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第三章
真面目な警官のお願い
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「お願いします! 先日私がいたことは秘密にしてください!」
後日嶋崎から呼び出された圭。
いつものカフェではなく指定されたのはレンタルスタジオで行ってみると沈んだ表情の嶋崎がいた。
そして圭を見るなり嶋崎はすぐさま土下座をした。
頭が床にぶつかる音がするほどに勢いも良くて圭は引いてしまう。
なんの話だろうと予想はしていた。
けれど土下座をいきなりされるとは思っていなくて驚いてしまった。
「先日、というのはあの儀式のことですか」
数日前、与力の儀を見学させてもらったのだがそこに嶋崎がいた。
圭が受けた報告では嶋崎からのものはなかったのであるが圭がした報告の共有を受けて嶋崎はそこに圭がいたことを知った。
圭が相手の名前が分かるスキル持ちであることはとうに知っているのであの場にいたことがバレたとすぐに嶋崎は気がついた。
けれど圭の報告に嶋崎のことは書かれていなかったので圭以外には知られていない。
「どうして……あんなことを?」
別に潜入として仕方なく力を受け取ることもあるかもしれない。
仕事の一環としてそこまで踏み込むこともあるだろう。
けれど嶋崎はあの儀式についてなんの報告もしていなかった。
なんだか薫にも聞けなくてそのまま黙っていたのだけど呼び出されることがあろうとは。
少し困惑したまま圭が尋ねると嶋崎はゆっくりと顔を上げた。
「妹が……病気で……」
思い悩むような表情を浮かべたまま沈黙。
やがて嶋崎は重たく口を開いた。
「一般的な病気じゃなくて……今は症状を抑えるのにいっぱいいっぱいなんです。治療するのにはアメリカに行くか、もしくは病気の治療に強い高等級の覚醒者に依頼するしかありません」
警察官の給料は安定しているが高給取りというわけでもない。
覚醒者としての手当てもあるがそれだってそんなに大きな額でもない。
そして健在である両親も働いているが嶋崎の妹の治療費はかさむ一方であった。
アメリカで治療を受けるにも覚醒者に依頼するのにも完全に治すために必要なお金は膨大なものであり首が回らなくなりつつあった。
最初は潜入するともらえる手当てが目的で黒月会に入った。
しかし黒月会は功績を認めればそれだけしっかりとお金をバックしてくれた。
本来ならお金をもらえば報告しなければいけないところ嶋崎はいくらか誤魔化して妹の治療費に使っていた。
ある時お金の使い道を聞かれた嶋崎。
その時にはすでに調べられて病気の妹のことがバレてしまっていたのである。
しかしだからといって黒月会の態度は変わらず、むしろお金になる仕事を回してくれるようになった。
「あと少し……あと少しお金が貯まる。今回力を受け取って黒月会のためになれば妹を治療してやれるんです!」
「そんな事情が……」
「黒月会のへの調査も大詰め。踏み込むのも時間の問題だと聞いています。全部が終わったら自分で出頭するのでどうにかこのことだけは秘密にしてください!」
再び床に打ち付けるように頭を下げる嶋崎。
どうするのか圭は悩んだ。
お金を受け取ったことは悪いかもしれないが圭が直接目にしたのは儀式の場に嶋崎がいたということだけ。
儀式の場にいて、力を受け取ることが何か法律に違反しているかといえばそうではない。
黒に近いグレーのような行いなのである。
「……あの場に嶋崎さんはいませんでした」
「む、村雨さん……」
「どうせ報告は上げていませんし最初から嶋崎さんはあの場にいなかったんです」
もう何がいいことなのかも分からない。
けれどあの場に嶋崎がいたことを話そうと隠そうと大勢に大きな違いは現れないだろうと圭は思った。
それに妹の話を聞かされてやっぱり報告しますとは言うこともできなかった。
そんなに報告してもしなくても変わりがないのならもう報告もせずに最初からいなかったということにするしかない。
ここで報告して内部の協力者でもある嶋崎にいなくなられても圭にとっては困るのである。
「ありがとうございます」
嶋崎は泣きそうになるのをグッと堪えて感動したように圭を見上げている。
「ですがもう戦争が近いと聞きましたが大丈夫ですか?」
「ですので早めに力を受けてお金を受け取るつもりだったのです。おそらく戦争になる前に妹と両親をアメリカにやることができると思います」
そうしているうちに戦争が始まったり、あるいは覚醒者協会が踏み込んで黒月会にダメージがあれば嶋崎のことなんか構っていられる暇がなくなる。
その隙をついてお金を横領したことも自首してうまく見つからないよう姿をくらませるつもりだった。
正直なところ受け取ったお金も表には出ないお金であり、嶋崎は警察組織でも貴重な覚醒者なのでそこまで重たい罪には問われないだろうなどという思惑も多少はある。
「恩にきます。このご恩……返せるかはわかりませんがいつか必ずお返ししたいと思います」
「……妹さん良くなるといいですね」
この判断が正しいのか圭には分からない。
けど嶋崎が妹を大切にしているということだけは分かった。
圭を裏切ったものでもないので今回儀式に嶋崎がいたことは圭の胸にしまっておくことにした。
後日嶋崎から呼び出された圭。
いつものカフェではなく指定されたのはレンタルスタジオで行ってみると沈んだ表情の嶋崎がいた。
そして圭を見るなり嶋崎はすぐさま土下座をした。
頭が床にぶつかる音がするほどに勢いも良くて圭は引いてしまう。
なんの話だろうと予想はしていた。
けれど土下座をいきなりされるとは思っていなくて驚いてしまった。
「先日、というのはあの儀式のことですか」
数日前、与力の儀を見学させてもらったのだがそこに嶋崎がいた。
圭が受けた報告では嶋崎からのものはなかったのであるが圭がした報告の共有を受けて嶋崎はそこに圭がいたことを知った。
圭が相手の名前が分かるスキル持ちであることはとうに知っているのであの場にいたことがバレたとすぐに嶋崎は気がついた。
けれど圭の報告に嶋崎のことは書かれていなかったので圭以外には知られていない。
「どうして……あんなことを?」
別に潜入として仕方なく力を受け取ることもあるかもしれない。
仕事の一環としてそこまで踏み込むこともあるだろう。
けれど嶋崎はあの儀式についてなんの報告もしていなかった。
なんだか薫にも聞けなくてそのまま黙っていたのだけど呼び出されることがあろうとは。
少し困惑したまま圭が尋ねると嶋崎はゆっくりと顔を上げた。
「妹が……病気で……」
思い悩むような表情を浮かべたまま沈黙。
やがて嶋崎は重たく口を開いた。
「一般的な病気じゃなくて……今は症状を抑えるのにいっぱいいっぱいなんです。治療するのにはアメリカに行くか、もしくは病気の治療に強い高等級の覚醒者に依頼するしかありません」
警察官の給料は安定しているが高給取りというわけでもない。
覚醒者としての手当てもあるがそれだってそんなに大きな額でもない。
そして健在である両親も働いているが嶋崎の妹の治療費はかさむ一方であった。
アメリカで治療を受けるにも覚醒者に依頼するのにも完全に治すために必要なお金は膨大なものであり首が回らなくなりつつあった。
最初は潜入するともらえる手当てが目的で黒月会に入った。
しかし黒月会は功績を認めればそれだけしっかりとお金をバックしてくれた。
本来ならお金をもらえば報告しなければいけないところ嶋崎はいくらか誤魔化して妹の治療費に使っていた。
ある時お金の使い道を聞かれた嶋崎。
その時にはすでに調べられて病気の妹のことがバレてしまっていたのである。
しかしだからといって黒月会の態度は変わらず、むしろお金になる仕事を回してくれるようになった。
「あと少し……あと少しお金が貯まる。今回力を受け取って黒月会のためになれば妹を治療してやれるんです!」
「そんな事情が……」
「黒月会のへの調査も大詰め。踏み込むのも時間の問題だと聞いています。全部が終わったら自分で出頭するのでどうにかこのことだけは秘密にしてください!」
再び床に打ち付けるように頭を下げる嶋崎。
どうするのか圭は悩んだ。
お金を受け取ったことは悪いかもしれないが圭が直接目にしたのは儀式の場に嶋崎がいたということだけ。
儀式の場にいて、力を受け取ることが何か法律に違反しているかといえばそうではない。
黒に近いグレーのような行いなのである。
「……あの場に嶋崎さんはいませんでした」
「む、村雨さん……」
「どうせ報告は上げていませんし最初から嶋崎さんはあの場にいなかったんです」
もう何がいいことなのかも分からない。
けれどあの場に嶋崎がいたことを話そうと隠そうと大勢に大きな違いは現れないだろうと圭は思った。
それに妹の話を聞かされてやっぱり報告しますとは言うこともできなかった。
そんなに報告してもしなくても変わりがないのならもう報告もせずに最初からいなかったということにするしかない。
ここで報告して内部の協力者でもある嶋崎にいなくなられても圭にとっては困るのである。
「ありがとうございます」
嶋崎は泣きそうになるのをグッと堪えて感動したように圭を見上げている。
「ですがもう戦争が近いと聞きましたが大丈夫ですか?」
「ですので早めに力を受けてお金を受け取るつもりだったのです。おそらく戦争になる前に妹と両親をアメリカにやることができると思います」
そうしているうちに戦争が始まったり、あるいは覚醒者協会が踏み込んで黒月会にダメージがあれば嶋崎のことなんか構っていられる暇がなくなる。
その隙をついてお金を横領したことも自首してうまく見つからないよう姿をくらませるつもりだった。
正直なところ受け取ったお金も表には出ないお金であり、嶋崎は警察組織でも貴重な覚醒者なのでそこまで重たい罪には問われないだろうなどという思惑も多少はある。
「恩にきます。このご恩……返せるかはわかりませんがいつか必ずお返ししたいと思います」
「……妹さん良くなるといいですね」
この判断が正しいのか圭には分からない。
けど嶋崎が妹を大切にしているということだけは分かった。
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