人の才能が見えるようになりました。~いい才能は幸運な俺が育てる~

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第二章

工房の問題2

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「どうですか?」

「いい感じです」

 ちゃんと体を測って調整をしてくれたので圭の体にフィットする仕上がりになっていた。
 ゆるくもなくキツくもなくちょうどいい。

 こうした細かな調整も自社製造ならではだ。
 既製品では自分の体型に合わせてなんて簡単にはいかない。

「このまま持ち帰りますか?」

「そうですね、そう……」

「おいおい、何してんだよ? おー、客か? 珍しい物好きがいたもんだ」

 ベスト1つぐらいならかさばるものじゃないので持って帰れる。
 本当ならもう少し調整してもらって通う口実が欲しかったのだけど、調整は完璧でこれ以上注文の付けようもなかった。

 仕方ないのでまた別の用事でも作らねばならないなと考えていた。
 すると数人の男たちが地下に入ってきた。

 チャラついていて柄が悪く見えた。
 なんだか不快になるような笑みを浮かべて4人ほどでゾロゾロとやってきた。

 先頭の男を見てカレンが怯えた目をした。
 圭を無視して一人の男がカレンに近寄る。

「どうだ? 金の用意はできたか?」

「ちょっと……今お客さんの接客中……」

「そんなの俺たちには関係ねぇよ。金は出来たかって言ってんだよ」

「そんなにすぐ用意なんてできるはずが……」

「ならここに置いてあるもんでも安売りすりゃあいいだろ? 書いてある通りこのボロ屋貰ったっていいんだぜ」

「商品もここも手放さない!」

「ならさっさと、お金、返してもらおうか?」

 男は内ポケットから書類を取り出して開いた。
 内容こそ読めないが会話から察するに契約書や借金について書かれているのではないかと圭は思った。

「まだ期限までは時間があるはずです」

「それはそうだが借金てのは期限が切れる前に返すもんだ。……そうだな」

「うっ!」

 男がカレンの顎を掴んだ。
 
「顔はそこそこだが体つきは悪くねぇ。一度デカい女抱いてみたかったんだ。どうだ? 一回やらせりゃ100万ぐらいなら減らしてやるぞ」

 男は顎をグリグリと動かしてカレンの顔を舐め回すように見る。

「は、放してください!」

 パンと手を弾くようにしながらカレンは顔を背ける。

「チッ……」

 弾かれた手がヒリヒリ痛んで男は一瞬で目の色を変えた。

「優しくしてやればつけ上がりやがって!」

 瞬間湯沸かし器の如く男の頭に血が上った。
 手を振り上げられてカレンの体が恐怖に固まる。

「……なんだテメェ?」

 流石に目の前で女性が殴られそうになっているのに黙っては見ていられなかった。
 振り上げられた男の手を取って止めた圭。

 男が怒りのこもった目で圭を睨みつける。

「それはちょっとダメなんじゃないかな?」

 暴力は良くない。
 体格的には大きなカレンだけど怯える相手を殴打するなんて言語道断である。

 男は手に力を込めるけれど圭の手を振り払えないでいる。
 どうやら覚醒者ではなく一般人のようで、圭の方が弱そうに見えても覚醒者である以上は力は上なのである。

「……お前こんな所にいるってことは覚醒者だな?」

「だったらどうした?」

 ニヤリと男が笑う。

「覚醒者様がうざいんだよ!」

「クッ!」

 男が圭の腹を殴りつけた。
 一般人よりは丈夫な覚醒者だけど圭の等級ではそれでもノーダメージとはいかない。

 鈍い衝撃に思わず男の手を放す。

「ふっ、ほら、殴ってみろよ?」

 男がペチペチと自分の頬を叩きながら差し出す。
 圭を見下したような気に触る笑い顔をしている。

 しかし圭は手を出さない。
 覚醒者が一般人に手を出すのは御法度。

 もちろん抵抗してはいけないなどと法律には書いていないのであるが、覚醒者が一般人に手を出した時に罪は一般人同士の時よりも重たくなる。
 少しレベルアップしたばかりの圭であるが本気で抵抗すれば男たちよりも強い。

 けれどどこまでが正当な防衛行為なのかはかなり曖昧で、手を出せば途端に不利になることは間違いない。
 とりあえずカレンが殴られそうになっているから割り込んでしまったが、圭が手を出して良いことなど一つもないことは分かっているので手は出さない。

「お願いです。手を出さないで!」

 カレンが止めたのは圭の方だった。

「いいんだぜ? 先手を出したのは俺の方だからな」

「そんなことしたら爺さん訴えるつもりだろ!」

「ははっ、分かってんじゃないか。あーあ、そいつが手を出してくれれば終わりだったのにな。だけど、せっかく良いところだったのに……邪魔しやがってよ!」

 男は圭の顔を殴りつけた。
 体力値がGより上がっていてよかった。

 痛いけど情けなく転がることは避けられた。
 事情は分からないけれどどうやら圭が手を出せば不利なことになるようなので痛みに耐える。

「ま、待ってください! その人は関係のないお客さんで……」

「うるせぇ! ……チッ、またお前か!」

 男がまたカレンを殴りつけようとしたので圭が止める。

「殴るなら俺を殴れ」

「お、お客さん……」

 痛いのは嫌いだけど目の前でカレンが殴られるよりはいい。
 反撃してしまえばいいという思いがないなんてことは決してない。

 どこかで全員を殴り倒してしまいたいような怒りはある。
 しかしここで手を出して暴力で暴力を解決しようとすれば相手と同じになってしまう。
 
 法律ということだけでなく人としてやってはダメなこと、劣るようなことはしてはいけない。
 モンスター相手でもない限り暴力に訴えるのは圭にとっては最後の手段なのである。
 
 今のところ明らかに暴力を振るってるのは男の方なのだからそもそも殴られた時点で警察を呼んでおけばよかったと今更ながら思う。
 だが事情もありそうなのでここは丸く収めるために圭は男の前に立ちはだかる。

 殴り飛ばして解決するのはその場だけで、もしかしたらカレンは後々痛い目に遭うかもしれない。
 圭が殴られるだけで済むならその方がいいと考えたのも警察まで及ばなかった理由でもある。

 妙な男気やら配慮やらでもうどうしたら正解なのか圭にも分からなくなってきた。

「……なら大人しく殴られてろよ!」

 取り巻きの男たちも加わって圭を囲む。
 これは流石に警察を呼ぶべきだなと圭も顔をしかめる。

「や、やめ……」

「何をしておる!」

「ヤバっ……!」

 圭にだって我慢の限界というものがある。
 殴られたらカレンに警察を呼んでもらおうとおもっていたら地下全体が震えるような声が響いて男たちの動きが止まった。
 
 怖い目をした白髪の老人が地下に降りてきていた。
 側にあった槍を手に取ると刃に付けていたカバーを取り外す。

 男たちの顔が青くなる。

「貴様ら……殺してやる!」

「爺さん!」

「ええい! 退けろカレン! ワシはアイツらを……」

 槍を振り回そうとする老人の前にカレンが立ちはだかる。
 その間に男たちはさっさと逃げていってしまう。
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