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第八章

暴食の悪魔3

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「ぐわぁぁぁぁ!」

 光が走ってけたたましい叫び声が聞こえてきた。
 空中にいたベルゼブブが落下して船が大きく揺れた。

 船には吹き飛ばされてきた異端審問官以外の異端審問官も多く残っているようで吹き飛ばされてきた異端審問官を全体で支援して戦っているようだ。
 そして今は三つ巴ではなく異端審問官とダンテが協力してベルゼブブと戦っている。

「倒せるかもしれないな……」

 戦いの様子を遠巻きに見ていた圭は思わず呟いた。
 魔王ベルゼブブもすごい力なのだが異端審問官たちも力を合わせて魔王と対等に戦っている。

 ダンテと協力している今ならベルゼブブとも優勢に戦えていたのであった。

「村雨さん、ハエは倒しました!」

 気づけば周りを飛び回っていたブブフライはみんなによって倒されていた。

「後は……もうできることはないのであの中で耐え抜きましょう」

 ダンテたちの戦いに参加できるのはせいぜいかなみぐらいである。

「がああああああああっ!」

「うわっ!?」

 船で大爆発が起きて地面が大きく揺れた。

「船が……真っ二つに……」

 大きな船が真ん中からへし折れたように真っ二つになっていた。
 ベルゼブブが大きな声で叫び、それでまた地面が揺れる。

『!!!キケン!!!
 ゲヘナへのゲートが崩壊します!』

「……マズイ! みんな中に!」

 圭は現れた表示を見て危険を察した。
 外で様子見ていたみんなにカレンの作ったドームの中に入るように促す。

「ゔっ!」

 次の瞬間体が重たくなるような魔力を圭は感じた。
 上から押さえつけられる魔力に膝を屈しそうになりながらなんとかドームの中に逃げ込む。

「どうなってるんだ……」

 ドームの入り口は船の方ではなく一般人が多くいた見えない壁の方に開けられている。
 そのために船の方で何が起きているのか圭たちには分からない。

 一方外では船の中から黒い魔力の塊が膨張して大きくなりながら周りのものを吸い込んでいた。
 まるでブラックホールのようで、二つに折れた船の残骸も魔力の塊に吸い込まれてしまった。

 魔力の塊が大きくなるに連れ吸い込む力が大きくなり、離れたものもだんだんと引き寄せられ始める。

「くっ……! これは……!」

 近くのポールに掴まったダンテは顔をしかめる。
 何が起きているのかダンテも理解していない。

 けれど吸い込まれたら危険だということだけは本能的に理解していた。

「みんな、耐えるんだ!」

 近くに目をやると異端審問官たちも吸い込まれそうになっている。
 力の弱い覚醒者はもうすでに吸い込まれてしまい、ダンテと共に戦っていた異端審問官がみんなを支えてどうにか耐えている。

「あいつらは大丈夫なのか……」

 ダンテが後ろに目を向けるとカレンが作ったドームが見える。
 土のドームが吸引力に耐えられるか、かなり不安である。

「皆さん固まってください! できれば隣の人と腕を組んで離さないでください!」

 ドームの中でもできるだけのことをしようとはしていた。
 真ん中で固まって何があってもいいように備える。

「カレン、入り口を……」

「お母さん!」

「あっ、待ちなさい!」

 危ないからドームの入り口は塞いでしまおうと圭がカレンに言おうとした瞬間一人の女の子が走り出した。
 近くにいた伊丹が手を伸ばすけれど待ち合わずすり抜けて向かっていったのはドームの入り口だった。

 向こうに女の子の母親が見える。
 ずっといたのか、はたまた一度避難したのに戻ってきたようだった。

 小百合と女の子の名前を叫びながら見えない壁を叩く様を見て女の子は思わず走り出してしまったのだ。

「危ない!」

 反応したのは圭だった。
 ドームの入り口から飛び出した女の子に手を伸ばす。

「きゃあ!」

「なっ!?」

 ドームの外に出た瞬間女の子の体がふわりと浮いた。
 魔力の塊の引き寄せる力がかなり強くなっていたのだ。

「くっ!」

「圭君!」

 間一髪女の子を掴んだ圭だったけれど圭も体を引っ張られる。
 入り口の端を掴んでなんとか耐えるけれど少しずつ体がドームの外へと引きずられる。

「この子を……!」

 圭が力を込めて女の子を引き寄せる。
 走ってきたかなみに女の子を渡してなんとか自分も中に入ろうとした。

「お兄さん、手を!」

 カレンが手を伸ばす。

「ぐっ……」

「なに……」

 圭も手を伸ばそうとした瞬間横からブブフライが飛んできて圭に体当たりをした。
 全て倒したと思っていたのに一体どこかに潜んでいたのだ。

「お兄さん!」

「カレン、ダメだ!」

「ピッ!」

「ルシファー様!?」

 入り口の縁から手を放して圭がドームの外に転がっていく。
 助けに行こうとしたカレンを夜滝と波瑠で止める。

「今ならまだ……」

「無理だよ!」

 引っ張る力はかなり強くなっていて入り口付近でも体が外に引っ張られ始めている。
 圭もすでに覚醒者としてB級に近い力を持っているといってもいいのにそんな圭ですら耐えられなかった力が働いている。

 今外に出るのは自殺行為であった。

「でも……」

「私たちだって圭を見捨てたいわけじゃない!」

「夜滝……」

 夜滝だって圭を助けに行きたい。
 しかしそんなことをして、自分も被害に遭ってしまったら圭はそんなことを望まない。

「圭君なら……きっと大丈夫だから」

 波瑠の声も震えている。
 思わずカレンを止めたけれど空を飛べる自分なら助けられるかもしれないとほんのわずかに思った。

「カレン……入り口を塞ぐんだ」

「夜滝!」

「カレン! ここにいる人みんなを危険には晒せないんだよ……」

「…………わかった」

 カレンがドームの入り口を塞ぐ。
 嵐の夜のようなひどい音がドームの中にしばらく響き渡り、そしてやがて落ち着いた。

「…………何もない」

 外に出てみると何も無くなっていた。
 巨大な客船もベルゼブブも周りにあった全てのものがなくなり、船近くの場所では地面が大きくえぐれたようになっていた。

「……圭」

「圭さんどこに……」

 そして圭の姿も外にはなかった。

 ーーー八章完結ーーー
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