37 / 515
第一章
風の始まり3
しおりを挟む
「覚醒者の等級をお聞きしてもいいですか?」
「等級ですか? いいですよ。私はB級覚醒者です」
中には等級を言いたがらない人もいるけれど特に等級そのものを誰かに知られても不都合なことはない。
伊丹もあっさりと等級を答えてくれた。
「へぇ……B級なのに協会で?」
覚醒者協会はいわゆる公務員的なものである。
様々な覚醒者にまつわる仕事をこなしていて給料なども安定している。
それなりに給料も高くて一般人にとってはいい職業であると言ってもいいのだけどそれが高い等級の覚醒者となると話は違う。
覚醒者のレイドチームに入ったり、大きな企業に雇われた方が遥かにお金を稼ぐことができる。
B級ともなれば一度ゲートに入れば一年分の給料の額なんて稼げてしまう。
「まあどうするのか悩んだことはありましたけど小さい妹や老いた父がいたので安全を考えました。たまたま就職できたってこともあるんですけどね」
「そうなんですか、優しいお姉さんなんですね」
「やめてくださいよ」
あまり笑うこともなく淡々と話を進めてきたので冷たい印象があったけれど照れたように笑う伊丹はB級覚醒者だなんて思えないような可愛らしい雰囲気があった。
「コホン……それでは失礼しますね」
「変なこと聞いてすいません」
「いえ、大丈夫ですよ。お体お大事になさってください」
ちょっと変な空気になってしまった。
伊丹が咳払いして立ち上がると病室を出ていく。
軽く手を振って見送る。
やはり、という思いが圭の中にはあった。
伊丹がB級であることの予想はついていた。
真実の目で見た時の等級はCだった。
何人か色々な人のステータスを見る中で思ったのは開発された技術による等級分類と真実の目による総合ランクというやつには何故か差があるということなのだ。
どうやら等級検査によって分類された等級は総合ランクより一つ上になっているらしかった。
なので総合ランクCの伊丹の覚醒者等級はBだろうと予想をしていたのである。
今のところは等級は総合ランクの一つ上という相関関係があることが濃厚であることが分かった。
「あれ、お客さん来ていたんですか?」
伊丹と入れ替わって波瑠が病室に入ってきた。
手には紙袋を持っている。
「覚醒者協会の人だって。
俺も一応覚醒者だからね」
「へぇ……そんなに強くなさそうだったけど」
「……そうだよ、悪かったな」
毎日見舞いにも来ているので波瑠とも少し仲が良くなった。
村雨さん、弥生さんと呼んでいたのだけど圭は波瑠と、波瑠は圭さんと呼ぶようになっていた。
少しばかり冗談を言い合えるぐらいの関係性にはなった。
打ち解けてみると波瑠は人懐こく、懐に入るのも上手かった。
「ボロボロだったし強くないみたいだけど……でも、カッコよかった、よ」
波瑠はわずかに頬を赤らめた。
モンスターには全然敵わなかった。
お世辞にも強いとは言えない姿であったけれど自分を必死に守ってくれようとした圭は少なくともカッコよくはあった。
「はいこれ」
「おっ、ありがとう」
波瑠は持ってきた紙袋を圭に渡した。
その中には有名バーガーチェーンのハンバーガーが入っている。
病院食も不味くはないのだけど圭は健康体であり若い男性である。
病院のご飯だけでは物足りない。
だから波瑠に買ってきてもらったのである。
小うるさく言ってくる看護師はいないけれど念のためドアを閉めて袋からバーガーやポテトを取り出す。
もちろん波瑠にお願いするのだから波瑠の分も買ってきていいとお金を渡してある。
「美味いな」
手作り料理にはないジャンキー感がまた美味い。
「あの……圭さん」
「ん、なに?」
「ご相談があるんですけど」
「相談? 俺でよければ」
ポテトをモソモソと食べながら波瑠は神妙な面持ちで話し始めた。
いつになく真剣な顔をしているのでちょっと圭も姿勢を正して波瑠の話を聞く準備をする。
「私……覚醒したみたいなんです」
「えっ?」
「実は……モンスターが倒れたぐらいの時に急に体がフワッとしたような感覚に襲われたんです。なんだか体の調子もいいし、あれ覚醒だったのかなって」
圭のことがあって誰にも言い出せなかった。
モンスターが死んだ瞬間波瑠は恐怖や疲労とはまた違った体の感覚を覚えていた。
その時は圭が瀕死で必死だったので忘れていたのだけど少し体の感覚が以前とは違っているように感じた。
病気ではなく体の感覚が鋭くなって軽くなったようないい変化である。
なんなのか悩んだ結果にこれは覚醒したのではないかと思った。
覚醒するということについては未だに謎が多い。
日常生活を送っていたら急に覚醒したということもあれば危機に瀕した時に覚醒した例もある。
あるいは覚醒した自覚もなかった人までいる。
そのために今でも覚醒しているかもなんて希望を持って等級検査を受けに行く人は後をたたない。
「ど、どう思いますか?」
追い詰められるような危険な状態にあると覚醒する確率は上がるなんて言われることもある。
かなり危機的状況であったし覚醒してもおかしくないと波瑠は思っていた。
「えーと……」
圭は真実の目を使ってみる。
『弥生波瑠
レベル3
総合ランクH
筋力G(英雄)
体力G(一般)
速度F(神話)
魔力G(英雄)
幸運G(英雄)
スキル:風の導き(未覚醒)
才能:有翼のサンダル(未覚醒)』
「うん、多分覚醒していると思うよ」
真実の目によるならおそらく覚醒している。
最初会った時には未覚醒となっていたのにそれがなくなりレベルが0から3に上がっている。
「等級ですか? いいですよ。私はB級覚醒者です」
中には等級を言いたがらない人もいるけれど特に等級そのものを誰かに知られても不都合なことはない。
伊丹もあっさりと等級を答えてくれた。
「へぇ……B級なのに協会で?」
覚醒者協会はいわゆる公務員的なものである。
様々な覚醒者にまつわる仕事をこなしていて給料なども安定している。
それなりに給料も高くて一般人にとってはいい職業であると言ってもいいのだけどそれが高い等級の覚醒者となると話は違う。
覚醒者のレイドチームに入ったり、大きな企業に雇われた方が遥かにお金を稼ぐことができる。
B級ともなれば一度ゲートに入れば一年分の給料の額なんて稼げてしまう。
「まあどうするのか悩んだことはありましたけど小さい妹や老いた父がいたので安全を考えました。たまたま就職できたってこともあるんですけどね」
「そうなんですか、優しいお姉さんなんですね」
「やめてくださいよ」
あまり笑うこともなく淡々と話を進めてきたので冷たい印象があったけれど照れたように笑う伊丹はB級覚醒者だなんて思えないような可愛らしい雰囲気があった。
「コホン……それでは失礼しますね」
「変なこと聞いてすいません」
「いえ、大丈夫ですよ。お体お大事になさってください」
ちょっと変な空気になってしまった。
伊丹が咳払いして立ち上がると病室を出ていく。
軽く手を振って見送る。
やはり、という思いが圭の中にはあった。
伊丹がB級であることの予想はついていた。
真実の目で見た時の等級はCだった。
何人か色々な人のステータスを見る中で思ったのは開発された技術による等級分類と真実の目による総合ランクというやつには何故か差があるということなのだ。
どうやら等級検査によって分類された等級は総合ランクより一つ上になっているらしかった。
なので総合ランクCの伊丹の覚醒者等級はBだろうと予想をしていたのである。
今のところは等級は総合ランクの一つ上という相関関係があることが濃厚であることが分かった。
「あれ、お客さん来ていたんですか?」
伊丹と入れ替わって波瑠が病室に入ってきた。
手には紙袋を持っている。
「覚醒者協会の人だって。
俺も一応覚醒者だからね」
「へぇ……そんなに強くなさそうだったけど」
「……そうだよ、悪かったな」
毎日見舞いにも来ているので波瑠とも少し仲が良くなった。
村雨さん、弥生さんと呼んでいたのだけど圭は波瑠と、波瑠は圭さんと呼ぶようになっていた。
少しばかり冗談を言い合えるぐらいの関係性にはなった。
打ち解けてみると波瑠は人懐こく、懐に入るのも上手かった。
「ボロボロだったし強くないみたいだけど……でも、カッコよかった、よ」
波瑠はわずかに頬を赤らめた。
モンスターには全然敵わなかった。
お世辞にも強いとは言えない姿であったけれど自分を必死に守ってくれようとした圭は少なくともカッコよくはあった。
「はいこれ」
「おっ、ありがとう」
波瑠は持ってきた紙袋を圭に渡した。
その中には有名バーガーチェーンのハンバーガーが入っている。
病院食も不味くはないのだけど圭は健康体であり若い男性である。
病院のご飯だけでは物足りない。
だから波瑠に買ってきてもらったのである。
小うるさく言ってくる看護師はいないけれど念のためドアを閉めて袋からバーガーやポテトを取り出す。
もちろん波瑠にお願いするのだから波瑠の分も買ってきていいとお金を渡してある。
「美味いな」
手作り料理にはないジャンキー感がまた美味い。
「あの……圭さん」
「ん、なに?」
「ご相談があるんですけど」
「相談? 俺でよければ」
ポテトをモソモソと食べながら波瑠は神妙な面持ちで話し始めた。
いつになく真剣な顔をしているのでちょっと圭も姿勢を正して波瑠の話を聞く準備をする。
「私……覚醒したみたいなんです」
「えっ?」
「実は……モンスターが倒れたぐらいの時に急に体がフワッとしたような感覚に襲われたんです。なんだか体の調子もいいし、あれ覚醒だったのかなって」
圭のことがあって誰にも言い出せなかった。
モンスターが死んだ瞬間波瑠は恐怖や疲労とはまた違った体の感覚を覚えていた。
その時は圭が瀕死で必死だったので忘れていたのだけど少し体の感覚が以前とは違っているように感じた。
病気ではなく体の感覚が鋭くなって軽くなったようないい変化である。
なんなのか悩んだ結果にこれは覚醒したのではないかと思った。
覚醒するということについては未だに謎が多い。
日常生活を送っていたら急に覚醒したということもあれば危機に瀕した時に覚醒した例もある。
あるいは覚醒した自覚もなかった人までいる。
そのために今でも覚醒しているかもなんて希望を持って等級検査を受けに行く人は後をたたない。
「ど、どう思いますか?」
追い詰められるような危険な状態にあると覚醒する確率は上がるなんて言われることもある。
かなり危機的状況であったし覚醒してもおかしくないと波瑠は思っていた。
「えーと……」
圭は真実の目を使ってみる。
『弥生波瑠
レベル3
総合ランクH
筋力G(英雄)
体力G(一般)
速度F(神話)
魔力G(英雄)
幸運G(英雄)
スキル:風の導き(未覚醒)
才能:有翼のサンダル(未覚醒)』
「うん、多分覚醒していると思うよ」
真実の目によるならおそらく覚醒している。
最初会った時には未覚醒となっていたのにそれがなくなりレベルが0から3に上がっている。
131
あなたにおすすめの小説
シスターヴレイヴ!~上司に捨て駒にされ会社をクビになり無職ニートになった俺が妹と異世界に飛ばされ妹が勇者になったけど何とか生きてます~
尾山塩之進
ファンタジー
鳴鐘 慧河(なるがね けいが)25歳は上司に捨て駒にされ会社をクビになってしまい世の中に絶望し無職ニートの引き籠りになっていたが、二人の妹、優羽花(ゆうか)と静里菜(せりな)に元気づけられて再起を誓った。
だがその瞬間、妹たち共々『魔力満ちる世界エゾン・レイギス』に異世界召喚されてしまう。
全ての人間を滅ぼそうとうごめく魔族の長、大魔王を倒す星剣の勇者として、セカイを護る精霊に召喚されたのは妹だった。
勇者である妹を討つべく襲い来る魔族たち。
そして慧河より先に異世界召喚されていた慧河の元上司はこの異世界の覇権を狙い暗躍していた。
エゾン・レイギスの人間も一枚岩ではなく、様々な思惑で持って動いている。
これは戦乱渦巻く異世界で、妹たちを護ると一念発起した、勇者ではない只の一人の兄の戦いの物語である。
…その果てに妹ハーレムが作られることになろうとは当人には知るよしも無かった。
妹とは血の繋がりであろうか?
妹とは魂の繋がりである。
兄とは何か?
妹を護る存在である。
かけがいの無い大切な妹たちとのセカイを護る為に戦え!鳴鐘 慧河!戦わなければ護れない!
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
現実世界にダンジョンが出現したのでフライングして最強に!
おとうふ
ファンタジー
2026年、突如として世界中にダンジョンが出現した。
ダンジョン内は無尽蔵にモンスターが湧き出し、それを倒すことでレベルが上がり、ステータスが上昇するという不思議空間だった。
過去の些細な事件のトラウマを克服できないまま、不登校の引きこもりになっていた中学2年生の橘冬夜は、好奇心から自宅近くに出現したダンジョンに真っ先に足を踏み入れた。
ダンジョンとは何なのか。なぜ出現したのか。その先に何があるのか。
世界が大混乱に陥る中、何もわからないままに、冬夜はこっそりとダンジョン探索にのめり込んでいく。
やがて来る厄災の日、そんな冬夜の好奇心が多くの人の命を救うことになるのだが、それはまだ誰も知らぬことだった。
至らぬところも多いと思いますが、よろしくお願いします!
天城の夢幻ダンジョン攻略と無限の神空間で超絶レベリング ~ガチャスキルに目覚めた俺は無職だけどダンジョンを攻略してトップの探索士を目指す~
仮実谷 望
ファンタジー
無職になってしまった摩廻天重郎はある日ガチャを引くスキルを得る。ガチャで得た鍛錬の神鍵で無限の神空間にたどり着く。そこで色々な異世界の住人との出会いもある。神空間で色んなユニットを配置できるようになり自分自身だけレベリングが可能になりどんどんレベルが上がっていく。可愛いヒロイン多数登場予定です。ガチャから出てくるユニットも可愛くて強いキャラが出てくる中、300年の時を生きる謎の少女が暗躍していた。ダンジョンが一般に知られるようになり動き出す政府の動向を観察しつつ我先へとダンジョンに入りたいと願う一般人たちを跳ね除けて天重郎はトップの探索士を目指して生きていく。次々と美少女の探索士が天重郎のところに集まってくる。天重郎は最強の探索士を目指していく。他の雑草のような奴らを跳ね除けて天重郎は最強への道を歩み続ける。
焔の幽閉者!自由を求めて最強への道を歩む!!
雷覇
ファンタジー
とある出来事で自身も所属する焔木一族から幽閉された男「焔木海人」。
その幽閉生活も一人の少女の来訪により終わりを迎える。
主人公は一族に自身の力を認めさせるため最強の力を求め続ける。
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編
荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明
まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。
そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。
その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる