人の才能が見えるようになりました。~いい才能は幸運な俺が育てる~

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第一章

飛び始めた小鳥を狙う闇3

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 正直もう覚悟してたぐらいだったのだけどその覚悟は圭に通じていない。

「それで、狙われてるってなんですか?」

 でも今何かの文句を言えば藪蛇になりかねない。
 波瑠はまだちょっとむくれたままベッドにダイブした。

 こんな大きなベッドは初めてだ。

「分からん。でもずっと同じ人が後をつけてきてる」

「ええっ? だって誰もいなかった……」

「いたんだよ。隠れてついてきてた」

「そんな……誰が一体そんなことを」

 波瑠の顔が青くなる。
 ホテルに連れ込まれるなんて普通の事態じゃないけどまさか後をつけられているなんて思いもしなかった。

 後をつけられる覚えもなくて恐怖を感じる。
 話を聞いてようやくホテルに連れ込まれた理由が分かった。

 あのまま家まで帰っていたら危なかったかもしれない。

「とりあえずこんなところまで来ないだろう」

「……ありがとう」

 圭の咄嗟の機転に救われたのだ。
 波瑠はなんだか怖くてベッドの上で膝を抱えるように座った。

「今日はとりあえずここに泊まることにしよう。俺と一緒じゃラブホなんて嫌かもしれないけどさ」

「嫌だなんてこと……ない…………けど」

 キッパリ嫌じゃないと言うとまるで一緒に入りたかったみたいに聞こえるかもしれない。
 赤くなったのを隠すように波瑠は膝の間に顔をうずめた。

「とりあえず親には連絡を。泊まるってことだけでいいと思うけど」

「うん……」

 波瑠が親に連絡を入れている間に圭はお風呂を入れる。
 一日中外を歩き回ったし体が埃っぽい。

 一応着替えはしたのだけどスッキリはしたい。
 どうせ広々浴槽があるならお風呂に入りたいと思った。

 波瑠は友達のところに泊まるということになった。
 元々狩猟に行くのではなく友達と遊びに行くと説明していたのでそのまま泊まると言っても疑問は持たれなかったようである。

「つけられている? 本当なのかい?」

「ああ、誰か分かんないけどね。多分狙いは波瑠だ」

「なんで波瑠を?」

「……俺の予想では波瑠の父親の会社なんじゃないかって思ってる」

 波瑠が母親に連絡している間に圭は夜滝に連絡を入れた。
 どうにもつけられているらしく帰れないと話すと電話口で夜滝も驚いていた。

 声をひそめて圭は自分の予想を口にした。
 圭に狙われるような理由はない。

 狙われるとしたら波瑠の方だ。
 それに突然現れた表示。

 闇とか小鳥とか分からないけれどあの場にいた人からして小鳥は波瑠で、狙っていた忠成とかいう人が闇なのではないかと予想したのだ。

「水野さんにも警告伝えておいてほしい」

「……分かった。気をつけたまえよ」

「分かってる。もしかしたら夜滝ねぇも狙われるかもしれないから……」

「こっちも戸締まりはしておく。ただ……」

「ただ?」

「波瑠に手は出すんじゃないよ?」

「な……そんなことしないよ!」

 圭は思わず顔を赤くする。

「他にも色々あったはずなのにぃ、わざわざラブホテルを選んだんだろぅ?」

 電話口の夜滝は不機嫌そうな声を出している。
 若い男女がラブホテルに入るということが夜滝は気に入らない。

「いや、違うって……」

 たまたま近くにあったのがラブホだっただけ。
 それにファミレスとかだと一晩潰すのも難しく外からでも監視できてしまう。

 ちょっと恥ずかしいかもしれないけど咄嗟に選んだにしてはいい場所であると思う。

「ふん……早く無事に帰ってきておくれよ」

「分かったよ」

 まあでも確かにラブホテルはどうだったのか今更ながら考えるところはある。
 しかし住宅街に近くて長時間身を寄せられるところなんてそれこそラブホぐらいじゃないか。

 若い男女が行くのにビジネスホテルでは逆に怪しい雰囲気すら出てしまう。
 ストーキングされている確証もないのに警察にも飛び込めないし警戒されてしまったら相手がどんな手に出てくるのかも分からない。

 やっぱりラブホだなと思う圭はうなずいた。

「圭さーんお風呂溢れてましたよ」

「あっと、すまない」

「……先に入ってもいいですか? 髪の毛、ベタベタして気持ち悪くて」

「うん、お先にどうぞ」

 波瑠がお風呂に入って圭は音とか聞こえないようにテレビをつけて音量を上げた。
 外を確認したいけどホテルの表側に窓がなくてまだ忠成がいるのかどうか見ることは出来ない。

 1人で表に出るのもの怖いし1人で出れば明らかに確認しにきたことがバレてしまう。

「……出前なんて取れるのか」

 どうせなら初めてのラブホを楽しんでみようと部屋の中のものを物色してみる。
 近くのお店で取れる出前の冊子なんてあってお腹も空いてきたな圭は思った。

 ただいくら気にしないようにしても女の子とラブホに来ているという事実に少し胸がドキドキしているのはいつまで経っても落ち着かなかった。
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