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第六章

村雨圭、逮捕2

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「なるほど」

 顔写真すらもなかったら止められていただろう。
 しかし圭たちと同じく顔が出ていて名目上覚醒者となっているとそのままチェックをすり抜けられてしまったのだ。

 伊丹は深いため息をついた。
 システム表示上の問題があったことなど気づかなかった。

 そもそも登録外覚醒者は顔写真も登録していないケースが多い。
 馬鹿正直に顔写真まで登録してもいいという人なら大体の場合覚醒者登録をしてしまう。

 塔は出る時にもチェックをされる。
 人数が減っていたり同行者の顔が変わっていればバレてしまう。

 他の国のエントランスでも出てきた人はチェックはされるので他国の覚醒者が他に行くのは容易いことではない。
 しかしもしかしたらこうしたシステムの穴をついて不法に出入国した人がいるのだろうかと伊丹は眉をひそめた。

 早急にシステムの見直しが必要になると頭が痛い思いがした。

「村雨さん側として入れてしまったから問題なかったと考えた、ということですね」

「まあ……そうですね」

「うーん……」

 ひどく悩ましい状況である。
 圭は悪いけど悪くはない。

 塔のエントランスのシステムも悪い。
 伊丹個人の意見としていうならば登録外覚醒者などという面倒なシステムも止めればいいのにと思っている。

 犯罪者が活動する温床にもなっていると批判の声も上がっていて伊丹も同じような意見なのだ。
 今では一定数登録外覚醒者として真っ当に活動している人もいるのでそう簡単に止めますと言えない状況でもある。

「どうしましょうか」

 圭が悪いのだと責任を被せてある程度の罰を与えてしまうこともできる。
 しかしチェックが働かなかったことの落ち度はある。

 塔内で起きた事件で圭たちは活躍もしてくれたのでここで単純に逮捕して罰することが正しいとも伊丹には思えない。
 伊丹も冷徹そうに見えて意外と人情がある。

「少しお待ちください」

 しばらく悩ましげに机を見つめて考え事をしていた伊丹は思い立ったように部屋を出ていった。

「はぁ~……」

 これは失敗したなと圭は思った。
 薫があまりにも自然に覚醒者として活動していたのでそうしたことを忘れてしまっていた。

 このまま逮捕となってしまったらどうなるのだろうかと圭は落ち込む。
 水野に連絡して弁護士を紹介してもらう必要があるかなとか、リーダビリティギルド解体かなとか不安で胸が痛くなる。

「お待たせしました」

「伊丹さん……」

「上司と相談してきました。早急にバーンスタインさんを覚醒者登録してください」

「えっ?」

「こちらのシステム登録上の遅れのせいで塔に入った時にはまだ覚醒者登録がシステム上では済んでいなかったいなかったことにします」

「伊丹さん!」

「色々と恩がありますので今回だけですよ」

 厳しかった表情を崩して伊丹が笑う。
 圭はホッとした気分で泣き出してしまいそうだった。

「ありがとうございます!」

 ここまで真面目に覚醒者協会を手伝ってもきた。
 圭の積み重ねてきた行いのおかげで伊丹も上司を説得してなんとか上手くまとめる方向で持っていくことができたのだ。

「それともう一つ聞きたいのですが」

「なんでしょうか?」

「シークレットクエスト、ありませんでしたか?」

「え……」

 ストレートに確信をついた伊丹に圭は言葉を失った。

「どうしてそれを」

「ということはあったのですね?」

「はい……」

 シークレットクエストがあったことは圭たち仲間内で知るのみで他にはまだ言っていない。
 どうして伊丹が知っているのか圭は気になった。

「特殊な状況現れた時には何かがあるものです。塔の中ならシークレットクエスト。村雨さんには前があるので」

 圭はその言い方だと犯罪歴でもあるみたいに聞こえるからやめてほしいと思った。

「女神が現れた、なんて言っている人たちもいますから。村雨さんたちが女神像の地下に降りていった後に地下から女神が現れて助けてくれたとなると村雨さんが関わっていることは想像に難くないです」

 シークレットクエストがあるということと圭が以前にシークレットクエストをクリアしたことがあるということ、塔において特殊な事件が起きたことなどを合わせて考えると答えは一つ。
 圭がなんらかのシークレットクエストを行った結果女神が現れたのだと伊丹は考えた。

「もしかしてあの事件を起こしたのも村雨さんですか?」

「いえいえ! あの事件そのもの俺じゃないですよ! 女神像の地下に降りていったら急にシークレットクエストが現れたんです」

「……そうですか。村雨さんのことを信じます」

 圭がわざわざ危険な状況を作り出すとは思えない。
 むしろその前に起きた殺人事件が関わっているかもしれないと伊丹は追及を止めた。

「あとは……」

「まだあるんですか?」

「はい、少しお願いしたいことが」
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