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第六章

カエルは鶏肉の味らしい4

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「えいっ」

 圭が取り出したのは先がカギ状に折れ曲がっている金属の棒であった。
 棒の先端をファイヤートードに突き刺して死体を引きずって持っていくのだ。

 圭とカレンの2人で引きずって最初に倒したファイヤートードの横に2体目のファイヤートードの死体を置いておく。

「この調子で倒していこう」

 流石にD級モンスターなので完全に余裕とはいかないが油断しなければ怪我なく倒すことができる。
 レベルアップにもお金稼ぎにもちょうどいい。

 フィーネが今度は手を盾っぽくしてファイヤートードのベロを防御してぶっ飛ばされるなんて事件はあった。
 これで空中で受け止めると衝撃を吸収しきれないということはフィーネも学んだのである。

 火属性の魔法を使うためか夜滝の水属性の魔法がよくダメージが通った。
 あとは波瑠のナイフも切れ味がよくてファイヤートードをスパッと切り裂いてくれるので2人の攻撃を中心として戦っていた。

「俺も良い武器欲しいな」

 良い武器があればいいというだけの話ではないが良い武器があればそれだけ戦いやすくなることは確かである。
 波瑠がナイフの高い切れ味によってスピードを損なうこともなく攻撃できるようになったことを考えれば良い武器はそれだけで持っている能力も引き出してくれる。

 以前塔で手に入れた剣は能力的には使えそうな感じはあったけど半分に折れていた。
 和輝に見せてみたけれど直すには残りの折れた刃が必要だと言われてしまった。

 真実の目というスキルはあるが戦闘に関して使えるスキルとは言い難い。
 能力値的にもパッとしないのでみんなの戦いにおいて優れた能力があることが羨ましく思える。

「まあお兄さんにはお兄さんのできることがあるって」

「そうだな。前向きに頑張るよ」

 今更しのごの言っても仕方ない。
 目の前のできることから積み重ねていくしかやりようはないのだ。

「これで10体か。そろそろ一度回収しよう」

 ファイヤートードも集めてみると結構な量になる。
 最初に倒したファイヤートード周りのファイヤートードも見つけにくくなった。

 ファイヤートードを回収して次の中心を探した方が効率よく探せる。

「シゲさん、モンスターの回収をするのでトラックの準備をお願いします」

 無線で重恭に連絡する。

「分かりました」

「それじゃあ波瑠と俺で迎えにいこう」

 ファイヤートードは好戦的な魔物ではない。
 重恭がトラックに乗ってきても襲われることはまずないけれど万が一の可能性はある。

 圭と波瑠でトラックを護衛することにしてゲートの方に向かう。

「圭君は……怖くないの?」

「……戦うの怖いのか?」

 並んで歩いていると波瑠がポツリとつぶやくように不安を漏らした。

「ううん、戦うこと自体はあんまり怖くないよ」

「じゃあ何が怖いんだ?」

 波瑠も少し前まではただの女子高生だった。
 いきなり覚醒者となって戦わされて、しかも通常の覚醒者と違ってレベルアップするために格上の相手にも挑んでいかねばならない。

 普段は明るく振る舞っているけれどやはり怖いようなところがあったのかと圭は思った。
 でも波瑠は戦うことは怖くないと言う。

「怖いのは……これから何が起こるか分からないことかな。急に世界の命運が私たちにかかってるなんて言われても分かんなくて」

「なるほどな……」

 ただ強くなれてお金も稼げるし、恩返しもしたい。
 そんな気持ちで波瑠は戦い始めた。

 けれどいつの間にか圭たちの戦いは世界の滅亡をかけたものとなっていた。
 正直な話波瑠の中でその実感は薄い。

 でも確かに世界という大きなものがのしかかってしまっている。
 そのことが無性に怖くなることがあるのだ。

「俺も不安に思うことがあるよ。ちょっと前までその日の飯のことや今月の家賃を払えるだろうかなんて心配してたぐらいなのに、いきなり世界を救え、だもんな」

 圭が不安に思わないなんてことはなかった。
 流されるがままに神から話を聞かされて自分にしか出来ないことなのかもしれないと思い込むことで蓋をしているけれど、圭も不安や心配を抑えきれずに眠れないこともあった。

 いまだに分からないことも多い。
 神から聞かされた情報はあまりにも不十分で、強くなるのもこれでいいのかという考えが常につきまとっている。

 波瑠と同じく圭もただの人。
 不安はあるのだ。

「でも……やらなきゃいけない。そう思うんだ」

 それになんとなく圭自身にも関わることもあるような気がする。
 どの道このまま放っておけば世界が滅んでしまうのならやるしかないのである。

「だけど波瑠が怖いっていうのならやめてもいいんだぞ」

「圭君?」

 無理強いするつもりはない。
 いつ世界が滅びるのかは分からないけど波瑠は大学も決まっているし輝かしい未来がある。

 怖いのなら無理をさせるつもりはもちろんないのだ。

「怖くてどうしようもないなら波瑠が抜けても誰も怒らない。けどさ、俺は……波瑠がいてくれたら嬉しいし、頼もしいよ」

 正直な気持ちを打ち明ける。
 仲間として波瑠がいてくれるとありがたい。

 周りを照らしてくれるような明るさはみんなを笑顔にしてくれる。
 戦いでは速度を活かして敵を翻弄してくれる。

「圭君……私、怖いけどここで逃げるつもりはないよ」

 圭の優しさは嬉しい。
 でも波瑠だって世界が滅びるかもしれないと聞いてのうのうと日常生活を送ることなんてできない。

 これから何が待ち受けるか分からない不安はあって怖いけれど世界を見捨てる理由にはならない。
 圭やみんなも大事。

 明るい未来も見えてきたからこそ世界を守りたいと思う。
 不安を抱えているのは自分1人ではない。

 そのことだけで波瑠はちょっと心が軽くなった。
 平然と未来に立ち向かおうとしているように見えた圭も不安で眠れない時があるのだ。

 不安でもいい、それでもなお立ち向かうことが大切なんだと波瑠は思った。

「……でもちょっと不安だからさ」

 波瑠は頬を赤くして隣を歩く圭の手に自分の手を伸ばした。

「だから……ちょっとだけ、手ぇ握っても……いいかな?」

「……分かった。いいよ」

 やっぱり男の人の手は大きい。
 圭に包み込むように手を握ってもらって波瑠はいつの間にか不安に思っていたことなどどこにかに行ってしまったのであった。
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