人の才能が見えるようになりました。~いい才能は幸運な俺が育てる~

犬型大

文字の大きさ
51 / 515
第一章

飛び始めた小鳥を狙う闇6

しおりを挟む
「私だって!」

「な……」

 この戦いは圭1人だけのものじゃない。
 脇腹に鋭い痛みを感じて忠成が振り返ると波瑠がいた。

 手にはナイフを持ち、先端が脇腹に突き刺さっている。

「な、なん……」

 忠成にとって予想外の存在が波瑠だった。
 いるのは当然分かっていた。

 けれど波瑠が覚醒者であることは圭と夜滝しか知らないことで忠成がいくら調べようとも知ることができるはずはない。
 しかも波瑠の速度はE +。

 対して忠成の速度はE。
 波瑠の方が速度のステータスは高い。

 たとえ魔力差があってもスピードにはそんなに差が出ない。
 通常でもステータス上拮抗しているスピードなのに波瑠が勇気を出して攻撃してくるなんてことは全く思ってもいなかったなら回避などできない。

「この……ガキ!」

「いいんですか?」

「はっ?」

 殴られても蹴られても。
 例え勝てなさそうでも。

 諦めない。
 何度もG級だとバカにされた。

 使えないやつだと言われて、学もない力もないと見下された。
 めげてしまったこともたくさんある。

 情けなくて諦めたくなったこともいっぱいある。
 でも圭には可能性がある。

 そして波瑠にも可能性がある。
 弱いものを虐げて、バカにして、騙して、殺そうとして。

 許せるはずがない。
 波瑠を守らなきゃならないと熱く強い思いが湧き上がってくる。

「ぐわああああっ! くそ……くそっ!」

 圭のナイフが忠成の顔の真ん中を真横に切り裂いた。

「ぶっ殺してやる!」

 怒りで痛みを忘れた忠成は思い切り圭を殴り飛ばした。

「圭さん!」

 圭の手からナイフが滑り落ちて地面を二転三転と転がる。
 忠成が落ちた圭のナイフを拾い上げて圭に迫る。

「圭さーん!」

 動かなきゃいけないのに圭はダメージが大きく動けない。

「死ね!」

 圭を目がけて忠成がナイフを振り下ろした。

「うっ! うわああああっ、なんだ!」

「お前見覚えがあるな。……でも思い出せない。とりあえず捕まえよう」

 振り下ろされた忠成の手にどこからともなく飛んできた矢が突き刺さった。
 狙いすました一撃。

 綺麗に忠成の手を貫通してナイフが大きく後ろに飛んでいった。
 忠成が新たなる乱入者に怒りの視線を向けた。

 30代ぐらいの整った顔立ちをしているやや切長の目をしたスーツの男性が剣を抜いて忠成の方に歩いてきていた。

「し、柴原嶺二しばはられいじ!」

「うん、私のことを知ってくれているとは。大人しく投降するか……抵抗するか、選びたまえ」

 柴原の後ろには弓矢を構えた女性もいる。
 終わったと忠成は思った。

 もう逃げられない。
 これほどボロボロになっているし逃げられても隠れることも困難である。

「早く選びたまえ。無駄な時間はない方がいい」

 どうせ逃げられないのなら。
 忠成は動いた。

 圭にトドメを刺す。
 ここまで追い詰めてくれたG級の圭をせめて道連れにしてやると無事な左手を伸ばした。

「それが君の選択か。尊重するよ。ただし、その代償は必要だ」

「えっ……」

 あと少しで指先が圭に触れる。
 このまま地面に頭を叩きつけてかち割ってやると忠成は思っていた。

 しかし突然視界に移っていたはずの手が消えた。
 何も見えなかった。

 何が起きたか分からなかった。

「手を出したんだ。手を失うのが、代償というものだろう?」

 本来手があったところを目で辿る。
 手はない。

 腕もない。
 肘もない。

 そこまで来て隣に柴原がいることに気がついた。
 見ると肩から先がなくなっている。

「まだ代償を払いたいかい?」

「う、うわああああああっ!」

 遅れてひどい痛みに襲われて忠成は悲鳴をあげた。
 少し離れていた波瑠にも柴原の動きは見えなかった。

「柴原さん、もうやめてください。これ以上やったら死んでしまいます」

 弓矢を持った女性が止めに入る。
 何もしなくてももう抵抗出来ないだろうが万が一さらに手を出してしまえば死んでしまう。

「信用がないな。まあいい」

「う、腕がぁ!」

「うるさい」

 と言いながらも弓矢を持った女性は腕がなくなって叫ぶ忠成の腹を殴りつけて気絶させた。

「君も大概だな」

「さっさと終わらせられるのに腕まで切り落としたあなたに言われたくありません」

 仲が良いのか悪いのか。
 柴原は愉快そうに目を細めると剣を収めた。

「け、圭さん!」

 忠成は倒された。
 波瑠が地面に伏したまま動かない圭に駆け寄る。

「君が弥生波瑠さん、そちらの倒れている方が村雨圭さんですね?」

「そ、そうです。早く救急車を!」

「……大丈夫ですよ」

 柴原は非常に冷静だ。
 ジッと圭を見つめて緊急性は低いと判断した。

 気を失っているだけで命に別状はない。

「それよりも……」

「それよりってなんですか!」

「……柴原さん」

 焦ったところで救急車も来ない。
 先に少し話でも聞こうとしたけれど波瑠にとってはそれどころじゃない。

 弓矢を持った女性がやれやれと首を振る。

「弥生さん、ごめんなさいね。村雨さんは魔力の状態を見るに大丈夫よ。外傷はあるけど命に別状はないはずよ」

「本当ですか……?」

「こんな可愛い子に心配してもらえるなんて果報者ね。救急車もすぐに到着するはずよ」

 気の利かない柴原の代わりに弓矢を持った女性が対応にあたる。

「はい、もしもし」

 柴原のスマホに着信があった。
 弓矢を持った女性にも聞こえるように柴原はスマホをスピーカーにした。

「こちらはクリア。他に狙っていた者もいないようです」

「そうか、ご苦労様です。引き続き護衛を頼みます」

 何の会話だろうと波瑠は思った。

「大丈夫。全部上手くいっているわ」

 弓矢を持った女性は優しく波瑠に微笑みかける。
 遠くに救急車のサイレンが聞こえ始めた。

 とりあえず今は圭が無事ならそれでいい。
 いかに無事だと言われても顔は大きく腫れて気を失った姿を見ていては心配は絶えない。

 波瑠は圭の手を握って圭の無事を祈った。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

シスターヴレイヴ!~上司に捨て駒にされ会社をクビになり無職ニートになった俺が妹と異世界に飛ばされ妹が勇者になったけど何とか生きてます~

尾山塩之進
ファンタジー
鳴鐘 慧河(なるがね けいが)25歳は上司に捨て駒にされ会社をクビになってしまい世の中に絶望し無職ニートの引き籠りになっていたが、二人の妹、優羽花(ゆうか)と静里菜(せりな)に元気づけられて再起を誓った。 だがその瞬間、妹たち共々『魔力満ちる世界エゾン・レイギス』に異世界召喚されてしまう。 全ての人間を滅ぼそうとうごめく魔族の長、大魔王を倒す星剣の勇者として、セカイを護る精霊に召喚されたのは妹だった。 勇者である妹を討つべく襲い来る魔族たち。 そして慧河より先に異世界召喚されていた慧河の元上司はこの異世界の覇権を狙い暗躍していた。 エゾン・レイギスの人間も一枚岩ではなく、様々な思惑で持って動いている。 これは戦乱渦巻く異世界で、妹たちを護ると一念発起した、勇者ではない只の一人の兄の戦いの物語である。 …その果てに妹ハーレムが作られることになろうとは当人には知るよしも無かった。 妹とは血の繋がりであろうか? 妹とは魂の繋がりである。 兄とは何か? 妹を護る存在である。 かけがいの無い大切な妹たちとのセカイを護る為に戦え!鳴鐘 慧河!戦わなければ護れない!

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

現実世界にダンジョンが出現したのでフライングして最強に!

おとうふ
ファンタジー
2026年、突如として世界中にダンジョンが出現した。 ダンジョン内は無尽蔵にモンスターが湧き出し、それを倒すことでレベルが上がり、ステータスが上昇するという不思議空間だった。 過去の些細な事件のトラウマを克服できないまま、不登校の引きこもりになっていた中学2年生の橘冬夜は、好奇心から自宅近くに出現したダンジョンに真っ先に足を踏み入れた。 ダンジョンとは何なのか。なぜ出現したのか。その先に何があるのか。 世界が大混乱に陥る中、何もわからないままに、冬夜はこっそりとダンジョン探索にのめり込んでいく。 やがて来る厄災の日、そんな冬夜の好奇心が多くの人の命を救うことになるのだが、それはまだ誰も知らぬことだった。 至らぬところも多いと思いますが、よろしくお願いします!

天城の夢幻ダンジョン攻略と無限の神空間で超絶レベリング ~ガチャスキルに目覚めた俺は無職だけどダンジョンを攻略してトップの探索士を目指す~

仮実谷 望
ファンタジー
無職になってしまった摩廻天重郎はある日ガチャを引くスキルを得る。ガチャで得た鍛錬の神鍵で無限の神空間にたどり着く。そこで色々な異世界の住人との出会いもある。神空間で色んなユニットを配置できるようになり自分自身だけレベリングが可能になりどんどんレベルが上がっていく。可愛いヒロイン多数登場予定です。ガチャから出てくるユニットも可愛くて強いキャラが出てくる中、300年の時を生きる謎の少女が暗躍していた。ダンジョンが一般に知られるようになり動き出す政府の動向を観察しつつ我先へとダンジョンに入りたいと願う一般人たちを跳ね除けて天重郎はトップの探索士を目指して生きていく。次々と美少女の探索士が天重郎のところに集まってくる。天重郎は最強の探索士を目指していく。他の雑草のような奴らを跳ね除けて天重郎は最強への道を歩み続ける。

焔の幽閉者!自由を求めて最強への道を歩む!!

雷覇
ファンタジー
とある出来事で自身も所属する焔木一族から幽閉された男「焔木海人」。 その幽閉生活も一人の少女の来訪により終わりを迎える。 主人公は一族に自身の力を認めさせるため最強の力を求め続ける。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明

まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。 そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。 その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。

異世界帰りの元勇者、日本に突然ダンジョンが出現したので「俺、バイト辞めますっ!」

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
俺、結城ミサオは異世界帰りの元勇者。 異世界では強大な力を持った魔王を倒しもてはやされていたのに、こっちの世界に戻ったら平凡なコンビニバイト。 せっかく強くなったっていうのにこれじゃ宝の持ち腐れだ。 そう思っていたら突然目の前にダンジョンが現れた。 これは天啓か。 俺は一も二もなくダンジョンへと向かっていくのだった。

処理中です...