人の才能が見えるようになりました。~いい才能は幸運な俺が育てる~

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第九章

ようやく帰れる1

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「村雨さん……」

「すいませんでした……」

 後日、日本の覚醒者協会の人たちが圭のところにやってきた。
 入国の手続きなど複雑な手続きをすっ飛ばしてやってきたようで想像していたよりも来るのが早かった。

 やってきたうちの一人はいつものように圭担当になってしまっている伊丹であった。
 また何かしでかして、という目線に圭は大人しく謝るしかない。

「こらこら伊丹君そのような怖い顔するものじゃないよ」

 五十代くらいの色黒の男性が圭を威圧するような伊丹をなだめる。

「私だって心配したのですよ? かなみだって……」

「積もる話があるのは理解できるがそれは後にしよう。君が村雨圭さんですね。私は秘書室長の木村尚人(キムラナオト)というものだ」

「あっ、ありがとうございます」

 木村は流れるように圭に名刺を渡す。
 秘書室とは覚醒者協会において会長の下に直接置かれている部署で強い権限を持つ。

 今回の件の担当も秘書室長である木村が責任者となっていた。

「聞きたいことは多くあるが……まずは君が無事であることを喜ぼう」

「早速ですが何があったのか聞かせてもらえますか?」

「分かりました……」

 覚醒者協会が来るまでの間に圭はダンテとジャンにも会っていた。
 今回のことについてどうするのか非常に悩ましかったけれど魔界の存在について隠すことにした。

 魔界に行って帰ってきたという話だけでもあまりにも現実離れしている。
 鍵やルシファーの助けがあったこと、シャリンの存在など魔界について話せば説明しなければいけないことが多く出てきてしまう。

 その一方で全てを話したとして信じてもらえそうにもなく、魔界という場所に行ったことから一生監視されるなんてことだって本気であり得ることなのだ。
 ジャンにも葛藤はあったようだが悪魔の世界があるということを公表しても混乱を招くとして最終的には話を合わせてくれることに同意した。

「おおよそ他の証言と一致しますね」

 当然のことながらアザードの船で起きたことは日本のみならず世界中で騒ぎとなっていた。
 逃げ延びた人たちに話を聞くことはもちろんアザードのパーティーを取材しようとしていたカメラもあったのでベルゼブブが暴れた様子はバッチリ映っていた。

「ベルゼブブが召喚されたことは確認が取れていますし人を誘拐していたことも村雨さんたちが助け出した人たちから聞いています。さらにはこんな子供まで……」

 時間があったので船での出来事も整理して話すことができた。
 ついでにシャリンのことも船での騒動の時に助け出した子であるということにしておく。

 ダンテとジャンもシャリンの存在は驚いていたけれど下手に機嫌を損ねて暴れられると誰にも止められないので今は圭のいう通りに誤魔化すしかなかった。

「実に三日という時間が経ったがその間のことは覚えていないのかね?」

「何も……気づいたらもうこのベッドの上でした」

 そして驚きの事実が判明した。
 圭たちが魔界に行ってから三日という時間が現世では流れていた。

 このことを三日もというべきか、三日しかというべきかはなかなか難しい。
 だが圭としては三日しか経っていないのかという驚きの方が強かった。

 なぜなら魔界で時計を確認しながら寝食して過ごしていた時間は三日なんてものじゃなかったからだ。
 どうやら魔界と現世では時間の流れというものが違うらしい。

 現世の人たちからすると圭は三日も行方不明になっていたという感覚だろう。

「今村雨さんはかなり微妙な立場です」

「というと?」

「現在村雨さんは正当な理由なくアメリカに入国し、他のギルドが攻略中のゲートに不法に侵入した、ということになります」

「えっ、そんな……」

「不法入国も不法なゲート侵入もかなり重たい処罰が課せられます。ゲート事故によって別のゲートに飛ばされるという事象そのものが初めてなので村雨さんをどうするのか対応は今だに決まっていません」

「そこで日本としては村雨さんのことを英雄扱いしようと考えています」

「英雄扱い?」

 どういったことなのか分からず圭は首を傾げる。

「悪魔教を見つけたことは偶発的でしょうが誘拐されていた人の救出や避難、保護を行ったことは事実です。結果的に最後まで残った村雨さんが呼び出されたベルゼブブを消滅させたのでありますし、アザードが悪魔教で悪魔を呼び出し人を誘拐していたことも含めてアメリカと交渉するつもりです」

 実際人を助けたという功績がある。
 アザード、ベルゼブブを倒したかどうかは微妙なところであるが使えるものはなんでも使う。

 アザードが悪魔教であって悪魔を呼び出して暴れたこと、人を誘拐していたことと圭の功績を踏まえればゲート事故とはいえアメリカに不法入国したことも不問にできるだろう。

「むしろアメリカから表彰される可能性あると思います」

 アザードは非常に大きな権力を持つ人である。
 しかしアメリカの国民であるアザードが他国で問題を起こしたとなればアメリカとしても頭の痛い出来事になる。

 どんな人を誘拐していたのか特定することは難しいかもしれないが、アザードの問題性を浮き彫りにされるぐらいならさっさと悪魔教を止めたというプラスの功績に光を当ててしまう方が有益だと動くことも考えられる。
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