79 / 515
第二章
小嶋金融3
しおりを挟む
何事もなく済めばよかったのだけどそうもいかなかった。
部屋で渡部が大暴れしていたことは知っているので危ないこともあるかもしれないと思ってカレンと優斗には近くのホテルに泊まってもらった。
少なくとも和輝が復帰して仕事などを再開して人目につくようになるまではと思ったのである。
安い宿でいいと言っていたけどセキュリティの関係もあるので良いホテルに泊まっていた。
その間に問題が起きたのである。
まず工房に泥棒が入った。
窓が壊されて家の中が荒らされていた。
幸いなことに現金など家に財産を置いてはいなかったので盗まれたものはなかった。
けれど地下の装備品を置いてある部屋も鍵がかかったドアが壊されて侵入されていたのに盗まれたものはなかった。
警察もまるで何かを探していたようだと首を傾げていた。
なので正確には泥棒だったのかも分からない。
住居の侵入と窓などを壊した器物損壊はあっても特別盗まれたものがなかったから。
心当たりは、と聞かれて頭に浮かんだのは小嶋金融であった。
しかし小嶋金融が泥棒に入ってまで何を探しているのか見当もつかなかった。
結局疑わしい相手もおらず、すぐに換金できそうなものがなかったから諦めたということになった。
「まさか泥棒が入るなんて……」
「ホテルに泊まっててよかったですね」
「その後だって……」
「あれは……どうなんでしょうね」
八重樫工房に泥棒が入った件では被害も大きくなかったので地元紙の片隅に小さく載る程度だった。
けれど泥棒騒ぎの後ニュースになるような大事件が起きた。
正確には圭やカレン、八重樫工房が関わったものではない。
犯人不明の大量殺人事件というのが新聞の見出しに載った。
被害者は小嶋金融の社員たち。
その中には渡部もいた。
見出し通り小嶋金融の社員たち全員が虐殺されていたのである。
やり方はグレーとはいえ一般の会社であり会社も街中にある。
全員が虐殺されていたニュースはネットやテレビまでほとんどのメディアが取り上げた。
どうやら犯人は防犯カメラの映像から覚醒者の指名手配犯で凶悪な人物のようであると報道されていた。
犯罪者による突発的な犯罪や金融会社であるのでお金を借りようとして断られたことによる逆恨みなど色んな人が色んな憶測を立てた。
「関係ない……とは思うけど」
理由は分からないが犯罪者による事件であることはほぼ確定なようだ。
ならばそこに関して八重樫工房は関係があるはずがない。
そう思いたいのだけどこんなタイミングで起きたことなので何も関係ないだろうと楽観的に考えられないのもまた事実であった。
多少の関わりがあっただけに後味の悪さを感じてしまう。
「小嶋金融が襲われた件は別にしても泥棒は多分そうでしょうね。何か狙われるような心当たりは?」
「なんもないよ。お金だって返したばかりなんだからないの分かってるはずだろ?」
「確かにね」
泥棒は小嶋金融だと思う。
タイミング的にも状況的にもそれしか考えられない。
近所で他に泥棒に入られたところはない。
確実に八重樫工房を狙っている。
にも関わらず盗まれたものはない。
狙っていたものや理由があるはずなのだけどカレンは全く分からなかった。
「以前一度言われたことがある」
「爺さん?」
「最初借金について話を持ってきたときに言われたんだ。『ものでもいい』ってな」
「もの?」
「てっきり俺は商品となってる装備品でいいのかと思ったんだが見せても違うって言われてな。今思えばアイツらの狙いはアレだったのかもしれないな」
「アレってなんだよ?うちにそんな高価なものあったか?」
「……価値は分からん。それに正確にいえば俺のものでもない」
「どういうことだよ?」
「少しばかり昔のことだ。俺がまだ動けた時、覚醒者として活躍していたことがある」
和輝は第二期覚醒者と呼ばれるかなり早い段階で覚醒者となった人であった。
当時からもうすでに若いとはいえなかったが腕っ節には自信があったので今のように刀匠として仕事をするかたわらに覚醒者としても活動を行なっていた。
「その時に威勢のいい若いのがいてな。可愛がっていたんだ」
まだ法律も整備されておらず、体系的な活動もようやく模索されてきたような状況だった。
その中で和輝は若くて人のために危険な状況にも突っ込んでいくとある覚醒者に目をかけていた。
無謀なこともするが困っている人を放っておけないような真っ直ぐな人であった。
「あるゲートを攻略することになってな。俺とそいつも一緒だったんだ」
攻略は順調だった。
顔を知っている人も多く、連携もそこそこ取れていたのでボスのところまで被害も少なくたどり着くことができた。
だがそのボスはなかなか曲者だった。
注意を引こうとするタンクを無視して後衛を狙う狡い知恵を持っていた。
なんとか死傷者が出ないように戦ってボスを追い詰めた。
「けれどそいつは最後の足掻きだろうが後衛に突っ込んで自爆しようとしやがった。それでそいつはみんなを助けようと突っ込んでいってな。なんとか自爆を止められたのだけどそいつを手助けしようとして俺はケガを負った」
足を大きくケガした和輝。
すでにみんな満身創痍で簡単な止血程度にしか治療ができなかった。
時間が経つとケガは完全に治せなくなる。
ゲートを出た時には和輝のケガは完全には治せなくなってしまっていたのであった。
部屋で渡部が大暴れしていたことは知っているので危ないこともあるかもしれないと思ってカレンと優斗には近くのホテルに泊まってもらった。
少なくとも和輝が復帰して仕事などを再開して人目につくようになるまではと思ったのである。
安い宿でいいと言っていたけどセキュリティの関係もあるので良いホテルに泊まっていた。
その間に問題が起きたのである。
まず工房に泥棒が入った。
窓が壊されて家の中が荒らされていた。
幸いなことに現金など家に財産を置いてはいなかったので盗まれたものはなかった。
けれど地下の装備品を置いてある部屋も鍵がかかったドアが壊されて侵入されていたのに盗まれたものはなかった。
警察もまるで何かを探していたようだと首を傾げていた。
なので正確には泥棒だったのかも分からない。
住居の侵入と窓などを壊した器物損壊はあっても特別盗まれたものがなかったから。
心当たりは、と聞かれて頭に浮かんだのは小嶋金融であった。
しかし小嶋金融が泥棒に入ってまで何を探しているのか見当もつかなかった。
結局疑わしい相手もおらず、すぐに換金できそうなものがなかったから諦めたということになった。
「まさか泥棒が入るなんて……」
「ホテルに泊まっててよかったですね」
「その後だって……」
「あれは……どうなんでしょうね」
八重樫工房に泥棒が入った件では被害も大きくなかったので地元紙の片隅に小さく載る程度だった。
けれど泥棒騒ぎの後ニュースになるような大事件が起きた。
正確には圭やカレン、八重樫工房が関わったものではない。
犯人不明の大量殺人事件というのが新聞の見出しに載った。
被害者は小嶋金融の社員たち。
その中には渡部もいた。
見出し通り小嶋金融の社員たち全員が虐殺されていたのである。
やり方はグレーとはいえ一般の会社であり会社も街中にある。
全員が虐殺されていたニュースはネットやテレビまでほとんどのメディアが取り上げた。
どうやら犯人は防犯カメラの映像から覚醒者の指名手配犯で凶悪な人物のようであると報道されていた。
犯罪者による突発的な犯罪や金融会社であるのでお金を借りようとして断られたことによる逆恨みなど色んな人が色んな憶測を立てた。
「関係ない……とは思うけど」
理由は分からないが犯罪者による事件であることはほぼ確定なようだ。
ならばそこに関して八重樫工房は関係があるはずがない。
そう思いたいのだけどこんなタイミングで起きたことなので何も関係ないだろうと楽観的に考えられないのもまた事実であった。
多少の関わりがあっただけに後味の悪さを感じてしまう。
「小嶋金融が襲われた件は別にしても泥棒は多分そうでしょうね。何か狙われるような心当たりは?」
「なんもないよ。お金だって返したばかりなんだからないの分かってるはずだろ?」
「確かにね」
泥棒は小嶋金融だと思う。
タイミング的にも状況的にもそれしか考えられない。
近所で他に泥棒に入られたところはない。
確実に八重樫工房を狙っている。
にも関わらず盗まれたものはない。
狙っていたものや理由があるはずなのだけどカレンは全く分からなかった。
「以前一度言われたことがある」
「爺さん?」
「最初借金について話を持ってきたときに言われたんだ。『ものでもいい』ってな」
「もの?」
「てっきり俺は商品となってる装備品でいいのかと思ったんだが見せても違うって言われてな。今思えばアイツらの狙いはアレだったのかもしれないな」
「アレってなんだよ?うちにそんな高価なものあったか?」
「……価値は分からん。それに正確にいえば俺のものでもない」
「どういうことだよ?」
「少しばかり昔のことだ。俺がまだ動けた時、覚醒者として活躍していたことがある」
和輝は第二期覚醒者と呼ばれるかなり早い段階で覚醒者となった人であった。
当時からもうすでに若いとはいえなかったが腕っ節には自信があったので今のように刀匠として仕事をするかたわらに覚醒者としても活動を行なっていた。
「その時に威勢のいい若いのがいてな。可愛がっていたんだ」
まだ法律も整備されておらず、体系的な活動もようやく模索されてきたような状況だった。
その中で和輝は若くて人のために危険な状況にも突っ込んでいくとある覚醒者に目をかけていた。
無謀なこともするが困っている人を放っておけないような真っ直ぐな人であった。
「あるゲートを攻略することになってな。俺とそいつも一緒だったんだ」
攻略は順調だった。
顔を知っている人も多く、連携もそこそこ取れていたのでボスのところまで被害も少なくたどり着くことができた。
だがそのボスはなかなか曲者だった。
注意を引こうとするタンクを無視して後衛を狙う狡い知恵を持っていた。
なんとか死傷者が出ないように戦ってボスを追い詰めた。
「けれどそいつは最後の足掻きだろうが後衛に突っ込んで自爆しようとしやがった。それでそいつはみんなを助けようと突っ込んでいってな。なんとか自爆を止められたのだけどそいつを手助けしようとして俺はケガを負った」
足を大きくケガした和輝。
すでにみんな満身創痍で簡単な止血程度にしか治療ができなかった。
時間が経つとケガは完全に治せなくなる。
ゲートを出た時には和輝のケガは完全には治せなくなってしまっていたのであった。
104
あなたにおすすめの小説
シスターヴレイヴ!~上司に捨て駒にされ会社をクビになり無職ニートになった俺が妹と異世界に飛ばされ妹が勇者になったけど何とか生きてます~
尾山塩之進
ファンタジー
鳴鐘 慧河(なるがね けいが)25歳は上司に捨て駒にされ会社をクビになってしまい世の中に絶望し無職ニートの引き籠りになっていたが、二人の妹、優羽花(ゆうか)と静里菜(せりな)に元気づけられて再起を誓った。
だがその瞬間、妹たち共々『魔力満ちる世界エゾン・レイギス』に異世界召喚されてしまう。
全ての人間を滅ぼそうとうごめく魔族の長、大魔王を倒す星剣の勇者として、セカイを護る精霊に召喚されたのは妹だった。
勇者である妹を討つべく襲い来る魔族たち。
そして慧河より先に異世界召喚されていた慧河の元上司はこの異世界の覇権を狙い暗躍していた。
エゾン・レイギスの人間も一枚岩ではなく、様々な思惑で持って動いている。
これは戦乱渦巻く異世界で、妹たちを護ると一念発起した、勇者ではない只の一人の兄の戦いの物語である。
…その果てに妹ハーレムが作られることになろうとは当人には知るよしも無かった。
妹とは血の繋がりであろうか?
妹とは魂の繋がりである。
兄とは何か?
妹を護る存在である。
かけがいの無い大切な妹たちとのセカイを護る為に戦え!鳴鐘 慧河!戦わなければ護れない!
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
現実世界にダンジョンが出現したのでフライングして最強に!
おとうふ
ファンタジー
2026年、突如として世界中にダンジョンが出現した。
ダンジョン内は無尽蔵にモンスターが湧き出し、それを倒すことでレベルが上がり、ステータスが上昇するという不思議空間だった。
過去の些細な事件のトラウマを克服できないまま、不登校の引きこもりになっていた中学2年生の橘冬夜は、好奇心から自宅近くに出現したダンジョンに真っ先に足を踏み入れた。
ダンジョンとは何なのか。なぜ出現したのか。その先に何があるのか。
世界が大混乱に陥る中、何もわからないままに、冬夜はこっそりとダンジョン探索にのめり込んでいく。
やがて来る厄災の日、そんな冬夜の好奇心が多くの人の命を救うことになるのだが、それはまだ誰も知らぬことだった。
至らぬところも多いと思いますが、よろしくお願いします!
天城の夢幻ダンジョン攻略と無限の神空間で超絶レベリング ~ガチャスキルに目覚めた俺は無職だけどダンジョンを攻略してトップの探索士を目指す~
仮実谷 望
ファンタジー
無職になってしまった摩廻天重郎はある日ガチャを引くスキルを得る。ガチャで得た鍛錬の神鍵で無限の神空間にたどり着く。そこで色々な異世界の住人との出会いもある。神空間で色んなユニットを配置できるようになり自分自身だけレベリングが可能になりどんどんレベルが上がっていく。可愛いヒロイン多数登場予定です。ガチャから出てくるユニットも可愛くて強いキャラが出てくる中、300年の時を生きる謎の少女が暗躍していた。ダンジョンが一般に知られるようになり動き出す政府の動向を観察しつつ我先へとダンジョンに入りたいと願う一般人たちを跳ね除けて天重郎はトップの探索士を目指して生きていく。次々と美少女の探索士が天重郎のところに集まってくる。天重郎は最強の探索士を目指していく。他の雑草のような奴らを跳ね除けて天重郎は最強への道を歩み続ける。
焔の幽閉者!自由を求めて最強への道を歩む!!
雷覇
ファンタジー
とある出来事で自身も所属する焔木一族から幽閉された男「焔木海人」。
その幽閉生活も一人の少女の来訪により終わりを迎える。
主人公は一族に自身の力を認めさせるため最強の力を求め続ける。
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編
荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明
まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。
そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。
その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる