3 / 515
第一章
危機的状況3
しおりを挟む
塔の中に現れたゲートは塔内のどこかに繋がっていることもあって、その場合は助かる可能性もある。
ただし塔の中に繋がっているとしても、帰れるかどうかは繋がっている場所による。
踏破区域と呼ばれる過去に攻略された階層ならまだ希望があるけれど未踏区域ならダンジョンと変わらない。
助からない可能性はひとまず置いておき、踏破区域だと仮定する。
あるいはゲートの外、圭が入ってきた側から助けが来ることもあり得る。
むしろその方が可能性が高いかもしれない。
そうなれば助かる可能性もある。
まだ希望は捨てていなかった圭であったがそう単純には物事はいかない。
トラックの上に着地し、トラックがくの字に真ん中から折れ曲がる。
圭をゲートに放り込んだ張本人、ヘルカトが降ってきたのであった。
石が巻き上げられて飛んできて圭に直撃する。
声を出すと体が痛むので歯を食いしばって我慢して丸まるようにして身を守る。
ベコベコだったトラックはもう使い物にならない完全にゴミと化している。
ヘルカトが来る前に脱出しといてよかったと思ったがそれだってほんの一瞬命が延びたにすぎない。
ヘルカトの目が圭を捉えた。
隠れているわけでもなく、地面に寝転んでいるだけなので見つかるのも無理はない。
圭にゆっくりと近づいてきたヘルカトが首をかしげる。
恐怖も絶望も感じられないと思ったのである。
少し前のトラックにいたときはワーワーと騒いで生に執着していたのに今は悟ったような感情のない目でヘルカトを見ている。
面白くないとヘルカトは思った。
1人を見逃したのはもっとオモチャを呼んできてもらうため。
殺してしまっては次にオモチャが来るのにどれほど時間がかかるか分からないから。
もう1人をわざわざゲートの中に入れたのは少しでも楽しむため。
次のオモチャが来るまでの繋ぎとして圭を選んだ。
悲鳴を上げ命乞いをして楽しませてくれると思っていたのに圭の様子はそんなヘルカトの思惑と違っていた。
「早く殺せよ、クソ野郎」
もうヘルカトに視線を向けることもやめて空を見る。
何をしてもヘルカトが助けてくれることなんてないだろう。
無様に懇願すればほんのわずかな時間見逃してもらえるかもしれないけれど結果は変わらないし惨めに死んでいくのも嫌だ。
ヘルカトの望むように命乞いなんてしてやらない。
赤い空を眺める。
死ぬ前に見る景色としては特殊だけど悪くはないと思えるのだから不思議だ。
あるいは諦めた心境で眺めるからそう見えるのかもしれない
「ギィ!」
ヘルカトが怒りに震える。
ほんのささやかでもくだらない抵抗をされてひどく気分を害した。
一息に殺してやりたい気持ちを抑えてヘルカトはどう殺してやるか考える。
絶対に簡単には殺さない。
命乞いも抵抗しないならなぶり殺しにしてやるとヘルカトは圭を前にして悠長に考え始めた。
「あれは……?」
いつまで経っても苦痛が来ないことに眠くなってきた圭の視界の下に何かが見えた。
それは崖から落ちてきている。
思わず体を起こしかけた圭にヘルカトがようやくこのオモチャが命乞いでもするのかと期待する。
注意が散漫であった。
自身がいた場所が影に覆われてようやくヘルカトが何かが降ってくることに気づいて見上げた。
けれどそれではもう遅かった。
圭の体が一瞬浮き上がるほどの衝撃。
圭からほんの数十センチという所に巨大なモンスターが降ってきた。
「は、はははっ、ざまあみろ」
思わず笑いがこぼれる。
ヘルカトの頭にぶつかるように落ちてきたそれはそのままヘルカトを地面に押し倒した。
巻き込まれてヘルカトの上半身は巨大なモンスターの死体の下敷きになって動かなくなってしまった。
巨大なモンスターの下から覗く下半身はピクリとも動かず、ヘルカトがどうなったのか確認しなくてもわかっている。
「しっかしこれは……」
少し寝転がって休んでいたら体の調子はマシになった。
鈍い痛みは全身に走っているけれど動けはしそうだ。
ヘルカトのか、巨大なモンスターのか分からないけれど血が流れてくるので立ち上がって距離を取る。
落ちてきたモンスターは胸に大きな傷跡があり、あるはずの頭がなかった。
首はあるのできっと頭があったのだろうと思う。
よほどの化け物でなければ頭がなければ死んでいると見ていいので少し安心した。
どのようにして頭がなくなったのかは推測の域を出ないけれど胸の傷は1本で切り口がキレイなのが見て取れる。
爪や牙の類でつけられたものではない。
ほんの少しだけ希望が見えた。
胸の傷を見ると人が武器で傷つけた可能性があると考えたのだ。
ならばここは踏破された階か踏破中の階である可能性があり、現在進行形で攻略している覚醒者がいる。
上手く身を隠してモンスターに見つからなければ人に会えるかもしれない。
圭の顔色がいくらか良くなった。
「他に崖から降りて来る気配はない……」
圭は崖を見上げるが人の気配はない。
戦闘が終わったのか、まだ続いているのか、モンスターの死体は取りに来ないのか、下からでは分からない。
崖上は高く、様子は全く見えない。
上まで相当な高さがあるから戦闘が終わっていてもわざわざ下まで危険を冒してモンスターの死体を取りに来ないのかもしれない。
ふと圭は自分の手にもったナイフに目をやった。
次にモンスターの死体を見る。
取りに来る人がいないモンスターの死体。
他人が討伐したモンスターを勝手に漁るのは本来ご法度な行いだけれど周りにそれを咎める者はいない。
気づいたら痛む体を引きずって行ってモンスターの上に乗り、ナイフを突き立てていた。
安い小さなナイフでは解体も簡単なことではない。
胸から腹まで縦に切り裂いていくがモンスターも以外に硬くて重労働だった。
素材を持ち帰るのは不可能だから狙いは1つ。
モンスターの魔石。
多くの場合魔石は体の中にあるから何度もナイフで切り付けて少しずつ腹を開いていく。
「あった……!」
時間の感覚がないこの空間ではどれほど作業したか分からない。
クタクタになるまで作業してようやく下腹部に手のひら大の魔石を見つけた。
ただし塔の中に繋がっているとしても、帰れるかどうかは繋がっている場所による。
踏破区域と呼ばれる過去に攻略された階層ならまだ希望があるけれど未踏区域ならダンジョンと変わらない。
助からない可能性はひとまず置いておき、踏破区域だと仮定する。
あるいはゲートの外、圭が入ってきた側から助けが来ることもあり得る。
むしろその方が可能性が高いかもしれない。
そうなれば助かる可能性もある。
まだ希望は捨てていなかった圭であったがそう単純には物事はいかない。
トラックの上に着地し、トラックがくの字に真ん中から折れ曲がる。
圭をゲートに放り込んだ張本人、ヘルカトが降ってきたのであった。
石が巻き上げられて飛んできて圭に直撃する。
声を出すと体が痛むので歯を食いしばって我慢して丸まるようにして身を守る。
ベコベコだったトラックはもう使い物にならない完全にゴミと化している。
ヘルカトが来る前に脱出しといてよかったと思ったがそれだってほんの一瞬命が延びたにすぎない。
ヘルカトの目が圭を捉えた。
隠れているわけでもなく、地面に寝転んでいるだけなので見つかるのも無理はない。
圭にゆっくりと近づいてきたヘルカトが首をかしげる。
恐怖も絶望も感じられないと思ったのである。
少し前のトラックにいたときはワーワーと騒いで生に執着していたのに今は悟ったような感情のない目でヘルカトを見ている。
面白くないとヘルカトは思った。
1人を見逃したのはもっとオモチャを呼んできてもらうため。
殺してしまっては次にオモチャが来るのにどれほど時間がかかるか分からないから。
もう1人をわざわざゲートの中に入れたのは少しでも楽しむため。
次のオモチャが来るまでの繋ぎとして圭を選んだ。
悲鳴を上げ命乞いをして楽しませてくれると思っていたのに圭の様子はそんなヘルカトの思惑と違っていた。
「早く殺せよ、クソ野郎」
もうヘルカトに視線を向けることもやめて空を見る。
何をしてもヘルカトが助けてくれることなんてないだろう。
無様に懇願すればほんのわずかな時間見逃してもらえるかもしれないけれど結果は変わらないし惨めに死んでいくのも嫌だ。
ヘルカトの望むように命乞いなんてしてやらない。
赤い空を眺める。
死ぬ前に見る景色としては特殊だけど悪くはないと思えるのだから不思議だ。
あるいは諦めた心境で眺めるからそう見えるのかもしれない
「ギィ!」
ヘルカトが怒りに震える。
ほんのささやかでもくだらない抵抗をされてひどく気分を害した。
一息に殺してやりたい気持ちを抑えてヘルカトはどう殺してやるか考える。
絶対に簡単には殺さない。
命乞いも抵抗しないならなぶり殺しにしてやるとヘルカトは圭を前にして悠長に考え始めた。
「あれは……?」
いつまで経っても苦痛が来ないことに眠くなってきた圭の視界の下に何かが見えた。
それは崖から落ちてきている。
思わず体を起こしかけた圭にヘルカトがようやくこのオモチャが命乞いでもするのかと期待する。
注意が散漫であった。
自身がいた場所が影に覆われてようやくヘルカトが何かが降ってくることに気づいて見上げた。
けれどそれではもう遅かった。
圭の体が一瞬浮き上がるほどの衝撃。
圭からほんの数十センチという所に巨大なモンスターが降ってきた。
「は、はははっ、ざまあみろ」
思わず笑いがこぼれる。
ヘルカトの頭にぶつかるように落ちてきたそれはそのままヘルカトを地面に押し倒した。
巻き込まれてヘルカトの上半身は巨大なモンスターの死体の下敷きになって動かなくなってしまった。
巨大なモンスターの下から覗く下半身はピクリとも動かず、ヘルカトがどうなったのか確認しなくてもわかっている。
「しっかしこれは……」
少し寝転がって休んでいたら体の調子はマシになった。
鈍い痛みは全身に走っているけれど動けはしそうだ。
ヘルカトのか、巨大なモンスターのか分からないけれど血が流れてくるので立ち上がって距離を取る。
落ちてきたモンスターは胸に大きな傷跡があり、あるはずの頭がなかった。
首はあるのできっと頭があったのだろうと思う。
よほどの化け物でなければ頭がなければ死んでいると見ていいので少し安心した。
どのようにして頭がなくなったのかは推測の域を出ないけれど胸の傷は1本で切り口がキレイなのが見て取れる。
爪や牙の類でつけられたものではない。
ほんの少しだけ希望が見えた。
胸の傷を見ると人が武器で傷つけた可能性があると考えたのだ。
ならばここは踏破された階か踏破中の階である可能性があり、現在進行形で攻略している覚醒者がいる。
上手く身を隠してモンスターに見つからなければ人に会えるかもしれない。
圭の顔色がいくらか良くなった。
「他に崖から降りて来る気配はない……」
圭は崖を見上げるが人の気配はない。
戦闘が終わったのか、まだ続いているのか、モンスターの死体は取りに来ないのか、下からでは分からない。
崖上は高く、様子は全く見えない。
上まで相当な高さがあるから戦闘が終わっていてもわざわざ下まで危険を冒してモンスターの死体を取りに来ないのかもしれない。
ふと圭は自分の手にもったナイフに目をやった。
次にモンスターの死体を見る。
取りに来る人がいないモンスターの死体。
他人が討伐したモンスターを勝手に漁るのは本来ご法度な行いだけれど周りにそれを咎める者はいない。
気づいたら痛む体を引きずって行ってモンスターの上に乗り、ナイフを突き立てていた。
安い小さなナイフでは解体も簡単なことではない。
胸から腹まで縦に切り裂いていくがモンスターも以外に硬くて重労働だった。
素材を持ち帰るのは不可能だから狙いは1つ。
モンスターの魔石。
多くの場合魔石は体の中にあるから何度もナイフで切り付けて少しずつ腹を開いていく。
「あった……!」
時間の感覚がないこの空間ではどれほど作業したか分からない。
クタクタになるまで作業してようやく下腹部に手のひら大の魔石を見つけた。
128
あなたにおすすめの小説
シスターヴレイヴ!~上司に捨て駒にされ会社をクビになり無職ニートになった俺が妹と異世界に飛ばされ妹が勇者になったけど何とか生きてます~
尾山塩之進
ファンタジー
鳴鐘 慧河(なるがね けいが)25歳は上司に捨て駒にされ会社をクビになってしまい世の中に絶望し無職ニートの引き籠りになっていたが、二人の妹、優羽花(ゆうか)と静里菜(せりな)に元気づけられて再起を誓った。
だがその瞬間、妹たち共々『魔力満ちる世界エゾン・レイギス』に異世界召喚されてしまう。
全ての人間を滅ぼそうとうごめく魔族の長、大魔王を倒す星剣の勇者として、セカイを護る精霊に召喚されたのは妹だった。
勇者である妹を討つべく襲い来る魔族たち。
そして慧河より先に異世界召喚されていた慧河の元上司はこの異世界の覇権を狙い暗躍していた。
エゾン・レイギスの人間も一枚岩ではなく、様々な思惑で持って動いている。
これは戦乱渦巻く異世界で、妹たちを護ると一念発起した、勇者ではない只の一人の兄の戦いの物語である。
…その果てに妹ハーレムが作られることになろうとは当人には知るよしも無かった。
妹とは血の繋がりであろうか?
妹とは魂の繋がりである。
兄とは何か?
妹を護る存在である。
かけがいの無い大切な妹たちとのセカイを護る為に戦え!鳴鐘 慧河!戦わなければ護れない!
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
現実世界にダンジョンが出現したのでフライングして最強に!
おとうふ
ファンタジー
2026年、突如として世界中にダンジョンが出現した。
ダンジョン内は無尽蔵にモンスターが湧き出し、それを倒すことでレベルが上がり、ステータスが上昇するという不思議空間だった。
過去の些細な事件のトラウマを克服できないまま、不登校の引きこもりになっていた中学2年生の橘冬夜は、好奇心から自宅近くに出現したダンジョンに真っ先に足を踏み入れた。
ダンジョンとは何なのか。なぜ出現したのか。その先に何があるのか。
世界が大混乱に陥る中、何もわからないままに、冬夜はこっそりとダンジョン探索にのめり込んでいく。
やがて来る厄災の日、そんな冬夜の好奇心が多くの人の命を救うことになるのだが、それはまだ誰も知らぬことだった。
至らぬところも多いと思いますが、よろしくお願いします!
天城の夢幻ダンジョン攻略と無限の神空間で超絶レベリング ~ガチャスキルに目覚めた俺は無職だけどダンジョンを攻略してトップの探索士を目指す~
仮実谷 望
ファンタジー
無職になってしまった摩廻天重郎はある日ガチャを引くスキルを得る。ガチャで得た鍛錬の神鍵で無限の神空間にたどり着く。そこで色々な異世界の住人との出会いもある。神空間で色んなユニットを配置できるようになり自分自身だけレベリングが可能になりどんどんレベルが上がっていく。可愛いヒロイン多数登場予定です。ガチャから出てくるユニットも可愛くて強いキャラが出てくる中、300年の時を生きる謎の少女が暗躍していた。ダンジョンが一般に知られるようになり動き出す政府の動向を観察しつつ我先へとダンジョンに入りたいと願う一般人たちを跳ね除けて天重郎はトップの探索士を目指して生きていく。次々と美少女の探索士が天重郎のところに集まってくる。天重郎は最強の探索士を目指していく。他の雑草のような奴らを跳ね除けて天重郎は最強への道を歩み続ける。
焔の幽閉者!自由を求めて最強への道を歩む!!
雷覇
ファンタジー
とある出来事で自身も所属する焔木一族から幽閉された男「焔木海人」。
その幽閉生活も一人の少女の来訪により終わりを迎える。
主人公は一族に自身の力を認めさせるため最強の力を求め続ける。
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編
荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明
まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。
そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。
その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる