492 / 515
第十章
不幸を背負う者6
しおりを挟む
「シャリン、大丈夫か?」
圭がシャリンに駆け寄るとシャリンは満面の笑みで振り向いた。
「大丈夫だよ!」
「頬に血が……」
シャリンの頬には人と同じく赤い血が滲んでいた。
ただ圭が軽く指で拭ってあげるともうすでに傷は塞がって綺麗な白い肌が戻っている。
「……たい……がん」
「えっ?」
体を動かして壁から抜け出した王たるシタチュフリスアが言葉を発した。
短い言葉だったので何を言ったのかわからなかったけれど聞き馴染みのある言葉にも聞こえて圭は驚く。
「我らが大願のため!」
目を血走らせた王たるシタチュフリスアが力を振り絞って圭に飛びかかった。
王たるシタチュフリスアが口にした言葉は圭にも理解ができるものだったがそんなこと気にする暇もない。
「ケイに触るな」
真っ直ぐに伸ばされた王たるシタチュフリスアの手であったが、その手は圭に届くことはなかった。
綺麗さの中に恐怖を抱かせるような顔をしたシャリンが王たるシタチュフリスアの頭を鷲掴みにして止めていたのである。
「ケイに、触るな。ケイを、傷つけるな」
シャリンが王たるシタチュフリスアの頭を壁に叩きつける。
何度も何度も壁が砕けるほどの力で叩きつけて、抵抗を見せていた王たるシタチュフリスアもだんだんと動かなくなる。
「ケイ、大丈夫?」
手を真っ赤な血で染め、頬にも自分ではなく王たるシタチュフリスアの血をつけたシャリンは笑顔で振り返る。
「あ、ああ……」
シャリンが味方でよかったと心から思う。
圧倒的な力と悪魔なりの残虐性が自分に向かないこともそうだし、今回シャリンが味方であることでかなり楽に戦うことができた。
運が良かったと言わざるを得ない。
「イレギュ……ラー……聞いてない…………」
王たるシタチュフリスアは何かをぶつぶつとつぶやいている。
「大願……俺たちの世界……あと少し……だった…………」
壁にもたれかかって座った王たるシタチュフリスアはうつろな目をして空を見上げる。
しかしそこには天井しかない。
「◻︎◻︎◻︎◻︎……」
「……今なんて言ったんだ?」
「ピピ……ワカラナイ」
圭たちの言葉を王たるシタチュフリスアが発していることも不思議だった。
しかし王たるシタチュフリスアは最後の最後にフィーネにも誰にも分からない言葉を口にしてうなだれるようにして死んでしまった。
「何だったんだ……」
『シタチュフリスガの巣を探せ! クリア!
シタチュフリスガの巣から失われた鍵を見つけ出せ! クリア!
王の墓所を見つけろ! クリア!
シタチュフリスアを倒せ! クリア!
シークレット
王の遺品を見つけろ!』
圭を狙うことも謎であり、この戦いには分からないことが多かったと圭は眉をひそめた。
戦いには勝ったもののスッキリとしない感じがある。
王たるシタチュフリスアが死んだことによって最後の試練がクリアになった。
これによって十階の試練を攻略したことになる。
「ん? シャリン……大丈夫だよ」
アルデバロンが圭の肩に手を乗せた。
シャリンがサッと拳を握ったので圭は慌ててシャリンを止める。
アルデバロンから敵意のような一切感じない。
ただシタチュフリスアは試練がクリアになると消えてしまうと聞いていたのにアルデバロンはまだ消えていなかった。
「……何だ?」
一度頷いたアルデバロンはおもむろに壁のほうに歩いていった。
何をするのかと見ていると壁に向かって手を伸ばした。
「スイッチがあったのか」
壁の一部が四角くへこむ。
見た目はほとんど壁であったのだが隠しスイッチがあったのである。
地面がわずかに振動し、ゴゴゴと低い音が響く。
「あそこ!」
波瑠が王の墓所の真ん中を指差した。
地面が開いていって中から階段が姿を現す。
「これは……」
「確かに王の墓所なんていう割には何もないもんね」
墓所というからにはお墓である。
そこには眠っている人がいるのだろうが降りてきた先にあったのは何もない空間だった。
戦うには都合が良かったけれどよくよく考えると何もないというのもおかしな話である。
「来いと言っているようだねぇ」
アルデバロンは手招きをして階段を降りていく。
少し怪しさはあるものの何かがあるという予感を覚えて圭たちはついていくことにした。
階段にも等間隔に松明が設置されていて降りるのに困らないぐらいには明るく、アルデバロンは圭たちがついてくるの確認しながらゆっくりと先を進む。
「……ここが本当の墓所なんだな」
下には大きな石の棺桶が並ぶ大きな部屋になっていた。
シンプルな棺桶であるがそれぞれに名前のようなものが書いてある。
アルデバロンは両膝をついて墓所に頭を下げると真っ直ぐに奥に向かっていく。
「まだ何かあるでしょうか?」
お墓の横を通り過ぎていき、一番奥にある一際大きなお墓の前にアルデバロンは立った。
さらにもう一度お墓に対して膝をついて礼を尽くすとお墓の裏手に回る。
「まーた隠し扉か」
アルデバロンがお墓をまさぐるとお墓の後ろにある壁が開く。
「さて……何が目的なのかねぇ?」
さらに奥の部屋に進むアルデバロンに圭たちはついていく。
圭がシャリンに駆け寄るとシャリンは満面の笑みで振り向いた。
「大丈夫だよ!」
「頬に血が……」
シャリンの頬には人と同じく赤い血が滲んでいた。
ただ圭が軽く指で拭ってあげるともうすでに傷は塞がって綺麗な白い肌が戻っている。
「……たい……がん」
「えっ?」
体を動かして壁から抜け出した王たるシタチュフリスアが言葉を発した。
短い言葉だったので何を言ったのかわからなかったけれど聞き馴染みのある言葉にも聞こえて圭は驚く。
「我らが大願のため!」
目を血走らせた王たるシタチュフリスアが力を振り絞って圭に飛びかかった。
王たるシタチュフリスアが口にした言葉は圭にも理解ができるものだったがそんなこと気にする暇もない。
「ケイに触るな」
真っ直ぐに伸ばされた王たるシタチュフリスアの手であったが、その手は圭に届くことはなかった。
綺麗さの中に恐怖を抱かせるような顔をしたシャリンが王たるシタチュフリスアの頭を鷲掴みにして止めていたのである。
「ケイに、触るな。ケイを、傷つけるな」
シャリンが王たるシタチュフリスアの頭を壁に叩きつける。
何度も何度も壁が砕けるほどの力で叩きつけて、抵抗を見せていた王たるシタチュフリスアもだんだんと動かなくなる。
「ケイ、大丈夫?」
手を真っ赤な血で染め、頬にも自分ではなく王たるシタチュフリスアの血をつけたシャリンは笑顔で振り返る。
「あ、ああ……」
シャリンが味方でよかったと心から思う。
圧倒的な力と悪魔なりの残虐性が自分に向かないこともそうだし、今回シャリンが味方であることでかなり楽に戦うことができた。
運が良かったと言わざるを得ない。
「イレギュ……ラー……聞いてない…………」
王たるシタチュフリスアは何かをぶつぶつとつぶやいている。
「大願……俺たちの世界……あと少し……だった…………」
壁にもたれかかって座った王たるシタチュフリスアはうつろな目をして空を見上げる。
しかしそこには天井しかない。
「◻︎◻︎◻︎◻︎……」
「……今なんて言ったんだ?」
「ピピ……ワカラナイ」
圭たちの言葉を王たるシタチュフリスアが発していることも不思議だった。
しかし王たるシタチュフリスアは最後の最後にフィーネにも誰にも分からない言葉を口にしてうなだれるようにして死んでしまった。
「何だったんだ……」
『シタチュフリスガの巣を探せ! クリア!
シタチュフリスガの巣から失われた鍵を見つけ出せ! クリア!
王の墓所を見つけろ! クリア!
シタチュフリスアを倒せ! クリア!
シークレット
王の遺品を見つけろ!』
圭を狙うことも謎であり、この戦いには分からないことが多かったと圭は眉をひそめた。
戦いには勝ったもののスッキリとしない感じがある。
王たるシタチュフリスアが死んだことによって最後の試練がクリアになった。
これによって十階の試練を攻略したことになる。
「ん? シャリン……大丈夫だよ」
アルデバロンが圭の肩に手を乗せた。
シャリンがサッと拳を握ったので圭は慌ててシャリンを止める。
アルデバロンから敵意のような一切感じない。
ただシタチュフリスアは試練がクリアになると消えてしまうと聞いていたのにアルデバロンはまだ消えていなかった。
「……何だ?」
一度頷いたアルデバロンはおもむろに壁のほうに歩いていった。
何をするのかと見ていると壁に向かって手を伸ばした。
「スイッチがあったのか」
壁の一部が四角くへこむ。
見た目はほとんど壁であったのだが隠しスイッチがあったのである。
地面がわずかに振動し、ゴゴゴと低い音が響く。
「あそこ!」
波瑠が王の墓所の真ん中を指差した。
地面が開いていって中から階段が姿を現す。
「これは……」
「確かに王の墓所なんていう割には何もないもんね」
墓所というからにはお墓である。
そこには眠っている人がいるのだろうが降りてきた先にあったのは何もない空間だった。
戦うには都合が良かったけれどよくよく考えると何もないというのもおかしな話である。
「来いと言っているようだねぇ」
アルデバロンは手招きをして階段を降りていく。
少し怪しさはあるものの何かがあるという予感を覚えて圭たちはついていくことにした。
階段にも等間隔に松明が設置されていて降りるのに困らないぐらいには明るく、アルデバロンは圭たちがついてくるの確認しながらゆっくりと先を進む。
「……ここが本当の墓所なんだな」
下には大きな石の棺桶が並ぶ大きな部屋になっていた。
シンプルな棺桶であるがそれぞれに名前のようなものが書いてある。
アルデバロンは両膝をついて墓所に頭を下げると真っ直ぐに奥に向かっていく。
「まだ何かあるでしょうか?」
お墓の横を通り過ぎていき、一番奥にある一際大きなお墓の前にアルデバロンは立った。
さらにもう一度お墓に対して膝をついて礼を尽くすとお墓の裏手に回る。
「まーた隠し扉か」
アルデバロンがお墓をまさぐるとお墓の後ろにある壁が開く。
「さて……何が目的なのかねぇ?」
さらに奥の部屋に進むアルデバロンに圭たちはついていく。
15
あなたにおすすめの小説
シスターヴレイヴ!~上司に捨て駒にされ会社をクビになり無職ニートになった俺が妹と異世界に飛ばされ妹が勇者になったけど何とか生きてます~
尾山塩之進
ファンタジー
鳴鐘 慧河(なるがね けいが)25歳は上司に捨て駒にされ会社をクビになってしまい世の中に絶望し無職ニートの引き籠りになっていたが、二人の妹、優羽花(ゆうか)と静里菜(せりな)に元気づけられて再起を誓った。
だがその瞬間、妹たち共々『魔力満ちる世界エゾン・レイギス』に異世界召喚されてしまう。
全ての人間を滅ぼそうとうごめく魔族の長、大魔王を倒す星剣の勇者として、セカイを護る精霊に召喚されたのは妹だった。
勇者である妹を討つべく襲い来る魔族たち。
そして慧河より先に異世界召喚されていた慧河の元上司はこの異世界の覇権を狙い暗躍していた。
エゾン・レイギスの人間も一枚岩ではなく、様々な思惑で持って動いている。
これは戦乱渦巻く異世界で、妹たちを護ると一念発起した、勇者ではない只の一人の兄の戦いの物語である。
…その果てに妹ハーレムが作られることになろうとは当人には知るよしも無かった。
妹とは血の繋がりであろうか?
妹とは魂の繋がりである。
兄とは何か?
妹を護る存在である。
かけがいの無い大切な妹たちとのセカイを護る為に戦え!鳴鐘 慧河!戦わなければ護れない!
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
現実世界にダンジョンが出現したのでフライングして最強に!
おとうふ
ファンタジー
2026年、突如として世界中にダンジョンが出現した。
ダンジョン内は無尽蔵にモンスターが湧き出し、それを倒すことでレベルが上がり、ステータスが上昇するという不思議空間だった。
過去の些細な事件のトラウマを克服できないまま、不登校の引きこもりになっていた中学2年生の橘冬夜は、好奇心から自宅近くに出現したダンジョンに真っ先に足を踏み入れた。
ダンジョンとは何なのか。なぜ出現したのか。その先に何があるのか。
世界が大混乱に陥る中、何もわからないままに、冬夜はこっそりとダンジョン探索にのめり込んでいく。
やがて来る厄災の日、そんな冬夜の好奇心が多くの人の命を救うことになるのだが、それはまだ誰も知らぬことだった。
至らぬところも多いと思いますが、よろしくお願いします!
天城の夢幻ダンジョン攻略と無限の神空間で超絶レベリング ~ガチャスキルに目覚めた俺は無職だけどダンジョンを攻略してトップの探索士を目指す~
仮実谷 望
ファンタジー
無職になってしまった摩廻天重郎はある日ガチャを引くスキルを得る。ガチャで得た鍛錬の神鍵で無限の神空間にたどり着く。そこで色々な異世界の住人との出会いもある。神空間で色んなユニットを配置できるようになり自分自身だけレベリングが可能になりどんどんレベルが上がっていく。可愛いヒロイン多数登場予定です。ガチャから出てくるユニットも可愛くて強いキャラが出てくる中、300年の時を生きる謎の少女が暗躍していた。ダンジョンが一般に知られるようになり動き出す政府の動向を観察しつつ我先へとダンジョンに入りたいと願う一般人たちを跳ね除けて天重郎はトップの探索士を目指して生きていく。次々と美少女の探索士が天重郎のところに集まってくる。天重郎は最強の探索士を目指していく。他の雑草のような奴らを跳ね除けて天重郎は最強への道を歩み続ける。
焔の幽閉者!自由を求めて最強への道を歩む!!
雷覇
ファンタジー
とある出来事で自身も所属する焔木一族から幽閉された男「焔木海人」。
その幽閉生活も一人の少女の来訪により終わりを迎える。
主人公は一族に自身の力を認めさせるため最強の力を求め続ける。
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編
荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明
まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。
そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。
その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる