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第五章

囚われた王女1

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 世界がぐるぐると回ったように感じられて、上下左右に目まぐるしく移り変わる浮遊感に数秒襲われた。

「ここは……みんな!」

「僕は大丈夫です……」

「私もなんとか……」

 視界の歪みが治るとそこは石造の建物の中であった。
 周りを見回すと圭の他に薫やカレン、いつのものメンバーがいた。

「良かった。ひとまずみんな一緒だな」

 何が起きたのか分からないけれどバラバラにならなくて良かった。

「な、何があったんですかぁ……」

 ただいつものみんな以外にも一人女の子が圭たちと一緒にいた。

「どうやら近くにいる人がまとめてどこかに飛ばれたみたいだねぇ」

 山之内静香というその子はサポート部隊の子で覚醒者等級としてはE級として低いが、機械などに強いためにサポートとして攻略隊に入っていた。
 大きな丸メガネをつけていて急な状況に泣きそうな顔をしている。

 奇妙な招待状が現れた時に山之内は圭たちのすぐ横を歩いていた。
 そのことから一定程度近くにいたまとまりの集団がどこかに転移させられたのだと夜滝は考えていた。

「なんとなくだけど……ここってお城の中かな?」

「そんな感じするよね」

 カレンと波瑠がキョロキョロと周りを見る。
 ここがどこであるのか確定はできないけれど外から見ていたお城の雰囲気によく似ている。

「多分そうだろうな」

 圭には転移させられる直前表示も見えた。
 王族の奇妙な招待状、そして王城に招待されますとあった。

 つまり城にいる何かのモンスターの能力で城の中に強制転移させられたのだと考えることは難しくない。

「とりあえず状況を整理しよう。多分ここは城の中だ。モンスターのスキルか何かで飛ばされたんだ」

 自分の領域に強制的に相手を引き込む能力のモンスターがいないこともない。
 だから城の中に転移させられること自体は全く可能性がない話とは言い切れないのだ。

「今のところ他に味方はおらず、敵もいないし声なんかも聞こえない」

 目の前に敵でもいたら大慌てであるが今は同じく飛ばされた圭たちと山之内以外敵も味方もいない。

「ここで取れる選択肢は二つだ。動くか、このまま留まるかだ」

 味方が探しに来るのを待つのは定石である。
 動き回れば味方を見つけられる可能性もあるが敵に遭遇する可能性も高くなる。

 戦力的に強くない圭たちが敵に遭遇すると全滅してしまうかもしれない。

「ただここで待つのも……不安ですね」

 薫が後ろを振り返ると壁がある。
 圭たちが今いる場所は通路の突き当たりであった。

 留まって味方の助けを待つという選択肢も悪くはないのだが、もし仮に圭たちを見つけたのが敵だった場合に逃げ道がなくて戦うしかなくなってしまう。
 行動していれば先に敵を見つけて回避することも可能かもしれないが待っていると味方と敵がどう動くかによって圭たちの運命が左右されてしまう。

 動くにしても動かないにしてもリスクはある。

「どうするみんな?」

 あまり悠長にしていられる時間もないが、どの選択をするのかみんなで話し合う必要がある。

「決まってんだろ、私は行くべきだと思う」

 カレンは真っ先に動くべきだと主張した。
 待っているのは性に合わないし、突き当たりを背にして戦うのはリスクが大きい。

 自ら動いて味方を探すべきだと思っている。

「私も待ってるのは怖いかな」

「どっちでもリスクがあるのなら探しに行こうかねぇ」

 波瑠と夜滝も動くべき派である。

「僕は……圭さんに従います」

 何が良いのか判断できない。
 こうした時にはリーダーに従う。

 薫の判断も間違ってはいない。

「山之内さんはどうですか?」

「えぇと……その……」

 戦闘職ではない山之内もどうしたらいいのか判断に迷っているようだった。
 正直怖いから動きたくないけれど敵が現れて逃げ場もなく殺されてしまうこともまた怖い。

「み、みなさんが行くなら……」

「まあ、俺も動こうとは思っているから多数決でここから移動することに決まりでいいね?」

「分かりました」

 不安そうな顔を浮かべるがどの選択をしてどんな結果になるかは誰にも分からない。
 より良い選択があったとしてもそれは生き延びた後に考える結果論にしかならないので今はみんなで下す判断が最善のものだと信じて行動する。

 改めて体に怪我などがないことを確認した圭たちは移動を開始した。

「これどうする?」

 通路を進んでいくとドアがあった。
 木製のしっかりとしたドアはピッタリ閉じられていて中の様子を窺い知ることはできない。

 味方がいるかもしれないし敵がいるかもしれない。
 何もないかもしれないし脱出できるかもしれない。

 何も分からない。
 けれど何も分からないからどんな可能性もある。

 ここはリーダーである圭に判断を一任することになった。
 一々全てのことでみんなと相談してもいられない。

「開けてみよう」

 仮に部屋ならば窓くらいはあるかもしれない。
 窓から外を見れば今自分たちがどのあたりにいるのかざっくりと予想が立てられる可能性もある。

 圭がドアノブに手をかけてカレンがすぐ後ろで待機する。

「いくぞ」

 圭がドアを押し開けると同時に横に引いてカレンが盾を構えて前に出る。

「問題なしだ」

 敵の奇襲や罠を警戒したけれど何事もなかった。
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