にも行けた。
だけど外の世界を見た時、その子は思った。 ほめてもらっている自分と同じくらいの子供。 嬉しそうに手を繋ぎ、頭を撫でてもらい、楽しそうな笑顔で過ごしてる。
『いいなぁ』『うらやましいな』 「私も、」
『ほめてもらいたい』『ここにいるの。 認めてもらいたい』
「リー! 何しているの早くきなさい!」
無理やり彼女は引っ張られた。
彼女の親は冷たかったのだ。
施設に帰ればトレーニング詰めの日々だ。 だけどこれは人として生まれて、両親に生んでくれたことへの恩を返すために、必要な事なんだと。
同じような子供達。でも年は全くバラバラ。そんな彼らと、命を懸け合う訓練の日々。
そして最後に待っているのが反省会。完璧な子を作ろうとしているのか、負けた子供たちや、日頃の行いが悪かった日には各自自宅で怒られていた。
ほほを打たれ、腹を殴られ、亡くなった子もいた。 リーの親もまた、そうして彼女を叱っていた。
彼女は生まれてこの方褒められた事はない。
常に親は厳しく、同年代の子には敵視されてきた。
彼女が施設の皆から敵視されるのは彼女がずば抜けて身体能力が高く、負け知らずなほど強い存在であったからだった。
そして親はそんな彼女にさらに高みを見ろと、現状を認めてくれること等なかった。
そしてまたある授業では、非力な人たちを連れてきて、いたぶるトレーニングが始まる。
ここに連れてこられるのが決まってケルニア人だった。ケルニア人は元々奴隷として支配されていた民族の末裔たちだ。
だからこの世界でも、人権がなかった。
いつもは決まったケルニア人がいて、一人ずつ自身の担当が与えられる。
そこで、拷問の仕方や、体の弱点等を学ぶのだが、彼らをいたぶる快楽を味わうことが正解だろう。
リーのケルニア人はだいぶ弱っていた。もともと少し貧弱なものであったが、ここしばらく体調を崩してからみるみる弱りだしていた。
だから
「殺せ」
と命令が出た。
殺すしかなかった。 そこに何の感情もわかないこと。こんなことは常日頃、他の子もしていたことだし、よく見る光景だったためか。
その日一人のケルニア人は処分された。幼い子の手によって。
それでも両親は褒めてはくれなかった。
「おい! 新しいお前の獲物だ」
ある日上官と呼ばれる大人に、ついていった先で言われた言葉だった。
その場所は、前に自分のケルニア人が住んでいた箱部屋だった。
「ほら、ちゃんとあいさつしなさい」
「これからよろしくね」
これからよろしくね。これは別に挨拶でも何でもない。
これから痛ぶるから、覚悟してねと言う意味なのだから。
新しいケルニア人は泣き叫んだ。 前のケルニア人とはわけが違って。とても感情を表すのだった。
大声は出すは、喚き散らすは、隙があれば歯向かっても来る。
リーにとっては真新しい。
もっと小さい頃、生きのよい魚を、家族とのキャンプで獲った時のようなそんな感覚を覚えた。
それはリーにとって数少ない楽しかった、思い出の一つ。
ケルニア人は何故こんなことをするのかしきりに聞いてくるようになった。
それはリーの見た目が幼かったからか、対話を求めてくるようになったのだ。
それはそうだろう。 目が覚めたら、このような場所にいて、痛めつけられているのだから、当の本人からすれば訳が分からない。
当然ケルニア人と言う事を自覚している人は多い。でも彼女はそうではなかったのだ。
日に日にリーは彼女の対話に耳を傾けるようになった。 彼女の名前はシールと言うのだそうだ。
それからは、シールに対し、授業をすることはしなくなった。 リー自身もなぜ彼女と話そうと思ったのか、そうしているのかすらわからない。同い年ぐらいに見えたからか? 話せる友達が欲しかったのか。 ただ、どこかで、自分に近しい何かを感じたのだ。
ある朝。同期生に鎌を駆けられた。
お前は家畜に甘い。 どうせ元はお前も家畜なのだろうと。お前の家族は終わりだと。
家畜とは、ここで与えられた、拉致されたケルニア人の事を皮肉っているのだ。
勿論彼らは優劣を優先すため、リーがそうであればいいのにと思ってもいる。
リーはそれを両親に話すことにした。
なぜなら、長官や上官にも口酸っぱく怒られ続けたからだ。
リーは彼女の内からくる想いを信じ優先させていた。話したい。 仲良くなりたい。 シールの事を知りたい。
しかし親たちは酷く怒り出した。 お叱り。
それは彼女たちにとっていけない事、間違っているのだと判断させる絶対的表示。
病院に連れて行かなければと騒ぎ立てる姿を見て、自分がおかしいのだと思ったリーは、次の日に、彼女を処分した。
いや、正しくは再起不能にしたのだった。 その時初めて両親は喜んでくれたように見えた。
上官や、長官、教官達はこれは素晴らしい才能だと、拍手がやまなかった。
自分では、全くそんなつもりはない。 ただ両親に喜んでもらいたい一心だけだった。間違いを正したかった。
だって間違いや正しいなんて、自分ではわからないのだから。 周りの人が喜んでくれるならそれが正しいのだとリーは思っていたから。
両親とまた、笑い合い、楽しく過ごす日常だけが脳裏にあった。
その晩豪華な食事が並べられた。 リーにとってはとても嬉しいい日となった。
両親と楽しく話せた貴重な一日。こんな日はそうない。
リーはとても嬉しそうに床につけた。 今までになく何も考えずに布団に入れたのだ。
リーの両親は施設のある場所に呼ばれていた。 そこでは今後のリーについての所存を話合いをしていたのだ。
彼らとしては一度なると、今後もあぁなる可能性が高い為、リーはいらないと言ってきたのだ。
いらないと言う事は処分されると言う事。 つまり今まであった何不住なく裕福に暮らさせてもらえる権限が剥奪されるという事。
両親はどうにかして、リーを今のままの環境下で育てさせてほしと懇願していた。
そして両親たちは、今のリーを守るため、ある作戦を彼らに持ち掛けるのだった。
年端もいかない少女はそこで暮らしていた。
特段何もできなかったわけではない。 暇な時間があれば親と買い物にも行けた。
だけど外の世界を見た時、その子は思った。 ほめてもらっている自分と同じくらいの子供。 嬉しそうに手を繋ぎ、頭を撫でてもらい、楽しそうな笑顔で過ごしてる。
『いいなぁ』『うらやましいな』 「私も、」
『ほめてもらいたい』『ここにいるの。 認めてもらいたい』
「リー! 何しているの早くきなさい!」
無理やり彼女は引っ張られた。
彼女の親は冷たかったのだ。
施設に帰ればトレーニング詰めの日々だ。 だけどこれは人として生まれて、両親に生んでくれたことへの恩を返すために、必要な事なんだと。
同じような子供達。でも年は全くバラバラ。そんな彼らと、命を懸け合う訓練の日々。
そして最後に待っているのが反省会。完璧な子を作ろうとしているのか、負けた子供たちや、日頃の行いが悪かった日には各自自宅で怒られていた。
ほほを打たれ、腹を殴られ、亡くなった子もいた。 リーの親もまた、そうして彼女を叱っていた。
彼女は生まれてこの方褒められた事はない。
常に親は厳しく、同年代の子には敵視されてきた。
彼女が施設の皆から敵視されるのは彼女がずば抜けて身体能力が高く、負け知らずなほど強い存在であったからだった。
そして親はそんな彼女にさらに高みを見ろと、現状を認めてくれること等なかった。
そしてまたある授業では、非力な人たちを連れてきて、いたぶるトレーニングが始まる。
ここに連れてこられるのが決まってケルニア人だった。ケルニア人は元々奴隷として支配されていた民族の末裔たちだ。
だからこの世界でも、人権がなかった。
いつもは決まったケルニア人がいて、一人ずつ自身の担当が与えられる。
そこで、拷問の仕方や、体の弱点等を学ぶのだが、彼らをいたぶる快楽を味わうことが正解だろう。
リーのケルニア人はだいぶ弱っていた。もともと少し貧弱なものであったが、ここしばらく体調を崩してからみるみる弱りだしていた。
だから
「殺せ」
と命令が出た。
殺すしかなかった。 そこに何の感情もわかないこと。こんなことは常日頃、他の子もしていたことだし、よく見る光景だったためか。
その日一人のケルニア人は処分された。幼い子の手によって。
それでも両親は褒めてはくれなかった。
「おい! 新しいお前の獲物だ」
ある日上官と呼ばれる大人に、ついていった先で言われた言葉だった。
その場所は、前に自分のケルニア人が住んでいた箱部屋だった。
「ほら、ちゃんとあいさつしなさい」
「これからよろしくね」
これからよろしくね。これは別に挨拶でも何でもない。
これから痛ぶるから、覚悟してねと言う意味なのだから。
新しいケルニア人は泣き叫んだ。 前のケルニア人とはわけが違って。とても感情を表すのだった。
大声は出すは、喚き散らすは、隙があれば歯向かっても来る。
リーにとっては真新しい。
もっと小さい頃、生きのよい魚を、家族とのキャンプで獲った時のようなそんな感覚を覚えた。
それはリーにとって数少ない楽しかった、思い出の一つ。
ケルニア人は何故こんなことをするのかしきりに聞いてくるようになった。
それはリーの見た目が幼かったからか、対話を求めてくるようになったのだ。
それはそうだろう。 目が覚めたら、このような場所にいて、痛めつけられているのだから、当の本人からすれば訳が分からない。
当然ケルニア人と言う事を自覚している人は多い。でも彼女はそうではなかったのだ。
日に日にリーは彼女の対話に耳を傾けるようになった。 彼女の名前はシールと言うのだそうだ。
それからは、シールに対し、授業をすることはしなくなった。 リー自身もなぜ彼女と話そうと思ったのか、そうしているのかすらわからない。同い年ぐらいに見えたからか? 話せる友達が欲しかったのか。 ただ、どこかで、自分に近しい何かを感じたのだ。
ある朝。同期生に鎌を駆けられた。
お前は家畜に甘い。 どうせ元はお前も家畜なのだろうと。お前の家族は終わりだと。
家畜とは、ここで与えられた、拉致されたケルニア人の事を皮肉っているのだ。
勿論彼らは優劣を優先すため、リーがそうであればいいのにと思ってもいる。
リーはそれを両親に話すことにした。
なぜなら、長官や上官にも口酸っぱく怒られ続けたからだ。
リーは彼女の内からくる想いを信じ優先させていた。話したい。 仲良くなりたい。 シールの事を知りたい。
しかし親たちは酷く怒り出した。 お叱り。
それは彼女たちにとっていけない事、間違っているのだと判断させる絶対的表示。
病院に連れて行かなければと騒ぎ立てる姿を見て、自分がおかしいのだと思ったリーは、次の日に、彼女を処分した。
いや、正しくは再起不能にしたのだった。 その時初めて両親は喜んでくれたように見えた。
上官や、長官、教官達はこれは素晴らしい才能だと、拍手がやまなかった。
自分では、全くそんなつもりはない。 ただ両親に喜んでもらいたい一心だけだった。間違いを正したかった。
だって間違いや正しいなんて、自分ではわからないのだから。 周りの人が喜んでくれるならそれが正しいのだとリーは思っていたから。
両親とまた、笑い合い、楽しく過ごす日常だけが脳裏にあった。
その晩豪華な食事が並べられた。 リーにとってはとても嬉しいい日となった。
両親と楽しく話せた貴重な一日。こんな日はそうない。
リーはとても嬉しそうに床につけた。 今までになく何も考えずに布団に入れたのだ。
リーの両親は施設のある場所に呼ばれていた。 そこでは今後のリーについての所存を話合いをしていたのだ。
彼らとしては一度なると、今後もあぁなる可能性が高い為、リーはいらないと言ってきたのだ。
いらないと言う事は処分されると言う事。 つまり今まであった何不住なく裕福に暮らさせてもらえる権限が剥奪されるという事。
両親はどうにかして、リーを今のままの環境下で育てさせてほしと懇願していた。
そして両親たちは、今のリーを守るため、ある作戦を彼らに持ち掛けるのだった。
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