人の才能が見えるようになりました。~いい才能は幸運な俺が育てる~

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第五章

最も不幸で、最も幸運な者6

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 そこにはさっきまでいなかったはずの男が座っていた。
 椅子も男もいきなり現れたもので、圭は驚いて距離を取った。

「驚かせてしまったね」

 古代ローマのような格好をした男はゆっくりと立ち上がった。

「くっ!」

『error

 閲覧制限がかけられています』

「……なんだと?」

 相手の情報を見ようとして目に痛みが走った。
 いつもと違う赤い背景をした表示が現れて圭は眉をひそめた。

「無駄だよ。僕の情報は壊れてるからね」

「壊れてる……?」

「そう壊されたのさ。何もかも、全てを。あいつらにね」

 一瞬男の表情に哀しさと怒りが浮かんだのを圭は見た。

「あんたは、何者なんだ?」

 ちゃんとした会話が成立している。
 人の姿もしているしただのモンスターというわけではなさそうだと思った。

「僕の名前は□□□□……チッ、これもダメなのか」

 急に言葉にノイズがかかった聞こえなくなった。
 男は盛大に舌打ちして忌々しそうな顔をする。

「僕はメシル……愛称ならいいのか」

 メシルは確かめるように名前を口にしてため息をついた。

「改めて、僕のことはメシルと呼んでくれ」

「……俺は」

「君のことは知っているよ、村雨圭」

「どうして……」

 会ったことも見たこともない相手から自分の名前が出てきて圭は警戒を強める。
 そもそも今この状況のことが何も分からない。

 頭の中で疑問が大量に湧いてきてパンクしてしまいそうになっている。

「僕は君のことを見てきた。最も不幸で、最も幸運な者としてね」

「その最も不幸とか幸運とか一体なんなんだ?」

 幸運については思い当たる節がある。
 圭の才能に類い稀な幸運というものがあるし圭の幸運の才能値は神話級である。

 今のところ幸運の才能値が高い人は圭ぐらいである。
 しかし最も不幸と言われる筋合いはない。

 圭の人生が比較的不幸であったことは否定できないものの最も不幸などと評されるのは心外である。

「まあ待て。時間がない。順を追って話すとしよう。まず、君たちの世界には滅びが近づいている」

「ほ、滅び?」

 まず、で飛び出してきた言葉に圭は驚きを隠せなかった。

「何を言って」

「いいから聞け。時間がないのだ」

 メシルは圭を手で制する。
 有無を言わさないような圧力を感じて圭は口を閉じた。

「君たちの世界で言う……ゲートやモンスター、塔といったものがどこから現れたのか気にはならないか? これらは全て神々の遊びなのだ」

「神々の遊び……だと?」

「そう、今この世界は神々の遊びの中にいるのだ。モンスターも全て神々の遊びによって世界に来ているのだ」

「何を言っているのか分からない……」

 モンスターが神の遊びによるものだということがどういうことなのか圭には理解ができない。

「星と神々の運命を賭けたゲーム。星が滅びるか、住んでいるものが勝つか勝負だ」

「ふ、ふざけるな! ゲームだと? モンスターが現れてどれだけの人が死んだと……」

 色々なことはまだ分かっていない。
 けれどモンスターが現れたこの混沌とした状況が神々のゲームであるということはなんとなく理解した。

 理解すると怒りが湧き起こってきた。
 モンスターが現れてから多くの人が死んだ。

 確かに技術の革新など大きな進歩ももたらしてくれたけれど同時に生み出された悲しみは遥かに大きかった。
 それが神々の遊び、ゲームだったと聞いて圭には納得などできなかった。

「怒りに思う気持ちは分かる。だが君たちの神々を恨まないでほしい」

「なんだと? こんなクソみたいなゲームをしといて……」

「このゲームはこの世界の神々が望んだものじゃないからだ」

「…………何が言いたいんだよ?」

「だから説明すると言っている。落ち着け」

 望んでもないのにどうして世界の人たちの命を賭けたゲームなどしているのか。

「このゲームを持ちかけたのはこの世界の外の神々だ」

「外だと?」

「俺たちはアウターゴッドと奴らのことを呼んでいた。決して断ることができない強制的なゲームの誘い。参加せねば世界はただ蹂躙されるだけになってしまうのだ。この世界の神々はもちろんこの世界が滅びることを望んではいない」

 メシルによるとモンスターが現れたこの状況は神々の遊びによるゲームなのだと言う。
 しかしそのゲームはこの世界の神々がやり始めたものではないのである。

 アウターゴッドと呼ばれるこの世界の外にいる神々が始めたゲームなのだ。

「最初は神々が自分の世界を賭けた争いから始まった。いつしかそれは暇を持て余した神々の娯楽となり、今やただのゲームになったのだ」

 言葉もない圭にメシルは説明を続ける。
 アウターゴッドは自分の世界の強者を送り込み、その世界の者と戦わせる。

 その世界の者が最後まで耐え抜いたらその世界の勝利。
 文字通り生きるか死ぬかの戦いなのである。

「なぜそんなゲームをし始めたのかとか、どうしてするのかとかそんなことは聞くな。ただの娯楽で、理由なんかないのだから。だがこのままいけばこの世界に他の世界から強者が送り込まれて戦うことになる。その強者に勝てなければこの世界は滅びる」

 ゲームはまだ中盤である。
 世界に他の世界から強者を送り込むためにも条件があってアウターゴッドはその準備をしている。

 同時にこの世界の神はというとこの世界を守ろうとしていた。

「それがお前たちの言葉で覚醒というやつなのだ」

 もちろんこの世界の神々は世界を救いたいと考えている。
 そのためにモンスターを倒し、強者の襲撃を乗り越えられる力を与えていたようとしていたのである。
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