人の才能が見えるようになりました。~いい才能は幸運な俺が育てる~

犬型大

文字の大きさ
104 / 515
第三章

共同研究の誘い2

しおりを挟む
「……はぁ、相変わらずだな」

 本気で怒るかと思われたが大きなため息をついただけで新徳はさほど気分を害してはいなかった。

「それで何の用だい? ここを訪ねるなんて珍しいじゃないか」

「分からないか?」

「分からないねぇ」

「お前……メール見てないな?」

「メール?」

「そうだ」

 夜滝は体を起き上がらせるとタブレットを操作する。

「ああ……きてたねぇ」

「そんなことだろうと思った。だから直接来たんだ」

 新徳から来たメールが未開封のままになっていることに今気がついた。

「しょうがないじゃないか。こんな時期だろ?」

 今はどの研究者も忙しい。
 他の人なんか気にかけている場合ではなく、メールを見ていないことだって十分にあり得る時期なのである。

 そんな時期だと新徳も知っているはずなのだから文句言われる筋合いなんてなく、むしろ新徳の方が悪いとすら夜滝は思っている。

「で、メールの中身は?」

「読め」

「いるなら話してくれた方が早いじゃないか」

「ふん……すまないが助手君お茶でもくれないか?」

「分かりました」

 新徳は夜滝の向かいのソファーに座った。
 圭は紅茶を淹れて新徳の前に置く。

「……相変わらずいい茶を用意しているな。うちの部屋のコーヒーがまずく感じられる」

「コーヒーも良いもの用意してやればいい」

「水みたいに飲むのにそんなに用意してられるか」

 夜滝もそれなりの頻度で紅茶は飲むが新徳のコーヒーを飲むペースとは比べ物にならない。

「それに時にまずくなきゃいけない時もあるからな」

 眠気覚ましにも飲むことがある。
 美味いコーヒーだと味わってしまうがまずいコーヒーなら一気に飲んで目覚ましになってくれる。

 まずい方が都合がいい。
 美味いものが飲みたくなったら食堂なり外なりに足を伸ばせばいい。

「それで話なんだが平塚博士の毒槍の技術を借りたい」

「毒槍? 私の毒棒君のことかい?」

「そのネーミングセンスについては置いておいて今期の報告書を読ませてもらった」

「出したばかりなのに早いねぇ」

「気分転換のようなもので読んだがちょうど良くてな」

「何がちょうどいいんだい?」

「先日RSIでB級モンスターの素材を買い入れたんだ。その中に強力な神経毒を持っているモンスターがいたんだ。それを武器として使えないかと考えていたのに平塚博士の研究を見たんだ」

「ほう」

「単純に槍にするだけなら難しくはないが神経毒を発生させるメカニズムがそちらの毒槍と似ていてな。一から作り上げるよりもノウハウがあるほうが早いだろう」

「しかしB級ほどの素材ならそう加工せずともいいんじゃないかねぇ?」

「確かに単に武器として組み込むだけならいいが私が注目したのは抑制技術だ。君の研究の目的にも合っていると思うが?」

 毒を使いたいというだけなら大きく加工することはない。
 槍であれば使いやすいかもしれないが武器の形として使われる中では剣の方が多くてメインとはいかない。

 夜滝には槍のノウハウがあるとしても既存の剣の技術の方が色々ある。
 それでも夜滝のノウハウを使いたいのは槍にしたいというよりも槍で使われた技術を応用したいからであった。

「ふーん?」

 どうしてわざわざ強い毒を抑制したいのか分からなくて夜滝は肩をすくめた。

「今回のものはモンスターが相手を痺れさせて動けなくし、食糧として相手を捕らえておくために使われるものなんだ。そのためによほど大量に毒を摂取しない限りは死には至らない。その特徴を利用して強い覚醒者が毒を撒き、弱い覚醒者がトドメを刺すという方式を取れないかと思ってな」

「んー?
 それなら強い覚醒者が倒してしまった方が早いじゃないか?」

「それはそうなんだが……近年やはりゲート事故も増えている。高等級覚醒者が全ての面倒を見切れるものでもない。平塚博士は弱い覚醒者が毒の力で自ら戦えるようにすることを目指しているものだったが私は強い覚醒者に持たせて弱い覚醒者が補助する形に出来ないかと考えている」

「なるほど」

「それに利点はまだあるんだ。この神経毒は体を痺れさせるが死に至るものではなく、さらにその洗浄が容易なんだ」

 敵を倒すという目的だけによって考えれば毒は有効な手段である。
 しかし毒を使った装備の難しいところは倒した後の素材が毒で汚染されてしまうことである。

 肉や内臓はもちろん皮なども毒によって使えなくなってしまうことも多い。
 今やモンスターの素材は資源でもあり毒に冒されて使えないというのは覚醒者たちから忌避されてしまう。

 そこで新徳は手に入れたモンスター素材の毒に目をつけた。

「毒の量をコントロールして弱めに投与すればある程度の効果を見込めつつ毒は肉を焼いたり、皮を洗浄したりして取り除くことができる」

 まったくそのまま使えるわけではないけれど他の毒で殺してしまうよりもはるかに除去することが容易な毒であった。
 毒の効果を最大限発揮しなくても動きを鈍らせる程度になら後の素材としての影響は少ないことが分かった。

「毒の量を抑えて使えるようにするために平塚博士の研究が役立ちそうだと思ってメールを送ったのだがな」

 新徳がカップに残った紅茶を飲み干した。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

シスターヴレイヴ!~上司に捨て駒にされ会社をクビになり無職ニートになった俺が妹と異世界に飛ばされ妹が勇者になったけど何とか生きてます~

尾山塩之進
ファンタジー
鳴鐘 慧河(なるがね けいが)25歳は上司に捨て駒にされ会社をクビになってしまい世の中に絶望し無職ニートの引き籠りになっていたが、二人の妹、優羽花(ゆうか)と静里菜(せりな)に元気づけられて再起を誓った。 だがその瞬間、妹たち共々『魔力満ちる世界エゾン・レイギス』に異世界召喚されてしまう。 全ての人間を滅ぼそうとうごめく魔族の長、大魔王を倒す星剣の勇者として、セカイを護る精霊に召喚されたのは妹だった。 勇者である妹を討つべく襲い来る魔族たち。 そして慧河より先に異世界召喚されていた慧河の元上司はこの異世界の覇権を狙い暗躍していた。 エゾン・レイギスの人間も一枚岩ではなく、様々な思惑で持って動いている。 これは戦乱渦巻く異世界で、妹たちを護ると一念発起した、勇者ではない只の一人の兄の戦いの物語である。 …その果てに妹ハーレムが作られることになろうとは当人には知るよしも無かった。 妹とは血の繋がりであろうか? 妹とは魂の繋がりである。 兄とは何か? 妹を護る存在である。 かけがいの無い大切な妹たちとのセカイを護る為に戦え!鳴鐘 慧河!戦わなければ護れない!

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

現実世界にダンジョンが出現したのでフライングして最強に!

おとうふ
ファンタジー
2026年、突如として世界中にダンジョンが出現した。 ダンジョン内は無尽蔵にモンスターが湧き出し、それを倒すことでレベルが上がり、ステータスが上昇するという不思議空間だった。 過去の些細な事件のトラウマを克服できないまま、不登校の引きこもりになっていた中学2年生の橘冬夜は、好奇心から自宅近くに出現したダンジョンに真っ先に足を踏み入れた。 ダンジョンとは何なのか。なぜ出現したのか。その先に何があるのか。 世界が大混乱に陥る中、何もわからないままに、冬夜はこっそりとダンジョン探索にのめり込んでいく。 やがて来る厄災の日、そんな冬夜の好奇心が多くの人の命を救うことになるのだが、それはまだ誰も知らぬことだった。 至らぬところも多いと思いますが、よろしくお願いします!

天城の夢幻ダンジョン攻略と無限の神空間で超絶レベリング ~ガチャスキルに目覚めた俺は無職だけどダンジョンを攻略してトップの探索士を目指す~

仮実谷 望
ファンタジー
無職になってしまった摩廻天重郎はある日ガチャを引くスキルを得る。ガチャで得た鍛錬の神鍵で無限の神空間にたどり着く。そこで色々な異世界の住人との出会いもある。神空間で色んなユニットを配置できるようになり自分自身だけレベリングが可能になりどんどんレベルが上がっていく。可愛いヒロイン多数登場予定です。ガチャから出てくるユニットも可愛くて強いキャラが出てくる中、300年の時を生きる謎の少女が暗躍していた。ダンジョンが一般に知られるようになり動き出す政府の動向を観察しつつ我先へとダンジョンに入りたいと願う一般人たちを跳ね除けて天重郎はトップの探索士を目指して生きていく。次々と美少女の探索士が天重郎のところに集まってくる。天重郎は最強の探索士を目指していく。他の雑草のような奴らを跳ね除けて天重郎は最強への道を歩み続ける。

焔の幽閉者!自由を求めて最強への道を歩む!!

雷覇
ファンタジー
とある出来事で自身も所属する焔木一族から幽閉された男「焔木海人」。 その幽閉生活も一人の少女の来訪により終わりを迎える。 主人公は一族に自身の力を認めさせるため最強の力を求め続ける。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明

まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。 そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。 その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。

処理中です...