人の才能が見えるようになりました。~いい才能は幸運な俺が育てる~

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第九章

神の仲間

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「助かったよ、圭」

 ジャンが圭に頭を下げた。
 ジャンの正確な所属は欧州連盟らしく、圭のように欧州連盟の方の覚醒者協会がジャンを引き取った。

 ただそれでジャンとの関係が終わりというわけではない。
 魔界に吸い込まれたのは圭たちだけではなく船で戦っていた異端審問官に所属している覚醒者たちも同様に魔界に行った。

 ただ魔界に行く際の衝撃に耐えることができずに圭たち三人を除いて異端審問官たちは死んでしまっていたのである。
 圭は異端審問官の遺体を亜空間の収納袋で回収した。

 五体満足で残っている遺体もあれば体の一部しか残っていないものもあった。
 アメリカの病院で遺体を引き渡すわけにもいかないので圭が持ち続ける形になっていたのだが、圭もジャンも国に戻った後ジャンから遺体を引き取る準備ができたという連絡があった。

 ジャンに遺体を引き渡すことになったのだけど日本から遺体を大量に持っていくのは簡単なことでない。
 そのためにジャンが圭にお礼をするために異端審問官の本部に招待するという形で圭が欧州連盟に向かうことになった。

 お仲間も一緒にと言われて心配をかけた夜滝たちも一緒に来ている。
 今は圭だけが遺体の引き渡しに来ていて、夜滝たちは異端審問官の人が町中を案内してくれている。

 教会のような建物の綺麗な床の上にシートが敷いてあってその上に遺体を並べた。

「今回のことで私たちが起こした行動の結果に何があるのかを思い知った……」

 もはや誰のものなのかも分からない手だけになった遺体を見てジャンは悲しげな目をしている。

「多くの異端審問官が犠牲になった……悪魔を倒すという大義のためならば犠牲になることも厭わない人たちであったけれど無駄に命を散らす必要はなかった人でもあったのだ」

 もっと上手いやり方があったのではないかとジャンは思った。
 アメリカにいる時は襲撃が難しいので船にいる時に攻撃を仕掛けたのであるが、結果として異端審問官の被害は甚大であった。

 船の中に魔界に繋がる入り口があったことなどジャンに知る由はないのであるけれど、チャンスだと焦って攻撃してしまったことは否めない。

「一般の人も多く巻き込むところだった」

 もし仮に船に人がいる段階で魔界への入り口が崩壊していたら被害は異端審問官だけにとどまらなかった。

「俺はこれからも悪魔と戦う。けれどもその意義は人々を守ることであり何が何でも悪魔を倒せればいいということではないのを改めて思い知った」

 いつの間にか悪魔を倒すということが目的になっていた。
 本来の目的は人を守ることだったのに悪魔を倒すという手段が目的になって、それに囚われてしまっていたのだ。

「これをお礼として受け取ってほしい」

「これはなんですか?」

「アーティファクトだ」

 ジャンは懐から小さな箱を取り出して圭に渡した。
 箱を開けてみると中には小さな赤い石のネックレスが入っている。

「持ち主が致命的なダメージを受けそうな時防いでくれる効果がある。一度使うと一週間のチャージが必要だが何回でも使うことができるものだ」

『ネリンヘアの守護のネックレス
 持ち主の危機を感知し、ダメージを防いでくれる。
 一度使うと七日の魔力チャージが必要となる』

 圭がネックレスを真実の目で見てみるとジャンの言う通りの効果があった。

「いいのか、こんなもの?」

「助けてもらったし……遺体も帰ってこられないはずだったのにこうして連れて帰ってきてくれたんだ。受け取ってくれ」

「じゃあ……もらうよ」

 相手の厚意を無下にもできない。
 圭がネックレスを受け取ることにするとジャンは優しく笑った。

「……俺はシャリンと魂の契約を結んだけど……それはいいのか?」

 ジャンが悪魔と戦い続けることに変わりはない。
 けれど圭はシャリンと魂の契約を結んだ。

 悪魔の使徒と違って悪魔とただ繋がるだけのようなものであるが悪魔と繋がっていることになる。

「思うところないわけじゃないが圭には助けられた。悪の心から悪魔と契約したのではないことは目の前で見ていたから知っている。その力を悪いことに使わないのなら俺はあなたと敵対することはない」

 どうすべきかジャン自身も悩んだ。
 悪魔と契約しただけで倒すべき敵であるのか。

 結局ジャンは圭を敵ではないと思うことにした。
 圭やシャリンの力を悪用しない限りは圭は共に苦境を乗り切った仲間である。

「それともう一つ神の啓示があった」

「神の啓示?」

「魔界にいる時は神との繋がりが感じられなかったけれどこうして帰ってくると再び神の存在を感じるようになった。そして神のお言葉があったのだ。大いなる厄災が世界に迫っているとな」

 神の啓示もまた圭を敵対視しない理由の一つだった。

「最も不幸な身に幸運な神と真実を見抜く悪魔の力を宿したものが世界を救うかもしれないから助けろとな。なんのことかは分からない……だけど圭、あなたのことだと思った」

「最も不幸な身に……幸運な神と真実を見抜く悪魔の力? 何が何だか……」

 真実を見抜く悪魔の力は分かる。
 真実の目のことだろう。

 しかし最も不幸な身と幸運な神というのはなんのことなのか分からないのである。
 そういえば不幸なものみたいなことを言われたことがあると圭は思った。

「ともかく異端審問官は村雨圭への感謝を忘れない。そしてこれから全面的な協力を誓う。何かあったらいつでも連絡をくれ。あなたのためならなんでもしよう」

「…………分かった」

 またしても不幸とかそんなことを言われた。
 少しの引っ掛かりを覚えつつもジャンに聞いても答えは得られないだろうと圭はそのまま恩義だけど受け取ることにした。

「最も不幸な身……なんのことだろうな」

 それに幸運な神というやつも謎である。
 ジャンへの遺体の引き渡しをもって今回の事件についてはひとまず幕引きとなったのであった。
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