ラスボスドラゴンを育てて世界を救います!〜世界の終わりに聞いたのは寂しがり屋の邪竜の声でした

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第三章

闇に溶け込む盗人1

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「トモナリ……」

「ああ、俺も感じた」

 夜中にトモナリとヒカリは目を覚ました。
 一瞬だが強い魔力を感じたのだ。

 周りで寝ているみんなの魔力ではない。
 しかも感じられたのはほんの一瞬という違和感。

 ゲートやモンスターが現れたなら継続的に魔力が感じられてもおかしくないのに今は集中しても魔力を感じられない。
 何かがあるとトモナリとヒカリは顔を見合わせた。

 トモナリとヒカリはみんなを起こさないようにそっと部屋を出る。

「何かの気配、感じ取れるか?」

 ヒカリの感覚はトモナリよりも鋭い。
 トモナリに抱えられたヒカリは目を閉じて意識を集中させる。

「むむむむ……蔵の方に何かがいるかもしれないのだ!」

「蔵だな?」
 
 いるかもしれないという少し曖昧な言い方に不安を覚えつつもトモナリは蔵の方に向かう。

「開いてる……」

 朝に神切を取るために蔵の中に入った。
 出る時にちゃんと鍵を閉めたことは確認してテッサイに返した。

 なのに今蔵の扉は開いている。
 怪しいと思った。

 トモナリはルビウスをインベントリから取り出す。
 剣を抜くと真っ赤な刃が月明かりできらめいた。

 気配を殺してトモナリは蔵に近づく。
 開いた扉から蔵の中を覗き込む。

「……誰かがいる」

 蔵の中で何かが動いている。
 黒い姿をしているので何なのかまでは分からないが何かいることは確実だった。

「人……覚醒者だ」

 蔵の中にいるのは覚醒者だとトモナリは気づいた。
 刀の箱を開けて中身を確認するとシュンと箱が消える。

 インベントリを持った覚醒者である。
 トモナリはそっとスマホを取り出すと覚醒者協会に連絡する。
 
 中の様子をうかがいながら住所と状況を素早く伝える。

「……気づかれたか!?」

 トモナリの小さな声に反応したように盗人が顔を上げて周りを確認する。

「……動くな!」

 これ以上はバレてしまうかもしれない。
 そう思ったトモナリはスマホを切って蔵の中に飛び込んだ。

 ルビウスに炎をまとわせて威嚇と明かりの確保をする。

「いかにも盗人って感じだな」

 全身黒の服装に顔は目の下まで隠してある。
 インベントリに物を入れる瞬間を目撃していなくとも盗人なのは見て分かる。

「大人しく捕まるんだな」

 蔵の出入り口はトモナリが立ち塞がっている扉か天井近くにある小さな換気用の窓しかない。
 換気用の窓は小さい上に格子がはめられているので簡単には出られない。

 となるとやはりトモナリの後ろの扉から出ていくしかないのだ。
 もうすでに覚醒者協会には通報してあるので人が来てくれるまで盗人をここに留められればいい。

 捕まえられれば最高だ。

「……返事もなしか」

 ただ無理をするつもりはない。
 盗人は何も答えずトモナリのことをじっと見ている。

 逃げる隙をうかがっているのだろうことはバレバレだ。
 トモナリも盗人がいつ動いてもいいように警戒を怠らない。

「目的は何だ? お前は何者だ?」

 トモナリが疑問を投げかけても盗人は何も答えない。
 答えるとも思っていないが、だからといって盗人に大人しく投降する様子もないようだ。

「逃げるつもりか!」

 盗人が真っ直ぐに走り出した。
 懐からナイフを取り出してトモナリに向かって投擲する。

「ぐっ!」

 トモナリは剣でナイフを弾く。
 ただの投げナイフなのに非常に重たく感じられて顔をしかめた。

 強い、と思った。
 確実に盗人は自分よりもレベルが上の覚醒者である。

 ナイフに込められた魔力がそれを物語っている。

「逃すか!」

 だがトモナリも怯むことなく横を抜けていこうとする盗人に燃えるルビウスを振り下ろした。
 盗人はかなり素早いが何とか攻撃が間に合った。

「はやっ……」

 届いたと思ったのだが盗人がさらに加速した。

「ヒカリ!」

 トモナリの剣は盗人に掠ることもなく、盗人はそのまま蔵を出ようとした。
 しかしトモナリはさらに対策を打っていた。

 蔵を出ようとした盗人に扉の上に隠れていたヒカリが落ちるようにしながら襲いかかる。

「……くっ!」

 完璧なタイミングであったように思われたが盗人は体を捻ってヒカリをかわそうとする。

「ぐにゅー!」

 逃すまいとヒカリは爪で盗人を攻撃した。

「浅いか……!」

 ヒカリの爪は盗人の胸元に届いたがびりっと服が破けただけだった。
 盗人は服を手で押さえるとそのまま飛び上がって逃げていく。

「待て!」

 トモナリも追いかけるように蔵の上にジャンプする。

「くそッ……いない」

 蔵の上に飛び乗った時にはもう盗人の姿はなかった。
 すごく速いのか、スキルで身を隠したのか、あるいは両方か。

 何にしろ相手の盗人は少なくともトモナリよりも素早さが上であると感じた。
 体の使い方やスキルによってはまた純粋に数値だけを比べることはできないが多分純粋な能力値でも劣っている。

 遠くにサイレンが聞こえて初めてトモナリは思わず深いため息をついた。

「逃げられたのだ……」

 ヒカリも悔しそうな顔をしてトモナリのところに飛んできた。

「しょうがない……俺たちはまだまだ弱いんだ」

 上には上がいる。
 多少強くなったがそれでも及ばない強い人、強いモンスターは多い。

「何事だ」

 近づくサイレンの音に起きたのかみんなも家の中から出てきた。

「あーあ……説明もめんどくさそうだ……」
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