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第五章

愛する人よ、共に逝こう1

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「やはりダメか……」

 圭が声をかけて注意がそれた隙を狙ったけれど北条の攻撃は防がれてしまった。
 偽物のエリーナを倒さねばならないことは北条にも察しがついていた。

 複数で一つとなって戦闘を行うモンスターの場合全体を同時に倒すか、重要な役割を果たしているモンスターを先に撃破することが必要になる。
 今回の場合は偽物のエリーナがカルヴァンに強力な支援効果を持っているので先に偽物のエリーナを倒さねばならないのだ。

 しかしカルヴァンが許さない。
 カルヴァンの能力そのものは北条と大きく変わりない。

 むしろ北条の方がわずかに上回っているぐらいだ。
 けれどもカルヴァンの厄介さは高い能力だけではない。

 偽物のエリーナから与えられる回復力の高さも非常に危険なのであるが、最も厄介なものはダメージを一切恐れることがないところにあった。
 腕を切り落とそうと胸を貫こうともカルヴァンは前に出てくる。

 そのせいか防御を犠牲にしても攻撃してくるので一瞬の油断が命取りとなる。

「犠牲は致し方ない……か」

 こうなれば北条一人で戦い切るのは難しい。
 多少死傷者が出ても偽物のエリーナを倒してしまわねば北条ばかり消耗してしまう。

 いつの間にか圭たちがいなくなっていることにも北条は気づかず、襲いかかってくるカルヴァンの攻撃を防ぐ。

「俺がこの男の方を引きつける。みんなであの女のモンスターを倒すんだ!」

 一気に攻撃を仕掛ける。
 北条がカルヴァンを抑えている間に攻略隊に偽物のエリーナを倒してもらうしかない。

「……これだけは使いたくなかったが……リミットブレイク!」

 北条とカルヴァンの力の差は小さい。
 だから偽物のエリーナのところに行かせないように攻めても偽物のエリーナが危機に陥るとカルヴァンはそちらを優先する。

 ならば圧倒的な力で押さえつければいい。
 北条の体が魔力で淡く発光する。

「光栄に思え!」

 これまで通り北条の剣を防ごうとしたカルヴァンだったが、剣から伝わる力はこれまで通りではなかった。
 はるかに強い力で押し切られ、カルヴァンがぶっ飛んでいく。

「今だ!」

 北条がカルヴァンを押し始めたのを見て攻略隊が一気に偽物のエリーナに向かう。

「怯むな、ギルドマスターが引きつけてくださっている間に倒さねばならないぞ!」

 偽物のエリーナもただではやられない。
 手を伸ばすと圭にやったように魔法を放つ。

 タンクが盾で防ぐけれど思いの外威力が高くて盾ごと貫かれる者もいた。
 けれど数も多い攻略隊を止めることはできずにすぐに近くまで詰め寄られた。

「死ね!」

「なに!?」

 覚醒者の一人が剣を振り下ろしたけれど偽物のエリーナには届かなかった。
 剣は硬いものにでも当たったかのような音を立てて空中で止まった。

 よく見ると偽物のエリーナの周りを半透明の膜が覆っている。

「マジックシールドか!」

「攻撃を続けろ! シールドにも限界はあるはずだ!」

 偽物のエリーナは自分の身を守るために魔力でシールドを展開していた。
 攻略隊はシールドも構わず攻撃を続ける。

 シールドだって耐久力がある。
 魔力にも限界がある。

 攻撃し続けていればいつかは壊れてしまう。

「行かせるか!」

 カルヴァンは偽物のエリーナの方に向かおうとするけれど北条がそうさせない。
 リミットブレイクで引き出した力でカルヴァンを攻め続ける。

 いかにダメージを恐れないとはいっても限界がある。
 回復力が追いつかないような攻撃を受ければ危険であるのでどうにか北条の攻撃を防いでいる。

 北条はスキルで能力を引き上げているが防御に専念するカルヴァンを打ち崩せないでいた。
 ひょっとしたら倒すこともできるかもしれないと思っていたのだが、やはり偽物のエリーナを倒すことを期待するしかない。

 だが北条のスキルも無制限のものではない。
 早めにどうにかしてほしいところである。

「ぐっ!」

 カルヴァンが北条の顔を殴り飛ばす。
 左腕を切り飛ばされながらも前に出てきたのでかわしきれなかった。

 切られたそばからカルヴァンの腕は再生を始めていて北条は思わず舌打ちした気分になった。

「くそっ、浅い!」

「ん? ぐわっ!」

 偽物のエリーナのところに向かうカルヴァンを後ろから切り付けたが傷は浅かった。
 カルヴァンは背中の傷を気にすることもなくシールドを攻撃していたタンクの胸を剣で貫く。

「まだシールドは破れないのか!」

「申し訳ありません! 思いの外粘りまして!」

 流石の北条も苛立ちを隠せない。

「いい加減貴様も倒れろ!」

 短い間に何人かの覚醒者が切り倒されてしまった。
 北条が無理矢理カルヴァンを切り付けて距離を取らせる。

「くっ……」

 段々と戦うのが辛くなってきた。
 リミットブレイクの反動が北条を襲いつつあった。

「なんだ!?」

「なんでもいい、チャンスだ!」

 急にシールドの中の偽物のエリーナが苦しみ出して膝をついた。
 その原因は分からないけれど魔力不足か何かだろうと一気にシールドに攻撃を叩き込む。

 シールドに大きなヒビが入った。

「やれ!」

 シールドが割れて一気に偽物のエリーナに剣が振り下ろされた。

「行かせるものか!」

 偽物のエリーナのところに行こうとするカルヴァンに北条が激しく攻撃を加える。
 左腕が切り飛ばされ深い傷がいくつも刻まれるが、これまでのように怪我が治ることがない。

「何……!」
 
 いけると思った瞬間カルヴァンは天井を突き破ってどこかに行ってしまった。

「逃げた……?」

 これまで必死に守ってきた偽物のエリーナが倒されそうになった途端に逃げ出した。
 北条は信じられないというように目を見開いた。

「こちらは倒しました!」

「被害状況の確認と怪我人の治療を! 俺は逃げたモンスターを追いかける!」

 何が理由にしても偽物のエリーナがいなくなれば倒せるはず。

「ふっ……」

「ギルドマスター!」

「大丈夫だ……」

「焦ることはありません! あとはあいつだけなのですから」

 副ギルドマスターである男が北条にポーションの瓶を渡す。
 ポーションは怪我の治療だけでなく魔力や体力の回復にも使える。

「このまま逃してなるものか……うっ!」

 リミットブレイクの反動に北条は胸を押さえた。

「少し休憩なさってください」

「……そうしよう」

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