299 / 515
第六章
村雨圭、逮捕2
しおりを挟む
「なるほど」
顔写真すらもなかったら止められていただろう。
しかし圭たちと同じく顔が出ていて名目上覚醒者となっているとそのままチェックをすり抜けられてしまったのだ。
伊丹は深いため息をついた。
システム表示上の問題があったことなど気づかなかった。
そもそも登録外覚醒者は顔写真も登録していないケースが多い。
馬鹿正直に顔写真まで登録してもいいという人なら大体の場合覚醒者登録をしてしまう。
塔は出る時にもチェックをされる。
人数が減っていたり同行者の顔が変わっていればバレてしまう。
他の国のエントランスでも出てきた人はチェックはされるので他国の覚醒者が他に行くのは容易いことではない。
しかしもしかしたらこうしたシステムの穴をついて不法に出入国した人がいるのだろうかと伊丹は眉をひそめた。
早急にシステムの見直しが必要になると頭が痛い思いがした。
「村雨さん側として入れてしまったから問題なかったと考えた、ということですね」
「まあ……そうですね」
「うーん……」
ひどく悩ましい状況である。
圭は悪いけど悪くはない。
塔のエントランスのシステムも悪い。
伊丹個人の意見としていうならば登録外覚醒者などという面倒なシステムも止めればいいのにと思っている。
犯罪者が活動する温床にもなっていると批判の声も上がっていて伊丹も同じような意見なのだ。
今では一定数登録外覚醒者として真っ当に活動している人もいるのでそう簡単に止めますと言えない状況でもある。
「どうしましょうか」
圭が悪いのだと責任を被せてある程度の罰を与えてしまうこともできる。
しかしチェックが働かなかったことの落ち度はある。
塔内で起きた事件で圭たちは活躍もしてくれたのでここで単純に逮捕して罰することが正しいとも伊丹には思えない。
伊丹も冷徹そうに見えて意外と人情がある。
「少しお待ちください」
しばらく悩ましげに机を見つめて考え事をしていた伊丹は思い立ったように部屋を出ていった。
「はぁ~……」
これは失敗したなと圭は思った。
薫があまりにも自然に覚醒者として活動していたのでそうしたことを忘れてしまっていた。
このまま逮捕となってしまったらどうなるのだろうかと圭は落ち込む。
水野に連絡して弁護士を紹介してもらう必要があるかなとか、リーダビリティギルド解体かなとか不安で胸が痛くなる。
「お待たせしました」
「伊丹さん……」
「上司と相談してきました。早急にバーンスタインさんを覚醒者登録してください」
「えっ?」
「こちらのシステム登録上の遅れのせいで塔に入った時にはまだ覚醒者登録がシステム上では済んでいなかったいなかったことにします」
「伊丹さん!」
「色々と恩がありますので今回だけですよ」
厳しかった表情を崩して伊丹が笑う。
圭はホッとした気分で泣き出してしまいそうだった。
「ありがとうございます!」
ここまで真面目に覚醒者協会を手伝ってもきた。
圭の積み重ねてきた行いのおかげで伊丹も上司を説得してなんとか上手くまとめる方向で持っていくことができたのだ。
「それともう一つ聞きたいのですが」
「なんでしょうか?」
「シークレットクエスト、ありませんでしたか?」
「え……」
ストレートに確信をついた伊丹に圭は言葉を失った。
「どうしてそれを」
「ということはあったのですね?」
「はい……」
シークレットクエストがあったことは圭たち仲間内で知るのみで他にはまだ言っていない。
どうして伊丹が知っているのか圭は気になった。
「特殊な状況現れた時には何かがあるものです。塔の中ならシークレットクエスト。村雨さんには前があるので」
圭はその言い方だと犯罪歴でもあるみたいに聞こえるからやめてほしいと思った。
「女神が現れた、なんて言っている人たちもいますから。村雨さんたちが女神像の地下に降りていった後に地下から女神が現れて助けてくれたとなると村雨さんが関わっていることは想像に難くないです」
シークレットクエストがあるということと圭が以前にシークレットクエストをクリアしたことがあるということ、塔において特殊な事件が起きたことなどを合わせて考えると答えは一つ。
圭がなんらかのシークレットクエストを行った結果女神が現れたのだと伊丹は考えた。
「もしかしてあの事件を起こしたのも村雨さんですか?」
「いえいえ! あの事件そのもの俺じゃないですよ! 女神像の地下に降りていったら急にシークレットクエストが現れたんです」
「……そうですか。村雨さんのことを信じます」
圭がわざわざ危険な状況を作り出すとは思えない。
むしろその前に起きた殺人事件が関わっているかもしれないと伊丹は追及を止めた。
「あとは……」
「まだあるんですか?」
「はい、少しお願いしたいことが」
顔写真すらもなかったら止められていただろう。
しかし圭たちと同じく顔が出ていて名目上覚醒者となっているとそのままチェックをすり抜けられてしまったのだ。
伊丹は深いため息をついた。
システム表示上の問題があったことなど気づかなかった。
そもそも登録外覚醒者は顔写真も登録していないケースが多い。
馬鹿正直に顔写真まで登録してもいいという人なら大体の場合覚醒者登録をしてしまう。
塔は出る時にもチェックをされる。
人数が減っていたり同行者の顔が変わっていればバレてしまう。
他の国のエントランスでも出てきた人はチェックはされるので他国の覚醒者が他に行くのは容易いことではない。
しかしもしかしたらこうしたシステムの穴をついて不法に出入国した人がいるのだろうかと伊丹は眉をひそめた。
早急にシステムの見直しが必要になると頭が痛い思いがした。
「村雨さん側として入れてしまったから問題なかったと考えた、ということですね」
「まあ……そうですね」
「うーん……」
ひどく悩ましい状況である。
圭は悪いけど悪くはない。
塔のエントランスのシステムも悪い。
伊丹個人の意見としていうならば登録外覚醒者などという面倒なシステムも止めればいいのにと思っている。
犯罪者が活動する温床にもなっていると批判の声も上がっていて伊丹も同じような意見なのだ。
今では一定数登録外覚醒者として真っ当に活動している人もいるのでそう簡単に止めますと言えない状況でもある。
「どうしましょうか」
圭が悪いのだと責任を被せてある程度の罰を与えてしまうこともできる。
しかしチェックが働かなかったことの落ち度はある。
塔内で起きた事件で圭たちは活躍もしてくれたのでここで単純に逮捕して罰することが正しいとも伊丹には思えない。
伊丹も冷徹そうに見えて意外と人情がある。
「少しお待ちください」
しばらく悩ましげに机を見つめて考え事をしていた伊丹は思い立ったように部屋を出ていった。
「はぁ~……」
これは失敗したなと圭は思った。
薫があまりにも自然に覚醒者として活動していたのでそうしたことを忘れてしまっていた。
このまま逮捕となってしまったらどうなるのだろうかと圭は落ち込む。
水野に連絡して弁護士を紹介してもらう必要があるかなとか、リーダビリティギルド解体かなとか不安で胸が痛くなる。
「お待たせしました」
「伊丹さん……」
「上司と相談してきました。早急にバーンスタインさんを覚醒者登録してください」
「えっ?」
「こちらのシステム登録上の遅れのせいで塔に入った時にはまだ覚醒者登録がシステム上では済んでいなかったいなかったことにします」
「伊丹さん!」
「色々と恩がありますので今回だけですよ」
厳しかった表情を崩して伊丹が笑う。
圭はホッとした気分で泣き出してしまいそうだった。
「ありがとうございます!」
ここまで真面目に覚醒者協会を手伝ってもきた。
圭の積み重ねてきた行いのおかげで伊丹も上司を説得してなんとか上手くまとめる方向で持っていくことができたのだ。
「それともう一つ聞きたいのですが」
「なんでしょうか?」
「シークレットクエスト、ありませんでしたか?」
「え……」
ストレートに確信をついた伊丹に圭は言葉を失った。
「どうしてそれを」
「ということはあったのですね?」
「はい……」
シークレットクエストがあったことは圭たち仲間内で知るのみで他にはまだ言っていない。
どうして伊丹が知っているのか圭は気になった。
「特殊な状況現れた時には何かがあるものです。塔の中ならシークレットクエスト。村雨さんには前があるので」
圭はその言い方だと犯罪歴でもあるみたいに聞こえるからやめてほしいと思った。
「女神が現れた、なんて言っている人たちもいますから。村雨さんたちが女神像の地下に降りていった後に地下から女神が現れて助けてくれたとなると村雨さんが関わっていることは想像に難くないです」
シークレットクエストがあるということと圭が以前にシークレットクエストをクリアしたことがあるということ、塔において特殊な事件が起きたことなどを合わせて考えると答えは一つ。
圭がなんらかのシークレットクエストを行った結果女神が現れたのだと伊丹は考えた。
「もしかしてあの事件を起こしたのも村雨さんですか?」
「いえいえ! あの事件そのもの俺じゃないですよ! 女神像の地下に降りていったら急にシークレットクエストが現れたんです」
「……そうですか。村雨さんのことを信じます」
圭がわざわざ危険な状況を作り出すとは思えない。
むしろその前に起きた殺人事件が関わっているかもしれないと伊丹は追及を止めた。
「あとは……」
「まだあるんですか?」
「はい、少しお願いしたいことが」
83
あなたにおすすめの小説
シスターヴレイヴ!~上司に捨て駒にされ会社をクビになり無職ニートになった俺が妹と異世界に飛ばされ妹が勇者になったけど何とか生きてます~
尾山塩之進
ファンタジー
鳴鐘 慧河(なるがね けいが)25歳は上司に捨て駒にされ会社をクビになってしまい世の中に絶望し無職ニートの引き籠りになっていたが、二人の妹、優羽花(ゆうか)と静里菜(せりな)に元気づけられて再起を誓った。
だがその瞬間、妹たち共々『魔力満ちる世界エゾン・レイギス』に異世界召喚されてしまう。
全ての人間を滅ぼそうとうごめく魔族の長、大魔王を倒す星剣の勇者として、セカイを護る精霊に召喚されたのは妹だった。
勇者である妹を討つべく襲い来る魔族たち。
そして慧河より先に異世界召喚されていた慧河の元上司はこの異世界の覇権を狙い暗躍していた。
エゾン・レイギスの人間も一枚岩ではなく、様々な思惑で持って動いている。
これは戦乱渦巻く異世界で、妹たちを護ると一念発起した、勇者ではない只の一人の兄の戦いの物語である。
…その果てに妹ハーレムが作られることになろうとは当人には知るよしも無かった。
妹とは血の繋がりであろうか?
妹とは魂の繋がりである。
兄とは何か?
妹を護る存在である。
かけがいの無い大切な妹たちとのセカイを護る為に戦え!鳴鐘 慧河!戦わなければ護れない!
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
現実世界にダンジョンが出現したのでフライングして最強に!
おとうふ
ファンタジー
2026年、突如として世界中にダンジョンが出現した。
ダンジョン内は無尽蔵にモンスターが湧き出し、それを倒すことでレベルが上がり、ステータスが上昇するという不思議空間だった。
過去の些細な事件のトラウマを克服できないまま、不登校の引きこもりになっていた中学2年生の橘冬夜は、好奇心から自宅近くに出現したダンジョンに真っ先に足を踏み入れた。
ダンジョンとは何なのか。なぜ出現したのか。その先に何があるのか。
世界が大混乱に陥る中、何もわからないままに、冬夜はこっそりとダンジョン探索にのめり込んでいく。
やがて来る厄災の日、そんな冬夜の好奇心が多くの人の命を救うことになるのだが、それはまだ誰も知らぬことだった。
至らぬところも多いと思いますが、よろしくお願いします!
天城の夢幻ダンジョン攻略と無限の神空間で超絶レベリング ~ガチャスキルに目覚めた俺は無職だけどダンジョンを攻略してトップの探索士を目指す~
仮実谷 望
ファンタジー
無職になってしまった摩廻天重郎はある日ガチャを引くスキルを得る。ガチャで得た鍛錬の神鍵で無限の神空間にたどり着く。そこで色々な異世界の住人との出会いもある。神空間で色んなユニットを配置できるようになり自分自身だけレベリングが可能になりどんどんレベルが上がっていく。可愛いヒロイン多数登場予定です。ガチャから出てくるユニットも可愛くて強いキャラが出てくる中、300年の時を生きる謎の少女が暗躍していた。ダンジョンが一般に知られるようになり動き出す政府の動向を観察しつつ我先へとダンジョンに入りたいと願う一般人たちを跳ね除けて天重郎はトップの探索士を目指して生きていく。次々と美少女の探索士が天重郎のところに集まってくる。天重郎は最強の探索士を目指していく。他の雑草のような奴らを跳ね除けて天重郎は最強への道を歩み続ける。
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
焔の幽閉者!自由を求めて最強への道を歩む!!
雷覇
ファンタジー
とある出来事で自身も所属する焔木一族から幽閉された男「焔木海人」。
その幽閉生活も一人の少女の来訪により終わりを迎える。
主人公は一族に自身の力を認めさせるため最強の力を求め続ける。
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編
荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明
まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。
そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。
その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる