470 / 515
第九章
ようやく帰れる1
しおりを挟む
「村雨さん……」
「すいませんでした……」
後日、日本の覚醒者協会の人たちが圭のところにやってきた。
入国の手続きなど複雑な手続きをすっ飛ばしてやってきたようで想像していたよりも来るのが早かった。
やってきたうちの一人はいつものように圭担当になってしまっている伊丹であった。
また何かしでかして、という目線に圭は大人しく謝るしかない。
「こらこら伊丹君そのような怖い顔するものじゃないよ」
五十代くらいの色黒の男性が圭を威圧するような伊丹をなだめる。
「私だって心配したのですよ? かなみだって……」
「積もる話があるのは理解できるがそれは後にしよう。君が村雨圭さんですね。私は秘書室長の木村尚人(キムラナオト)というものだ」
「あっ、ありがとうございます」
木村は流れるように圭に名刺を渡す。
秘書室とは覚醒者協会において会長の下に直接置かれている部署で強い権限を持つ。
今回の件の担当も秘書室長である木村が責任者となっていた。
「聞きたいことは多くあるが……まずは君が無事であることを喜ぼう」
「早速ですが何があったのか聞かせてもらえますか?」
「分かりました……」
覚醒者協会が来るまでの間に圭はダンテとジャンにも会っていた。
今回のことについてどうするのか非常に悩ましかったけれど魔界の存在について隠すことにした。
魔界に行って帰ってきたという話だけでもあまりにも現実離れしている。
鍵やルシファーの助けがあったこと、シャリンの存在など魔界について話せば説明しなければいけないことが多く出てきてしまう。
その一方で全てを話したとして信じてもらえそうにもなく、魔界という場所に行ったことから一生監視されるなんてことだって本気であり得ることなのだ。
ジャンにも葛藤はあったようだが悪魔の世界があるということを公表しても混乱を招くとして最終的には話を合わせてくれることに同意した。
「おおよそ他の証言と一致しますね」
当然のことながらアザードの船で起きたことは日本のみならず世界中で騒ぎとなっていた。
逃げ延びた人たちに話を聞くことはもちろんアザードのパーティーを取材しようとしていたカメラもあったのでベルゼブブが暴れた様子はバッチリ映っていた。
「ベルゼブブが召喚されたことは確認が取れていますし人を誘拐していたことも村雨さんたちが助け出した人たちから聞いています。さらにはこんな子供まで……」
時間があったので船での出来事も整理して話すことができた。
ついでにシャリンのことも船での騒動の時に助け出した子であるということにしておく。
ダンテとジャンもシャリンの存在は驚いていたけれど下手に機嫌を損ねて暴れられると誰にも止められないので今は圭のいう通りに誤魔化すしかなかった。
「実に三日という時間が経ったがその間のことは覚えていないのかね?」
「何も……気づいたらもうこのベッドの上でした」
そして驚きの事実が判明した。
圭たちが魔界に行ってから三日という時間が現世では流れていた。
このことを三日もというべきか、三日しかというべきかはなかなか難しい。
だが圭としては三日しか経っていないのかという驚きの方が強かった。
なぜなら魔界で時計を確認しながら寝食して過ごしていた時間は三日なんてものじゃなかったからだ。
どうやら魔界と現世では時間の流れというものが違うらしい。
現世の人たちからすると圭は三日も行方不明になっていたという感覚だろう。
「今村雨さんはかなり微妙な立場です」
「というと?」
「現在村雨さんは正当な理由なくアメリカに入国し、他のギルドが攻略中のゲートに不法に侵入した、ということになります」
「えっ、そんな……」
「不法入国も不法なゲート侵入もかなり重たい処罰が課せられます。ゲート事故によって別のゲートに飛ばされるという事象そのものが初めてなので村雨さんをどうするのか対応は今だに決まっていません」
「そこで日本としては村雨さんのことを英雄扱いしようと考えています」
「英雄扱い?」
どういったことなのか分からず圭は首を傾げる。
「悪魔教を見つけたことは偶発的でしょうが誘拐されていた人の救出や避難、保護を行ったことは事実です。結果的に最後まで残った村雨さんが呼び出されたベルゼブブを消滅させたのでありますし、アザードが悪魔教で悪魔を呼び出し人を誘拐していたことも含めてアメリカと交渉するつもりです」
実際人を助けたという功績がある。
アザード、ベルゼブブを倒したかどうかは微妙なところであるが使えるものはなんでも使う。
アザードが悪魔教であって悪魔を呼び出して暴れたこと、人を誘拐していたことと圭の功績を踏まえればゲート事故とはいえアメリカに不法入国したことも不問にできるだろう。
「むしろアメリカから表彰される可能性あると思います」
アザードは非常に大きな権力を持つ人である。
しかしアメリカの国民であるアザードが他国で問題を起こしたとなればアメリカとしても頭の痛い出来事になる。
どんな人を誘拐していたのか特定することは難しいかもしれないが、アザードの問題性を浮き彫りにされるぐらいならさっさと悪魔教を止めたというプラスの功績に光を当ててしまう方が有益だと動くことも考えられる。
「すいませんでした……」
後日、日本の覚醒者協会の人たちが圭のところにやってきた。
入国の手続きなど複雑な手続きをすっ飛ばしてやってきたようで想像していたよりも来るのが早かった。
やってきたうちの一人はいつものように圭担当になってしまっている伊丹であった。
また何かしでかして、という目線に圭は大人しく謝るしかない。
「こらこら伊丹君そのような怖い顔するものじゃないよ」
五十代くらいの色黒の男性が圭を威圧するような伊丹をなだめる。
「私だって心配したのですよ? かなみだって……」
「積もる話があるのは理解できるがそれは後にしよう。君が村雨圭さんですね。私は秘書室長の木村尚人(キムラナオト)というものだ」
「あっ、ありがとうございます」
木村は流れるように圭に名刺を渡す。
秘書室とは覚醒者協会において会長の下に直接置かれている部署で強い権限を持つ。
今回の件の担当も秘書室長である木村が責任者となっていた。
「聞きたいことは多くあるが……まずは君が無事であることを喜ぼう」
「早速ですが何があったのか聞かせてもらえますか?」
「分かりました……」
覚醒者協会が来るまでの間に圭はダンテとジャンにも会っていた。
今回のことについてどうするのか非常に悩ましかったけれど魔界の存在について隠すことにした。
魔界に行って帰ってきたという話だけでもあまりにも現実離れしている。
鍵やルシファーの助けがあったこと、シャリンの存在など魔界について話せば説明しなければいけないことが多く出てきてしまう。
その一方で全てを話したとして信じてもらえそうにもなく、魔界という場所に行ったことから一生監視されるなんてことだって本気であり得ることなのだ。
ジャンにも葛藤はあったようだが悪魔の世界があるということを公表しても混乱を招くとして最終的には話を合わせてくれることに同意した。
「おおよそ他の証言と一致しますね」
当然のことながらアザードの船で起きたことは日本のみならず世界中で騒ぎとなっていた。
逃げ延びた人たちに話を聞くことはもちろんアザードのパーティーを取材しようとしていたカメラもあったのでベルゼブブが暴れた様子はバッチリ映っていた。
「ベルゼブブが召喚されたことは確認が取れていますし人を誘拐していたことも村雨さんたちが助け出した人たちから聞いています。さらにはこんな子供まで……」
時間があったので船での出来事も整理して話すことができた。
ついでにシャリンのことも船での騒動の時に助け出した子であるということにしておく。
ダンテとジャンもシャリンの存在は驚いていたけれど下手に機嫌を損ねて暴れられると誰にも止められないので今は圭のいう通りに誤魔化すしかなかった。
「実に三日という時間が経ったがその間のことは覚えていないのかね?」
「何も……気づいたらもうこのベッドの上でした」
そして驚きの事実が判明した。
圭たちが魔界に行ってから三日という時間が現世では流れていた。
このことを三日もというべきか、三日しかというべきかはなかなか難しい。
だが圭としては三日しか経っていないのかという驚きの方が強かった。
なぜなら魔界で時計を確認しながら寝食して過ごしていた時間は三日なんてものじゃなかったからだ。
どうやら魔界と現世では時間の流れというものが違うらしい。
現世の人たちからすると圭は三日も行方不明になっていたという感覚だろう。
「今村雨さんはかなり微妙な立場です」
「というと?」
「現在村雨さんは正当な理由なくアメリカに入国し、他のギルドが攻略中のゲートに不法に侵入した、ということになります」
「えっ、そんな……」
「不法入国も不法なゲート侵入もかなり重たい処罰が課せられます。ゲート事故によって別のゲートに飛ばされるという事象そのものが初めてなので村雨さんをどうするのか対応は今だに決まっていません」
「そこで日本としては村雨さんのことを英雄扱いしようと考えています」
「英雄扱い?」
どういったことなのか分からず圭は首を傾げる。
「悪魔教を見つけたことは偶発的でしょうが誘拐されていた人の救出や避難、保護を行ったことは事実です。結果的に最後まで残った村雨さんが呼び出されたベルゼブブを消滅させたのでありますし、アザードが悪魔教で悪魔を呼び出し人を誘拐していたことも含めてアメリカと交渉するつもりです」
実際人を助けたという功績がある。
アザード、ベルゼブブを倒したかどうかは微妙なところであるが使えるものはなんでも使う。
アザードが悪魔教であって悪魔を呼び出して暴れたこと、人を誘拐していたことと圭の功績を踏まえればゲート事故とはいえアメリカに不法入国したことも不問にできるだろう。
「むしろアメリカから表彰される可能性あると思います」
アザードは非常に大きな権力を持つ人である。
しかしアメリカの国民であるアザードが他国で問題を起こしたとなればアメリカとしても頭の痛い出来事になる。
どんな人を誘拐していたのか特定することは難しいかもしれないが、アザードの問題性を浮き彫りにされるぐらいならさっさと悪魔教を止めたというプラスの功績に光を当ててしまう方が有益だと動くことも考えられる。
15
あなたにおすすめの小説
シスターヴレイヴ!~上司に捨て駒にされ会社をクビになり無職ニートになった俺が妹と異世界に飛ばされ妹が勇者になったけど何とか生きてます~
尾山塩之進
ファンタジー
鳴鐘 慧河(なるがね けいが)25歳は上司に捨て駒にされ会社をクビになってしまい世の中に絶望し無職ニートの引き籠りになっていたが、二人の妹、優羽花(ゆうか)と静里菜(せりな)に元気づけられて再起を誓った。
だがその瞬間、妹たち共々『魔力満ちる世界エゾン・レイギス』に異世界召喚されてしまう。
全ての人間を滅ぼそうとうごめく魔族の長、大魔王を倒す星剣の勇者として、セカイを護る精霊に召喚されたのは妹だった。
勇者である妹を討つべく襲い来る魔族たち。
そして慧河より先に異世界召喚されていた慧河の元上司はこの異世界の覇権を狙い暗躍していた。
エゾン・レイギスの人間も一枚岩ではなく、様々な思惑で持って動いている。
これは戦乱渦巻く異世界で、妹たちを護ると一念発起した、勇者ではない只の一人の兄の戦いの物語である。
…その果てに妹ハーレムが作られることになろうとは当人には知るよしも無かった。
妹とは血の繋がりであろうか?
妹とは魂の繋がりである。
兄とは何か?
妹を護る存在である。
かけがいの無い大切な妹たちとのセカイを護る為に戦え!鳴鐘 慧河!戦わなければ護れない!
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
現実世界にダンジョンが出現したのでフライングして最強に!
おとうふ
ファンタジー
2026年、突如として世界中にダンジョンが出現した。
ダンジョン内は無尽蔵にモンスターが湧き出し、それを倒すことでレベルが上がり、ステータスが上昇するという不思議空間だった。
過去の些細な事件のトラウマを克服できないまま、不登校の引きこもりになっていた中学2年生の橘冬夜は、好奇心から自宅近くに出現したダンジョンに真っ先に足を踏み入れた。
ダンジョンとは何なのか。なぜ出現したのか。その先に何があるのか。
世界が大混乱に陥る中、何もわからないままに、冬夜はこっそりとダンジョン探索にのめり込んでいく。
やがて来る厄災の日、そんな冬夜の好奇心が多くの人の命を救うことになるのだが、それはまだ誰も知らぬことだった。
至らぬところも多いと思いますが、よろしくお願いします!
天城の夢幻ダンジョン攻略と無限の神空間で超絶レベリング ~ガチャスキルに目覚めた俺は無職だけどダンジョンを攻略してトップの探索士を目指す~
仮実谷 望
ファンタジー
無職になってしまった摩廻天重郎はある日ガチャを引くスキルを得る。ガチャで得た鍛錬の神鍵で無限の神空間にたどり着く。そこで色々な異世界の住人との出会いもある。神空間で色んなユニットを配置できるようになり自分自身だけレベリングが可能になりどんどんレベルが上がっていく。可愛いヒロイン多数登場予定です。ガチャから出てくるユニットも可愛くて強いキャラが出てくる中、300年の時を生きる謎の少女が暗躍していた。ダンジョンが一般に知られるようになり動き出す政府の動向を観察しつつ我先へとダンジョンに入りたいと願う一般人たちを跳ね除けて天重郎はトップの探索士を目指して生きていく。次々と美少女の探索士が天重郎のところに集まってくる。天重郎は最強の探索士を目指していく。他の雑草のような奴らを跳ね除けて天重郎は最強への道を歩み続ける。
焔の幽閉者!自由を求めて最強への道を歩む!!
雷覇
ファンタジー
とある出来事で自身も所属する焔木一族から幽閉された男「焔木海人」。
その幽閉生活も一人の少女の来訪により終わりを迎える。
主人公は一族に自身の力を認めさせるため最強の力を求め続ける。
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編
荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明
まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。
そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。
その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる