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第二章
ゴブリンはワーウルフに感心しました2
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癒しと強化も通常魔物が持つことは少ない力である。
自己再生力が高く、人よりも魔物の方が能力も高い。
群れをなしたり共闘したすることはあっても他の魔物を支援するという意識はあまり強くない。
共生しているような魔物で弱いものなら他の魔物を代わりに戦わせるために支援することはあるが一般的な存在ではない。
まして癒し、つまりは他の魔物を癒すことなんてまずしない。
ユリディカは不思議な魔物だ。
そもそも出自がダンジョンから生まれたというところから始まり、理由も不明だけど他のダンジョンの魔物とは違って意思を持っている。
何度もあるゴブ生の中でワーウルフにあったこともあるけれどワーウルフってやつは割とプライドが高くていけすかないのも多いのだけどユリディカは違う。
言葉を選ばずにいうなら能天気。
のほほんとして明るく前向きで良い魔物である。
普段はやや闘争本能に弱いような感じがするけれどいざとなればちゃんと戦う。
「そうだな……いつかどっかいいところでも見つかったらそのアリドナラルって神様のこと祀ってあげよう。
信仰者がいなくなれば神様は力を失うけどまた広まることがあれば復活するかもしれない。
……まあゴブリンに信仰されて復活するかは知らないけどさ」
おそらくユリディカに受け継がれた以上はそこから人に信仰が広まることはない。
だけど魔物の間で宗教や信仰が広まっているだなんて話も聞いたことがない。
ほぼほぼ途絶えるとこが確定している感じにはなるけれどこの力が助けになったあかつきにはゴブリンで祀るぐらいはしてもいい。
「ドゥゼアァ……」
パァッとユリディカの顔が明るくなる。
まだアリドナラルが復活する希望はある。
ゴブリンも何かを信仰することはないけれど強いものを神のように崇拝したりすることがないこともない。
その点から考えると他の魔物よりもゴブリンの方が神様の信仰的には合っているかもしれない。
「とりあえずここから出るか」
こうした出来事があった以上もう他には何もない。
ドゥゼアたちは来た道を戻って古代遺跡からの脱出を図る。
一つ前の部屋。
像に襲われたのでどうしても少し慎重になる。
こちらの像は倒れておらず、元の位置で静かに佇んでいた。
「うっ!」
「ユリディカ、どうした?」
急にユリディカがその場にうずくまった。
「胸が熱い……」
体の中にあった力が突然熱を持ったように熱くなり、そして体に広がっていく。
「だ、大丈夫?」
レビスが心配そうに顔を覗き込む。
ユリディカの中の熱は体中に広がっていき、手にもっている杖にまで流れていく。
きっと力がユリディカの体に適応しようとしているのだとドゥゼアは思った。
それなら大人しく見守ってやるのがいい。
グニャリとユリディカの持っている杖が曲がった柔らかく、意志でも持っているように動いてユリディカの腕に絡みついた。
「ドゥ、ドゥゼア!」
レビスがドゥゼアの方を振り向く。
これは大丈夫なのかと目で訴えかけてくるけどドゥゼアもこれが本当に大丈夫だと言い切れる自信がない。
ユリディカの右手に絡みついた杖はニョロニョロと動き、ユリディカの体を伝って左手まで伸びた。
何をしているのか理解できない。
だからといって体に密着して巻き付いている杖を引き剥がすこともできなさそうである。
もし仮に何かしらに意識でも飲み込まれて暴れるようなら。
ドゥゼアは短剣を抜いて構える。
いざという時はユリディカだって倒してやるぐらいの覚悟はする。
杖が広がってユリディカの両手を包み込む。
「ううう……はああああっ!」
「な、なんだと……!」
遠吠えのような雄叫びを上げるユリディカ。
両手の杖がボコボコと動いで形を変えていき、そして最後にはまるでユリディカにあつらえて作った鉤爪の武器のような形になった。
「ユリディカ……?」
ぼんやりとした目をするユリディカにレビスが声をかける。
「気・分・爽・快!」
ああ、ユリディカだ。
ドゥゼアは安心したように大きく息を吐き出して剣を下ろした。
「うわあああっ、何これ!」
ユリディカは自分の両手を見て驚く。
杖は大きく形を変えてユリディカの両手を包み込む手甲型の鉤爪武器へと形を変えていた。
ユリディカが元々持つ爪をさらに保護して強化するようになっていてもはや杖とはとても呼べなかった。
「ユリディカに合わせて形を変えたのか?」
ユリディカには魔物としての身体能力がある。
自分が戦おうと思った時に杖を持ったままでは戦いにくい。
けれどサポートだけに回すにもとてもじゃないが惜しい。
ユリディカの意図を汲み取ったようにユリディカが使いやすい形に杖は形を変えたのである。
「す、すごい……!」
「ユリディカ、体は大丈夫か?」
「うん!
すごく体が軽い感じ!」
ユリディカの中にあった力がユリディカに馴染んだようだ。
杖までユリディカに合わせてくれて至れり尽くせりで羨まし限りである。
とりあえず害にはなっていない。
ユリディカもユリディカのまま。
大丈夫そうならそれでいい。
ドゥゼアは短剣を鞘にしまって小さくため息をついた。
自己再生力が高く、人よりも魔物の方が能力も高い。
群れをなしたり共闘したすることはあっても他の魔物を支援するという意識はあまり強くない。
共生しているような魔物で弱いものなら他の魔物を代わりに戦わせるために支援することはあるが一般的な存在ではない。
まして癒し、つまりは他の魔物を癒すことなんてまずしない。
ユリディカは不思議な魔物だ。
そもそも出自がダンジョンから生まれたというところから始まり、理由も不明だけど他のダンジョンの魔物とは違って意思を持っている。
何度もあるゴブ生の中でワーウルフにあったこともあるけれどワーウルフってやつは割とプライドが高くていけすかないのも多いのだけどユリディカは違う。
言葉を選ばずにいうなら能天気。
のほほんとして明るく前向きで良い魔物である。
普段はやや闘争本能に弱いような感じがするけれどいざとなればちゃんと戦う。
「そうだな……いつかどっかいいところでも見つかったらそのアリドナラルって神様のこと祀ってあげよう。
信仰者がいなくなれば神様は力を失うけどまた広まることがあれば復活するかもしれない。
……まあゴブリンに信仰されて復活するかは知らないけどさ」
おそらくユリディカに受け継がれた以上はそこから人に信仰が広まることはない。
だけど魔物の間で宗教や信仰が広まっているだなんて話も聞いたことがない。
ほぼほぼ途絶えるとこが確定している感じにはなるけれどこの力が助けになったあかつきにはゴブリンで祀るぐらいはしてもいい。
「ドゥゼアァ……」
パァッとユリディカの顔が明るくなる。
まだアリドナラルが復活する希望はある。
ゴブリンも何かを信仰することはないけれど強いものを神のように崇拝したりすることがないこともない。
その点から考えると他の魔物よりもゴブリンの方が神様の信仰的には合っているかもしれない。
「とりあえずここから出るか」
こうした出来事があった以上もう他には何もない。
ドゥゼアたちは来た道を戻って古代遺跡からの脱出を図る。
一つ前の部屋。
像に襲われたのでどうしても少し慎重になる。
こちらの像は倒れておらず、元の位置で静かに佇んでいた。
「うっ!」
「ユリディカ、どうした?」
急にユリディカがその場にうずくまった。
「胸が熱い……」
体の中にあった力が突然熱を持ったように熱くなり、そして体に広がっていく。
「だ、大丈夫?」
レビスが心配そうに顔を覗き込む。
ユリディカの中の熱は体中に広がっていき、手にもっている杖にまで流れていく。
きっと力がユリディカの体に適応しようとしているのだとドゥゼアは思った。
それなら大人しく見守ってやるのがいい。
グニャリとユリディカの持っている杖が曲がった柔らかく、意志でも持っているように動いてユリディカの腕に絡みついた。
「ドゥ、ドゥゼア!」
レビスがドゥゼアの方を振り向く。
これは大丈夫なのかと目で訴えかけてくるけどドゥゼアもこれが本当に大丈夫だと言い切れる自信がない。
ユリディカの右手に絡みついた杖はニョロニョロと動き、ユリディカの体を伝って左手まで伸びた。
何をしているのか理解できない。
だからといって体に密着して巻き付いている杖を引き剥がすこともできなさそうである。
もし仮に何かしらに意識でも飲み込まれて暴れるようなら。
ドゥゼアは短剣を抜いて構える。
いざという時はユリディカだって倒してやるぐらいの覚悟はする。
杖が広がってユリディカの両手を包み込む。
「ううう……はああああっ!」
「な、なんだと……!」
遠吠えのような雄叫びを上げるユリディカ。
両手の杖がボコボコと動いで形を変えていき、そして最後にはまるでユリディカにあつらえて作った鉤爪の武器のような形になった。
「ユリディカ……?」
ぼんやりとした目をするユリディカにレビスが声をかける。
「気・分・爽・快!」
ああ、ユリディカだ。
ドゥゼアは安心したように大きく息を吐き出して剣を下ろした。
「うわあああっ、何これ!」
ユリディカは自分の両手を見て驚く。
杖は大きく形を変えてユリディカの両手を包み込む手甲型の鉤爪武器へと形を変えていた。
ユリディカが元々持つ爪をさらに保護して強化するようになっていてもはや杖とはとても呼べなかった。
「ユリディカに合わせて形を変えたのか?」
ユリディカには魔物としての身体能力がある。
自分が戦おうと思った時に杖を持ったままでは戦いにくい。
けれどサポートだけに回すにもとてもじゃないが惜しい。
ユリディカの意図を汲み取ったようにユリディカが使いやすい形に杖は形を変えたのである。
「す、すごい……!」
「ユリディカ、体は大丈夫か?」
「うん!
すごく体が軽い感じ!」
ユリディカの中にあった力がユリディカに馴染んだようだ。
杖までユリディカに合わせてくれて至れり尽くせりで羨まし限りである。
とりあえず害にはなっていない。
ユリディカもユリディカのまま。
大丈夫そうならそれでいい。
ドゥゼアは短剣を鞘にしまって小さくため息をついた。
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